DMNでは、2013年に「VIABLE DESIGN」をテーマにした全3回のケーススタディを開催しました。これは、デザインジャーナリストの第一人者として活躍する川上典李子さんの提案によって実現したもので、デザイン、ビジネス、そして社会・環境をつなぐ指針になるコンセプト「VIABLE DESIGN」についての初めてのケーススタディ・セッションです。
川上典李子さんはこれまで、デザイン、ビジネス、社会・環境の領域で、それぞれ連続する場所、不連続な場所を、類まれなジャーナリストスピリッツをもって探索されてきました。その川上さんが、人びとが未来へジャンプするために、デザインは「VIABLE DESIGN」でなければならないと痛切に感じる、というのです。
「VIABLEとは何か?」という川上典李子さんの問いは、Covid-19後の社会のあり方、そしてビジネスやデザインのあり方を考える上で、私たちに新しい視点をもたらしてくれます。
全3回にわたって開催したこのケーススタディ・セッションのレポートは、皆さまのお仕事の指針としてお役に立つと考えております。
全3回/川上典李子さんと一緒に学ぶ「VIABLE DESIGN」ビジネスパースン&クリエーターたちへの指針
藤原大氏の創作姿勢は一貫している。クリエイションの早い段階よりリサーチを綿密に行い、テクノロジーを大胆に活用しながら多様性に富むコンセプトをつくることである。その姿勢は最終目的の成果物はもちろん、プロセスにも影響を及ぼすタイトル設定にも凝縮されたかたちで現われている。
三宅一生氏と共にブランド「A-POC」(A Piece of Cloth、「一枚の布」の頭文字からなるネーミング)を立ち上げたのは2000年。チューブ状に着分が連続して編み出される無縫製の服、言い換えると「一体成型」の衣服は、布地づくりの段階から予め完成品が設計されている。最終形を情報化して最初の段階にとり込むことで、制作現場の無駄を可能なかぎり省く。服づくりの既存のプロセスに対する革新的ともいえる発想の転換だった。
藤原氏が現在、力を注ぐ活動のひとつが、「国際観光デザインフォーラム」(2012年)で提唱したインター・トラベル・デザイン、通称「イントラデザイン」。ある地域に積極的に関わり、科学的視点を活かして自然環境や対象から特徴を調査、デザインとエンジニアリングや化学などのサイエンスとを融合させることにより、地域と人をつなぐ活動である。「人を楽しく」招き、観光力を持つ産業発展をもたらす「イントラデザイン」は、今後、わが国が観光産業立国として発展していくうえでの重要なキーワードとなることだろう。この回では、藤原が取り組む国内産地のクリエイティブソリューションを通して見えてきた可能性と今後の課題を考える。
今日は「VIABLE DESIGN」の3回目となりました。社会が、よい形で成長、発展していくために、デザイン視点、デザイン思考というものを、どのように活かせるのか。いくつかに集約できるものではないので、さまざまな可能性について意見交換させていただいています。1回目と2回目のおさらいをさせていただきます。1回目は、スウェーデン在住の横山いくこさんにご登場いただきまして、クラフトというテーマで、濃厚なプレゼンテーションをしていただきました。クラフトというものは、日本語に訳しますと、継承されてきた伝統文化による、ものづくりということです。クラフトの現状においては、経済活動の中でさまざまな問題が生まれています。それらを俯瞰しつつ、クラフトを健全に発展させていく取り組みについて話してくださいました。
また、クラフトは、文化資産であり産業資産でもありますが、表層の何かを変えることで売れるものにするのではなくて、クラフトに携わる方々の文化背景や、その立場そのものに深く関わることで、クラフトの未来を考えなくてはいけないというプレゼンでした。
その中にはIKEAの例もありました。たとえば、クラフトブームをIKEAが取り込んでいるが、それが必要なのかどうか、という問いかけもありました。また、オランダのロイヤル・ティヒラー・マッカムの例では、著名なデザイナーを招いたデザインプロジェクトを推進しましたが、13代目の社長は、それは自分たちのサバイバルにならないと判断して中止しました。マッカムの例ではメディアがニュースとして採り上げて話題となるわけですが、そのような状況であったとしても冷静な判断が求められるということでした。
前回の2回目には、ハーマンミラーの松崎社長にご登壇いただきまして、災害地に社員を派遣して支援を行うギフト・コミッティについてお話しいただきました。日本の石巻工房での活動を詳細に説明していただきました。ハイチの例では、コレラの厳しい状況の中で、ニーズに即したベッドを作る活動をご紹介してくださいました。
