CX Talk Session 3
CX Talk 第3回目は、mctが日頃からプロジェクトで連携している3社をお招きし、2024年10月1日のCX DAY特別セッションとして開催しました。
コニカミノルタ株式会社の宮澤様、NTTコミュニケーションズ株式会社の田村様、株式会社デンソーの山本様をゲストに迎え、社内でのCX推進における課題や、具体的な取り組み事例、成功のポイントについてご講演いただきました。
Guest
宮澤 恵美 様
コニカミノルタ株式会社
デザインセンター Wowデザイングループ
2022年よりCX向上施策の推進を担当。
顧客エンゲージメント強化を目的とした社内コミュニティ「CX Community」の発足、ビジョン策定や運営に携わる。学びを提供する「プラクティス」と実践知を集める「ナレッジ」の2軸でコミュニティを活性化させるエコシステムを構築。CXMコンセプトを伝える「CXM Book」や実践ツール「CXM Tools」、社内事例集「CX Times」の発行、対話の場「CX Cafe」の運営など、活発に活動。
Guest
田村 穂高 様
NTTコミュニケーションズ株式会社
ビジネスソリューション本部
事業推進部 事業戦略部門
NTTドコモでのコンシューマー向け営業や端末調達・デリバリー業務などを経て、2023年より現職に着任。
現在は法人部門にて社員の人材育成や研修プログラムの企画・立案を担当。mctと共同でCX研修プログラム「CX4DX」を企画・実施し、これまでに延べ800名を超える参加者を迎えている。
Guest
山本 博之 様
株式会社デンソー デザイン部
デザイン部所属のマネージャーとして 様々な領域を横断して活動。
また、子どもたちにデザイン思考を体験してもらうワークショップ「HXあそび」の企画・開催にも携わる。デンソーはクルマの技術をコアとしモビリティ社会の発展に貢献する会社を目指し 、社会での役割をより大きく担うために、社会との双方向の理解を深める新たな取り組みを展開しており、「HXあそび」もその一環として位置づけられている。
Moderator
米本 明弘
株式会社mct 執行役員 / エクスペリエンスデザイナー
食品メーカーで流通戦略や商品戦略などマーケティング業務全般を担当した後、2014年からmctに参画。
商品開発やサービス開発の案件から、組織変革や人材育成に関する案件まで幅広いプロジェクトに携わる。2015年に経営学修士取得。専門分野はデザインリサーチ、マーケティング、戦略プランニングなど。趣味は野球観戦。
Guest
プロフェッショナルを支え、その先の人々の暮らしを
豊かにするコニカミノルタの「B to B to P for P」
mct 米本)
皆さんこんにちは、mctの米本と申します。よろしくお願いいたします。本日は、mctのクライアントである3社のご担当者様にお越しいただき、それぞれの企業でのCXへの取り組みについてご紹介いただきます。
コニカミノルタ宮澤様 以下敬称略)
皆さんこんにちは。今日は、コニカミノルタにおける「強固な顧客エンゲージメント構築のためのCX向上取り組み」についてご紹介いたします。
当社の経営理念は「新しい価値の創造」、経営ビジョンは「Imaging to the People」。お客様の「見たい」を実現することで、グローバル社会に支持され、必要とされる企業、人と社会の持続的な成長に貢献する、足腰のしっかりした進化し続けるイノベーション企業です。
その中で色々なフィロソフィーなどがありますが、今回はCXイベントということなので、特に関係が深そうな B to B to P for P のアプローチを紹介いたします。
プロフェッショナルの業務フローを変革することで、
その先にいる生活者にも価値を届けるアプローチ
コニカミノルタ宮澤)
私たちの事業は、働くプロフェッショナルの皆さんの力になりたい、という思いから始まる最初の「B」です。
この「B」によって支えるのが、お客様のビジネス、次の「B」です。その現場で働くプロフェッショナルを支援し、さらにその先にいる多くの生活者、つまり「ピープル」の暮らしを、より安全で豊かに、そして創造的にしていくことが目標です。
この生活者に向けたサポートとは、プロフェッショナルのワークフローを変革し、真摯に向き合うことを意味しています。これが私たちの「B to B to P for P」アプローチです。
コニカミノルタ独自の視点からデザイン思考を体系化し、
顧客との長期的な関係構築を支援
コニカミノルタ宮澤)
続いて、コニカミノルタ独自のデザイン思考についてもご紹介いたします。
私たちは「コニカミノルタデザイン思考」として、顧客との長期的な関係構築に役立つマインドセットとプロセスを体系化しています。この取り組みでは、mctさんにも研修や実践サポートの面でご協力いただいています。
