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Written by DMN事務局
on 4月 13, 2022

DMN Design Management Report #024

Business Impact of Design

from InVision Talk <Part.2>

デザインのビジネスインパクト

 

デザインのビジネスインパクト

 世界は今、パンデミックから社会正義、気候変動まで、さまざまな課題に人間中心のアプローチをリードするために、世界は今、これまで以上にデザイナーを必要としている。しかし、経済が低迷する中、ビジネスの予算も厳しくなり、デザイナーは仕事の価値を伝え続けなければならない。

 InVisionは2011年にニューヨークで創業したソフトウェアのスタートアップ企業で、Spotify、Amazonを始め、世界的なエンタプライズ企業が自社のデジタルプロダクトのデザインやプロトタイプの作成にInVisionのプラットフォームを採用している。

 また、デザインシステム、リーダーシップ、コラボレーション、リモートワーク、スケーリングデザインついて、様々な情報発信や、コミュニティづくりをしている。

 「デザインのビジネスインパクト Business Impact of Design」と題されたInVisionトークでは、d.MBAの創設者でCEOのAlen Faljic(以下アレン)、クリオのデザインディレクターでd.MBAの卒業生であるMaria Pereda(以下マリア)、そしてInVisionのデザインオペレーションの責任者であるAlison Rand(以下アリソン)が、ビジネスにおけるデザインの重要性について議論し、その力を伝えるための重要な戦略を共有した。

 このトークのポイントは大きく3つ。

  • 大小を問わず、ビジネス上の課題に取り組むためにデザイン思考を活用する方法を探る
  • 数字、測定基準、戦略的な議論を通じてデザインの影響力を伝えるためのヒントを学ぶ
  • これらのツールを成功裏に採用したd.MBAプログラムの卒業生からのインサイトを得る

 このオンラインのトークセッションは前半の3名によるトークと、後半はオーディエンスからの質問に答えるQ&Aという形で行われました。

 今回はオーディエンスからの質問に3人が答える形で進められたQ&Aの部分をレポートいたします。

 3人の体験談から、具体的な事例やアドバイスが紹介されました。日本企業におけるデザインの状況との違いも見えてきて、参考になります。

 

Business Impact of Design

デザインのビジネスインパクト

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オーディエンスとのQ&A

 セッションはZOOMを使ってライブで配信されて、オーディエンスからたくさんの質問もきていた。そのうちのいくつかの質問をアリソンが紹介し、アレンとマリアが答える。

 オーディエンスの質問から、特にdMBAに特化した質問が紹介された。

 

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Q「dMBAの戦略的枠組みは、デザインをより客観的なものにするための、ある種の科学的なプロセスやアプローチなのでしょうか?」

 この質問にはアレンが以下のように答えた。

「もしビジネスを芸術だと考えれば、デザインも芸術ですから、どちらも科学的ではないということになります。私はどちらも芸術だと思うのですが、そこがビジネスを学ぶ素晴らしさの一つだと考えます。なぜなら、デザイナーである私たちは、それを学べる絶好のポジションにいるからです。」

「デザイナーがビジネスを学ぶ方が簡単だと思いますが、その逆の場合もあります。私はそのプロセスを経験しましたが、それはとても辛いものでした。頭が混乱しますし、新しい方法で考え始める必要があります。」

「私は一般的にdMBAが植え付けようとするプロセスは、仮説を描くデザインだと考えています。そのため、dMBAでは、単なるデザインのプロトタイプを作るのではなく、ビジネスのプロトタイプを作ります。」

「私たちは、戦略がどのように見えるか、ビジネスモデルがどのように見えるか、価格設定がどのように見えるか、指標がどのように見えるかといったことに対する明確な仮説としてビジネスのプロトタイプを作り、それを厳密にテストします。」

「それはある意味で、ビジネスを構築するための科学的な方法ですが、ビジネスは芸術でもあるので、つまり、答えはイエスでありノーということになります。」

 

Q「あなたの視点から見て、C-Suiteの人たちに最も響く傾向にある、特定のKPIや指標はありますか?」

 

