DMN Design Management Report #067
Why every designer should be a systems thinker
Helge Tennø Customer led transformation
Why every designer should be a systems thinker
オリジナルイラストby Jackie Nam on Freepik.com
1. システムとは何か?
システムとは、相互に関連する要素の集まりで、共有された結果に向かって組織化されたものです。
例えば、食器、調理器具、食品を含む朝食のテーブルはシステムではありません。一方が他方に影響を与えることはありません。牛乳はフォークに影響を与えませんし、Marmiteの瓶を食卓から取り除いても、あなたはまだ朝食をとることができます。(うまくいけば)
反対に、自動車はシステムです。エンジンがなければ車は動かないし、エンジンはそれ自体で動くこともありません。(1)
もし、グラス1杯の牛乳を2つに分けると、グラス2杯の牛乳になります。グラス1杯の牛乳はシステムではありません。牛を2つに割ると、死んだ牛になります。そう、牛はシステムなのです。(この実験で傷つけられた牛はいません。)
Dr. Russell Ackoff on Systems Thinking - Pt 2(Youtube)
私の経験では、お客様の問題は、システムの問題である場合がほとんどです。人は、個人の感情、経験、知識から、会社のガイドライン、ITシステム、同僚、友人、家族、文化など、さまざまな影響を受けて、理由を考え、行動します。
...お客様の問題のほとんどは、システムの問題です。
お客様に最も大きな影響を与えるものは何か、それらがある状況下でどのように相互作用し、関連しているかを理解することは、お客様が属しているシステムを理解することで可能になります。
2. システム思考とは?
『システム思考とは、部分ではなく全体を見るための、静的なスナップショットではなく変化のパターンを見るための、そして生命システムにそのユニークな特徴を与えている微妙な相互関連性を理解するための学問である』
- Peter Senge (2)
システム思考とは、簡単に言えば、システムとシステムダイナミクスの観点から考えることです。(3) 多くの異なる力が、どのように、同時あるいはどのような順序で互いに影響し合い、どのように関連し、共に行動し、結果を生み出すかを、インサイトの収集、センスメイキング、モデル化を通して理解することができます。
Introduction to System Dynamics: Overview(Youtube)
3. 分析的思考と比較して、システム思考とは何か?
分析的思考は、ものがどのように機能するかを理解するのに役立ち、システム思考は、ものがなぜ機能するかを理解するのに役立ちます。
分析的思考は何かを分解し、システム思考は何かがその一部であることに焦点を当てます。
分析的思考は、別々にとらえた部分の性質や振る舞いを特定し、システム思考は、より大きな全体の振る舞いを理解します。(4)
Dr. Russell Ackoff on Systems Thinking - Pt 1(Youtube)
自動車のエンジンの設計を理解しようとする場合を想像してください。分析的思考では、エンジンを分解し、構成部品を個別に理解し、それを組み立て、部品の総和として全体を理解することになります。
システム思考では、そもそもなぜそのエンジンがそのような形になっているのか、と考えるでしょう。そして、燃料の熱力学、ファミリーカーかレーシングカーか、地方自治体の規制など、さまざまな影響を見出すことができます。
さらに詳しく読む:分析的思考とシステム思考の違い(Youtube)
4. 全体を見る
世界を理解するためのモデルを選ぶとき(5)、私たちが理解しようとしていることの一部しか含まないトップオブマインド(第一想起)モデルに自動操縦されがちです。
一般的なモデルの多くは、1つのデータセットやインサイトを用いて、1つの視点のみから物語を記述した単純なモデルです。モデルというのは、何かを理解しようとするときに、しばしばバイアスの最初のソースとなることがあります。(すべてのモデルはバイアスがかかっています)モデルには注意が必要です!
