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CX Talk Session 2

CX Talk第2回目のセッションは、データ駆動によるDX変革を推進するNTTデータの谷中様をお招きし、データ駆動のカスタマーエクスペリエンスの未来に向けた現在と課題や、その流れにおけるデザインの必要性について語ります。

Guest

Taninaka-Kazumasa

谷中 一勝(たになか かずまさ)

株式会社NTTデータ
デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部 事業本部長


1992年東京大学工学部卒業後にNTT データに入社。
新世代情報サービス事業本部、ビジネスソリューション事業本部にて、インターネットサービスやクラウドサービス等の新技術領域でのビジネス開発を担当。2010年にスタンフォード大学エグゼクティブプログラムを修了。その後、グループ経営企画本部等を経て、2017年からデータ・アナリティクス領域の組織を牽引。現在は、データ・アナリティクス、サービスデザインといったテクノロジーを起点としたDXコンサルティング組織を統括する。

ミッションクリティカルなシステムにこそ
デザインは必要とされている。

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Jonathan Browne 以下 JB)
谷中さん、本日はよろしくお願いいたします。

「先端テクノロジーとビジネスデザイン」や「グローバルCXとガバナンス」に関するお話がしたいと考えていました。まずはこれまで谷中さんがマネジメントされている部門のお話から紹介いただけますか?


谷中 一勝様 以下敬称略)
本日はよろしくお願いいたします。

私はNTTデータに30年在席していますが、現在デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部という部門のマネジメントをしています。この組織はもともとデータ活用を中心として成り立っている組織でして、ここ6年程度でしょうか、データ活用やデータアナリティクスの領域を探求しています。

最近でこそデータ活用に対する関心が高まっていますが、その少し前から新しいテクノロジーによるサービス開発の可能性を事業の中で進めており、NTTデータの中でも少し特殊な存在だと思います。私自身もミッションクリティカルな大規模なシステムに関する支援領域の経験よりも新しい試みのところをずっと続けてきたバックグラウンドになります。

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JB)
NTTデータの中におけるディスラプターの様な存在でしょうか。


谷中)
ディスラプトできているかどうかわからないですけど、これまでにもういっぱい失敗もしています。思った通りの事業にならないということもありましたし、ジョイントベンチャーによる取り組みがうまくいかないなど。

ただ、データ活用の領域は、お客様の関心も活用も年々進んでいるところでもあるので、我々の事業やサービスについても比較的、堅調に伸びてきている状況です。


JB)
なるほど、ありがとうございます。
事業部名が今年の夏に少し変わったと伺いました。


谷中)
はい、そうですね。デザインという単語を事業部のはじめに追加する更新をしました。
私自身、テクノロジーが好きで、新しいテクノロジーの存在を知る度に未来のユーザーへの変化をイメージするのですが、テクノロジー側の視点だけでは本当にユーザーにとって必要なものや意味のあるものにならないという気がしています。テクノロジーのポテンシャルをフルに解放するには、ユーザー側から見た時のテクノロジーの風景を、テクノロジーを提供する側が理解できていることが重要だと思っています。

端的に言うと、導入したテクノロジーが活用しきられないケースが残念ながら一定数あって、もちろん一定の改善、例えば営業支援系のシステムを入れて、前よりは顧客管理がしやすくなりました。といったことはもちろんあるのですが、導入したテクノロジーのポテンシャルを100%発揮されないまま、大小様々な不満や困りごとを含んだまま運営されていることが散見されます。

そういった課題を解決するには、やっぱりデザインコンサルティングやデザイン手法で徹底的にユーザー視点でジャーニーマップやエンプロイージャーニーマップを作り、テクノロジーのポテンシャルを解放できるように提供していくことを我々も考えてやっていかないと、という想いから「デザイン」と「テクノロジー」を含む部門名にしています。


JB)
そのような狙いなんですね、とてもよくわかりました。
いつ頃からそのように考えられていたんですか?