それらの話を聞いて、製造管理をする担当者の存在が大きかったことが印象的でした。プロジェクトの工程、または製造工程をきちんとマネジメントできる人がいることが成功の鍵であることがわかりました。今後については、プロボノをどのように活かしていくのか、という課題などについて述べられていました。
ハーマンミラーは「デザインは課題を解決するためのもの」という企業理念で家具製造に長く携わってきた会社です。「企業は、環境のよき番人でなければならない」という理念もあり、そのような思想を背景にして、ギフト・コミッティという活動を行っています。そのような企業の姿勢に対して、一人一人の社員が誇りと帰属心を持っており、そのことが活動の根本にあるということでした。
1回目、2回目では、それぞれに現場、地域の話が出てきています。そこにどのように関わるか、ということが1つの焦点ともなっています。
今日、来ていただいた藤原大さんは、イッセイミヤケのクリエイティブディレクターとして活躍されまして、現在はイントラデザインということで、独自の活動をなさっています。今日はほとんど初めてのお話を藤原さんからしていただけるということで、貴重な会になると思います。では、藤原さんにプレゼンテーションを行っていただきたいと思います。
今日は、デザイン志向の強い方々が来られていると思いますが、私もデザインが好きで好きでたまらなくて、この業界に入ったわけなんですが、ここで肩の力を抜いて、デザインとは何か、ということを考えてみようか、と思っています。
私は最近、学生に教えることも多いので「デザインを漢字で書くと、どういうふうに書くのか」と学生に聞いたりします。そうすると学生は「設計です」などと一辺倒な答を出してくれるわけです。
そこで、学生には、「デザインというのは何々と何々をつなぐことが得意なんだ」というふうに教えています。デザインというのは、つないでいくことがすごく重要で、それは接着剤のような役割です。
たとえば、これはリレー競争でバトンを渡すところの写真ですが、一生懸命、汗をかいて走ってきて、ここでバトンを渡すのに失敗してはいけません。ここの瞬間は、つなぐ瞬間ですね。これをデザインしていかないといけない。つないでいくということはインター・・・インターデザインというのはよく言われていますけれども、あらためてよく考えてみると、つないでいく、ということを大事に考えていることなんです。
つなぐ行為・・・これはインターの行為ですよね。この2人がインターをしたいがために、その行為として一生懸命走っているわけです。ここにあるバトン・・・インターを表すバトンが、きちんとデザインされていないと、これらの行為すべてが水の泡になってしまいます。それでは、このバトンがすごく有効なものかというと、この行為の中でしか役割が見つかりません。このバトンは、水道管の何か、塩ビみたいなものでもいいですよね。ただ、机の上にポンと置いていると、ただの棒なんですけども、この行為の中にあるから価値が生まれてくる。今の時代、モノからコトへの時代とよく聞きます。私も、そのことはわかりますが、やはり、モノとコトの両方が必要なんです。このリレーもやっぱり、この行為と、その中に、そのモノがあって両立するわけですから、そうなんです。これをしっかり接着剤のようにつないでいく役割として、デザインが必要になってきているのではないでしょうか。
デザインは、情報、空間、モノという3つの輪の中に入っていて、この3つの輪が重なったところにあります。北陸には暖流と寒流が重なった潮目があって、そこにおいしいお魚がいっぱい集まってきますが、さまざまな要素が混ざっている、この重なった部分で新しいことが起きるんです。
1つの空間で起こることは非常に単純な動き方になって、トレンドになることもあります。でも、そこの単体で終わってしまいます。ただ、そこに情報とモノが関係していくと、3つが重なって、それぞれ相互に影響しあって、ある出来事は非常に社会性の強いものになっていきます。だから、情報、空間、モノという3つのことに同時に関わっていく、ということは、デザインにおいては必然、必定になります。
デザインとアートのことを1回、立ち止まって考えてみたい。デザインとアート、この2つには違いがありますが、非常に似ているもの同士です。なぜかというと、デザインを勉強している学生は、アートというところから発進していくことが多いからです。でも、今のデザインは、工学の力を借りたり、情報工学なども含んでおり、大きな広がりを持っています。