 この質問にはマリアがユーモラスに即答した。

「それはお金です。すべてはお金の話になります。すべては、それにはいくらかかったか、それはいくらの節約になったかという話になるのです。」

 そしてそこからマリアとアリソンによる対話が生まれる。

マリア

「今までデザインシステムを販売したときは毎回必ず、時間をどれだけ節約できるか、デザイナーのトレーニングの時間をどれだけ節約できるか、パターンを学ぶためにどれだけ時間を節約できるかなど、結果として何らかの金額の話になりました。」

「でも、重要なことに関して、それがどうやったらお金に変換できるかを考えるのは楽しいことです。あなたの友達に、技術や製品などについて、あらかじめある仮説を用意しておいて、それが節約になるのか、投資になるのかをインタビューしてみるのもいいでしょう。」 

アリソン

「普遍的な尺度がお金だと言うことですね。」

 マリア

「基本的には、お金にたどり着くための中間指標をたくさん経る、という意味になります。カスタマーサポートコールの減少は、余分なお金の削減と、サポートチームがもっと戦略的なことに使うための時間を作り出すことになるのです。」 

アリソン

「解決しようとしている問題は何なのかと考えてみると、お金の他にも解決すべき問題はたくさんありますね。」

マリア

「その通りです。ですから、私は二重の仕事をしなければなりません。一つは、解決しようとしている問題は何か、そしてそれが解決されているかをどのように測定するかを考えます。そしてさらに、それが会社の大きな目標である収益の増加や解約率の低下、あるいは何をの節約にどう結びついているのかを考えます。どの企業にもOKRや大きな目標があり、自分のやっていることをそれらの目標の一つに結びつけなければならないからです。」

Q「dMBAでは、あなたが会社でデザインマトリックス設定を習慣化することについては、どんなことを教えていますか?」

 dMBAでは具体的にどんな内容を教えているのか。その一つとしてデザインマトリックスの設定についての質問にアレンが答えた。 

アレン:

「それはデザインにおける仮説の一部であり、まず実験を設定する必要があります。何かがうまくいくという仮説を立てて、ユーザーエクスペリエンスを向上させたり、リテンションを高めたり、収益を上げたりするために、すべての実験に指標が必要になります。」

「プロセスの大部分は、会社の他の利害関係者にインタビューをして、会社が測定しているすべての測定基準のようなものを理解することです。」

「利益以外の普遍的な指標はないと理解していれば、他のすべては基本的にあなたの会社や業界のビジネスモデル次第です。もしあなたがコンサルタントで、あるプロジェクトから別のプロジェクトに移ったときには、利害関係者と頻繁に会話をして、彼らが何を測定しているのかを理解する必要があります。」

「それができたら、利害関係者と話して、すべてのKPIを追跡して、それらの数字でいっぱいのノートブックやグーグルドキュメントのようなものを作り、何か実験をするときはいつでもそのノートを使って話をするようにします。そうすると、突然、相談できる人が現れて、あなたの指標を気にかけてくれます。そしてプロジェクトに取り組むあなたをサポートしてくれるでしょう。」

「基本的には、バックエンドでしっかりとした調査を行い、すでに測定されているものを理解することです。自分で考える必要はありません。」

 

Q「ユーザーの喜びのような曖昧な指標は、どのように定量化、数値化して顧客の目標につなげていますか?」

 セッションの前半でマリアが提案していたユーザーの喜び(User Delight)という曖昧な指標についての質問は、アリソンからマリアに投げかけられた。

マリア

「アレンが言ったように、それはアート的な話でもありますが、例えばユーザーの喜びを理解するためには、私はユーザーサポートのところに行って、どんなことにどれくらいの電話がかかってきているのか、何かに対する不満は何なのかを実際に聞いてみます。」

「喜びを測定する方法としてはPMSがありますが、サポートへの電話が少なくなることによっても計ることができます。それは、ユーザーが自分自身で製品を使えるようになったことを示しています。実際のユーザーの声を聞かなくても、喜びを定量化することができます。」