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谷中)
10年ぐらい前からそう思っていて、ようやくそのような組織を形作ることができてきたなと感じています。導入するテクノロジーやシステムがミッションクリティカルであればあるほど複数年など長い期間がかかっているわけですね。
ウォーターフォールのステップに沿って要件定義から始まり、設計、製造、試験、適用と、大きなスパンで組まれていて、ミッションクリティカルであるほど、大規模であればあるほど、時間が経過するとしっかり動かすことが何よりも優先度が高くなることがあります。

当初はユーザーに提供する体験であったり、関与する従業員の体験をこのように改善したいと考えていたとしても、時間と共にトランザクションを正確に捌くであったり、 ちゃんとデータが保全されるであったりとか、セキュリティが担保されていることなど、ベースとなるところがしっかり機能している状態に集中してしまうことがあります。


JB)
使う人の立場に立った快適なシステム作りということが置き去りにされてしまうことがあると。


谷中)
ええ、なので結果、出来上がってきたものが、当初想定していたものと異なることもあり、もっとより良くできたのではと思うことが以前からありました。

本質的な価値を生成するデジタルアーキテクチャのあるべき姿

JB)
データ駆動に関心を持つ企業が増えてきたことは、テクノロジーの進化による影響だと思いますか?

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谷中)
そうですね、データ駆動に関心を持つ企業が増えてきたことは、テクノロジーの進化の影響があると思います。私はビジネスというのは予測の塊だと以前から感じていて、例えば需要を予測することであったり、顧客のクラスターを分けてその動向を予測することであったり、バリューチェーンを一定に保つことにおいても予測の範疇と言えます。


JB)
おっしゃる通りですね。その予測にテクノロジーの進化が影響していると。


谷中)
ええ、その予測について、もちろん以前からデータを見て分析し、数理や統計に強い人達が予測をしていたわけですが、昨今のAIやデータ利活用テクノロジーによって、より精度が高められそうだということを多くの人達が感じ始めたという状況ではないでしょうか。


JB)
一部の人達にしかできなかったことが、テクノロジーによって民主化し、多くの人が関与できるようになった。


谷中)
そうですね。DXという言葉がここ67年ぐらい叫ばれていますけれど、そういう言葉が出る前から、企業は様々な形で変革をしていこうという意思をずっと持ち続けてきてはいると思います。

そういった流れの中で、現在、変革の中心にあるのが、どのようにデータを使っていくのかという議論になっているように感じます。先ほども少し触れましたが、需要の予測、供給の予測、顧客の予測がずっと連なっていることがビジネスだとしたとき、その精度を上げたいわけです、どの企業だって。一部は実績やデータで、一方で一部は勘や経験で進めていたビジネスが、データ駆動により予測の精度が上がる可能性を、現場の方も、経営者の方も、身近になったテクノロジーによって感じ始めているということだと思います。

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JB)
データ駆動への変化はCXへも影響があると思いますか?


谷中)
大いにあると思います。カスタマーエクスペリエンスおよびカスタマーサティスファクションにおいても、自社の顧客は何を望んでいるのかということは一つの予測であって、現在デジタルマーケティングの仕組みができている中で、データ駆動で、いかに顧客の満足度を上げていけるのか。それは商品やサービスそのもののことでもあるしどのタイミングでどのようなメッセージを差し出すか、レコメンドなども含め、最適な解をいかにそのデータを駆使しながら提供できるのかという状況になっていますよね。

なので、企業内のビジネスプロセスにおける予測と、顧客視点におけるCX向上における予測という両面が重要になっています。


JB)
なるほど、その両面の予測という観点は大変興味深いです。
そのようなデータ駆動戦略を実現する上で、代表的な プラットホームやソフトウェアはどのようなものがありますか?