私たちデザインセンターでは、コニカミノルタのデザイン思考とCXの関連を明確にし、社内への発信を進めています。デザインセンターとしてのCXM(顧客体験マネジメント)は、顧客エンゲージメント強化を目指した取り組みの一つです。
私たちのCXM活動は、顧客の「ありたい姿」を実現するためのストーリー、つまり顧客体験全体を管理し、エンゲージメントの変化をモニタリングしています。各ステージにおいて、興味関心から購入、継続利用、そして理想の実現に至るまで、コニカミノルタデザイン思考を通じてより良い顧客体験を創出していきます。
部門横断的に顧客エンゲージメント向上を目指す
「CX Community 」の取り組み
コニカミノルタ宮澤)
最後に、顧客エンゲージメント強化を目的とした「CX Community」についてご紹介します。このCX Communityは社内のコミュニティです。
まず最初に取り組んだのは、コミュニティのビジョンを作り、スモールスタートで始めることでした。ビジョンは「顧客エンゲージメントの向上を追求し続ける企業文化の醸成」とし、現場の方々にもワークショップで参加していただき、最終的に決定しました。
まずはCX Community のビジョン策定に取り組み、スモールスタートで始動した。
このコミュニティの対象は、社内でCXマネジメントに取り組む方々。目的は、組織を横断して学び合う場を作ることで、まずはデザインセンターと関わりのある3、4部署の方に声をかけ、スモールスタートで開始しました。
それで、コミュニティで大切にしたい要素として、mctさんに「エモーショナルモチーフ」の考え方を提案いただいて、「Bravery」「Safety」「Discovery」という3つのモチーフを設定しました。
「エモーショナルモチーフ」を設定し、参加メンバーが大切にしたい志や感情を共有
これにより、コミュニティの個性が明確になってきた
次に、コミュニティを活性化させるために、「エコシステム」として、学びを提供する「プラクティス」と、実践から得られる知識を集める「ナレッジ」の2軸を設けました。
ここをぐるぐる回すことで、コミュニティを活性化していこうということで、取り組みを始めました。
学びを提供する“プラクティス”と、実践知を蓄積する“ナレッジ”の2軸を循環させることで、
コミュニティの継続的な活性化を目指す
プラクティスでは、ストーリーでCXマネジメントの基礎を学べる「CXM Book」を作成し、さらに実践に必要なツールやフォーマットをまとめた「CXMTools」を用意しました。ナレッジでは、社内事例を記事にして「CX Times」として発行しています。また、CX推進者が対話できる場「CX Cafe」を設け、この4つの活動を中心にコミュニティ運営を進めています。そして、10月には私たちも社内でCX Dayのイベントを開催予定です。
mct 米本)
ありがとうございました。
最初にご紹介いただいた B to B to P for P、すごくいいですよね。BtoBの企業だけど、企業を対象にというだけではなく、そこで働く人を対象にしているって、すごく面白い。
コニカミノルタ宮澤)
そうですね。対顧客だけでなく、その先にいる人々のことも考えながらさまざまな設計を進めていこうという発想が、会社のアプローチとしてあるため、伝えやすいと思っています。
NTTCom田村様 以下敬称略)
すごいいい取り組みだなと思って。このコミュニティに参加されているメンバーは組織をまたがって参加されているんでしょうか。
コニカミノルタ宮澤)
そうですね。普段は全く関わりのない部署の方々に参加いただいています。地道に声をかけて、参加をお願いしています。 ここでしか集まらないようなメンバーになっています。
NTTCom田村)
いいですね。うちの会社も リモート中心になっていて、やっぱり人との横の繋がりとか結構難しいこともあります。そういう意味でもすごく素敵な取り組みだなと思いました。
mct 米本)
おそらく多くの企業が同じようなチャレンジをされていると思うんです。でも、なかなかうまくいかなくて立ち止まってしまうケースもあると思うので、後半でもう少し詳しくお話を伺えればと思います。
NTTコミュニケーションズは、
顧客と社会にとっての価値について問い続ける
NTTCom田村)
NTTコミュニケーションズのビジネスソリューション本部に所属している田村と申します。
ビジネスソリューション本部では、主に大企業向けに営業支援や人材育成の研修などを行っています。最近は特にCXの重要性が高まっているので、その分野での研修プログラムをmctさんと一緒に進めています。今日はその内容についてもご紹介できればと思います。
