Case Study

ライオン株式会社様|「ORAL FIT」のサービス開発にあたり、機会探索からMVP定義・検証までを伴走支援

ヘッダー
#ビジネスデザイン #新規事業開発 #伴走型支援
 

ーOverview

ライオン株式会社(以下、ライオン)が手掛けるお口のフィットネスサービス「ORAL FIT(オーラルフィット)」の開発にあたり、mctが機会探索や事業コンセプト開発などの支援を行いました。どのように「ORAL FIT」のコンセプトに辿り着いたのか? ライオンによる新たな事業創出ストーリーをご紹介します。

  • PJ Type    |機会探索・初期アイデア開発~プロトタイピング
    体制         |新規事業開発チームへの伴走型支援
    期間         |2年
     
    Background
    ・少人数で事業開発をする中で、足りない部分を補える第三者が必要だと感じていた。
     
    Key supports by mct
    ・機会探索フレームワーク、インタビュー設計やプロトタイプ制作など、mctのノウハウを活かした支援。
    ・共同ワークのファシリテーション、各フェーズにおける学びと論点の整理による、ライオンメンバーの主体的な意思決定を促進する伴走支援
     
    Outcomes
    ・お口の筋力向上を目指すサービス「ORAL FIT」をローンチ。
    ・プロセスを通して、納得して意思決定ができたため、後から迷いが生じることなく推進できた。

 

ーClient Profile

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春田敏伸さん
一般用医薬品や医薬部外品の企画開発などに携わり、その後は会社の制度でMBAを取得し、新規事業開発を担当。当時の会長のもとで新規事業の構想・検討を進めるミッションを担う。ORAL FITでは、プロジェクトマネジメントを行う立場として経営視点で事業立ち上げを先導。 
 
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萩森敬一さん
入社後、R&D部門で医薬品関連と日用品の製品開発業務に10年ほど携わり、その後、新規事業開発を担当。現在はORAL FITのプロジェクトリーダーを務める。

 

ーProduct

『ORAL FIT』は、お口周りの筋力の低下が原因のひとつとして考えられる、「むせる」「話しづらい」「噛みづらい」という衰えに対して、「話す力」や「噛む力」などのメカニズムに着目したトレーニングメニューを行うことで筋力向上を目指します。スマートフォンのアプリケーション上で、お口の状態にあわせたトレーニングメニューが毎日配信されます。
自宅で手軽に行うことができ、1日10分、2ヶ月間トレーニングを続けることで、気になるお口機能の衰えの改善が期待できます。
(出典:ライオン株式会社 プレスリリース

 

ーKey Supports

Process

春田さん・萩森さんを中心とした新規事業開発チームに伴走する形で、機会探索・初期アイデア開発からプロトタイピング、仮説検証・ブラッシュアップまでのプロセスをご支援。
初期の機会探索フェーズからはデザインストラテジスト2名、MVPの具体化フェーズ以降はUXデザイナー2名と大伸社コミュニケーションデザイン(mctのグループ企業)のアートディレクター1名をアサインして5名体制で推進。
 

 

ーProject Background
2人の経験値・得意分野で足りない部分を補える第三者が必要と感じていた

 ――当初、どのような経緯でmctにご依頼いただいたのでしょうか?
 
春田さん: 当初、取り組み領域は「介護・介護予防」と決まっていたものの、範囲が広くどこから取り掛かっていいかがわからず、外部の視点を入れようということになり、新サービス開発で取り組み実績のあったmctさんに声をかけました。自分自身、事業開発に取り組むのが初めてということもあり社内だけでは難しいと感じており、当時のプロジェクトオーナーの会長とも「そろそろ外部に協力を求めてみるタイミングじゃないか」という話をしていました。
 

――プロトタイピング・仮説検証のプロセスでも継続的にご依頼いただきました。その際にはどのような課題がありましたか?
 
萩森さん: テーマが固まり進み出してくると視野が狭くなってしまうという問題があると思います。そこで第三者の視点とノウハウを持つ人に、分析や方針検討に入ってもらうことが必要と考えていました。
 
春田さん: 2人という少人数で検討を進めていく中で、2人でカバーできる得意領域から外れる部分があり、検討に漏れが出てしまうという不安がありました。そこをmctさんが伴走してカバーしてくれていて、よい補完関係にあったと思います。
 
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ーKey Points
学びと論点を整理することで、次の動きを決めやすいように伴走してくれた

――実際にmctの支援を受けて役立った点はありますか?

春田さん: mctさんが打ち合わせごとの論点整理や、取り組みフェーズごとに得られた学びの整理をしてくれたのはすごく重要な部分でした。「この期間でやったアウトプットはこうです」だけでなく、「これがわかったから次はこの観点を考える必要がある」ということまで提示されたので、次のステップについてすごく考えやすかったです。
 

萩森さん: その通りですね。フェーズごとに提出されるレポートも、必要な情報を言葉としてしっかり見える形にしてもらっていたので、その内容にしっかり向き合うことができて、自分の中での考えをまとめることができました。その点はすごくよかったと思っています。

春田さん: 属人的なことかもしれませんが、フラットで中立的な立場からのファシリテーションもすごくよかったです。本当にダメそうな選択肢には「これはちょっとダメなんじゃないか」と言ってくれるので、導かれていたのかもしれないですが(笑)。自分たちで決めているという感覚を強く持ちながら、推進することができました。

萩森さん: その中で、検討が抜けている観点は指摘してくれる。次への課題が見えるし、個人的に勉強になることもありました。
 

――プロセスの中で特に重要だったポイントはどこでしたか?
 
萩森さん: 印象に残っているのは、プロトタイプを作りはじめた時期(*MVP要件定義フェーズ)に、mctさんとmiro上で作った「テーマにまつわる課題の分解と対応する既存の技術・ソリューションをまとめた表」です。あれはプロジェクトにおけるすごく大きなポイントでした。
 
春田さん: あれはすごくよかったですね。
 
萩森さん: 研究所メンバーを巻き込み始めた時期でしたが、自分や社内の知見がどのように役立つのか、一気に理解が進んだのを感じました。また、一覧表の解像度を高めていく中で、mctさんが客観的な視点から「それはどういうことですか?」という疑問を投げかけてくれて、そのやり取りの中で、テーマである口腔機能に関するみんなの理解がどんどん深まっていきました。あれがなければORAL FITは生まれていなかったかもしれないです。
 
春田さん: この表を見るまでは「オーラルフレイルというテーマは決めたものの、どうなるんだろう? ライオンとしてできることはあるのかな?」という状態で不安だったんです。この表がでてきてライオンのメンバーも一気にドライブがかかりました。
 

PS Map
課題・既存ソリューションの一覧表

 

足りないところをmctに補ってもらうことで、自分たちでやるべきことに注力できた

――「機会探索」のフェーズはどのように実施したのでしょうか?

春田さん:
当初は「介護・介護予防」という広い取り組み領域に対して、自分の中でもあやふやで「これで大丈夫かな?」という不安が大きく、手探り状態でした。この時にはいくつかの進め方を試していましたが、その中でmctさんからの提案で、テーマを細分化してマップを描いて機会を探索するということを行いました。実際にやってみると、網羅的に検討ができている感じがあって安心感がありました。
具体的には、そのマップを使って出た複数のアイデアから4テーマに絞り込み、実際に顧客の実態やニーズの調査を実施し優先度をつけ、1テーマに絞り込みました。
 

――「初期仮説検証」のフェーズではどのようなことをしましたか?
 
春田さん: mctさんにインタビューの設計をしてもらって、インタビュアーは自分たちでやりました。
 
萩森さん: 初期段階であるほど、インタビューは自分たちでやるべきだと思います。ターゲットとなる人たちと自分自身が会話することで、質問しながら自分の中で顧客に対する理解が深まってきますし、テーマに対する思いも強くなってきます。
 
春田さん: 当時はインタビューをやるのも初めてだったので、最初のうちは大変でしたね。ただ、自分たちでインタビューをやったことでテーマの優先度をつけやすかったです。自分が会話することで「こう言っているけど実はこう思っているのでは」というところを汲み取りながら進められたと思います。当初は4つのテーマについてインタビューを行いましたが、話しながら一番感触がよかったのがオーラルフレイルのテーマでした。
 
 
――仮説検証をする際のmctの役割は何だったのでしょうか?
 