谷中)
この辺りのテクノロジー領域で最もホットなのは生成AIがイメージとして浮かびますが、いくつかレイヤーがある中でファウンデーションの位置にあるインフラはクラウドをベースとしたデータの収集・蓄積・加工・活用をしやすくしているテクノロジーでしょうね。具体名で言うと、AWSや最近で言うとSnowflakeDatabricksといったところが非常に注目を集めてきている。クラウドデータプラットフォームって言われるレイヤーですね。
ここがベースのテクノロジーとしてあって、その上に、ユーザーに近いところのアプリケーションに近いところの領域の話になってくると、AIをモデリングしていくためのテクノロジーですね、DataRobotに代表されるような。

それからAIではなくBIの方で、データをダッシュボードみたいな形で見える化をして、 意思決定しやすい形で、ビジュアライズするっていう領域もありますね。この領域も色々出ており、OpenAI以外で言うとCohereAnthropicなどでしょうか。NTTグループでもtsuzumiというサービスを111日に発表いたしました。結構日本語に強い大規模言語モデルとして日本でも一番先端を進んでいるのではないかなと。

tsuzumihttps://www.rd.ntt/research/LLM_tsuzumi.html


JB)
様々なテクノロジーがそれぞれのレイヤーで生まれているんですね。

 

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谷中)
そうですね、繰り返しになりますがSnowflakeのような基盤になる領域と、そこに蓄えられたデータを活用してAIのモデルを作ったり、ビジュアライズする技術があって、さらにその上でSalesforceのようにユーザーのインターフェースになるアプリケーションがあると。そのような構造ではないかなと思います。


JB)
さきほどNTTグループのtsuzumiは日本語に強いLLMとおっしゃいましたが、将来は、各言語や各地域や各業界に最適化されたLLMが必要になっていくという風に考えれば良いのでしょうか?


谷中)
そうなると思いますね。基本的には組み合わせかなと思っていて、OpenAIのように大量のパラメーターで、 大量のリソースを使ってできている、本当の意味での超大規模言語モデルと、企業や地域が独自に作るLLMが存在するようになるのではと思います。実際今そのような検証が、我々の担当する案件の中でも始まり出しています。

企業の中にある重要なデータは、当然インターネット上にはないので、 OpenAI のようなパブリックなモデルは学習をしていないわけで、 企業の中にあるプライベートなデータをちゃんとファインチューニングしたり、あるいはそれをベースにモデルを作るということをしないと、その企業における本当の意味のナレッジにならないでしょうね。

また、セキュリティの問題も伴いますよね。OpenAIのようなサービスは一定のセキュリティで区画が整理されているといっても、企業の重要なデータを一度でも通すということに抵抗感を持つ企業は多い様に感じます。セキュアな環境を作りながら推進していくということが求められています。


JB)
大変興味深い見解です、カスタマーから入手したこのデータは、このような目的のためには使っても良いが、他の目的には使えないなどの制限があると思いますが、情報が気づかぬうちにその社内の制限を超えて使われてしまうようなことが無いようにしないといけませんね。

データ駆動がもたらすCXの変化

JB)
データ駆動に関するユースケースについてもぜひお話したいと思います。私が経験したユースケースでは、とあるリサーチ会社のサーチ機能に自然言語処理が組み込まれていて、優れた検索体験を先日しました。ユーザー体験が魅力的だと思われるユースケースを紹介していただけますでしょうか。


谷中)
文書検索以外で言うと、顧客接点系でしょうか。例えば顧客や代理店向けのコールセンター業務に、業務補助的に使われるケースですね。顧客や代理店の担当者から問い合わせがあった際に、その内容を音声から自動でテキスト化し、内容を要約した上で類似する回答を示すなどの、オペレーターのアシスタントの様な動きがあります。

このあたりはもちろんこれまでも進んでいたわけですが、LLMが入ってきて、より精度も上がり、かつ検索する範囲の範囲を広げることができてきているので、今後さらに進化が有望なユースケースになるのではと思います。ある程度はボットが答えて、人でしか分からないものはオペレーターにつながるような流れが、コールセンターに限らず、様々なビジネスのプロセスの中に組み込まれていくのではないかと思います。


