CX経営キーワード集
はじめに
CX経営
ここは「CXビジョン」に関する説明文です。キーワードで検索できるようにしたい。
CXの実践を通じて、お客様の会社への長期的な信頼や愛着を築き上げ、会社の持続的成長を実現する経営アプローチ。一過性の施策や表面的な改善ではなく、CXの実践を通じて会社の能力を高め続けることに本質があります。
CXの実践を支える5つの力
CXの実践能力を構成する有機的に連動する5つの基本能力。組織行動の力、デザインの力、オペレーションの力、デジタルの力、脱学習の力から成り、段階的に高めていくことでお客様に愛され続ける会社への変革を実現します。
組織行動の力
会社全体が一つの方向を向き、部門を超えて連携してCXを向上させる力。CXビジョン、CXガバナンス、CXカルチャーの3つの要素で構成され、組織全体でのCX実践の基盤となります。詳細は本書第1部、第2部、第6部参照。
CXビジョン
企業が目指すべき理想の顧客体験を明確化した戦略的指針。全社員が共有する「お客様にどのような体験価値を提供したいか」を示す北極星的な存在。組織全体の意思決定基準となり、一貫したCX向上施策の実行を可能にします。
CXガバナンス
CXが確実に実践されるように管理・統制するためのルールやしくみ。組織全体でCXの品質を保ち、継続的な改善を実現するための体制としくみを確立します。
CXカルチャー
迷った時に「お客様にとってどうか?」で判断する価値観の醸成。従業員一人ひとりが自然に顧客視点で思考・行動する組織文化の構築を目指します。
デザインの力
お客様を深く理解し、競合他社には真似できないCXをデザインする力。顧客インサイトの獲得、デザイン思考の実践、体験のブランド化を通じて革新的なCXを創出します。詳細は本書「はじめに」、第3部、第4部参照。
顧客インサイト(Customer Insight)
定性的な調査手法により獲得する、お客様の深層にある真のニーズや動機。表面的な要望を超えた、行動や選択の背後にある根本的な理由を理解することです。
体験のブランド化
CX全体を通じた自社ならではの一貫した体験デザイン。すべての顧客接点で統一されたブランド体験を提供し、競合他社との明確な差別化を実現します。
オペレーションの力
CXを現場で確実に実行し、継続的に改善し続ける力。改善サイクルの確立、CX全体の最適化、お客様の声の活用を通じて、持続的なCX向上を実現します。
CX改善サイクル
「実行→測定→改善」のPDCAを高速で回すしくみ。データに基づく継続的な改善により、CXの品質を段階的に向上させていきます。
CX全体の最適化
施策を連携させ、お客様の体験全体を捉えながら改善するしくみ。部分最適ではなく全体最適の視点でCXを設計・改善することを指します。
VoC活用
お客様の声を収集・分析し、具体的な改善につなげるしくみ。Voice of Customerの略で、顧客からの直接的なフィードバックを体系的に活用する取り組みです。
デジタルの力
デジタル技術を活用して、CXをスケール化し、一人ひとりに最適化された体験を提供する力。データ統合、パーソナライゼーション、人とAIの協働により価値創造を実現します。詳細は本書第7部参照。
CDP(Customer Data Platform)
顧客データを統合・管理するプラットフォーム。複数のチャネルやシステムから収集した顧客データを一元化し、360度の顧客理解と意思決定支援を実現します。
パーソナライゼーション
顧客の属性、行動履歴、嗜好に基づいて、一人ひとりの顧客に合わせ個別最適化されたコンテンツやサービスを自動で提供する技術・手法。
人とAIの協働
人の創造性とAIの分析力を組み合わせた価値創造。人間の感性や判断力とAIの高速処理・パターン認識能力を効果的に組み合わせることで、より高度なCXを実現します。
脱学習の力
既存の枠組みや常識を見直し、変化に適応しながらCX経営を進化させ続ける力。既存前提の見直し、変化への敏感性、学習する組織の構築を通じて、継続的な革新を実現します。詳細は本書「おわりに」参照。
既存前提の見直し
これまでの成功体験や業界常識を疑い、新しいアプローチを模索すること。過去の枠組みにとらわれず、根本から考え直す姿勢を指します。
変化への敏感性
お客様の変化、技術の進歩、社会情勢の変化を素早く察知し適応する能力。環境変化に対する高い感度と迅速な対応力を意味します。
学習する組織
失敗を恐れず挑戦し、失敗から確実に学んで次に活かす文化。組織全体が継続的に学習・成長し、変化に適応できる体質を持った組織を指します。
第2章 CXビジョン - 目指すべき方向を揃える