アートと芸術は、同じくらいの意味ですが、デザインと設計となりますと、意味が相当違って、非常にバランスが悪い感じになります。実際、日本経済新聞などの紙面でトヨタのラインのデザインが新しくなったとか、ホンダのシャーシを作るデザインが一新したなんていうときに、設計と書くと非常に狭い範囲になります。でも、デザインと書くと、もっと広い意味を包括している印象です。そう考えていくと、デザインは、日本文化の中でどうしても言いきれない、もっと広い範囲のことを言っているのでしょう。
デザインとアートは異なる意味を持っています。でも、同じ領域として混同されることが非常に多い。たとえば、私が、この作品を作りました。これを見ている人には、自由な解釈が求められる、というか、自由に解釈していいんです。たとえば、美術館に行って絵を見ました。「私、この絵嫌い」「これきれいだな」「描いている内容が面白い」とさまざまな反応があります。見る人は自由な解釈をします。必ずしも、アートの場合、再現性は必要ありません。同じものを作る必要がない。アートを作りました、というときには、極端な話、1品でおしまい。「うん、そうか、アートをやっているな」などと思えるわけです。
つまり、芸術を通じて知ることがあると思うんですね。皆さんのそれぞれの思いがあります。アート作品を見ていくと、「ああ、私はこう思う」「いや、私はこうだった」。皆、それぞれindividual(個人的)に考え方は違っています。つまり、アートを通じて、私は自分自身を知ることができる、と考えています。
一方、デザインのことを同じように考えてみましょう。たとえば、私がデザイン作品を作りました。そうすると皆さんに同じ意図が伝わることが求められます。でないと、デザインではありません。平等に利用できるために再現性が必要で、複製が可能でないといけません。そうでないとデザインにはなりません。1品だけ作っていては意味がないんです。バリアフリーでユニバーサルでなければなりません。
皆さんの気持ちをわかってないとデザインできない、ということで、それは、相手を知るということです。私とあなたの関係なわけです。You & I。Youは非常に複数、英語で考えるとto know youです。あなたを知るということは私を知ること、ということで、実は反復運動になってきます。
それでは、to know art・・・アートを知る、ということは、実は個人のことを言っています。デザインを知るということは、実はmass(集団)なわけですよね。これは非常に関係が深いです。個人の相対として集団が出てくるわけです。アートとデザインを考えていくうえでは、実はこういう関係があるんだということです。
それでは、相手のことを知るということですが、人間は非常に曖昧な存在であります。人間がやることは機械ではありませんから、とにかく予測不可能なことばっかり。つまり、変化を好むものであります。常に変化していくと、その曖昧さがどんどん出てきます。
人は曖昧であって、特に人の気持ちについては、わかっていないことが多い。この人の気持ちがくせものなんです。現代社会は、個人の意識や価値観を顕在化していくことを強烈に求めています。社会全体が「あなた、ちゃんと価値観、意識を情報化して述べなさい」などと言ってくるんです。実は間接的にそういう力がガンガンかかってきています。なぜ、そんなことをするのかというと、社会ができるだけ、曖昧なことをなくしたいからです。曖昧なことをどんどん増やしてしまうと社会がコントロールできなくなってくるからです。
できるだけ、曖昧なことをなくしたいというのは、曖昧なものづくりは無駄が多くなるからです。だから「ちゃんと仕事しなさい」とか、そういうことをガンガン会社も言ってきます。でも、会社は国から言われているんです。「ちゃんとやってください」と言ってくるわけです。そのために、誰に何を作るのかを確認する。そこではやっぱり「You&I」です。ここなんですよ。アートとデザイン、個人と集団の関係をまず見てから、デザインのことを考えなければなりません。自分の立ち位置を知るためにも、これらの関係を1回少し整理整頓することが必要です。ご自分のお仕事で、デザインをやったけれどアートになっているのか、アートをやっているがデザインになっているのか、というときには、実際、それが誰に対してそうやっているのか、それが成果物として平等にリピートできるのか、1個だけでもいいのか、と自らに問い直していくべきです。そうすると、主観と客観、個人と集団の関係がしっかりしてくると思います。
最近、学生に聞くと「希望がない」と言うんです。そのようなことが本や新聞などにも書いてありましたが、学生に直接聞いてみると、サラッと悩まずに「希望がない」と言うんです。ある調査では「希望がない」という人は86%。どうも「国に希望がない」ということらしいです。将来が見えないんです。なんだこりゃっ、ていう話ですよね。
