今日、世界中の革新的なチームが、想像力を働かせて問題をよりよく理解し、解決している。彼らは新しい可能性を探るために、場所を問わず視覚的にコラボレートしている。そして、共有されたビジョンを現実のものにするために協力しているのだ。
この基調講演では、MURALのCEOであり共同創業者であるマリアノ・スアレス・バタン(Mariano Suarez-Battan)氏が、革新的な企業や優れた起業家が、チームで変化を実現するために想像力を働かせている方法を紹介した。
マリアノ・スアレス-バタン氏
「チームが想像力を働かせることで、これから何が可能になるのでしょうか?
チームが一緒に自由に想像力を働かせると、問題を理解し、革新的な解決策に向けて取り組む機会が生まれます。」
マリアノ・スアレス氏はこの基調講演の中で、以下の4つのテーマごとに、イマジネーションワーカーにとっての課題と機会について話した。イマジネーションの空間におけるパイオニアとして、学び、成長し、リードしていくために、コミュニティの成長と革新を促進するためのリソースも提供した。
MURALが重視する4つのベクトル |
「あなたが何者であろうと、私たちは世界中のイマジネーションワーカーをパワーアップさせるという大きなミッションを持っています。」マリアノ・スアレス氏は、イマジネーションにフォーカスした、このMURALのミッションについて話をした。
「頭のいい人なら誰でも想像力を働かせている。私たちは、誰もが大きな想像力を持っていると信じていますが、それを忘れてしまっているだけなのです。」
「ビジュアルメソッドは、現代のワーカーとして全員が持つべき重要な共通の視覚言語であると信じています。コラボレーションは部屋の中だけでなく、どこでもできるものでなければなりません。そしてもちろんファシリテーションは、私たちをレベルアップさせるための方法として、コラボレーションの重要な要素です。」
「私たちはミッションの一環として、ソフトウェアを提供することでコミュニティを作ろうとしています。そのコミュニティに優秀な頭脳を集めて、現代の仕事の世界で起こっている変化を共有しようとしています。」
マリアノ・スアレス氏は、今回のパンデミックでは、イマジネーションワーカーのニーズに合わせて、仕事をより良く適応させるためにはどうすればいいのかを再考することがとても多くなっているという。特に、イマジネーションやビジュアルシンキングやコラボレーションを世界に普及させるために、マーケットがどのような機会と課題を持っているかに注目している。
「まだ多くの課題はありますが、すでに多くのイマジネーションワーカーがいて、彼らが実際に課題を乗り越えている状況が生まれてきています。」
マリアノ・スアレス氏は10年前、最初にMURALを始めたときはゲームデザイナーだった。2010年には2000万人がプレーするサッカーゲームを作って成功していたが、その次のゲームを作る必要に迫られていたところだった。その頃に考えていたのは感情に関するゲームのアイデア。そのゲームは世界中の人々のツイートや感情に応じて変化するようなものだった。いつかこの作品を作りたいと思っていたが、それはゲーム以外ところで実現することになる。
彼はアイデアを考え、説明するために、まず頭の中にあるアイデアや物事をパワーポイント資料に入れて、それからキャラクターや環境、メカニックやストーリーなどを加えていって、それを見ながらいろいろなことを考えていくのに役立てていた。
しかしそのやり方にはいくつか問題があった。彼はシリコンバレー中を飛びまわっていたために常にデジタルメディアが必要だったり、チームメンバーと共同作業をする必要があったり、チーム編成でも課題があった。メンバーにスライド資料を共有するたびに、メンバーは最初混乱して、内容の理解や、共創の可能性も感じてくれなかったらしい。
その頃はまだ、キーノートや、パワーポイントで作った資料はそれが最終版で、手を加えるものではないと考えられていて、今のデジタルメディアのように、いろいろ変更を加えたり、書き込みをしたりしながら、違った視点を作っていくツールだという考えがなかったという。
そこで彼らがMURALを始めた理由の核心にたどり着く。
それは、想像力のためのスペースが必要だということだった。
「空間はもちろん物理的なものでも仮想的なものでもありますが、空間は時間でもあり、空間は瞬間でもあります。」