春田さん: インタビュー設計や検証用のマテリアル作成はmctにお願いしました。インタビューごとに聞くべきポイントを洗い出し、具体的な質問項目に落とし込むことは難易度が高かったですね。当時はお客様の本質的な課題を聞くようなインタビューのノウハウがあまりなかったので、自分たちだけでやるのは難しく、お任せする中でノウハウを得たところもあります。時間的な面でも、このクオリティの質問項目やマテリアルを準備するのは大変なので、そういった点でも助かりました。
 

インタビュー風景-1
仮説検証インタビュー

 

プロトタイピングではデザイナーが議論に入り、その場で考えや想いを汲み取って形にしてもらえた

 ――「MVP要件定義」や「MVPを用いた検証」のフェーズの進め方はいかがでしたか?

春田さん:
mctさんのUXデザイナーと大伸社コミュニケーションデザインさんのアートディレクターが入って、LP (ランディングページ:提供価値・核となる機能の解像度を高めるための検証を行う際に用いるプロトタイプ) の制作を行ってもらいました。この体制はすごくよかったです。

萩森さん:
私たちだけでは欠けているところに、ピタッとはまる体制で進められました。

春田さん:
ザイナーが議論に参加をして、私たちが考えていることを汲み取りながら「こんな感じですかね?」とその場でビジュアル化してイメージを共有してくれるので、非常にスムーズだったし、それがよかったですね。紆余曲折を含めて議論をわかっているので、持ち帰って作っていただく検証用のLP制作も、イメージのズレがなくスムーズに進んだ印象です。クオリティも高かったですね。
後にソリューションを作り込む際も、LPを作ったアートディレクターがサービス用のお口のトレーニング動画のディレクションも行ってくれたので、最後までサービスの世界観がぶれずに進みました。「ORAL FIT」というサービス名も、実は初期のLP制作時から使っています。
 
プロトタイプ
初期のプロトタイプ(LP)

 

ーProject Outcomes
各フェーズで納得して自分たちで決めているので、後から迷いが生じずに推進できた

 ――プロジェクトを振り返っていかがでしょうか?
 
春田さん: mctさんに「こういう方向性がいいだろう」という考えはあったとしても、ライオン自身が意思決定をするというスタイルで議論を進行してくれたのがよかったと思います。コンサルタント側がバシバシ決めて進んでいくというパターンもありますが、特に新規事業では社内の人が決めていかないと絶対ダメだと思っています。
 
萩森さん:自分で決めて自分たちで納得して進んでいるので、後から迷いが生じないですよね。新規事業は必ずしもうまくいくことばかりではないですが、納得して決めているので、何か途中でうまくいかないことがあっても戻る場所がわかっている。そこは大きいですね。
 
 
――プロジェクトに参画いただいた他の方からの反応はいかがでしたか?
 
春田さん:「このプロジェクトは楽しかった」って言ってくれた人が多かったです。新しいことに取り組めてよかったとか、推進スピードがよかったとか、そういった話を聞きました。
 
 萩森さん:そうですね、研究所のメンバーも「進捗が早くてやっていて楽しい」とよく言っていましたね。メンバーとしてもどんどん議論が形になっていく感覚を持てたんだと思います。
 
 
――最後にORAL FITの今後の展開をおしえてください。
 
萩森さん:2020年から後期高齢者を対象にフレイル検診がスタートし、口腔機能もその対象になっています。ライオンとしても口腔機能を重要なテーマとして捉えており、それに対するプロダクトを形にできたのは1つの成果です。実際に「オーラルフレイルの人が見つかったけど、どのように支援や対策してよいかわからない」という声が各所から徐々に届くようになっており、注目が集まってきていることは感じています。そのような中で、サービスが多くの人に使われ、ORAL FITが提唱する“お口のフィットネス”が日々の習慣として定着していくことを目指していきたいと思っています。
 

 

今回は、ライオン株式会社が提供する「ORAL FIT」のサービス開発にあたりmctが伴走支援という形で機会探索からMVP定義・検証までをサポートさせていただいたプロジェクトについて、当時、中心となって推進されていた春田さん・萩森さんにお話を伺いました。
 
※本記事は2024年3月に行った取材をもとに作成しました。
 
 
 

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