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デジタルプロダクトデザイン、プロトタイピングのプラットフォームを提供するInVisionは、毎年12月に彼らのInseide Design Blogの中で、来年のトレンド予測を発表している。「2021 PRODUCT DESIGN TREND REPORT」と題されたレポートでは、冒頭に「進む道をデザインする」という短いコラムの中で、2021年に向けての意思表示がされている。
「2020年はなんという10年だったのでしょう。私たちの世界が一夜にして根本的な再編成を受けていることを、私たち全員が経験しました。2021年は地平線上での道しるべとなり、安定への復帰の可能性に希望を与えてくれました。そして、来年がどのような年になるのか、その多くは宙に浮いたままですが、私たちは新たな回復力、機知に富み、目的意識を持って2021年に臨みます。」
私たちがこれほどの激変を経験したことがないにもかかわらず、乗り切ることができているのは、これまでの歴史の中で同じような混乱がたくさんあったという知識を持っていたからだという。インターネットで繋がった世界の中で、私たちは初めて、大規模な出来事が起きていることをリアルタイムで体験することができたこと、また、さまざまなデジタルツールを通じて、実際に起きているをひとつの物語としてつなぎ合わせる役割を果たすことができたことは、大きなことだったと示されている。
本レポートでは「2021年、デザイナーが知っておくべき7つのトレンド」が紹介されている。7つのテーマの多くは、必ずしもまったく「新しい」ものではないが、これまでに出てきていたいくつかのテーマの変容や進行が認められ、これらが2021年にプロダクトチームに最も大きな影響を与えだろうとレポートでは予測している。
InVisionのチームはこのレポートをまとめたことで、重要な技術インフラと急速なデジタルトランスフォーメーションの震源地であるデジタルプロダクトの分野は、今年最大の普遍的な変化の中で独自の視点を持っていることがわかったという。そして、デジタルプロダクトのコミュニティは、人類が前に進んでいく中で、物質的なインパクトを与える最も具体的な機会を提供していると述べられている。
2021年はどのような年になるのか、そして、デジタルプロダクト、そしてプロダクトデザインは、この世界の再生の中でどのように機能していくのだろうか。
今回はInVisionの「2021 PRODUCT DESIGN TREND REPORT」から、2021年にデザイナーが知っておくべき7つのトレンドをレポートいたします。
from InVision[2021 PRODUCT DESIGN TREND REPORT]
1.デザインシステムはチームの可能性を引き出すことができるか? 2.デザインはビジネスのテーブルにつくことができるか? 3.組織はシステム的な変化を生み出すことができるか? 4.ジェネラリストはコラボレーションの鍵となるのか? 5.仕事と生活は再び分離してしまうのか? 6.デジタルファーストは競争上の優位性を維持できるか? 7.私たちはこれからも大事なことに集中していくだろうか? |
大企業がデザインシステムに本格的な投資を始めたのは2016年に入ってからと言われる。その導入以来、マーケットへのスピードアップと長期的な効率化をもたらすデザインシステムは、急速に拡大してきている。GoogleのMaterialやIBMのCarbonをはじめ、多くの企業ではデザインシステムはその地位を築くために不可欠なものになってきた。2020年以前には投資に見合うリターンを得られるかという疑問もあったが、Covidが起こり、デザインプロセスはこれまで以上にシステム化をする必要が出てきたとき、多くのチームはこの切り替えに向けてすでに準備ができていたという。
"デザインシステムとは、デザインとコーディングの組織としてのすべての決定を語る方法です。それらの決定を手渡し、そのシステムを使う上での経験を作るために協力する方法です。” ネイサン・カーティス |
デザインシステムは、すでにチームがコラボレーションやコミュニケーションを考え直すのに不可欠なステップになっていた。多くの企業では、パンデミックの前にデザインシステムを導入していたため、リモートでの新たな作業環境にスムーズに移行することができた。