JB)
なるほど。その様な展開が進むとユーザーにとっても業務従事者にとっても円滑に目的が達成できそうです。


谷中)
BtoC的な観点で自然言語処理による変化のイメージでいうと、例えば週末に旅行に行きたいなと思った際に、行きたい場所はこのあたり、家族構成はこうで、予算はこういった範囲です。といったことを自然言語で入力すると、その内容を解釈して、プランを提示してくれるようなユースケースはかなり近づいているのではないでしょうか。
その際に、そのプランの提示の仕方やタイミングなどをいかにフリクションレスというかストレスなく提示できるかは、UXデザインおよびUIデザインが重要なポイントになると思います。

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JB)
それは非常に有望なユースケースですね。いつ頃そのようなユースケースが実際に身近に現れるようになると思いますか?


谷中)
技術はすごい速度で進化してくと思いますが、企業における検証のペースというのは、そこまで早くないというと思います。なので、これから1年程度の中で検証を行い、23年後には業務に本格的適用がはじまり、さらに完全自動化されていくのは34年後あたりではないでしょうか。10年後などではないと思います。


JB)
データ駆動の進化を谷中さんご自身の体験として感じることはありますか?


谷中)
はい、ありますね。

私はTeslaに乗っているのですが、提供してくれる体験が凄くて驚きがたくさんあります。購入前で言うと、WEBサイトから試乗予約のクリックをして向かいました。その場所はいわゆるディーラーという印象ではなく、実物を見て試乗するためだけのショールームと感じました。その後予約をすると、製造工程に入ったことや、番号が登録されたことなど、私の車が製造されているプロセスを適宜お知らせしてくれるんですね。

その後、納車が何日ですと連絡を受けて指定された場所へ向かいましたが、商業施設の一画に地味なカウンターがあって、カードキーを渡されました。向かうよう指示された場所はとても大きなパーキングで、同じ型の車が並んでいるのでその状況ではどれが私の車かわからないのですが、アプリ操作によってライトの点灯ができて、自分の車を見つけることができました。


JB)
それは特別なオーナーシップを感じる体験ですね。


谷中)
そうですね、一連のジャーニーが素晴らしいなと感じます。

購入後においても車の使用状況やメンテナンスの必要有無をすべてデータ管理してくれているので、必要に応じてメンテナンスカーの手配をアプリで予約します。指定の場所があるわけではなく、自宅まで来てくれて、そこでタイヤのローテーションの対応などを1時間程度で完了してくれました。裏側では凄まじい量のデータ管理、データ分析がされているはずですが、私の体験はとにかく快適で、フリクションレス、ストレスもありません。


JB)
エモーショナルな点も含め顧客体験がデザインされていることがよくわかるデータ駆動なユースケースのお話でした、ありがとうございます。

海外では既に進んでいるデータ活用やデザインの内製化、日本における状況は。

JB)
海外と日本との比較についてお伺いしたいです。

御社のNTTデータTangityはグローバル規模でデザインのサービスを提供しておられますが、海外と比較して、日本の企業のCXDXの取り組みの現状をどのように評価されていますか。

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谷中)
立ち上がりに時間かかるというのが、日本の傾向ではありますね。Tangityのチームで結構進んでいるのは、ヨーロッパのチームですかね。特にイタリアのチームなんかは実績もビジネスもそれなりの規模になってきていて、イタリアやスペインといったヨーロッパでは地域として、デザインに関しての重要性の認識であったり、元々の関心の高さが非常に強いからなのかなと思います。

ただ、この1年ぐらいで、日本企業の中でDXAIを含めた新しいテクノロジーへの関心が高まり導入してみたものの、CXの面でしっかりその効果が出ているのかであったり、そもそもテクノロジーとしての価値が本当にフルポテンシャルで生かされているのかというところを、もう一度きちんと見ないといけないと各企業の経営層が思い始めていて、ある種のプレッシャーを我々も感じ始めています。冒頭の話に戻りますが、デザインの視点・使う側の視点に立って、 活用を進めていくニーズが高まっていることは間違いないと思います。