それでは、デザインは何々と何々をつなぐことが得意なんだから、地方に人がいないなら、そういう地方と希望をデザインでつなげたらどうなんだ、というように考えるわけです。つまり、国と希望をデザインでつなげるということを、もっと多くの人がやっていけばいい。地球環境や人々をつなげていく。そのつなぐということが、実はデザインは得意であるということですから、それを推進する力になるわけであります。
これから観光デザインの話をします。私は、沖縄のシンポジウムなどに呼ばれたりして、沖縄でいろいろ活動しております。沖縄の島々を見て歩いておりまして、その内容を入れさせていだたきます。
沖縄に行くときに、自分がどういうふうに考えるのか、というのを飛行機の中で整理しました。以下の7つにまとめてみました。
沖縄に行くことが、もう、うれしいわけです。私は繊維に関するものづくりに興味があるので、上質な織物がある沖縄に行くのが、このうえなくうれしい。また、沖縄に行くと特産の食べ物がおいしい。沖縄に行くと、とにかくうれしいことが、この3つであります。
また、特徴のある音楽、踊りが好きですし、お土産を見たり買ったりするのが楽しい。それから、特徴のある文化建造物が面白い。そして、自然と人に触れたい、などがあります。沖縄に行くのが面白い理由を羅列すると7つあったんです。
それで、飛行機の座席ポケットに入れてある冊子『ちゅらなび』を見るわけです。1カ月たってないから秋冬版です。『ちゅらなび』を持って行くと、こういう特典が得られる、などと書いてあって、観光に関することがまとまっています。見る、遊ぶ、食べる、という3つに集約して編集してあります。
観光に関する7つのことについて、簡単に分類します。沖縄に行くのがうれしい、というのは、交通のことになります。繊維に関するものづくりに興味がある、というのは、これは見るに当てはまる。特産の食べ物がおいしい、というのは、まさしく食べるなんです。特徴のある音楽や踊りが好きである、というのは、見る、遊ぶに当てはまる。お土産を買ったり見たりするのが楽しい、というのは買う行為です。建造物が面白い、というのは見る行為です。自然と人に触れたい、というのは見る、遊ぶに当てはまるでしょう。
これをまとめていくと、見る、遊ぶが非常に多い。7つあるうちに、買うと食べるは1個しかありません。見るがダントツに多い。このように見ただけでも自分のことが整理整頓できるわけです。
見る、遊ぶというのは実は分散でもあるわけで、多様性を求めていきますから、1つ2つではダメなんですね。数多くのものがないといけない。やはり、見る、遊ぶというのは観光においては大変重要なファクター。1回見たら飽きちゃったということがあって、ここにどんどん新しいことを提案していかないといけない。それとは別に、買う、食べるというのは非常に集中していることでもあります。
ここで観光庁のホームページを見てみましょう。これは平成23年のデータ。観光業は、年間売上1兆円を超える産業で、今も成長が続いています。そして、この表は、旅行に来た外国人に聞いたもので、日本に来てやりたいことは何か、というアンケート結果です。93.3%は日本食を食べたい、と答えています。上から見ていくと、日本食を食べる、ショッピング、繁華街を歩く、自然・景勝地を見る、入浴・温泉に入る、という順番です。2番目のショッピングは72.8%で、日本食を食べるは93.3%ですからダントツです。
先ほど私が申し上げた7つの項目の中で、食べるという行為は1つでしたが、食べるは非常に強いんです。ストロングです。そのことが、この調査からも言えると思います。
我々は1,000兆円の大赤字を抱えており、これを超えていかなければなりません。観光は国の大きな収入源です。その中でも食における観光収入は大きい。ここをデザインでつないでいくことができれば、観光収入を増やせるかもしれません。それを、頭の隅のほうに入れていただきたいと思います。
たとえば、食と家電をつなぐ。食と住宅をつなぐ。食と本をつなぐ・・・これはちょっと近いですね。できるだけ遠い対象のものをつないでいく。そのつなぎ役としてデザインを使うと、意外とつながっちゃう。そういうことを皆さんにも想像していただけると、結構、面白いキーワードとつながっていくと思います。
私は今年のプロジェクトとして、鯛焼きを考えています。街中を行くとだいたいの鯛焼きは同じです。小さいか大きいかぐらいの差です。最近は日本の顔料で色の魚拓を取られている方も増えたようですが、だいたいその程度です。
かまぼこの形の鯛焼きもあったりします。
とにかく鯛というのはめでたいものですから、皆、大好きなんですね。なぜか、おにぎりでも鯛のパッケージになると売れちゃいます。でも、プレステージを低くしてしまうと、なんだこりゃ、と飽きられて、もう2度と買ってくれません。なかなか微妙な日本的なものでございます。
