CX経営スタートガイド:現場で動くCXをつくる

第5回|CXを組織OSにする

作成者: 白根 英昭|Feb 3, 2026 7:01:00 AM

現場で回り続けるCX経営へ

 ここまで、CXをどう始めるか、どう設計するか、どう改善して成果につなげるかを見てきました。
おそらく今、こう感じている方もいるかもしれません。

「考え方はわかった。でも、結局どうすれば“続く”んだろう?」

実は、多くの企業がここで止まります。

ワークショップはやった。ジャーニーも描いた。改善も試みた。
それでも、数ヶ月後には元に戻る。

なぜでしょうか。

答えはシンプルです。
CXが“取り組み”のままだからです。

CXが続く会社では、もう少し違う状態になっています。
CXが「特別な活動」ではなく、「会社の動き方」そのものになっているのです。

これを、私たちは「CXを組織OSにする」と呼んでいます。
 
 

CXは“頑張るテーマ”ではなく“当たり前の動き方”

多くの現場で起きているのは、こんな状態です。

・CXは大事だと思っている
・でも忙しいと後回しになる
・判断に迷うと結局いつものやり方に戻る

これは意志の問題ではありません。
CXが「仕組み」になっていないだけです。

たとえば、スマートフォンのOSは意識しなくても常に動いています。
アプリも通知も、全部その上で自然に回っています。

CXも同じです。

誰かが頑張らなくても
・会議の進め方も
・現場の判断も
・改善の回し方も

すべてが「顧客体験を良くする方向」に揃っている。
それがCXが組織OSになった状態です。
 
 

ROXはゴールではなく、通過点

前回、ROX(Return on Experience)のお話をしました。

体験への投資が、
売上や継続率、信頼、業務効率といった成果につながっているかを見る考え方です。

ここで大切なのは、
ROXは「測るため」だけのものではない、という点です。

ROXを見始めると、

・なぜこの改善をしているのか
・どの体験が本当に価値を生んでいるのか
・どこに無駄な摩擦があるのか

が自然と会話に上がるようになります。

つまりROXは、
組織の思考を「体験中心」に切り替えるスイッチです。
ROXはゴールではありません。
組織OSに入っていくための入口です。

CXが回り続ける会社に共通する5つの力

CXが組織OSとして根づいている会社には、共通点があります。
特別なツールや派手な施策ではありません。
次の5つの力が、静かに機能しています。
 
【組織行動の力】
部門を越えて、同じ方向を向けているか。
 
CXビジョンがあり、
判断の基準が共有され、
「それ、顧客にとってどう?」という問いが自然に出てくる。
これがないと、CXはすぐ属人化します。
 
【デザインの力】
顧客を深く理解し、
インサイトとジャーニーを使って
体験を“意図的に”設計できているか。
 
思いつきではなく、
構造として体験をつくれる状態です。
 
【オペレーションの力】
設計したCXが、
現場で実際に回っているか。
 
役割、プロセス、改善サイクルがつながり、
小さな実験と学習が日常になっている。
ここが弱いと、絵に描いた餅になります。
 
【デジタルの力】
データが分断されず、
顧客の文脈が現場に届いているか。
 
デジタルは効率化のためだけでなく、
体験をスケールさせるための基盤です。
 
【脱学習の力】
そして最後に一番見落とされがちな力。
「今までこうだった」を手放せるか。
 
成功体験や常識を疑い、
変化を前提に学び続けられるか。
AI時代のCXは、ここがないと必ず止まります。
 
 

CX経営とは、“いいことをする”話ではない

CX経営は、
優しくなることでも、
感じを良くすることでもありません。
 
会社の目的を、
体験として届け続けるための経営です。
そのために、
 
・組織の動き方を揃え
・体験を設計し
・現場で回し
・デジタルで支え
・学び続ける
 
これらを一体として扱う。
それがCXを組織OSにする、ということです。
 
 

最後に

ここまで読んでくださった方は、
きっとこう感じていると思います。
 
「CXって、思っていたよりずっと“経営の話”なんだな」
 
その通りです。
 
でも同時に、
CXはとても“現場の話”でもあります。
 
今日の一つの対応。
一つの判断。
一つの改善。
 
そこからすべてが始まります。
 
CXは施策ではありません。
文化でもありません。
会社のOSです。
静かに、でも確実に、
組織の動きを変えていくものです。

 

著者より

私はCXを「顧客満足の話」ではなく、
組織の判断と行動を揃えるための構造設計だと捉えています。
 
だからCX経営は、施策ではなくOSです。
このシリーズが、CX経営を考え始めるための入口として、
前へ進むための“最初の地図”になれば嬉しいです。
 
 
【Series:CX経営スタートガイド:現場で動くCXをつくる】
第1回|なぜCXは現場で止まるのか —— CX経営が機能しない本当の理由(CXとは何か)
第2回|CXビジョンとは何か — CXビジョンがない会社で体験がバラバラになる理由
第3回|CXデザインの基本 — 意図的に体験をつくる(インサイト・ジャーニー入門)
第4回|CX改善とROX — ROIでは測れない“体験の成果”をどう可視化するか
第5回|CXを組織OSにする — 現場で回り続けるCX経営へ
 
 
本シリーズでは、CX経営のスタートガイドとして、「現場で動くCX」をどうつくるかにフォーカスして整理しています。CX経営を、組織行動・デザイン・オペレーション・デジタル・脱学習という5つの力のフレームワーク(=企業変革のOS)として捉えた全体構造は、以下で詳しく解説しています。
 

CX経営は「企業変革のOS」ー 5つの力で企業は進化し続ける

【連載】 Series|CX経営の「5つの力」を解説するシリーズ
第1回 :組織行動の力 - 顧客価値を起点とした企業変革基盤の構築
第2回:デザインの力 - 顧客インサイトに根ざした価値創造プロセスの実装
第3回:オペレーションの力 - 測定を起点とするCX改善サイクルの確立
第4回:デジタルの力 - デジタルによるオペレーションのスケール化・最適化
第5回:脱学習の力 - 変化に適応し続ける組織能力の獲得