アリソン

「摩擦を取り除くことで、あるレベルの喜びをもたらすかもしれませんね。」

 ここで、話は曖昧な指標の定量化から少し飛んで、コミュニケーションについての話になった。アリソンからアレンに、主要な意志決定者にどのように情報を提示しているか、どんなコミュニケーションを推奨するのかについての質問があった。

 アレンは、それは基本的には相手の言葉を同じように話すことだと説明してから、組織の中で同じ言語を話す、ビジネスでのコミュニケーションについて話を展開させた。

アレン

 「組織の言葉を話すということは、KPIとは何か、指標とは何かをあらかじめ理解した上で、ランチのコーヒーブレークに行くというような意味合いを持っています。」

「ある部分では、この定量化可能な言語を話すこともあれば、ある戦略的な言葉を使うこともあります。例えば、これは低コスト戦略であるとか、差別化であるとか、ビジネスの世界では意味がある言葉を使って、自分の考えていることを説明することができます。」

「数字の話をするだけではなく、組織の中で使われている言葉を再生することで大切です。デザインワークにおいて、言葉が、戦略的思考やビジネスモデル思考や、指標の中にどのように反映されているのかを深く理解することが大切です。私たちはそのすべてを、競合他社から、業界の言葉から手に入れて、再利用することができます。」

「でもそこには簡単な答えはありません。とてもたくさんの業界があり、たくさんのフィールドがあり、たくさんの企業があり、それぞれが異なる言語を使用しているからです。」

 

Q: 「プロダクトマネージャーのPMSについてはどう考えていますか?」

 

 アリソンからPMSについての質問が紹介された。

「伝統的には、KPI周りのPMSの優先順位はビジネスドリブンで、しばしばデザインとプロダクトマネジメントの間に摩擦を起こすことがあります。製品チームが共通の目標を共有して前進していけば、より効果的でしょうか?そしてそれはどのようにして実行できますか?」

 そしてマリアとアレンそれぞれが答えた。

マリア

「私はOKR(Objectives and Key Results)が気に入っています。OKRは全員が持っていて、それを集約しなければならないのですが、組織的な指標なので、自分1人では変えることができません。デザインは失敗でビジネスは成功というようなことはありません。どちらも共通の目標を持っているので、成功するための関係性を作り、目標を達成するためにいかに一緒に働くかというような絆を作ることができるのです。」 

アレン

「1つの部署だけでKPIを設定していると、多くの場合に見られることですが、特にスタートアップ企業のようなプレッシャーのかかる速いペースの環境では、特定の指標に最適化しすぎて、他の場所で問題が発生することがあります。」

「そこで私たちができることの一つは、長期的な視点と短期的な視点のバランスをとるようなケースを作ることだと思います。 」

「 私たちはこれをカウンター指標と呼んでいますが、すべてのプロジェクトで常にカウンター指標を追加するようにしていて、メインの指標がうまくいかない場合に使います。これにより、よりバランスのとれた組織を作り、よりバランスのとれた目標を設定することができ、長期的にも成功を収めることができます。」

 ここでアリソンがリレーションシップについてアレンに質問する。

「エンジニアリングは前線からリードしていきますが、私はソフトスキルや人間関係のスキルは、信頼やパートナーシップを構築し、これらのことを見通すための基本的なものだと考えています。それは明らかに言語を共有することであり、話ができるようになることだからです。こうしたスキルをプログラムの中で教えることは考えていますか? また、どのようにして人と人とのつながりを感じてもらい、一緒に歩んでいけるようにしていますか?」

アレン

「それは、どうやって正しい関係を築くか、どうやって社内で正しい関係を育むか、どうやって人と話をするか、どうやって彼らの目標と私たちの目標を同時に達成できるようにするか、ということですね。そして、それらは、基本的には、社内の他の人たちと会話をして、彼らを理解しようとするソフトスキルに関係しています。」

「最も重要なスキルである共感力を、自分はすでに持っていることに気づくと、とても解放されると思います。それには少しだけ記事を読んだり、本を読んだりして、専門用語を身につけて、より良い質問ができるようにする必要があるのかもしれません。」