NTTコミュニケーションズは現在ドコモグループにおりますが、グループの行動規範の1つに「問い続けよう」というものがあります。これは今回の取り組みにも関わると思っていて、お客様と社会のために、常に自問自答しながら進めていくことが特に重要です。
ドコモグループの行動規範の1つ『問い続けよう』
お客様や社会のため、自らに問いかけながら仕事に取り組む姿勢を大切にしている
NTTCom田村)
こちらの資料は、今年の新入社員研修時に使用したものですが、「価値とは何か?」というテーマについて考えてもらいました。左側には大きな丸が2つあり、右側は商品のメリット、左側はお客様のニーズを示しています。ドコモグループでは様々なサービスを提供していますが、中には全く当たっていないものもあります。逆に、何が当たっているかと言えば、この2つの丸が重なった部分です。お客様のニーズと商品のメリットがしっかり合致したとき、そこにお客様に提供する価値が生まれると考えています。また、社会課題についても、重なりを増やすことや、重なっていない部分に踏み込んでいくことが重要です。
お客様のニーズと商品のメリットがぴったり合致したとき、そこに価値が生まれる
NTTコミュニケーションズの大型研修「CX4DX」では、
参加者自身がインサイトを見つける体験ができる
NTTCom田村)
顧客価値を最大化し、しっかりと学ぶために、mctさんと一緒に「CX4DX」という研修を実施しています。顧客体験(CX)の理解からデジタル変革(DX)を実現するためのアプローチを学ぶプログラムです。この研修はリモートで6日間行い、参加者は多い時で100名を超えることもあります。
顧客体験(CX)の理解からDXを実現するアプローチを学ぶ研修プログラム「CX4DX」は、mctがファシリテーションを担当
研修はやはり難しいもので、終了後は「すごく良い学びがあった」と感じることが多いですが、実際に仕事に戻ると忙しさや時間のなさに直面することが多いです。そういった状況の中で、どうやって通常の業務に学んだことを組み込んでいくかが、今後の課題です。mctさんと一緒に、その方法を模索しているところです。
こちらは6月の研修の様子で、約80名が参加しました。Day1からDay6までの内容があり、特に印象的だったのは、Day2のCX理解のインタビュー準備、Day3の実際のインタビュー体験、そして最後にゲーム要素を取り入れたDay6の社内発表です。
研修最終日の会場の様子
約80名の社員が一堂に会し、活気に満ちた雰囲気の中、最後のプレゼンテーションが行われた
Day2では、米本さんにCXの重要性についてお話しいただいております。mctさんのすごいところは、最新の事例を紹介していただける点で、こういう企業がこういうメッセージを出している、ここは良いところ、ここはうまくいっていないところ、などの情報を提供していただけるので、参加者には響いているのかなと思います。
弊社の参加メンバーからの実際の声では、CXのアプローチをデジタルで進化させる視点や、インサイトの見つけ方を学び、次につなげていければと思いますというコメントもいただいており、非常にいい研修となっています。
この研修では、実際にインタビューを行ってお客様のインサイトを探る取り組みもあります。毎回テーマを決めていて、今回はリモートワークをテーマに、お客様の課題や改善点について取り組んでいきました。インタビューシートを作成し、リアルなお客様像を設定し、その上でチーム全員で質問を考えるような取り組みを行っています。
研修では、社員がインタビュアーとなり、リアルなインタビューを体験
さらに、チームで生活者の潜在的なニーズや気づきを深掘りすることで、発見がより豊かなものになった
このスライドにある参加者からの声で、「インサイトは言葉で出てくるとは限らない」という意見がありました。必ずしも言葉で表現されるわけではないので、会話の中から本当に求めているものを見つける必要があるという点が、非常に良い学びだと感じました。
また、「表面的なことではなく、本当に解決したいことは何なのかを考える」ことが大切だと、mctさんからもおっしゃっていただいています。問題があると解決志向になりがちですが、本当にその人が困っていることは何なのかを考えることができました。
mct 米本)
ありがとうございました。会場からいくつかご質問もいただいています。
「オンラインで研修をどうやってやるんですか」という質問がありましたが、いかがでしょうか。
NTTCom田村)