InVisionの調査によると、2020年にデザインシステムを使っている人のうち、83%が週に2時間以上の節約になったと回答し、34%が6時間以上の節約になったとみている。これはデザイナー、エンジニア、PMが、重要な仕事に従事することができる1日分のフルワークに相当する。2020年には、多くの組織がより少ない予算でより多くのことを行うよう求められていため、デザインシステムを導入することで、在宅勤務への急速な切り替えに伴う無形のコストを軽減することができたという。
デザインシステムが成熟しているほどコスト節約になっている
自社のデザインシステムが「最も成熟している」または「最適化されている」と答えた回答者はわずか7.7%にすぎず、デザインシステムが成熟しているほど、平均的なコストの節約になることがわかった。しかし、多くの企業は、このような潜在的なコスト削減の機会を逃しているという。
レポートでは、2021年には、「統合された」「最適化された」デザインシステムを報告するチームの割合が増えると予想している。そして、2020年に大きな節約をした人たちが、ビッグデータのアクセスや、最適化のためのAIの導入などの新しいテクノロジーに再投資できるようになるため、デザインシステムによる節約のギャップは拡大ことが予測されている。
「まだ成長の余地がある企業にとって、デザインシステムへの再投資の機会はさらに緊急性を増します。市場ですぐに競争上の優位性が得られるとは思われないものに投資することは、リソースの奪い合いになりますが、特にチームが予算の削減や限られた資金の拡張を求められている場合はなおさらです。」
このテーマの最後に、成熟度が中間地点にある人達に向けて、ネイサンからのアドバイスが紹介されている。それは「デザインシステムのコアの品質を可能な限り高く保つこと」だ。
“システムの使命の一部は、すべての顧客や他のすべてのチームとのつながりを維持することです。あなたはどのようにして、あなた自身やあなたのチームを最も価値のある場所に向けることができるでしょうか?” ネイサン・カーティス |
2020年のスタート時に、InVisionは『新しいデザインフロンティア』の中で「デザインがビジネスで次のレベルに到達するためには、デザイナー自身がクラフトの外に出てレベルアップする必要がある」という考えを発展させていた。もはや、純粋に「クリエイティブ」な空間では仕事ができないこと。そして、スーツを着ている社員と同じように、デザインの知見やユーザー・エクスペリエンスを、直接的で具体的なビジネス成果に結びつける必要があることが示された。
Nationwide社のユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントのハイディ・ムンク氏も、この数年、彼女のチームはビジネスパートナーとの連携を図り、信頼を得られるようになったと語る。過去には、最適な顧客価値の観点からデザインソリューションを提示した場合、ビジネスに追加の時間とコストがかかるため、反発を受けていたが、今では、同じような「不評の意見」を、何よりもまずビジネスのためになることに焦点を当てるように言い換えることで、経営陣の賛同を得て、将来のビジネスチャンスを得ることができるようになったという。
“私たちはビジネスを支援していただけでなく、多くの場合、ノーススターの創出を支援し、次の100年に向けて競争し、成功するために、ビジネスにエクスペリエンス戦略を再考させていました。” ハイディ・ムンク |
しかし、パンデミックがすべてを変えてしまった。
多くの企業で収益が急速に減少し、コスト削減に改めて注力するようになっただけでなく、生産性の低下や健康への配慮の高まりから、業務の効率化が重要な課題となった。
デザイナーはエンジニアリングとプロダクトのハイブリッドなポジションに引っ張られることが多かったため、コラボレーションでは、1つのマトリックスだけでなく、他のチームと共有する複数のマトリックスを使ってインパクトを計算しなければならなかったという。ムンク氏によると、デザイナーにとっての課題は、ビジネスを顧客に集中させるだけでなく、業務効率も考慮した方法でそれを実施することになった。
InVisionの調査の回答者の80.4%が、会社が事業の戦略的方向性を理解することを期待していると感じていると回答し、72.7%が2020年に向けてビジネススキルを磨くことに時間を費やしていると回答している。