この間、ある銀行の方から聞いたのは、サービスについての顧客満足度であったり、CXの観点でのデータがなかなか取れてないみたいなところが課題で、デジタルなテクノロジーを使って新しいものを入れているものの、それが本当にどこまで顧客の体験価値であったり満足度の向上に繋がっているのかが、 必ずしもまだ把握が十分できてないということ。その辺りをしっかり把握し、CXがどれぐらい本当に良くなっているのかっていうところを しっかりアセスメントしなければならない強いニーズがあることを金融系の幹部の方からうかがっています。


JB)
では、海外と日本ではプロジェクトのテーマとか取り組みの方法などの違いはありますでしょうか。

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谷中)
テーマや取り組みの方法自体は日本と海外で共通なのかなと思います。

デザインの手法自体はインダストリーに特化したものではなく、リージョンも超えて汎用的に使えるし、 グローバルで大きくは変わらないのかなっていう風な認識を持っていますが、逆に、いかがでしょうか?


JB)
もしかしたら違いは、どちらかと言えば社内のバリアですとか、組織における考え方によって生じるのかもしれないと思いました。


谷中)
そうですね。日本もこれからだと思いますが、少しずつ変化が見られるのは、データ活用みたいなものが企業として重要だということがこの5年ぐらいで認識されていて、 それによって企業の中にデータサイエンテストのような専門の人材を内製化で抱えて企業としての競争力につなげようと動きが見られているのですが、デザインについてもこの1年ぐらいそういう動きが出てきていると感じています。

デザイン人材自体も企業の中で重要な人材として内製で育てたい、あるいはデザイン思考であったり、デザインのプロセスをきちんと企業の活動の中で自らできるように根付かせていきたいという動きが出てきているのかなと。

もしかしたら、まだヨーロッパや海外に比べるとどうしても遅れを取っているかもしれませんが、日本の企業がいよいよデザインというものを真剣に捉えて、内製化して、企業としての競争力にしていかなきゃいけないって思い始めているところなのかなと思いますね。

ツールは民主化を促進するが、時代の変化に柔軟に対応するためには優れたエキスパートも必要

JB)
デザイン思考の考え方としては、一般の社員にもトレーニングをすることで、より多くの人がある程度のデザインスキルを持ち、そのプロセスや考え方が使えるようになるというわけですが、それでも、やはりエキスパートのデザイナーの価値はものすごく高いと考えています。

データサイエンテストについても同じようなことがあるのでしょうか。様々なツールが出現し、経営層やビジネスユーザーがある程度のデータ分析ができるようになっていくと思いますが、それでも、優れたデータサイエンティストがいることは、重要なことでしょうか。


谷中)
優れたデータサイエンティストはすごく重要だと思いますね。なぜかと言いますと、テクノロジーは日々進化し新しいものが出てくるので、それに対応するにはやはりエキスパートがどうしても必要だからです。

例えばTableauみたいにダッシュボードを作るためのツールは、ビジネスの営業部門だったりマーケティングの部門だったり、各現場で自らそれを使おうと思えば使えるような、非常に民主化されたツールとして存在していますが、最近のLLMみたいな話が突然出てくると、 そのようなツールを使いこなしているだけの人だと、何をどうすればよいのか正直わからないですよね。 そのため、そのような新しい技術が出てきた時に、ある程度の理解と対応力を持った人材がいないと、その企業の中に取り込むのはなかなか難しいと思います。その技術が民主化された段階で他のいろいろな企業が使い始めて、もう遅れを取ってしまう可能性があると思います。

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JB)
この間、NTTデータ先端技術の平岡様へインタビューをさせていただいた際にも、ITテクノロジーの民主化について話を少ししました。