CXビジョン
企業が目指すべき理想の顧客体験を明確化した戦略的指針。全社員が共有する「お客様にどのような体験価値を提供したいか」を示す北極星的な存在。組織全体の意思決定基準となり、一貫したCX向上施策の実行を可能にします。具体的な策定ステップは本書第4章参照。
第3章 CXビジョンを会社の戦略にする
カスタマーエクスペリエンス戦略
お客様との接点において一貫した価値ある体験を提供することで、顧客満足度向上、リピート率向上、口コミ促進を実現する経営戦略。従来の製品中心の戦略から顧客中心の戦略への転換を図り、全社的な顧客体験の最適化を通じて、持続的な競争優位性を構築します。
ブランドプロミス(Brand Promise)
企業が顧客に対して約束する価値や体験の宣言。ブランドが「お客様にこのような価値を必ず提供します」という約束を明文化したもので、すべてのブランド活動とCXの基準となります。実際の顧客体験がこの約束と一致することでブランドの信頼性が構築されます。
ブランド体験(Brand Experience)
ブランドプロミスが実際の顧客接点で具現化された体験の総体。お客様がブランドと接触するすべての瞬間(広告、店舗、製品、サービス、アフターサポートなど)で感じる意味や世界観、感情的な印象を指します。優れたブランドエクスペリエンスは、お客様の記憶に残る独自の意味や感情的なつながりを創出し、ブランドロイヤルティの向上と競合他社との差別化を実現します。
競争優位性(Competitive Advantage)
競合他社に対して持つ優位な立場や能力。CXは模倣が困難な競争優位性を構築する重要な要素として、企業の持続的成長を支えます。
差別化戦略
競合他社との違いを明確にし、独自の価値を提供する戦略。「モノ」による差別化が困難な現代において、「体験」による差別化が重要性を増しています。
第4章 CXビジョンを策定する
顧客セグメンテーション
お客様を属性、行動パターン、ニーズなどに基づいて分類すること。セグメントごとに最適化されたCXを提供することで、効果的な顧客体験の改善が可能になります。
デプスインタビュー
お客様との1対1の詳細なインタビュー。アンケート調査では得られない深い本音やニーズを探り、CXビジョン策定の重要な情報源として活用します。手法の詳細は本書第10章参照。
ペルソナ(Persona)
具体的な顧客像を仮想的に設定したもの。実際の顧客データを基に、代表的なお客様の属性、行動パターン、ニーズ、価値観を詳細に描写することで、より具体的な体験設計が可能になります。事例サンプルは本書第4章参照。
カスタマージャーニーマップ
お客様が商品・サービスを認知してから購入、利用に至るまでの一連のプロセスを視覚化したもの。各段階でのお客様の行動、感情、課題、接点を時系列で整理し、体験の全体像を把握するツールです。事例サンプルは本書第4章参照。
理想のカスタマージャーニーマップ(Ideal state journey map)
お客様に提供したい理想的な体験の流れを視覚化したもの。現状のカスタマージャーニーマップと比較することで、目指すべきCXと、それを実現するために必要な施策や行動を明確にします。事例サンプルは本書第4章参照。
エモーショナルモチーフ
お客様に抱いてもらいたい感情を明文化したもの。CXビジョンの実現において、お客様の心に残る感情的価値を定義し、すべての体験設計の基準となる重要な要素。「安心感」「信頼感」「ワクワク感」など、具体的な感情を特定することで、体験の質を向上させます。
CX原則
CXビジョンに基づいて策定される、日常業務での判断・行動の指針。現場の従業員が実際の業務で活用できる具体的な行動基準として機能し、組織全体でのCX実践を支援します。
第5章 CXビジョンを従業員の「自分ごと」にする
従業員体験(Employee Experience / EX)
従業員が職場で感じる体験の総体。優れたCXの提供には、従業員の満足度と働きがいが不可欠であり、EXとCXの相関関係が注目されています。詳細は本書第26章参照。
組織文化(Corporate Culture)
企業内で共有される価値観、行動規範、慣習の総体。CXビジョンの浸透により、お客様中心の組織文化への変革が期待されます。詳細は本書第24章参照。
エンゲージメント
従業員の仕事に対する愛着や積極的な関与の度合い。CXビジョンの実践により、従業員のエンゲージメント向上と、それに伴うお客様対応の質の向上が期待されます。
カスタマーサクセス