レポートでは「来年は、経営理念を自ら理解し、デザインがどのようにビジネス価値を生み出すのかに投資した人たちが、このビジネスのリーダーになる」と予測している。
そして、これらの企業やチームのデザイナーが、ビジネスに対する価値を明確に表現することよりも、その価値を活用することに時間をかけることで、仕事のメリットをより十分に享受できるようになることが期待されるという。
「デザインが必要だと主張するだけではありません。もしあなたの考え方を、たまたまデザインが得意なだけのビジネスリーダーにシフトさせることができれば、それこそが成功の秘訣だと思います。その言語を話すことが重要なのです。」(Squarespaceのプロダクトデザイン担当バイスプレジデントのMegan Man)
2020年は「ドミノ倒し」の年だったとレポートは振り返る。これまで常に存在していたシステム上の課題が目に見えてどこにでもあるようなものになった。そして、私たちには今すぐにでも変わる必要があることが明らかになった。
「私たちの地域、国、世界の多くの機関の格差が前面に出てきましたが、その状況を変えるためのツールの選択肢は限られていました。広範な行動が求められ、そのためにはこれまでにない支援が必要でしたが、先の道筋は不明確でした。すぐに使える「ベストプラクティス」は存在しなくて、民間部門と公共部門の間にもそれをまとめるリーダーシップを欠いていました。」
そんな中で、人々は自分たちにできることをしようと決意し、小さな個人の行動が、より大きな変化に影響を与える驚くべき力を持つことを自ら実証した。
InVisionのアンケート回答者の62.3%が、職場で多様性、公平性、インクルージョンについてチームで話し合ったことがあると答え、26.4%がそうするのは初めてだと回答したという。これはダイバーシティ、公平性、インクルージョンが単なるビジネス用語ではいことを示している。多くの国では、地域社会やその他の組織ではなく、企業が社会を組織する方法となっている。
「人々はもはや変化を暗示するのではなく、言語、マーケティング、製品、組織設計などであからさまに変化を表現しています。」
「社会を変えたいのであれば、組織のあり方を変える必要があります。組織は個人で構成されています。ですから、私たちは、人間として、自分たちの行動が、巨大な不公平の構造をどのように支えているのか、あるいは強化しているのかを、本当に考えなければなりません。」
アンケート回答者の一人は「私たちは、製品だけでなく、より広範なデザインにおいても、人種差別的で包括的でない言葉を根絶し続けるだろう」と予測しているという。そして「デザイナーは倫理規定を組織化して議論し始め、正義のデザイン(ボランティアと有給の両方)が増加するでしょう」という意見もあった。また、「デザインは、技術と倫理をめぐる会話を推進する上で、より積極的な役割を果たすようになるでしょう」ともコメントしている。
「回答者の74.4%が、2020年にはすべてを捨てて、社会的利益に焦点を当てた新しいデジタル製品を作ることを、常に、または時々、夢見ていると答えています。そして多くの人がその夢を現実のものとしてます。」
「20201年は、デザインや企業のテック業界から離れる人が増えても驚かないでくださいと」レポートは予測している。
「素晴らしい革新的な製品を提供するためには、コラボレーションが必要となる」というのは、ビジネスではよく耳する格言だが、この数年、デザインコミュニティではこれを「開発者の隣に座れ」という意味だと考えていたという。しかし、2020年に人々は、コラボレーションは、単に近くにいるいるだけではなく、また単に「もっと話をする」だけにも留まらないということを学んだ。それは「実践を通して意図的に構築されなければならない、明確なコミュニケーションの筋肉」なのだという。
「どのようにコミュニケーションを取るかを慎重に行うことが、非常に重要になってきました」とブルーノ・ベルガー氏は言う。「セレンディピティを受け入れたり、いいアクシデントが起こることを信じることはできません」と。
これまでの問題点は、非常に多くの異なる視点や「言語」が話されているため、連携を図ることがほとんど不可能になっていたことだったが、人々は効果的なコラボレーションを実現するには、各分野のニュアンスや考慮事項を効率的に翻訳し、それを相互に評価する方法を知ること、また、独自の能力を持つチームメンバーが必要であることに気づいてきているという。
