デザインの質をヒューリスティックに測る方法
Measuring design quality with heuristics
ジャスミン・フリードル Jasmine Fried
ドロップボックス社のデザインディレクターとして、コアプロダクトのチームを率いている。それ以前には、インターコム、ウダシティ、チャンザッカーバーグイニシアチブ、フェイスブックなどでデザインチームを率いていた。
今回は、ヒューリスティックを用いてデザインの質を測るアプローチについて、ドロップボックス社のデザインディレクター、ジャスミン・フリードル氏によるMediumの記事をご紹介いたします。
Photo by William Warby on Unsplash
「デザインのクオリティをどうやって測ればいいのか?」これまで私がデザインを先導してきたどの会社でも聞かれました。デザイナーに限らず、ステークホルダーや経営者からもよく聞かれることです。その解決策としては、「見ればわかる」というものから、原理原則に基づいた評価や、詳細で厳密な製品・デザインレビューなどがあります。その他にも、NPS(ネットプロモータースコア)やCSAT(顧客満足度)のような調査、また、「私たちの製品のどこがお気に入りですか?(How delightful do you find our product? )」という問いによるカスタムユーザー調査などが提案されます。
これらの解決策はいずれも問題を持っています。社内主導の評価は、社内の動機や盲点によってバイアスがかかる可能性がありますし、アンケート調査では、デザインの質について切り離して扱えなかったり、ユーザーに必要以上に負担をかける場合があります。
今から数年前、私はある会社でデザインとリサーチのチームを率いていましたが、そこではジョン・ドーアの哲学とOKRの適用にとりつかれていました。私たちは、デザインの質を含む、あらゆるものを測定していました。
私たちがたどり着いた評価メカニズムは、ヤコブ・ニールセンの「ユーザビリティ10原則」をベースに、それを製品とユーザビリティのヒューリスティックスに拡張させたものでした。デザインチームの自分たちの仕事に対する評価にはバイアスがかかることがあるので、私たちは、デザイナーは何が「いい」かをわかっている必要があるということを結論づけました。実践において批評は不可欠な要素だからです。
私は数人のチームメイトと協力して、製品の企画、UXデザイン、UIデザインといった製品デザインの一般的な内訳にマッピングされた一連のヒューリスティックスを開発し、繰り返し使用しました。さらに、デザイナーの資質やスキルを同じようなグループに分けて検討することで、品質を評価する際に「このプロジェクトでデザイナーが強みを発揮した部分や機会があった部分はどこか」という質問に簡単に答えることができるようになりました。
評価の方法としては、製品の発売ごとに少人数のグループで集まって、出荷された製品について軽いレビューを行いました。それぞれの質問には「はい」か「いいえ」で答え、パーセンテージを(「はい」が100点、「いいえ」が0点で)計算して、品質を数値化しました。
もちろん、これが完全に正確な結論というわけではありませんでしたが、プロジェクトごとに共鳴するバリエーションを記録し、デザイナーにフィードバックするだけでなく、非デザイナーと品質の状態を共有するための言語を持っていることが有用であることがわかりました。
では、そのヒューリスティックスを紹介しましょう。
製品の企画
ユーザーの問題
- 解決すべきユーザーの問題は明確ですか?
- 手元のリサーチは、提案された方向性をサポートしていますか?
- 手元のデータは、提案された方向性をサポートしていますか?
- 製品や機能は、製品概要に書かれているユーザーの問題を解決していますか?
オーディエンス
- 製品や機能は、ターゲットオーディエンスの問題を解決していますか?
- 製品や機能は、ターゲットオーディエンスにとってネガティブなトレードオフを回避してますか?
- 製品や機能は、グローバルのオーディエンスとその他のオーディエンスへの悪影響を最小限に抑えていますか?
価値
- 製品や機能は、ユーザーの体験に明確な付加価値をもたらしていますか?
- 製品や機能は、他の分野の価値を失わないようにしていますか?
デザインの原則
- 製品や機能は、圧倒せずにガイドしていますか?
- 製品や機能は、プレッシャーテストを受けていますか?
- 製品や機能は、品質を保証していますか?
UXデザイン
システムの状態
- ユーザーが体験のどこにいるのかが明確になっていますか?
- 前に何が起こったか、次に何が起こるかが、ユーザーに対して明確になっていますか?
手元の明確なタスク
- ユーザーは、自分がすべきことを簡単に見つけられますか?
- ユーザーは、どのようにタスクを達成することが求められているかを知っていますか?
わかりやすさと使いやすさ
- タスクは、最小限の努力で習得できるようになっていますか?
- タスクは、論理的な順序に沿っていますか?
- タスクは、不必要な摩擦を避けていますか?
ユーザーの期待
- タスクは、ユーザーのメンタルモデルに沿っていますか?
- 製品や機能は、一般的なインタラクションの様式に沿っていますか?
- 製品や機能は、異なるユーザーグループのニーズを満たせるように、柔軟でカスタマイズできるようになっていますか?
- 製品や機能は、他の関連する製品や機能システムと一体になっていますか?
エラー処理
- 何か問題が発生したとき、ユーザーには明確な道筋が示されていますか?
- エラーメッセージは明確で、説明的で、簡潔ですか?
- エッジケースは考慮されていますか?
- ユーザーはヘルプにアクセスできますか?
UIデザイン
一貫した基準
- 機能や製品のデザインはアクセシブルですか?
- 機能や製品のデザインはデザインシステムを使っていますか?
- デザインの中のUXライティングは、コンテンツ戦略の基準(適切な声、トーン、スタイル)に従っていますか?
再生記憶よりも再認記憶
- 機能や製品のデザインは、オブジェクト、アクション、およびオプションを目に見えるようにしていますか?
- 指示や情報は簡単に検索できますか?
親しみやすさ
- ページのレイアウト、階層など、機能や製品は、よく使われる他の機能や製品と親和性がありますか?
- 機能や製品のデザインは、それぞれのプラットフォームの適切なUI規約に従っていますか?
技能
- 機能や製品のデザインは、標準にしっかりと従っていますか?
- 機能や製品のデザインは、そのクラスで最も優れていると感じられますか?
- 機能や製品のデザインは、可能な限り明確でミニマムなものですか?
- 機能や製品のデザインは、必要に応じて喜びを与えていますか?
なお、こうしたヒューリスティックの例は、私たちが考えるデザインの質に合わせてカスタマイズしたもので、文脈によっては異なる場合があります。例えば、デザインの原則はデザインチームとして確立した原則です。学生との共同作業では、「人はどのようにして学ぶのか」という点に着目しました。
このやり方は私たちにとっては有効でしたが、私たちのような小さなチームをはるかに超えて拡張することはできないことは認めます。例えば、毎日何百人ものデザイナーが製品を作り出しているようなチームでは、手作業でレビューを行う余裕はないでしょう。しかし、デザイナーがさまざまな分野で自分の技能を向上させることができるようになれば、品質の強化になり、公式または非公式にこれらを実施することで、企業とユーザーのどちらにとっても、製品や機能の成功度を測ることができ、質の高いアウトプットや成果につながると考えています。
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この記事は、2021年1月に公開されました。英文はMediumで閲覧できます。
●Measuring design quality with heuristics
https://uxdesign.cc/measuring-design-quality-with-heuristics-44857efa514
(DMN編集部)
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