デザインによる組織の革新
デザインツールを導入して戦略的優位性を引き出すための3つの鍵
ステファニー・ジョイア Stephanie Gioia
フューチャーワークデザイン/ストラテジックプランニング、組織革新ストラテジスト
組織的な課題と人間中心のデザインが交差するところでの研究と実践をしている。
フューチャーワーク・デザイン(Future Work Design)は、組織戦略およびデザインの会社。仕事に対して、成果と同じくらい働き方を重視する冒険的なリーダーたちと共に、常によりよい方法や、自分たちの存在価値を模索し続けている。
今回は、デザインを使って組織を革新するためにはどのようなことが重要になるのか、フューチャーワーク・デザインで組織改革のストラテジスト、ステファニー・ジョイア氏によるMediumdの記事をご紹介いたします。
私が人間中心設計(HCD)の仕事を始めた頃は、消費者が本当に欲しい、より良い製品やサービスをデザインするというような話がほとんどでした。 でも私は、組織の経験を変えるためのHCDの力にいつも興味を持っていました。どうすれば、私たちは人々が本当に働きたいと思う職場や組織を作ることができるだろうか。
しかし、組織デザインの分野に目を向けてみると、私はそこに好奇心や創造性、人間性、つまり「DESIGN」が欠けていることに失望させられました。私が知っているほとんどの組織戦略の人たちは、デザインよりも「経営科学」や「リーダーシップ」の分野に関係するものです。
実際に、組織デザインの歴史的なルーツは、デザインの実践というよりは、エンジニアリングの実践に近いものです。私の師であるティム・ブラウンは、「エンジニアリングは、目標が機能的である場合に適したツールであり、デザインは、目標が機能的なものと感情的なものが混在している場合に適している」と語っています。あらゆるシステムの中で最も人間的なものである組織のデザインが、建築、プロダクトデザイン、エクスペリエンスデザイン、都市計画などの他のデザイン分野に比べて、人間性や共感に基づいていないのはなぜなのでしょうか。
今、組織の課題を解決するデザイナーの数は増えていますが、私は、組織戦略という広範な分野が、自分たちの仕事をデザインと捉え、自分たちをデザイナーと見なし、デザインのツールやアプローチを採用するようになっていくことを願っています。
そこには3つの出発点があります。
「組織デザイン」とは、組織の仕事を構成するために行われる意識的、無意識的な選択のすべてを意味します。このダイアグラムでは、地球上のすべての組織が、意図的か否かにかかわらず行っている、さまざまなデザイン選択の例を表現しています。
組織デザインの課題を解決する際には、IDEO時代に学んだ標準的なHCDの原則をアレンジして、企業が内部で使っている構造や基準を考え直すことができます。
IDEOの定評あるベン図を参考にした組織イノベーションのためのHCD
出典:フューチャーワークデザイン
このダイアグラムの重なりの中心には、多彩で、未開拓な組織イノベーションの世界がありますが、これを掘り起こすことに投資している企業はほとんどありません。次の大きな競争力を求めて製品の研究開発に何百万ドルも投じようとする企業が、なぜか組織のイノベーションの中にあるROIには目を向けないのです。なぜ私たちは、組織の機能性を「ベスト・プラクティス」で終わらせてしまうのでしょうか。
アメリカでは、組織の「プリセット」という、比較的疑われない遺産が受け継がれています。15年間の組織戦略の仕事の中で、私は、リーダー達が「ベストプラクティス」に参加できたときに感じる、感情面での安堵感を何度も目にしてきました。それは、現在のモデルを支える「証明された」働き方の安全性を与えるものです。これには2つの問題があります。
一つ目の問題は、ベストプラクティスは、組織とその目的や状況との戦略的な適合性を高める可能性を無視していることです。多くの組織は、「ベスト・プラクティス」の考え方に反して、戦略的な優位性を組織のイノベーションに根付かせています。
二つ目の問題は、ベスト・プラクティスは、主流に合わせて作られたものであり、周辺にいる人々には通用しないことが多いことです。自明のこととして、ベストプラクティスがトップに上り詰めたのは、ほとんどの組織のほとんどの従業員にとって有効だからです。多くの組織がエクイティ&インクルージョン(Equity & Inclusion)を優先していますが、法律上の構造から報酬、レポートラインに至るまで、私たちが遠回しに組織の「ベストプラクティス」と呼んでいるものは、主に20世紀に、健常者で神経質な白人男性の労働力を中心にして培われたものであることを認識することが重要です。もしそれらが多様な労働力を念頭に置いて設計されていないのであれば、現代の労働力には役に立たないと考えるのが妥当でしょう。私たちはもっとうまくやれるはずです。
人間中心設計の標準的な原則とアプローチは、組織デザインにも簡単に適用できます。しかし、複雑なシステムの場合は、組織デザイナーには、より幅広いスキルセットが必要になります。工業デザイナーがプラスチックの特性を理解する必要があるように、私たちはインクルーシブデザインを理解する必要があります。デジタルサービスのデザイナーが多くの種類のデバイスの使用状況を観察する必要があるのと同様に、私たちには組織のプロトタイプをデザインし、測定する能力が必要です。私たちがこの仕事で最も活用しているのはこの5つの分野です。
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組織デザインはもっとうまくやらなければなりません。私たちは、「ベスト・プラクティス」よりも「目的適合性」を、「同質性」よりも「イノベーション」を、「エンジニアリング」よりも「デザイン」を優先させることがことがわかっているツールを、採用し、統合しなければなりません。私たちは、人の潜在能力を最大限に引き出すヒューマンシステムを構築するために存在しています。私たちはデザイナーなのですから。
フューチャーワーク・デザインでは、私たちは以上のような活動を行っています。
この記事は、2020年9月に公開されました。英文はMediumで閲覧できます。
●Organizational Innovation Through Design
https://medium.com/future-work-design/organizational-innovation-through-design-605a73f7aab8
(DMN編集部)
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