「すべてのチームにゼネラリストが必要なわけではありませんが、チームの複数の分野のスキルや専門知識を翻訳し、統合するという特別な才能を持った人が少なくとも1人は必要です。企業は、このニーズを満たすために、EPDチームにデザインエンジニアのような特別なポジションを指定することもあります。ブルーノのように、今年私たちが話を聞いたプロダクトやエンジニアリングのリーダーの多くは、元デザイナーであり、その逆もまた然りです。」
このような役割の重複は、InVisionの調査の回答者の39%が職場でハイブリッドな役割を求められたことがあると答えているように、業界でも反映されているという。そしてそれは偶然だけではなく、意図的なものだという。
"チームリーダーとしての私のアプローチは、常にポートフォリオとしてのチームを構築することです。私は、十分なジェネラリストでありながら、チームの他の部分を補完するスキルを持った人材を採用するようにしています。” ブルーノ・ベルガー |
レポートでは「2020年には、多くの個人が自宅で過ごす時間が増えたことを忘れてはいけません。多くの人が昔からの趣味を再開することを選んだ一方で、他の人たちは、無料の自宅学習リソースを利用して、個人的および専門的な開発に投資しました。2021年には、一人でいる間に得られた新しい視点のいくつかが、ピクセルレベルの仕事だけでなく、自分の視点を説明するためのさまざまな方法にも注入されることがわかるでしょう。」と、ここから興味深いイノベーションが起こることが期待されている。
ブルーノ氏は最後に「芸術、文化、ビジネスの原則は、歴史の中で振り子のように揺れ動いてきました。西洋では、非常に構造化された合理主義的なやり方から、より人間的で自然なものに向かって、そしてまた戻ってきました」「たぶん、誰もが『本当に重要なことは何か』と考えるようになった今、私たちはまた別の揺れを経験することになるでしょう。」とも語っている。
2020年2月以前にリモートで仕事をしていた場合は、先進的な会社で働いていた可能性が高い。しかし、Covidが起こってからは、オフィスを自宅のセッティングに変換できるチームを持っていることが重要になってきたという。
“リモートワークのために自分の仕事を最適化するにはどうすればいいのか、ということを考えている人はほとんどいませんでした。ほとんどの人が考えていたのは、『これが終わるまで、どうやって前にやっていたことを、今は自宅やビデオでやり続けることができるのか』ということでした。” レイサ・ライヒェルト |
今までの対面での経験を「育児、社会的、健康面を考慮した在宅勤務を余儀なくされている前例のない状況」に転換するのは難しいことだった。しかし、十分な時間をかけてリモートで仕事をする人が出てくることで問題は一変した。
「コラボレーションやブレインストーミングのように、デジタル体験には翻訳できないと思っていたある種のタスクが、実際には私たちが抱え込んでいる構造的な非効率性にすぎないことが明らかになりました。」
InVisionの取材に対して、Automattic社のプロダクトデザインディレクターであり、デザイン、心理学、ビジネス、テクノロジーのハイブリッドなバックグラウンドを持つスタートアップのアドバイザーでもあるエリン“フォレット”カザリ氏は、「コラボレーション、ディスカッション、フィードバックはすべて会社によって異なる方法で行われています」と語る。
「毎週のレビューミーティングから、クリエイティブディレクターがデザイナーを監視してフィードバックを提供するところまで、これらはチームが自分たちのアプローチを共有するための方法ですが、それはリモート環境で求められるほどには明確である必要はありません。」
2020年3月以前のビジネスでは効率的で効果的だったかもしれないものが、さまざまな制約のために、今では非効率的なものとみなされている。
アンケート回答者の多くが、今年は、職場で心身の健康、人種的・経済的正義、育児、倫理、政治までもが直接取り上げられた、初めての年であった答えているという。
「リモートへの移行によって、今まで仕事と自分を切り離していたオフタイムの生活が、目に見えるようになっただけでなく、初めて2つの自分が融合しました。仕事と家庭が一つの場所になり、私たちの全体像が表現されたのです。」
