

Illustrations by Kristina Volchek
みなさん👋
欧米とアジアのプロダクトデザインのニュースレターは、特にMediumの中国、台湾、韓国のデザイナーから、予想以上に多くの議論を呼び起こしました。
単に東洋 vs 西洋というだけでなく、それぞれの国には文化や言語、ユーザーの情報処理方法によって形成された独自のUXルールがあります。
今回は、アジアのデザイナーたちから直接聞いたインサイトをご紹介します。早速見ていきましょう!
🌏 アジアのUX:最も驚いたこと
中国、台湾、韓国のデザイナーたちから直接話を聞いてみて、UXに関してはまだまだ語られるべきことがたくさんあると気づきました。特に印象的だったポイントを紹介します:
- 🇨🇳 中国のデザイナーたちは、実はもっと西洋的なミニマリズムを求めている。
- 🇹🇼 台湾のデザイナーたちは、自分たちはミニマリズムを追求しすぎたのではないかと疑問を持ち始めている。
- 🇯🇵 日本のウェブデザインは今でも印刷物のデザイン、特に雑誌のようなカラフルで情報量の多いレイアウトの影響を強く受けている。
- 🇰🇷 韓国のユーザーは、中国のスーパーアプリのような情報が密集したUIと、極限までシンプルなインターフェースの両方を、違和感なく使いこなしている。
では、これらのUXトレンドは各国でどのように発展してきたのでしょうか?👇
🇨🇳 中国:効率性が美しさを上回るとき
中国のアプリが情報でぎっしり詰まっているのには理由があります。それは、スピード、マルチタスク、そしてビジネスKPIを達成するために設計されているからです。
しかし、ここで意外な事実があります:多くの中国人デザイナーはこの状況を好んでいません。
何人かのデザイナーは、「よりクリーンなUI」や「アクセシビリティの向上」といった西洋のデザイントレンドが、将来的に中国のプロダクトに影響を与えることを願っていると語っていました。
これは、中国のUIデザインにおける変化の兆しを反映しています:
- UIスタイルの分岐 — あるブランドは伝統的な中国美学を強調し、別のブランドは洗練された西洋風のデザインを採用しています。
- スーパーアプリの支配 — WeChatやAlipayのようなプラットフォームによって、ユーザーは「なんでもできる」機能性を当然のように期待するようになり、シンプル化するのは一朝一夕には難しい状況です。
- 静的なUI — モーションデザインへの関心はデザイナーの間で高まっていますが、多くの企業はいまだにそれを重視せず、アニメーションよりもKPIを優先しています。
🇹🇼 台湾:ミニマリズム…でも、やりすぎ?
台湾のUIデザインは西洋のミニマリズムを忠実に踏襲しており、余白、明確な階層構造、シンプルさを重視しています。実際、アラン・リーは次のように述べています:
ミニマリズム、余白、明確な階層構造——これらはUIデザインにおいて最も重要であり、神聖にして不可侵のルールです
— アラン・リー
しかし今、台湾のデザイナーたちは自問し始めています。私たちはやりすぎたのでは?
中国語のユーザーは、情報が密集した画面にも自然に慣れているため、もっと情報量の多いUIの方が、実はエンゲージメントを高められるのでは?