お客様が商品・サービスを通じて望む成果を達成できるよう、能動的に支援する活動。従来の受動的なカスタマーサポートから発展した概念で、継続利用率の向上と顧客価値の最大化を目指します。
第2部 CXの取り組みをはじめる
第6章 顧客の立場で当たり前を見直す
カスタマーフリクション
お客様が感じる摩擦や障壁。手続きの複雑さ、説明の分かりにくさ、待ち時間の長さなど、お客様の体験を阻害する要因の総称。
当たり前の見直し
企業が日常業務で「普通」と考えていることを、お客様の立場から再評価するプロセス。長年の業務習慣により生まれた「当たり前」が、お客様にとって障壁となっていることがあるため、定期的な見直しが必要です。
視点転換(Perspective Shift)
自社の常識を一度脇に置いて、お客様の立場に立って考えること。CX改善の第一歩として、従業員が顧客視点で自社のサービスを見直すことで、新たな改善点を発見できます。
専門用語の壁
業界内では一般的な用語が、お客様にとって理解困難な障壁となる現象。専門用語の多用により、お客様が疎外感を感じるリスクがあります。
初回利用者体験
初めてサービスを利用するお客様の体験。企業側の「慣れ」により、初回利用者への配慮が不足しがちで、「メニューの場所がわからない」「手続きの流れが不明」といった問題が発生しやすい重要な接点です。
事務的対応のリスク
効率性を重視するあまり、機械的で感情のない対応となること。マニュアル通りの対応や決まり文句の繰り返しにより、お客様に「冷たい」「大切にされていない」という印象を与えるリスクがあります。
顧客ロールプレイ
従業員が顧客役になって自社サービスを体験する手法。普段とは逆の立場に立つことで、サービスの問題点や改善点を発見できる効果的な改善手法です。詳細ステップは本書第6章参照。
5W1H分析
お客様の「なぜ?」「どうして?」という疑問を想像し、事前に説明や配慮を用意する手法。「なぜこの手続きが必要なのか」「なぜ時間がかかるのか」といった疑問に対応することで、お客様の不安を解消できます。
第7章 部門を超えた視点を持つ
エンドツーエンド体験
お客様が最初の接点から最後の接点まで体験する全プロセス。部門の境界に関係なく、お客様の視点で一貫した価値提供を実現することが重要です。
部門横断的視点
お客様の体験を単一部門ではなく、全社的な連携の中で捉える視点。一人のお客様の体験が複数部門の連携により形成されることを理解し、部門間の協力を促進します。
サイロ化(Silo Effect)
各部門が独立して業務を行い、連携が不足する状態。部門間の情報共有や協力が欠如することで、お客様にとって分断された体験となるリスクがあります。
縦割り組織の弊害
各部門が自部門の最適化のみを追求し、全体最適を阻害する問題。営業部の約束が製造部に伝わらない、サポート部門が営業情報を把握していないなど、お客様視点の欠如を招きます。
責任の境界線問題
「私の担当ではありません」「別の部署にお聞きください」といった対応により、お客様がたらい回しにされる問題。社内の役割分担がお客様の利便性を阻害する典型的な例です。
クロスファンクショナルチーム
異なる部門のメンバーで構成されるチーム。CX向上のために、営業、製造、サポート、システムなど各部門の代表が連携して課題解決に取り組みます。
情報の引き継ぎ(Hand-off)
部門間でお客様の情報や背景を適切に共有すること。単なる業務情報だけでなく、お客様の感情や期待も含めた総合的な情報共有が重要です。
バトンタッチ品質
部門間の引き継ぎの質。リレーのバトンタッチのように、前の部門から次の部門への情報や対応の質が、お客様の体験全体に大きく影響します。
業務プロセス検証ワークショップ
部門を超えて、お客様の体験の流れと現場の業務プロセスを同時に検証するワークショップ。お客様のカスタマージャーニーマップに、お客様の声と従業員の声の両方をプロットし、お客様の体験と業務の実行の両面から問題点を特定します。各部門の代表者が参加し、お客様視点での体験改善と業務効率化を同時に実現する改善策を立案します。詳細ステップは本書第7章参照。
第8章 「人任せ」から脱却する
体験の標準化
個人の経験やセンスに依存せず、誰でも一定水準の体験を提供できるしくみ。対応品質の安定化により、お客様の信頼度向上を図ります。
属人化リスク
特定の人物に業務が依存し、その人がいないと業務が成り立たない状態。人事異動や退職により、サービス品質が急激に低下するリスクがあります。
対応シナリオ設計
お客様との接点において、どのようなタイミングで、どのような言葉でお客様と接するかを事前に設計し、シナリオを作ります。このシナリオには、具体的な対応方法だけでなく、「なