CX経営スタートガイド:現場で動くCXをつくる

第4回|CX改善とROX

作成者: 白根 英昭|Feb 3, 2026 7:01:59 AM

ー ROIでは測れない“体験の成果”をどう可視化するか

 CX(カスタマーエクスペリエンス)は、デザインして終わりではありません。
むしろ本番はその後です。
顧客の期待は変わり続けます。
市場も、競合も、自社の状況も動き続けます。
 
だからCXは、「つくる」よりも
“育て続ける”ものです。
 
今回は、CXを改善し続ける考え方と、
その成果をどう経営につなげるか。
そこで重要になるROXという視点についてお話しします。
 
 

なぜCX改善は止まりやすいのか

多くの会社で、CX改善はこう始まります。
 
・アンケートを取った
・ワークショップをやった
・改善アイデアを出した

最初は盛り上がります。
でもしばらくすると、
 
・結局、元に戻る
・現場が忙しくなって後回し
・成果が見えずフェードアウト

こうなりがちです。
 
理由はシンプルで、
CX改善が「イベント」になっているからです。
 
本来CXは、
一度やって終わり、ではなく
小さく回し続けるもの。
改善が“日常の仕事”にならない限り、続きません。
 
 

CX改善は「小さく始めて、回し続ける」

CX改善で大切なのは、大きな改革ではありません。
まずは小さく。
 
・ひとつの接点
・ひとつのジャーニー
・ひとつの困りごと

そこから始めます。
 
たとえば、
 
・問い合わせの返答を少し分かりやすくする
・待ち時間に一言添える
・社内の引き継ぎを整理する

こうした小さな改善を試し、
 
・どう変わったかを見る
・現場で共有する
・次につなげる

このサイクルを回すこと。
 
CX改善とは、
改善そのものを習慣にすることです。

 

ROIでは測れないものが、実は一番効いている

ここで、多くの経営者や現場がぶつかる壁があります。
 
「それで、いくら儲かるの?」
 
ROI(投資対効果)は大切です。
でもCXの多くは、すぐに数字に出ません。
 
・信頼
・安心感
・話のしやすさ
・比較されにくさ

こうしたものは、短期ROIでは測れません。
でも実際のビジネスでは、ここが決定的に効いています。

 

ROXとは何か

そこで出てくるのがROX(Return on Experience)。
 
ROXとは、
CXへの投資によって、
どれだけ「選ばれやすい状態」をつくれたか。
 
言い換えると、
ROX = 営業が始まる前の勝率
です。
たとえば、
 
・最初から指名で相談が来る
・説明しなくても理解されている
・価格交渉が起きにくい

こうした状態は、偶然ではありません。
過去の体験の積み重ねによって生まれています。
これがROXです。
 
 

ROIとROXの違い

とても簡単に言うと、
 
ROI:今いくら儲かったか
ROX:これからどれだけ楽に売れるか
 
ROIは“結果”。
ROXは“土台”。
 
ROXが高い会社では、
 
・商談がスムーズ
・比較されにくい
・信頼が前提になる

ROXが低い会社では、
 
・毎回ゼロから説明
・価格勝負になりやすい
・営業が疲弊する

売上が同じでも、
その「質」がまったく違います。
 
CX改善とは、
未来の売上環境を整える活動なのです。

 

CX改善は「将来の受注環境」をつくる

大事なのはここです。
CX改善は、今の売上を増やすためだけのものではありません。
 
・次の商談が楽になる
・次の顧客が迷わなくなる
・組織の動きがスムーズになる

そうした“状態”をつくる。
これがROX。
 
だからCX改善は経営の仕事になります。

 

【今日からはじめる第一歩】

最近の商談や問い合わせを思い出してみてください。
 
・最初から前向きだった案件
・話がスムーズに進んだ案件

はありませんでしたか?
 
その違いは、どこから生まれていたでしょうか。
 
・過去の対応?
・情報の出し方?
・誰かの一言?
 
そこに、あなたの会社のROXの正体があります。
 
CX改善とは、
その“有利な状態”を意図的につくっていくことです。
 
 
【Series:CX経営スタートガイド:現場で動くCXをつくる】
第1回|なぜCXは現場で止まるのか —— CX経営が機能しない本当の理由(CXとは何か)
第2回|CXビジョンとは何か — CXビジョンがない会社で体験がバラバラになる理由
第3回|CXデザインの基本 — 意図的に体験をつくる(インサイト・ジャーニー入門)
第4回|CX改善とROX — ROIでは測れない“体験の成果”をどう可視化するか
第5回|CXを組織OSにする — 現場で回り続けるCX経営へ
 
 
本シリーズでは、CX経営のスタートガイドとして、「現場で動くCX」をどうつくるかにフォーカスして整理しています。CX経営を、組織行動・デザイン・オペレーション・デジタル・脱学習という5つの力のフレームワーク(=企業変革のOS)として捉えた全体構造は、以下で詳しく解説しています。
CX経営は「企業変革のOS」ー 5つの力で企業は進化し続ける