オンラインでチームを何チームかに分けて、大体チームは6名ぐらいに分けています。講義の部分もありますが、mctさんの研修は結構手を動かしてもらったり、みんなでチームを組んで動いていくワークがあるので、その時はブレイクアウトセッションに入ってもらい、ワークとアウトプットを繰り返すような研修をしている状況です。
mct 米本)
そうですね、Zoomを使いながらなので、運営自体は問題なくできるんですけど、心がけているのは、その随所随所でハイライトシーン、つまり盛り上がりのある印象的な場面をやっぱり作りたいなと思っていて。冒頭にオリエンテーションを行って動機付けしたり、実際のユーザーにインタビューしてもらうというようなシーンも象徴的です。そういった印象に残るシーンを作りながら、盛り上がりを作って、オンラインでも効果的に進行するようにしています。
コニカミノルタ 宮澤)
私たちも、研修が終わった後にいかに実践をしてもらうかというのが難しいなと思っていて。その研修の後のフォローでこういうことをしているというものがあれば、教えていただきたいです。
NTTCom田村)
今度、mctさんと一緒に進めていこうと考えているのは、研修後にしっかりとアクションプランを立てて、自分の学んだことを具体的にどう活かしていくかを宣言する形でやってもらおうと思っています。
研修はやはりお一人で参加するとなかなか効果が最大化しづらいので、やっぱり上長を一緒に巻き込んでいくことが良さそうだということが最近見えてきています。そこを巻き込みながら、会社全体で育成を進める取り組みをしていこうかなと思っています。
コニカミノルタ 宮澤)
この上司を巻き込むというの、なかなか難しいので、すごいなと思いました。ありがとうございます。
mct 米本)
NTTcomさんの印象は、本当にいろんな事業とか技術があって、多角的に事業展開されているので、 組織ごとにもう別の企業みたいなイメージもあって、この研修でいろんな人と会うことで、それが組織を横断するきっかけになっているような印象もあるんですけど、どうでしょうか。
NTTCom田村)
そうですね、やっぱりこの研修で全然普段知らない人と話せて、研修後も業務でやり取りをしたり、あとは飲み会に行ったりすることもあるようです。そういった雰囲気があって、横のつながりを醸成する意味でも、すごく良い研修だなと思っています。
デンソーはクルマの技術をコアとし
モビリティ社会の発展に貢献する企業へ
デンソー山本様 以下敬称略)
デンソーの山本と申します。よろしくお願いします。
子ども向けのデザイン思考イベントを実践しましたので、今日はその内容を共有したいと思います。
デンソーは、クルマで培った強みを活かし、クルマの技術をコアとし価値提供範囲を広げ、モビリティ社会の発展に貢献する企業になりたいと考えています。
地球全体を「モビリティ社会」と見立てたときに、私たちはまだ小さな会社ですが、いざこの社会の発展に貢献しよう とすると、自分たちが意外と社会のことを知らないと気づかされたんです。そこで、まずは自分たちが世の中をもっとよく知ること、そして逆に世の中の方々にもデンソーのことを知ってもらうこと、この双方向の理解が重要だと考えています。そういった意識のもと、デザイン部としても新しい一歩を踏み出しています。
デンソーの取り組みを知ってもらう活動として
子どもを対象とした「あそびHX」を展開
デンソー山本)
さて本題に入りますが、今年は子どもの夏休み期間を利用して、小学生向けにデザイン思考のイベントを実施しました。
Copyright © DENSO CORPORATION. All rights reserved. 8月の夏休み期間中に、小学生向けのワークショップをこまきこども未来館(愛知県小牧市)で実施
デザイン思考を子どもさんにどうやったら理解してもらえるかをいろいろ考えて、自分たちで遊びに変えてみました。カードゲームや粘土を使った遊びにデザインして、一緒に遊ぼうというイベントでした。
どういう遊びをやったかを紹介しようと思いますけど、まずこの「丸いカード」。お子さんにテーブルに集まってもらって、このカードを配りました。真ん中に似顔絵を描いてもらいます。
まず、内側の円に「普段自分が嬉しいこと」を書いて周りに話してもらいます。その一つ外側の円に「お友だちが喜びそうなこと」を書いてもらい、さらに外側の円に「周りの人が喜びそうなこと」を書いてもらいます。
これでレベル3までいくと「ハッピーマスター」や「褒めマスター」とか、いろんな4つの マスターがあるんですけど、そういうのに子供に挑戦してもらってですね、全部コンプリートすると「グランドマスター」です、というような遊びをやってみました。相手や周囲へ思考を広げることを狙いとしてデザインしました。
Copyright © DENSO CORPORATION. All rights reserved.