「つまり、重要なのは、より良い質問をするための同意の言葉を話すことであり、それによって自信がつき、適切な場所で総合的な会話ができるようになります。これは、あなたとあなたのチームの影響力を高めることを意味しています。」

 

困難を克服するためのアドバイス

 今は世界中の誰にとっても困難な時期で、多くのデザイナーや、その他にも潜在的に多くの人が仕事を探している状況にある。

 トークの最後に、アリソンからアレンとマリアに対して、今、新しい役割を探している人や、今の役割に自信を持ちたいと思っている人へのアドバイスを求めた。

 

マリアからのアドバイス

「自分ではコントロールできない状況で、ほんとうに大変だと思います。デザイナーとして戦略的なスキルを磨いて、履歴書とポートフォリオで、ビジネスの戦略的ビジョンと、あなたが成し遂げたことを示すことができれば、あなたにとって多くの扉を開くことになると思います。 」

「今は企業がベルトを締めなければならない時ですが、企業は多くの人を雇うことができるので、私は価値をもたらすことができます、その価値を定量化することができます、あなたのビジネスを学び、この業界を学び、インパクトのある正しい決断をすることができますと示すことができる人を連れてくることができます。私はたくさんの履歴書とポートフォリオに目を通しましたが、その中から選ばれたのはそういう履歴書でした。」

 

アレンからのアドバイス

「私も2つの戦術的なアドバイスがあります。 一つ目は、あるdMBAの卒業生のストーリーなのですが、彼女は卒業後にリンクトインのタイトルを変えたのですが、それは「ビジネスマインドのあるデザイナー」というタイトルです。タイトルを変更したことだけで、彼女はほんとうに新しい違う存在のようになり、インタビューでもたくさんの質問を受けました。そしてそれを自分自身のデザインワークの考え方として説明することができました。」

「2つ目の戦術は、面接での最後の質問にフォーカスすることです。面接では面接官からの質問にどう答えるかということに焦点を当てていると思いますが、それ以上に重要なのは最後にする質問だと思います。 それは私たちが何を考えているのか、どのように考えているのかを示すものであり、私はそこに焦点を当てています。あなたのビジネスモデルを説明してくれませんか? あなたの業界での発展をどう見ていますか?といった質問をすることで、あなたが異なる考え方を持っていることを示すことができるからです。」

 

 後半のQ&Aセッションでは、いくつかの質問を起点に、3人が様々な視点から、具体的な経験を交えて、オーディエンスが知り疑問に光が当てられた。

 デザインのビジネスインパクトについては、このパンデミックの世界で、さらに注目が高まっていくことは間違いないだろう。

 

(DMN編集部)

 

参考URL

●InVision

https://www.invisionapp.com

●Business Impact of Design

https://www.invisionapp.com/talks/business-impact-of-design

●How to estimate the ROI of design work

https://www.invisionapp.com/inside-design/estimate-roi-design-work

 


PROFILE

Alison Rand(アリソン・ランド)

InVision シニアディレクター、デザインオペレーション
戦略的なデザインと人事管理システムとプロジェクト管理の専門知識を生かし、InVisionのシニア・ディレクター、デザイン・オペレーションのヘッドを務める。ジョン・マエダ、frogでプログラム・マネジメント・ディレクターとしての経験も持つ。

Maria Pereda(マリア・ペレダ)

Clio デザインディレクター
バルセロナ出身のデザイナーで、15年前にニューヨークに移住し、デザインのキャリアをスタートする。d.MBAの卒業生。

Alen Faljic(アレン・ファジック)

d.MBA ファウンダー・CEO
デザインリーダーのためのオンラインビジネスプログラムであるd.MBAの創設者でありCEO。IDEOでビジネスデザイナーとして活躍した後、現在は国際的に最も著名なビジネスデザイナーの一人であり、Beyond Usersポッドキャストのホストでもある。

 

 

InVision「Remote Work for Design Teams」日本語版

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