たとえば、鯛焼きと観光客の調査をしてみると、鯛焼きをお土産で買っているのか、食べながら隣のお寺まで行くのか、それとも鯛焼きを1人で食べているのか、2人で食べているのか、などいろいろな要素が見えてきます。
それでは、その鯛焼きを入れているパッケージはどうか。お土産か、持ち帰って自分で食べるのか、お寺で食べるのか、などいろいろあるでしょう。そういうことを調べていくと、そのパッケージが適正であるかどうか、というのがだんだんわかってきます。歩きながら鯛焼きを食べたい人が多くいるのであれば、鯛焼きのサイズ、その中の内容物、金額など最適なデザインが出てきます。
デザインは、何々と何々をつなげるのが得意です。今日は、もう口が酸っぱくなるほど言います。デザインは、設計とか計画などという固いものではありません。もっとメディウムでアメーバのように変幻自在なものであります。
しかも、これはある一定の人たちだけのものではなくて、おじいちゃんからおばあちゃん、子どもから、もう全世界が、皆が使いたくてたまらない。社会の非常に大事なもので、自分自身が生きていくうえでのライフスキルになってきているということです。デザインは誰にでも重要なものになってきている。逆に言うと、デザインを取ってしまったら、その人はもう生きていけません。これからの時代のライフスキルですからね。
この鯛焼きプロジェクトでは、思わず買いそうになる鯛焼きを作ろうと思っていて、学生とやりたいと思っています。学生だけではなくて、プロの方とも一緒にやっていきます。
これはスティーヴン・タイラーの写真です。鯛焼きとスティーヴン・タイラー・・・なんだこりゃ、ってことです。スティーヴン・タイラーはエアロスミスのボーカリスト。なぜ出てくるのかというと、どうも鯛焼きが大好きらしいんです。彼は鯛焼きが大好きでたまらなくて、しかも、エアロスミスのメンバー全員が鯛焼きが大好きなんです。日本に来ると鯛焼きを買っていて、あるとき、メンバーの誰かが鯛焼きを全部食べちゃって大げんかになったらしい。そういったことが、ブログに出ていますので、ぜひ見ていただきたい。
ユニバーサルな観光デザインを目指していまして、そのためには、基本的に文化、文字、習慣、性別、経済、身体のバリアーがない、ということでユニバーサルとなります。大変なバリアーの中でユニバーサルを求めていくわけです。
海外の人は鯛焼きのおなかの中に何が入っているのか、まったくわからないわけです。初めて日本に来た外国人の93.3%が、日本食を食べたいと思うんですよ。その人たちに日本の代表選手である鯛焼きがよくわかっていない。これはつなぐ必要があります。たとえば、鯛焼きの中に何が入っているか、パッケージでわかるようにする、などということです。スティーヴン・タイラーは、最初に食べたときには、まさか、ああいうものが入っているとは思っていなかったらしい。
鯛焼きを通じて、地域とモノとコトをつなげるプロジェクトができるのではないか。特殊なものを作るのではないのです。一般的にわかりやすいもので、つないでいくわけです。これから、海外から人々がたくさん来ますし、世界中からお客さんを呼ばないといけないんです。そのためには、今やっていることでは全然足りないんです。「日本は面白い。何度も何度も日本に行きたい」と思ってもらえる仕事をやっていかなくてはなりません。
世界の人と日本をつなげるデザインをしましょう。地域と人をつなげるデザインをしましょう。モノとコトをつなげるデザインをしましょう。これらにはインターが欠かせません。インターはつなぐであります。インタートラベルデザインということなんです。インタートラベルデザイン・・・私は、イントラデザインと略して言っています。
<後編へ続く>
次回は、観光デザイン、カラーハンティング、会場で参加者全員で体験したお酒と色の調査からのディスカッションをレポートいたします。
(文責:DMN/編集部)
藤原大 氏 Dai Fujiwara
デザイナー/株式会社DAI FUJIWARA代表取締役/多摩美術大学教授
多摩美術大学デザイン学部卒業。1994年に三宅デザイン事務所入社、取締役副社長を歴任。2000年、三宅一生氏とともにブランド「A-POC」をスタート。2007年から2011年まで、ISSEY MIYAKE クリエイティブディレクターを務める。2008年に法人設立。独立してからの活動では大学等での教鞭もとる。受賞に毎日デザイン賞、グッドデザイン賞最高賞など。A-POCはニューヨーク近代美術館永久収蔵品にも選定されている。
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