カードゲームを通じて、自分と周囲の人とのつながりについて広く考えてもらう
他には、タブレットを使ったゲームです。これはいわば街づくりをするゲームです。 例えば、自動運転レーンを敷くというコマンドを入力すると、それによって町が発展し、工場が新しく建設されたり、農場ができたりするんですね。
また、次にどのような社会実装を行うか、例えば発電所を建てると、その結果として工場がさらに大きくなる一方で、農場が小さくなるといった、さまざまな連鎖反応を体験できるゲームです。社会に実装した時にどんな影響が連鎖して起こるか、ということを子供たちが体験できるように作られています。
こういった遊びを通して、子供たちと一緒に楽しく学んできました。
Copyright © DENSO CORPORATION. All rights reserved.
街づくりをするゲーム
商品やサービスを社会に実装した時にどのような連鎖反応が起こるかを考えることができる
mct 米本)
ありがとうございました。デザインの浸透の取り組みをされている企業はたくさんあると思うんですけど、その手段として子供向けのワークショップを行うというのは、かなりユニークな感じがします。これは、やはり子供向けに開催することで、自分たち自身が学ぶという意味合いがあるんでしょうか?
デンソー山本)
まずデンソーはなかなか子供の世代との接点ってないので、そこは意図的にやってみようと思った部分はあります。実は他の世代、 中高生とか大学生とか大人世代に向けても取り組んでいるんですけど、僕は今年はこの子供向けのやつが1番肝だなって思って取り組んでいます。
mct 米本)
なるほど。子供とやることでやられた学びは何かあったりするんですか。
デンソー山本)
子供ってある意味こっちに付き合ってくれない部分があって、 大人の都合で動いてくれないところがありますよね。で、結構正直っていうか、シビアな部分があって。例えば、これをやる時も、 1ヶ月前に予行演習をやっていますが、その時はもうプロトタイプ、本当にああいうカードも印刷がまだちゃんと作ってないものを使ってやったんですけど、その時と本番とで全然、反応が違ったなっていうのはあって。
それは単純にその、グラフィックの完成度もあるし、やっぱりゲーミフィケーション、そういうところのデザインもちゃんとやってないと、子供騙しみたいなのは全然通用しないなって感じました。
mct 米本)
なるほど。大人のビジネスマンだと空気を読んでやってくれちゃうけど、子供とやると、普段見えない課題とかが出てくるってことですよね。すごく面白いなと思います。
宮澤さん、田村さん、いかがですか。
コニカミノルタ宮澤)
お子さんに向けにデザイン思考をやるっていう発想がまずすごい。それがちゃんとこのワークショップっていう形になっているところが素晴らしいなって思ったんですけど、その社会に向けてデザイン思考、 発信していくというか浸透させていく意味、意義があったら教えていただきたいです。
デンソー山本)
1つは、 僕らの 取り組みを世の中に知ってもらいたいなというのがあって。デザイン部がその発信していくものの、手持ちのカードってあんまりなくて、唯一あるのはやっぱりデザイン思考なんですよね。それを自分たちで遊びに変えて、デンソーってこういうことをこういう考え方で取り組んでいますよっていうのを、 遊びを通じて知ってもらったり。
田村さんもおっしゃっていたことなんですけど、やっぱりデンソー1社でできることって限界があって、共創パートナーを作んなきゃいけないっていうのがありますので、こういう活動をしていくことで、一緒に大きな社会課題を解決していくパートナーを見つけていきたいなという想いですね。
NTTCom田村)
デンソーさんのイメージがすごく変わったなと思いました。僕との仕事の接点でいくと、ドコモショップにいた時に棚卸しでデンソーさんのRFIDシステム(無線通信システム)を使わせてもらっていましたが、今日お伺いするとデザイン思考を取り入れながら、違う領域というか、新領域の方に 足を伸ばしていかれようとしているのかなと。刺激を受けました。
デンソー山本)
ありがとうございます。実は全然違う領域じゃないのかもしれなくてですね、世の中をこう縦に割った時に、ちょっとこう、デンソーがどこかしらにいるみたいな。そういうことができるといいなと思っていまして。それこそ物流の世界でも、そういう通信の技術のところで何かしらデンソーが入っているみたいなことも、僕ら今後も目指していきたいなと思っています。実はやることは、一緒というか。
NTTCom田村)
そういうことなんですね。いろんなところに、点で今入っているところを、こう、繋いでいってという形なんですね。
BtoB企業にデザイン思考を浸透させるには?
