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Series|サービスブランディング―(4) ZMETで見つける、顧客の深層ニーズとは?

作成者: Haruhiko Kusanagi|25/05/15 3:50

 
 
サービスブランディング・ブログ第四稿
本当のニーズは通常のインタビューでは捉えられない。
顧客すら自覚していない「本音」を引き出す「ZMET」とは?
 
 
 
「お客様の声を聞いています!」と多くの企業が言いますが、本当にお客様の「声」を聞けているでしょうか?

実は人間の購買決定の95%は無意識の領域で行われていると言われています。つまり、アンケートやインタビューで「使いやすさが大事です」と答える顧客も、実際の選択では全く別の理由でサービスを選んでいるかもしれないのです。

今回は、顧客すら自覚していない「本音」を引き出す画期的な手法「ZMET」をご紹介します。この手法を使えば、競合が決して真似できない、あなただけの差別化ポイントが見つかるかもしれません。


なぜ通常のインタビューでは深層ニーズを捉えられないのか?

多くの企業が行うグループインタビューやアンケート調査では、顧客の深層心理を十分に引き出せないという課題があります。

その理由は:
【1】人間の思考の95%は非言語的:ハーバード大学の研究によれば、人間の思考プロセスの95%は無意識レベルで行われており、言語化できるのはわずか5%程度です。
【2】社会的同調性の影響:グループインタビューでは他の参加者の意見に影響されやすく、本音が出にくい傾向があります。
【3】自分自身の理解不足:多くの場合、人は自分が本当に何を求めているのかを自覚していません。
 

ZMET法とは?

ZMETは、ハーバード・ビジネススクールのジェラルド・ザルトマン教授が開発した、顧客の深層心理を引き出すためのインタビュー手法です。

この手法の特徴は
【1】画像を活用する
言葉ではなく画像を使うことで、無意識の考えや感情にアクセスします。
【2】メタファー(比喩)を探る
人間は抽象的な概念や複雑な感情をメタファーを通じて理解していることに着目し、それを明らかにします。
【3】個別インタビュー
社会的影響を排除した環境で、一人ひとりの深層心理を丁寧に掘り下げます。
 
 

ZMET法の具体的な実施プロセス

【1】事前準備
参加者に「〇〇(テーマ)について、あなたの考えや気持ちを表す画像を8~10点集めてきてください」という課題を与えます。
【2】ストーリーテリング
各画像について「なぜこの画像を選んだのか」「この画像からどのような感情や記憶が浮かぶか」を語ってもらいます。
【3】欠落イメージの確認
「表現したかったけれど、見つけられなかった画像はありますか?」と質問し、言語化されていない要素を探ります。
【4】構造化マッピング
複数の画像の関連性や階層構造を整理し、テーマに対する参加者の思考構造を可視化します。
【5】感覚的メタファー
視覚以外の感覚(音、味、匂い、触感)でテーマを表現してもらい、多角的な理解を深めます。
【6】デジタルイメージ合成
参加者とともに複数の画像を合成し、理想的なイメージを作り上げます。この文章はダミーテキストです。文字サイズや行間などを確認するために入れています。この文章はダミーテキストです。文字サイズや行間などを確認するために入れています。 
 
 

ディープメタファーとは何か?

ZMETの重要な発見の一つが「ディープメタファー」です。これは、幼少期に無意識のうちに全ての人間に組み込まれ、消費者の認識や行動に深く影響を与える普遍的なメタファーのことです。

主な7つのディープメタファーは
【1】Balance(バランス):安定や調和への欲求
【2】Transformation(変容):変化や成長への願望
【3】Journey(旅):人生や体験のプロセスとしての捉え方
【4】Container(容器):保護や区分、所属と排除の感覚
【5】Connection(つながり):他者や物事との関係性
【6】Resource(資源):能力や資産としての捉え方
【7】Control(制御):自律性や影響力への欲求
これらのディープメタファーを理解することで、顧客の行動原理をより深く把握し、響くブランドメッセージを構築することができます。

 
ZMET実践事例:医療機器メーカーの革新
前回も少し触れましたが、CTスキャンを製造する医療機器メーカーが、小児患者向けの検査体験を改善するためにZMET法を活用した事例をより詳しく見てみましょう。

従来の調査では「検査が怖い」という表層的な回答しか得られませんでしたが、子どもたちに「検査についてどう感じるか」を表す画像を集めてもらい、ZMET法でインタビューを実施。すると、「未知の空間への不安」と「冒険への好奇心」という、相反する感情が明らかになりました。

この発見をもとに、CTスキャン室を「海賊船の冒険」や「宇宙探検」といったテーマパークのような空間に改装。検査自体を冒険の一部として体験できるよう再設計したところ、子どもたちの不安が大幅に軽減され、検査効率も向上しました。
 
次回は「ブランド体験が変える、顧客の記憶と選択」というテーマで、顧客の心に残る体験設計について解説します。


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