例えば、ペルソナやカスタマージャーニーは、描こうとする環境の一部だけを描写した一次元のモデルです。このようなモデルは、世界を単純で、しばしば直線的で、原因と結果の間に直接的な関係があるものとして提示します。
また、私の経験では、このようなモデルは、部門横断的なチームが知識を共有し、外部化するのに適していません。なぜなら、このモデルは、全員が同じ視点から状況を見ることを求めているからです。
システムを部分的にモデル化すると、重要なインサイトや関係が隠されてしまうことがあります。物事がどのようにつながり、互いに影響し合っているかを理解していなければ、解決策によって一つの問題は解決するかもしれませんが、その変化がシステム全体に波及するにつれて、新たな問題が浮かび上がってくるのです。システムに共通するこういった振る舞いは、次のような名言でよく指摘されます。
『問題を解決するたびに、新たな問題が発生する』 ー Kevin Slavin (6)
『システムには副作用はなく、効果しかない』ー James Paine(MIT)(7)
さらに詳しく読む: 複雑なシステムを理解する
モデルの使いすぎには、裏の一面があります。SWOT、ジャーニー、ペルソナ、アクターマップ、共感マップ、顧客価値キャンバス、ビジネスモデルキャンバスなど、さまざまなモデルを多用し、すべてをマッピングしようとすることです。モデルが多すぎると、各モデルがコミュニケーションをとれなかったり、互いに情報を共有できなかったり、チームが優先順位付けの役に立たなかったりするリスクが高まります。モデルは多ければ多いほど良いというわけではありません。モデルが少なければ、インサイト収集とセンスメイキングを集中的に強化することができます。
イラストby Asyam Design on freepik.com
すべてのモデルを常に使用することよりも、適切なタイミングで適切なモデルを使用することが重要です。
5. 異なる思考法
『問題を作ったのと同じ考え方では、問題を解決できない』
-A.Einstein
システムに影響を与えるものは、単純な原因と結果の関係に影響を与えるものとは異なります。
システムに影響を与えるというのは、ワクチンを投与するようなものだと考えてみてください。注射を打っても、身体の中に入って病気を取り除いてくれるわけではありません。注射をすることで、免疫システムが将来のバクテリアやウイルスを探し、検出し、拒絶するよう訓練するのです。ワクチンは、システム(身体)に内在する特性や力学を利用して機能させるからです。
システムで考える場合、影響を与えたいシステムのダイナミクスを考慮に入れなければなりません。このことは、原因と結果を直接繋げようとする従来の考え方と比べると、改善の方法が直感的に理解できないかもしれないことを意味します。
例えば、直線的な思考では、組織の業務効率を上げることが目的であれば、集中化と標準化を行うことになります(Zuboff)。しかし、システムの視点から見ると、こうした変化は必ずしも組織をスピードアップさせるものではなく、むしろスローダウンさせることになります。システムにおいては、情報の流れが重要です。情報の流れを良くすることは、より透明性を高めることにつながります。そして、これらは、より多くの自律性をサポートし、会社は、その調整された部分(チーム)が、共有の機会を解決するために共に学ぶように設計することができるのです。線形思考では、解決策が分かっていると仮定し、より少ない人数で決定しようとします。システム思考では、完璧な答えは分かっていないが、学ぶ必要があると仮定し、システム全体が学び、共有するように動機付けることで、学習のスピードと規模を拡大します。どのような解決策が最適かは、その組織が決めることですが、ほぼ正反対のアプローチや考え方があることがお分かりいただけると思います。
Donella Meadowsによれば、システムに介入する方法は12通りあります。(8) それぞれに独自のコストと効果があります。12のレバレッジポイントについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
Source: Carina Angheloiu, IPCC: a site for innovation in its own right?
システム・マインドセットは、私たちが世界でどのように、そしてどこで影響力を発揮できるのかについて、これまでとは異なる考え方をするよう求めています。そのためには、好奇心、発見、オープンさが必要です。世界はどうなっているのか、なぜそう考えているのかを考え、探求することが要求されます。
前提を理解し、それを検証するためにオープンでいる必要があります。間違っているかもしれない、と認めることにオープンでない人、自分の考え方に挑戦しようとしない人は、システムシンキングからほとんど利益を得ることはできないでしょう。
『もし、管理職が自分たちの世界観を仮定ではなく事実だと「信じて」いたら、
その世界観に挑戦することはできないだろう。
もし、自分自身や他人の考え方を調べるスキルがなければ、
新しい考え方を共同で実験することに限界を感じてしまうだろう。』
ー Peter Senge『第五の規律』(9)
線形思考や直接思考では、原因と結果について明確で単純な前提があります。もし私たちがxをもっとやれば、yが起こるでしょう。しかし、システムには複雑な相互関係が存在するため、単純な答えが制御不能になり、時には意図したものとは逆の結果を生むことがあります。
私自身の経験では、二項対立の問題に直接解決策を注入するやり方が、システムにおいてはあまり意味をなさないことに気づいたとき、大きなアハ体験があります。
そこで私は、直接解決しようとするのではなく、システムがなぜそのように動作しているのかを理解しようとします。多くの場合、まったく別の問題が立ち現れてきます。そして、そのシステムをどのように、どこで使えば、システム自体をナッジすることができるかを考えるのです。
6. 最後に:システムシンキングを使って学んだことはなにか
個人的には、システムシンキングは様々な機会において特に価値があると感じています。以下は、私が学んだ主なことです。
(1). Dr. Russell Ackoff on Systems Thinking — Pt 2, https://youtu.be/UdBiXbuD1h4
(2). Peter Senge, Seeing systems, http://seeingsystems.weebly.com/what-is-systems-thinking.html
(3). John Sterman, MIT, Introduction to System Dynamics, https://www.youtube.com/watch?v=AnTwZVviXyY
(4). Dr. Russell Ackoff on Systems Thinking — Pt 1, https://youtu.be/IJxWoZJAD8k
(5). Farnam Street, Mental Models: The Best Way to Make Intelligent Decisions, https://fs.blog/mental-models/
(6) Kevin Slavin (former MIT Media Lab): Market trading systems need to be rebuilt for humans | Money | WIRED, https://www.youtube.com/watch?v=9Goa1Y9OBHU
(7). James Paine, System Dynamics: Systems Thinking and Modeling for a Complex World, https://www.youtube.com/watch?v=o-Yp8A7BPE8
(8). Donella Meadows, Leverage Points: Places to Intervene in a System, https://donellameadows.org/archives/leverage-points-places-to-intervene-in-a-system/
(9). Peter Senge, The Fifth Discipline, https://en.wikipedia.org/wiki/The_Fifth_Discipline
英語版参照元:
https://uxdesign.cc/why-every-designer-should-be-a-systems-thinker-388e4fb7293b
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