mct 米本)
皆さんにお伺いしたいのですが、デザイン思考の研修を行っていると、BtoBではデザイン思考が難しいという話をよく耳にします。特に「顧客志向」や「顧客のニーズが想像しづらい」といった点についてです。このあたりについて、皆さんはどのようにお考えでしょうか?また、どのように取り組んでいらっしゃいますか?
デンソー山本様 以下敬称略)
私が以前、事業部にいた時のことなんですが、エンジニアから「デザイン思考のワークショップをやってほしい」と言われたことがありました。どう進めるべきか悩んだ末に、みんなで散歩に出かけて、散歩の中で面白いものを見つけてくるといった活動をしたんです。その時に感じたのは、私個人の意見ですが、やはりBtoBにおいてはデザイン思考が難しいと感じる部分があるということです。
BtoBの現場では、どうしても「最大公約数的に価値のあるものを作る」というマインドが染み付いていて、N=1のような個別の視点から発想することが少ないんですね。なので、まずそのマインドセットの転換が必要だと感じました。なので、 メソッド化して「一緒にやってみましょう」というスタンスで取り組むと、うまくいった経験があります。
mct 米本)
なるほど。メソッドやツールがあるから、やっぱりそれに惹かれるというか。
デンソー山本)
そうですね。そういう感覚はあります。
コニカミノルタ宮澤様 以下敬称略)
BtoB企業でも実際にお客様と接点があって、そのために研修に来られる方はもちろんいらっしゃいます。ただ、それだけではなく、コーポレート部門や間接部門の方々にも、普段の業務改善にデザイン思考を使ってもらいたいという思いがあり、「全社員に来てほしい」という形で募集をしています。
なので、BtoB企業でありながらも、イノベーション創出を目的に参加される方もいれば、組織改善のために参加される方もいらっしゃるので、会社全体としては「BtoBだから困る」といったことは実はないですね。
あと、社内の連携で言うと、他部門でプロセス改善活動を推進されていますが、 デザイン思考とバッティングするわけではなく、互いに「ここがいいよね」と言い合っています。例えばプロセス改善の全社大会というものがあるのですが、その中にデザイン思考の観点から優秀賞を選考させてもらったりして、お互いWin-Winの関係を築いているかなと思います。
mct 米本)
イノベーションという視点に限らず、身近なところから改善していくことも含めているという。
コニカミノルタ宮澤)
そうですね、はい。
NTTCom田村様 以下敬称略)
直接の回答になるかわかりませんが、研修の先に「カタリスト」という認定制度があります。カタリストは、いわゆるお客様と共創して事業を進めていく専門人材で、今その社内メンバーが800人ほどに増えてきています。そのメンバーはTier1、Tier2といったレベルに応じて認定されています。
少し会社の紹介になってしまいますが、私たちの大手町に「OPEN HUB」という拠点があり、そこではカタリストのメンバーが研修を受け、認定された後、お客様との共創の場を作っています。そこでは、様々なサービスや社会課題の解決策を紹介するだけでなく、お客様を招いて実際に会話をしながら、お客様のニーズを探っていくことに重点を置いています。解決を押し付けるというよりも、対話を通してお客様に適したものを見つけ出す、という活動に繋げている感じです。
mct 米本)
デザイン思考を学ぶだけじゃなくて、その先にちゃんと実践に繋げていくような枠組みもご用意されているということなんですね。
CX推進担当者としてのこだわり「俺のCX」
mct 米本)
これまで各社のCX施策について伺ってきましたが、ここでちょっと視点を変えて、皆さんの個人的な経験についてお聞きしたいと思います。
組織としてのCX活動は伺いましたが、実際に取り組まれたご本人として、どんな心構えで臨まれたのか、特に意識されたことはありますか?「ここは私が頑張った!」というエピソードでも構いません。
デンソー山本)
私の場合、最初の一歩を踏み出すのにかなり迷ったんですけど、実際に社外に出て行って、人脈作りをしたり、現場の空気を知ったりすることから始めました。これが私なりの工夫だったと思います。
私はステージを用意する役割で、実際の企画やデザインはメンバーに任せて、私は「どこで」「誰と」やるべきかというベースづくりに注力しました。適切な場所を探して歩き回るみたいなところをやったと思います。
NTTCom田村)
私は研修の観点からになりますが、mctさんと一緒に毎回テーマを工夫していくことを意識しています。参加者がより興味を持って取り組めるように、テーマ設定は毎回真剣に考えていて。
最近だとリモートワークについて考えたり、その前は睡眠の質を考えるワークショップ、あとはショッピング体験について検討したり。いろんな部のメンバーがいるので、やっぱりどのメンバーも共通して取り組めそうな課題にすることは、やっぱりその顧客志向を考える上ではいいんだろうなと。
mct 米本)
田村さんのお話は、研修テーマの選び方自体に参加者視点が組み込まれている。これ自体がUXの実践、参加者思考という感じがしますね。
それに山本さんの取り組みも面白いですね。社外の方々とコラボレーションしながら、自社だけでなく外部のリソースも活用して価値を作っていく。すごく重要な視点だなと思いました。
宮澤さん、いかがですか?