「効率性・有効性の新たな定義を生み出すことが、今、唯一の進むべき道であることが明らかになりました。それは、専門家と個人の間のギャップを埋める、より広く、より全体的なアプローチを含むものです。」
InVisionの調査では、調査回答者の59.8%が、2020年に何らかの形でアクセシビリティに対応したと回答していて、多くの回答者は、アクセシビリティが、れっきとしたビジネスのアドバンテージとして議論されたのは初めてだったという意見を述べている。
「今年は、企業が、組織構造の面でも、製品の面でも、すべてにワンサイズで対応するようなアプローチを続けることはできないと認識していることが見えてきました。エッジケースを想定して設計・構築した企業が、パンデミックの初期段階で勝者であったことは、すでに明らかです。」
「来年には、この新しい考え方に基づいて、包括性とアクセシビリティにも新しい考え方が生まれてくると予測しています。言い換えれば、「どちらか一方だけの製品」ではなく、「はい、そして(yes, and.)」という新しい局面に突入するのです。
勝者は、無限の機会と組み合わせをデザインする人たちになるだろうと、レポートは予想している。
2020年以前、デジタルトランスフォーメーションは「ビジネスを成長させたいと考えている企業にとっては、まだオプションとして認識されていた」という。
しかし、Covidが起こったことで「オプションとしてのデジタル」は終わった。
「生き残るためには、誰もがデジタルファーストの企業のように考える必要がありました。驚くべきことに、多くの企業が、これまで考えられなかったような、プロセスやビジネスモデルを一夜にして劇的に変化させることができました。」
InVisionの調査の回答者の51.9%が、Covid以降、企業戦略がピボットしたと回答している。
「従来の店舗販売の店は、基本的にはウェブサイトをマーケティングツールとして利用していただけだったのが、ビジネス全体をオンラインで展開しなければならなくなったのは、驚くべき変化だった」と、Squarespace のプロダクトデザイン担当副社長のメーガン・マン氏は語っている。
「より伝統的な、デジタル・ファーストではないビジネス・モデルでは、エグゼクティブ・リーダーシップが自らデジタル・ワークをしなければならないのを目にしました。IBMの調査によれば、変革を加速させるために必要な、特別なスキル、構造的な課題、組織的なサポートについて、C-Suiteのエグゼクティブの大部分がようやく直接、理解してきています。」
デジタルファーストの企業は、通常の機能を少し変えただけで、早い段階でいくつかの勝利を手にしたが、2021年には、この「通常のビジネスのようなメンタリティ」が長く続くとは考えてはいけないとレポートは指摘している。そして今後ついては以下のような予測を立てている。
「従来型の大企業が対面ビジネス部門からリソースを切り離し、デジタル部門に再投資することで、これまで以上に公平な競争環境が整うと予想されています。」
「社内の障害物がなくなり、消費者の関心が新たに高まったことで、企業の中で最も革新的な製品チームが、(今回は)より大規模に、自社を再破壊しながら、ようやく会社を前進させることができるようになります。」
「スタートアップの競合他社とは異なり、彼らはより多様な収益源をもたらし、差し迫った変化に対しても回復力を維持することができるでしょう。」
"人々がデジタルで生活し、仕事をしているという事実に基づいて、もう少し平準化が進むでしょうが、自分たちを「ユーザーが生活をより良くするために活用できる何かを構築する製品企業」と考える企業と、裏では異なる動機を持っている企業の間には、まだかなり大きな違いがあると思います。” メーガン・マン |
「2020年以前は、『フォーカス』とは、より多くのことを成し遂げるために個人が達成したフローの状態でした。投入したものは、投入したものから得られるという考え方であり、優れた製品を生み出すには、時には夜間や週末の作業になったり、何度も何度も繰り返しの作業が必要になることもありました。」
「市場では、製品を迅速に頻繁に出荷すること、そして顧客がいつでも複数の選択肢を持っているという自覚が求められました。」
