企業では部門間のサイロ化により、顧客の声(VoC)の効果的な活用が妨げられています。
解決には、部署間の知見共有とテクノロジーを活用したデータの一元管理、そしてCXビジョンの組織全体での共有が重要です。
みなさんこんにちは、mctのデザインリサーチャー、佐藤です。
VoC(顧客の声)をCX向上に活かす方法論に関してシリーズブログをご提供していますが、2回目となる今回は、VoCを活用するための組織のあり方についてお話しさせていただきます。
VoC活用を阻む、企業のサイロ化
多くの企業では、顧客の声は様々な接点で収集されています。しかし、その声は本当に組織全体に適切に行き渡っているでしょうか?生産現場のスタッフ、営業スタッフ、開発スタッフ、経営層など、立場の異なる社員間でVoCが効果的に共有・活用されているかを考えると、そこには大きな課題が存在します。
その課題を深堀りすると、主に以下の2つの問題点が浮かび上がってきます。
1つ目は、部門ごとの視点の偏りです。
例えば、営業部門は売上に直結する顧客の要望に注目し、開発部門は製品の技術的な改善点に関する声を重視する傾向があります。これは当然のことかもしれませんが、結果として組織全体での包括的なVoC活用を妨げることになります。
特に注目すべきは、多くの顧客の問題が単一部署の範囲内ではなく、部署と部署の間のギャップから発生しているという点です。例えば、営業部門と製品開発部門の連携不足による納期の問題や、カスタマーサービス部門とシステム部門の認識の違いによるサポート品質の低下など、部署間の境界で問題が発生することが少なくありません。これらの問題を解決するためには、各部署が持つ知見を共有し、統合的に活用することが不可欠です。
2つ目は、VoCの管理・活用における構造的な課題です。
A.様々なソースから得られるフィードバックが一元化されていない状態。コールセンター、営業現場、SNS、アンケートなど、異なるチャネルからの声が個別に管理され、全体像が把握できません。
B.フィードバックの分析時に、社内システムからのデータや市場データ、環境データなどとの相関関係が十分に検討されていない状態。この場合、より深い洞察を得る機会を逃している可能性があります。
C.分析されたデータが、各ステークホルダーにとって使いやすい形式になっていない状態。本来なら、フロントラインのスタッフには即時のアラートや行動指針が、地域マネージャーには担当エリアの統合データが、経営層には長期的なトレンドを示すダッシュボードが必要など、役割に応じた最適な形式での提供が求められます。
これらの課題は組織の規模が大きくなるほど深刻化し、結果としてVoCの効果的な活用が阻害されてしまいます。
VoC運用には、テクノロジーの活用が不可欠
良質なカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供するためには、組織として様々な要素を整備する必要があります。具体的には、以下の6つの要素が重要となります。
まず、組織全体で共有するCXの「ビジョン」を策定し、顧客「インサイト」を適切に収集・分析する必要があります。それらに基づいて顧客体験の「デザイン」を行い、その効果を継続的に「測定」していきます。さらに、これらの活動を適切に「ガバナンス(管理)」するとともに、社員が自発的に良いCXを考えられるような「カルチャー」を醸成することも重要です。
これらは、私たちmctが提唱する「良いCXを提供するための組織の条件」ですが、これらの活動にVoCを効果的に組み込むためには、適切なデジタルツールの活用が不可欠です。なぜなら、VoCは形式も量も多岐にわたり、人手だけでは適切な管理・活用が困難だからです。
この課題を解決するのが、EFM(Enterprise Feedback Management)と呼ばれるフィードバック管理システムです。株式会社エクレクト様が提供するMedalliaなどがその代表例ですが、これらのシステムはデータの収集から分析、レポーティング、さらには改善施策のアクション管理まで、VoC活用に必要な一連の機能を提供します。その詳細については、シリーズブログの3回目で詳しくご紹介する予定です。
さらに、テクノロジーの活用が不可欠な理由として、データのボリュームと時間の制約があります。現代のビジネスにおいて、膨大な数の顧客からリアルタイムで寄せられる声に対して、適切なタイミングで対応するためには、高度なテクノロジーの支援が必要不可欠です。例えば、AIを活用した自然言語処理による感情分析や、機械学習を用いた傾向分析など、先進的なテクノロジーの活用により、より効果的なVoC活用が可能となります。
セミナーでは、より深い内容をお届けします
来月、2月5日に株式会社エクレクト様と共催するセミナーでは、これらの内容をさらに掘り下げてご紹介します。特に「サイロ化の具体的な問題点」や「EFMソリューションの位置づけ」など、具体的な考え方を交えながら、実践的な知見をお伝えする予定です。
VoCを効果的に活用し、本当のCX向上を実現したいとお考えの方は、ぜひご参加ください。セミナーを通じて、皆様の組織におけるVoCプログラムの構築・改善にお役立ていただければ幸いです。