台湾のUIの現状は、まさに分岐点に立っているようです:
- 西洋のUX原則が主流ではあるものの、細部を削ぎ落としすぎたのでは?と疑問を抱くデザイナーも出てきています。
- 台湾のアプリは、中国や日本のデザインよりも洗練されてはいるものの、それでも西洋のアプリに比べると、視覚的に情報が多く、グラフィックも賑やかです。
🇯🇵 日本:生活はミニマリズム、UIはマキシマリズム
日本のUXは西洋のUXとはまったく異なります。ただし、よく言われる理由とは違います。
鍵となる概念は「Samishii(寂しい)」という感覚です。これは「空っぽ」「物足りない」といった意味を持ちます。西洋のUXでは、余白があることで視認性や明快さが得られるとされていますが、日本のユーザーにとって余白は不安感を与えることもあります。彼らは、詳細で情報量が多く、すべてがすぐに確認できるUIを期待しているのです。
- スクラップブック風のデザイン – 切り抜き風の画像、吹き出し、枠線、そして星・矢印・マスコットなどの遊び心あるディテールを取り入れたDIY感のあるレイアウト。
- 季節ごとのデザイン更新 – ウェブサイトの配色やバナー、時にはロゴまでもが季節に応じて変化(春は桜、夏は花火など)。
- 大きなフォント&詰まった行間 – 日本語の文字は小さいと似た形に見えやすいため、文字は全体的に大きめに表示され、間隔も丁寧に調整されている。
- バナーへのこだわり – バナーは広告だけのものではなく、ブランド同士の連携や相互尊重の象徴としても使われます。
- にぎやかなボタン&アニメーション – ホバー時の派手なエフェクトや色の変化、さらにはボタンが揺れ動く(そう、まさに船のように!)ような演出も今なお一般的です。
興味深いことに、日本では住宅や建築ではミニマリズムが非常に重視されている一方で、デジタルプロダクトは依然として情報量が多く、細部まで作り込まれたデザインが主流です。
この背景には印刷物のデザイン文化の影響があり、多くのウェブサイトでは厳格なグリッドレイアウトではなく、雑誌のような自由なレイアウトが採用されています。
🇰🇷 韓国:ハイブリッド型UX
韓国のUXは一見すると矛盾に満ちています。一方では、ユーザーは NaverやAlipayのような高機能で情報量の多いスーパーアプリに依存しています。しかしその一方で、スカンジナビア風のミニマルなデザインも愛しているのです。
これは、次のような背景を考えると納得がいきます:
- 韓国語は英語と文構造が比較的近いため、UIレイアウトが西洋のユーザーにもなじみやすい。
- 多くの韓国人デザイナーがFAANG企業(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleなど)での勤務経験を持ち、その影響でクリーンで構造的なUIスタイルを取り入れている。
- 韓国ではスカンジナビア風ミニマリズムが非常に人気であり、とくに住宅やインテリアデザインの分野で強く支持されている。
あるデザイナーからもらった、最も印象的だったコメント:
韓国は、中国のマキシマリズムと西洋のミニマリズムの中間にあるものを受け入れています。歴史的に私たちはアメリカのデザイントレンドの影響を受けており、多くの韓国人デザイナーがFAANG企業で働いています。
—Kyeongrim Amy Kang
🧐 最後に
今回のインサイトから得られる最大の学びがあるとすれば、こうです:デザインは地域文化だけで形づくられているわけではなく、もっと複雑である。
西洋対アジアのUX、という議論はよくされますが、実際には同じ国の中でも、時には都市ごとにも、デザインが異なることがあります。たとえば、ソウルのミニマリズムが釜山では響かないかもしれません。東京のショッピングアプリと大阪のそれとでは、UIに求められる優先順位がまったく異なる可能性もあります。
文化とは単に国単位のものではなく、地域レベルであり、伝統や技術に対する姿勢、人々が外部からの影響をどれだけ受け入れるか、そういったものに左右されるのです。
💡 最大の教訓。すべてをテストすること。
これは効果があるはずだ、と思い込むのではなく、実際のユーザーに、その地域・その文脈で検証すること。それがニューヨーク、バンコク、ソウル、ベルリンであろうと、どの地域でも人々はそれぞれ独自の方法でプロダクトと向き合っているのです。良いUXに「普遍」はありません。あるのは適応性です。
だから、次にグローバルなユーザー向けにデザインをする際には、大雑把な文化的ステレオタイプに頼らず、地域の声を聞いてください。ユーザーと直接話し、テストし、洗練させ、適応させる。なぜなら、結局のところ、ベストなUXは「西洋的」でも「アジア的」でもなく、あなたのユーザーにとって最適なUXだからです。
英語版参照元:
https://blog.kristi.digital/p/designers-coffee-western-vs-asian-ux-insights
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