これから一般のビジネスユーザーが様々なアプリとかを簡単に作成できるようになっていく可能性が高いですが、実は将来においては、企業が長期的なプランを作るときや差別化を図るようなプラットホームを作ったりするためには、エキスパートがいることがますます重要になるということを改めて認識しました。

「顧客に近づくための競争」では、組織的なアプローチ、人材育成、デザインが鍵を握る

JB)
データ駆動戦略とCXについて、今、日本企業全体としてどのような動きがあるとお考えでしょうか。


谷中)
顧客にもっと近づきたいという各企業の思いをすごく感じますね。いわば「顧客により近づくための競争」に今、なっているのかなと思います。

他社がより顧客に近いところに行ってしまうと、自社は置いていかれてしまい、結局、顧客からは自社が見えなくなっていく。それを避けたいが故に、いかに顧客自体を知るか、顧客の近くに自分たちの存在を持っていくかという考え方が重要になっていると思いますね。かつては、製造業などはなかなか顧客の近くに入れる存在ではなかったんですよね。自動車とかは割と近かったのかもしれませんが、 いわゆる普通の小売店に並んでいる商品を作っている製造業も、今は顧客に関するデータを欲しがるようになっています。


JB)
今後、企業がそういった競争の中で生き残るためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。


谷中)
1つは、トップダウンとボトムアップの両方の組み合わせが必要だと思っています。

やはり現場主導だけだと、データの活用の色々なユースケースを実践していてもうまくいかないですし、導入するテクノロジーもバラバラになってしまい、そこで集めたデータが1つの基盤に蓄積されずに、共通的に使われないような状態になってしまう。なので、トップダウンで全体の基盤と大きなグランドデザインをまずはちゃんと作った上で、それを起点に様々なユースケースを実践していくようなプロセスを進めるのが良いと思います。


JB)
特に、トップダウンとボトムアップの両方の組み合わせが成功しているような事例はありますか。


谷中)
グローバルに見ても保険会社においてデータ活用が進んでいると思います。

データ駆動カンパニーになるということをトップ自身が宣言した上で、トップダウンで施策を進めていますし、トップダウンだけじゃなくてボトム側からもいろんなユースケースが出てきています。AIやデータ活用のPMO(プロジェクトマネージメントオフィス)みたいなものを作って、そこが色々な部署を支援しながらバラバラにならないような動きにしていって、全社統一したような基盤の中にちゃんとデータを蓄積しながら進めるみたいなことを、4年くらいかけてやってこられているという印象があります。

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2つ目は、やはり人材を育成するというところですよね。テクノロジーをちゃんと理解して使えるような人材育成のためのプログラムを会社としても作っていかないと、仕組みだけ入れて、使える人がいないみたいな状態になってしまうので良くないと思います。

先ほどの話にもあったように、優れたエキスパートを企業内部に持つこともそうです。今までは、いわゆる民間企業には情報システム部がありその中にエンジニアもいたわけですが、 デジタルの時代になったことで企業自らがエンジニアを集め、ソフトウェアの開発力やテクノロジーの実装力を内製化し始める動きが出てきました。それが、今度はデータサイエンスの内製化が始まり、それに続いてデザインの内製化という流れが出てきているので、テクノロジーとデータサイエンスとデザインっていうものが全て連なりながら、企業の中でますます非常に重要な人材として位置付けられてきていると思います。

 

JB)
その通りですね。


谷中)
そして3つ目は、今日何度も出てきていますが、やはりデザインの観点で、闇雲にテクノロジーを入れるのではなく、きちんとユーザー視点で使いやすい形のものにしていくことが本当に重要だと思っています。

僕らのテクノロジーコンサルの中にデザインコンサルティングの要素を積極的に入れていきたいと思っていますので、そこの部分、これからも連携させていただけるとありがたいと感じています。


JB)
ありがとうございます。
こちらこそ、今後とも、よろしくお願いいたします。

 

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