コニカミノルタ宮澤)
私も田村さんと似ていて、私が大切にしていることはコミュニティで…参加者にもいろんな立場の人がいます。マーケティング、カスタマーサービス、品質保証、営業など、様々な立場の方が集まっていて、その方々が何か1つでも、参加してよかったなって思えること、気づきがあるということを 大切にしていいます。
例えば、「この人とこの人が話をすれば、何か面白いことが生まれそうだな」という仮説を持って、つなぎ役に回ることも多いです。やっぱり一番大切にしているのは、参加者の人に喜ばれることをしようということかな。
mct 米本)
なるほど、皆さんのお話を伺っていて、一つの答えが見えてきた気がします。顧客志向がすごく大切で、それが皆さんのモチベーションにもなっているんですね。
顧客のこともそうですが、サービスを届ける従業員の方々にもどうあってほしいのか、というところまでしっかり考えていらっしゃる。それが皆さんのお話から強く伝わってきました。
ここで会場の皆さんからもご質問やコメントをいただければと思います。当社のCXエキスパートであるジョナサン・ブラウンをご紹介します。
JBさん、全体を通していかがでしたでしょうか?
mct JB)
私はNTTコミュニケーションズさんのCX4DXについては前から存じ上げていましたが、これほど大掛かりにCXのトレーニングを実施されているのは、本当に素晴らしいと思います。
また、デンソーさんの子供の視点を取り入れる話を聞いて、私自身の頭の中がリフレッシュされる感覚を覚えました。私たち大人は、日々の業務の中で、あるいはイノベーションを追求する中で、どうしても決まった枠の中でしか考えられなくなってしまう。その限られた発想の範囲から抜け出すために、僕もリフレッシュしてみたいなと思いました。
本日は貴重な気づきをいただき、ありがとうございました。
mct 米本)
ありがとうございます。では、最後、お一方ずつ、全体通じて何かコメントをいただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。
NTTCom田村)
このような場に参加させていただき、本当にありがとうございます。普段は社内のことばかり考えていて、社外の方々とこうしたコミュニケーションを取る機会があまりなかったので、今日、皆さんがデザイン思考で、本当に真摯にお客様のことを考えながら業務に取り組まれている様子を知ることができて、とても良い刺激になりました。明日から、また新しい視点で頑張っていきたいと思いました。
デンソー山本)
CX Day と謳いながら、CX については直接触れていない資料で恐縮だったのですが、資料の中には「幸せ」や「幸福」といった言葉をちりばめており、今日のテーマ“HAPPY CX DAY”に少し触れられたのかなと思っています。
まだ説明しきれていない部分もありますので、また改めて皆さんにご紹介する機会が持てればと思っています。ありがとうございました。
コニカミノルタ宮澤)
私も社外の方の事例について、記事で読むことはあっても、直接お話を伺う機会は少なく、オンラインで一方的に聞くだけになりがちでした。今日こうしてトークセッションという形でお話できて、本当にうれしく思います。
実際はもっと泥臭く……そんなにうまくいかなかったよみたいな経験もたくさんありますので、また後ほどそのあたりもお話できればと思います。ありがとうございました。
mct 米本)
それでは、これでクロストークを終了いたします。改めて、3名の方に拍手をお願いいたします。ありがとうございました!
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