「特にこのリモートワークの文脈では、それぞれが考えたり、サービスを提供したり、アイデアをダウンロードしたりするためのスペースを残しておくことは、私たちの仕事の重要な部分だと思います。そうしないと、最適化しているだけになってしまうからです。そうでなければ、私たちは最適化しているだけで、可能性を見いだせていないのです。」
「イマジネーション・ワーカーは、最初は他の人と違う方法で世界を見ている人たちですが、最終的にはチームを組織して、自分たちのユニークな考えを実現するために、周囲の人達を巻き込んで規律あるチームを動かします。」
マリアノ・スアレス氏は、ここ10年、5年の間に 視覚的なメモの取り方を中心に多くの動きがあったという。当初は単純な視覚的なメモのようなモノだったが、そこにプロセスやメソッドが加わっていって、ビジュアルシンキング、ビジュアルコラボレーションが生まれてきた。そして、何でも視覚的に説明できるようになり、視覚的に理解できるようになったことで、プロセスやカルチャーも変化する。
MURALの初期バージョンでは、仲間同士で何か新しいことをコラボレーションできるような、とてもゆるやかなオープンスペースという感じだったらしい。そこから、直感的に使えるさまざまな機能が充実してきて、アイデアをとても混沌とした状態から、徐々に形を整えていくことができるツールになっていった。
IDEOやスチールケースと仕事をする中で、マリアノ・スアレス氏はそこにはすでに多くのメソッドがあることを学んだ。ダブル・ダイヤモンドや、共感マップ、カスタマージャーニーマップ、ツーバイツーの異なるフォーマットなど、いろいろなメソッドを持っていた。それらのすべては、今日デザイン思考と呼ばれるもので構成されていたが、デザインスプリントではさらにプロセスが加えられていたという。
IDEOやスチールケースで使われていたメソッドは、単にイマジネーションワークを誘発するだけでなく、イマジネーションワークをさらにいいものにしていたという。なぜならば、
「コミュニケーションやコラボレーションやクリエイティブの方法が、総合的なチームで行われていることが大切です。iPhoneの大きなイノベーションのように、世界にもたらされる多くのイノベーションのようなものでなくても、特定のプロセスを改善するには 一般的に誰か他の人を必要とします。そして私は、これらのメソッドが私たちの言語で標準になるだろうと信じています。」
「これらのメソッドは、私たちが使う視覚的な言語になりつつあります。バーチャルでもリアルでも、多くの人が会議でそれを目にするようになっているので、それを見ればすぐに 『ああ、これはカスタマージャーニーマップだ』『ああ、これはエンパシーマップだ』『これはUXツールだ』と理解できるようになってきました。5~10年前には1時間以上説明しなければならなかったことも、今は何度も説明する必要はありません。」
「これらのメソッドはどんどん広がって、多くの人が使うようになりましたが、まだ直感的に使えるようにはなっていません。そんなときには、プロジェクトでのスター的存在である、ファシリテーターやデザイナー達がこうしたメソッドを使いこなし、あなたに異なる視点を与えることになるでしょう。」
MURAL Imagineに登壇しているジーン・リカ氏は、デザイン思考は、チームとしての働き方を変えることを可能にするソーシャルテクノロジーである主張している。そして、セッションでは、デザイン思考は、何年も前に広まった総品質管理と同じように、人々がビジネスを革新していくためにエンパワーメントを与える存在になると述べている。
「イノベーションを推進するのに、会社の誰かに許可を求めたり、イノベーションセンターに頼みに行ったりする必要はありません。 多くの人がデザイン思考をもっと身近につかって仕事が仕事ができるようになれば、もっといいイノベーションができるようになります。」
「私は自分たちのグループや会社のチームでいろいろな検討することを推奨します。自分が本当に信じているメソッドを定義して それを何度も何度も何度も何度も使っていく。それがチームとして良くなる唯一の方法だからです。」
自身の研究から、デザイン思考で最も重要なのは人とチームであり、デザイナーについては、デザイナー以外の人をデザイナーの代わりにすることはできないという話もしている。
「なぜなら、デザイナーは非常に重要であり、それは彼らのクラフトがユニークだからです。」
What do we mean when we say that design thinking is a social technology?
