DMN Report 026:デザインオプスか、UX戦略か、デザインマネジメントか、デザインリーダーシップか?
ユーリー・ヴェトロフ Yury Vetrov
ロシアのライファイゼンバンク(元メイルルー)のブランド&デザイン・ディレクター。
UXmattersやSmashing Magへの寄稿の他、カンファレンスの企画、Future London Academyのコースの企画をしている。
今、「DesignOps(デザインオプス)」は、デジタル製品のデザインマネジメントを表す他の言葉を凌駕しそうな勢いで広がっています。私たちはこの言葉をこの数年でますます目にするようになりました。今では、InVisionによる「DesignOpsハンドブック」のリリースにより、ハイプサイクルの波に乗っています。しかし、このコンセプト自体は新しいものではなく、この5年間に「UX戦略」「デザインマネジメント」「デザインリーダーシップ」という言葉でビジネスで使われていたものを再パッケージ化したものなのです。
「おっと、またやってしまった!(Ops, I dit it again !)」。デザイナー達は転がる石のようにトレンドからトレンドへと移っていきます。彼らは光り輝くものが大好きです。DevOpsの考え方は、すでにデザインシステム(Design Systems Ops)やUXリサーチ(ResearchOps)に適用されています。ジャレッド・スプールは「x "ops "は新しい "x "thinkingである」と言っています。
この用語は業界に浸透してきたばかりなのですが、多くのデザイナーはこの用語を違った風に捉えています。おそらく、「デザインオプス」をデザインシステムのチームとしてだけ捉えている人もいれば、すべての仕事の方法や実践を含んだものと考えている人もいるでしょう。しかしながら、これ以外の用語にも問題があります。「UX戦略」は、製品のリ・デザインのためのビジョンや計画だけでなく、製品組織自体の複雑な変更としても考えられています。一方で「デザインマネジメント」や「デザインリーダーシップ」は、一般的すぎると思われがちです。
これは、用語の意味をめぐる些細な論争のように思えるかもしれませんが(私たちは、天気予報のチャットボットを作ることに時間を費やしたほうがいいかもしれません)、これが実際のハイテク業界の仕組みであり、そこにはコンサルティングの売上を支える新しいバズワードが常に存在するのです。しかし、すべての新しい用語が悪いというわけではありません。「TechRadar」自身も2017年の末にDesignOpsという用語について言及していることが、それが広く受け入れられていることを示しています。
DesignOpsはほとんどの場合、すでに知られているアイデアを新しい傘の下に包み込んでいるにもかかわらず、この新しい用語は、デザインのプロセス、ツール、メソッド、およびプラクティスをスケーリングして増幅することに、適切な焦点を当てています。多くの著者は、それが企業全体のデザインインフラを強化するワークグループであり、あらゆるデザイナーが恩恵を受けることができると考えています。それが、この用語が他の用語と異なる点です。最近のSpotifyのような組織モデルでは、デザインチームは独立したチームであり、他のチームと協力してベストプラクティスを大規模に実施しています。
私は、流行の最先端を行くために新しいバズワードに飛びつくことは好きではありませんが、スケーリングに焦点を当てているところは気に入っています。また、DesignOpsがDevOpsとよく似たコンセプトであることも魅力的です。私たちが行っていることをマネージャーや開発者に説明するには、よりシンプルであるべきでしょう。私は、「UX戦略の応用」について詳細な連載記事を書きました。月間1億5,000万人のユーザーを抱える製品会社のデザイン部門を改革した私の経験をもとに、デザインのスケーリングに関する同じアイデアを取り上げています。ここでは、DesignOpsという用語も使うことになりそうですが、考え方は同じです。
「DesignOpsハンドブック」はこのトレンドを強調しています。著者のデイブ・マロフ(Digital Ocean)、コリン・ホワイトヘッド(Dropbox)、メレディス・ブラック(Pinterest)、ケイト・バトルス(Fitbit)は、組織モデル、チームコーディネーション、リサーチオプスについて説明しています。しかし、これらのトピックはすべて、近年、別の名前ですでに取り上げられていました。
デイブ・マロフは、DesignOpsの主要なエバンジェリストの一人です。彼がそれについて書き始めたのは、2017年の初めのことです。デイブはローゼンフェルド・メディアによる「Enterprise UX」カンファレンスの開催に協力しており、2017年末には同名のイベント「DesignOps Summit」の発起人の一人となりました(ナタリー・ハンソンが素晴らしいレポートを書いています)。彼は後に「Amplify Design」というブログを立ち上げ、このアイデアについて書いています(プレゼンテーションやいくつかの概要記事も発表しています)。
エアビーアンドビーもこの用語を最初に使った企業のひとつです。 アトラシアンもこの用語を使っていましたが、デザインシステムチームに対してだけ使っていました。すでにコレクションサイトができていますが、あまり頻繁には更新されていません。「UXmatters」や他のデザイン雑誌にも記事がありました。
アテナヘルスのデザインチームは、このトピックに関する最高のブログの一つを持っています。最新の記事をいくつかご紹介しましょう。
XPLANEのデーブ・クレーは、DesignOpsのために彼の特徴的なキャンバステンプレートを用いました。
これも並行して開発されている用語です。 デリバルー社のサスキア・リーベンベルグは、このようなイニシアチブを形成することについて書いています。これは、組み込み型のUXリサーチャーを支援することができるワークグループです。しかし、ほとんどのUXリサーチラボはすでに、すべての製品にサービスを提供する社内エージェンシーとして機能しています。 シャーロット・クランシーは、そのようなチームでの役割について説明しています。最近では、シアトルでパネルディスカッションが行われました。
多くの企業は、このニュースピークの時代にデザインシステムチームをどのように呼んだらいいか判断できませんでした。では「Design Systems Ops」という別の用語はどうでしょうか? BBCのカエリグ・ドルーモー=プリジェントは2016年にその用語を最初に使った一人で、その後にも出ています。DesignOpsの考え方をデザインシステムだけに限定する人もいます。
デジタル製品のデザインマネジメントに関する主要なカンファレンスは、ミートアップやオンラインイベントを除いて、すでに5つあります。
サンフランシスコ、2018年3月
アムステルダム、2018年6月、プロビデンス(ロードアイランド)、2018年9月
ロンドン、2018年10月
ニューヨーク、2018年11月
サンフランシスコ、2018年6月
確かに、ほぼ同じことについて言っているこれらの新しい用語の数々に、少なからず混乱してしまいますが、私たちは新しい用語が形成されるたびに、この未知の領域を目にします(それは別のニュースピークが出て来て初めて終わるでしょう)。とはいえ、あなたは自分でこの職業を選んだのですから、少々の代償は仕方ありません (^^)
この記事は、2018年8月に公開されました。英文はMediumで閲覧できます。
●DesignOps or UX Strategy or Design Management or Design Leadership?
https://uxdesign.cc/designops-or-ux-strategy-or-design-management-or-design-leadership-b579c1070f18
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