しかし、その「フォーカス」は、自宅でのリモートワークで時間が取られるようになると今や限られた資源になってきているという。多くの企業では、今や最適化されたアウトプットが不可能になっているという事実に対処しているが、そうであるべきはないとレポートは指摘する。
「多くの個人が今もなお、パンデミックが始まってから40%増加した平日を押し通していますが、一部の企業では、机に向かう時間を減らして生産性を維持したり、改善することができているのがわかりました。」
ニューノーマルに適応した後、多くの経営者は、これまでのアウトプットへのフォーカスが結果と同じくらい重要かどうかを疑問を抱いているという。
「仕事は常にある」と チームに伝えています。仕事がなくなることはありません。このプロジェクトが終われば、次はもっとある。時間が必要ならば、取ればいい。” カイル・ルブラン |
オフィスがなくても仕事ができることがわかったことで、組織は予算を端から端まで見直すようになり、多くの組織では現在、スナック菓子や通勤手当を育児補助金やメンタルヘルス手当の増加に置き換えているという。
不況のために予算が削減されている企業もあるが、社員は今では自分たちの経費を見て「ビジネスのために実績のあるROIを表示できるもの」を評価するようになってきているという。
そして今、考えなければならないのは社員だけではない。
“一度、一定期間ディスラプションモードに陥った消費者がいると、本当に本当に長い間、彼らの心に残るものがあります。2020年2月に顧客にとって本当に重要だったことが、もう二度と重要ではないかもしれないということを理解してもらうにはどうしたらいいのでしょうか?” ハイディ・ムンク |
はたして明るい未来は今から始まるだろうか?
「今、私が頭を悩ませているのは、世界が進み、パンデミックが記憶に残るようになっていく中で、これまで学んできたことや経験してきたことをどうやって維持し、このプロセスの結果として明らかになった機会をどう活用していくかということです。元の状態に戻ることには大きなリスクがあります。すべてを学んだ後に忘れてしまうというのは、人間のすることです」( Leisa Reichart アトラシアンのリサーチ&インサイト)
レポートの最後のまとめとして、デジタルプロダクトのコミュニティーは「この道を進んで行く」という意志が表明されている。
「デジタルプロダクトは、この未曾有の時代に世界を結びつけてきました。しかし、一方でデジタル製品はまた、深い不公平感を露呈し、誤った情報や混乱の機会を悪用してきました。私たちの業界には、平等と多様性、健康とウェルビーイング、家族と地域の関係性などについて得た前例のない洞察に焦点を当てて、より良いものにしていく機会があります。プロダクトデザインのコミュニティとして、私たちはより多くのことを行う責任があります。」
2021年はデザインにとって新たなスタートの年になるのは間違いない。そしてデジタルプロダクトデザインでは、もうすでにその準備はできているようだ。
(DMN編集部)
参考URL
●InVision
●7 trends designers should know for 2021
https://www.invisionapp.com/inside-design/design-trends-2021/
●New Design Frontier
https://www.invisionapp.com/design-better/design-maturity-model/
(DMN編集部)
InVisionがデザインチームのリモートワークをテーマに、コラボレーションの文化、リモートでのデザインレビューおよびスプリントのプロセス、 リモートチームのリーダーシップスキルと管理スキルを育成する方法が紹介されています。本冊子では、アイデア出しから実装まで、創造的な プロセスをリモート環境に適応させる方法を説明しています。また、同じ建物内にいないチームに常にやる気を持って関与させるための、デザインリーダー向けの実践的なアドバイスも記載されています。今回、InVisionの許可を得て、mctが日本語版を作成し、みなさまにお届けできることになりました。冊子をクリックしフォームにご入力頂けますと、どなたでもダウンロード頂けます。ダウンロードはこちらから。
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