デザイン思考が社会的な技術であるとはどういうことなのでしょうか。
想像力のためのメソッドは、パンデミック以前にも広く普及していて、創造的な仕事を可能にしていが、その頃はまだ、人々は長い期間を、美しいオフィス、偉大なプロジェクトルームで一緒にいるという贅沢な時間を過ごせていた。半年前までは、すべてはリアルで行われていて、フライトでの移動や、何日もホテルに滞在して、プロジェクトルームに集まって、会議はエキサイティングに盛り上がることができた。
しかし、それは数ヶ月に一度あるだけなので、アジャイルにはできない上に、とてもコストがかかる問題もあった。
この5、6ヶ月の間、世界的なパンデミックが発生してから、今、私たちはステイホームや、仕事も家ですることを余儀なくされている。
「今では皆リモートワークを受け入れているが、誰もが進んでリモートワークをしているわけではありません。画面を介してのコミュニケーションでは、人との関わりが難しいところもあり、それがストレスにもなります。」
「私たちは、人間という“生き物”であり、実際に人と人との社会的な交流が必要です。人と人が自由に会えないこの状況を、なんとか切り抜けていかなければなりません。」
今はさまざまな困難に直面している状況ではあるが、しかしトータルで見るとそこにはメリットがあるとマリアノ・スアレス氏は考える。
後編に続く…
(DMN編集部)
関連リンク:
MURAL Imagine
https://www.mural.co/imagine
MURAL Imagine Playlists
https://www.mural.co/imagine/talks?tab=playlist1#playlist1-tab-section
Facilitation Superpowers
https://www.mural.co/superpowers
Playmakers
https://www.mural.co/playmakers
MURAL Backstage Pass
https://mural.zoom.us/webinar/register/WN_qp2StlGyTyOCWOqnPPL84Q
The 7 Tools That Every Remote Team Needs
https://www.forbes.com/sites/laurelfarrer/2020/06/26/the-7-tools-that-every-remote-team-needs/#6e48808e31cb
MURAL Templates
https://www.mural.co/templates
LUMA Anywhere
https://shop.luma-institute.com/
MURALとは
ビジュアルコラボレーションに特化したソフトウェアのスタートアップであるMURALは、今年の1月にそれまで集めた資金の10倍となる2300万ドルのシリーズAラウンドの資金調達を完了したと発表し、市場の注目を集めた。
本社はブエノスアイレスとサンフランシスコにあり、カリフォルニア、コロラド、シアトル、オレゴン、ニューヨーク、マイアミ、スペイン、ドイツ、イギリス、オーストラリア、オランダなどグローバルに拠点を持つ。
MURALはリモートワークフレンドリーなサービスとも言えるツール。ワークプレイスコラボレーションソフトウェアでもあり、シンプルでデザイン性の高いUIが特徴。実際の共同作業においては重要になる「ファシリテーション」を重視していて、そのあたりが同じくリモートコラボレーションツールとして利用者も多い「Miro」と異なるコンセプトを持っている。「Mural」は英語で「壁画」という意味。
MURALが開催しているイマジネーションワークとリモートコラボレーションの未来を探る複数週間のイベント。
このイベントは、12週連続で開催され、ジョン・マエダ氏を始め、44人のエキスパートスピーカーが参加し、34のトークセッション、16のインタラクティブワークショップが行われます。
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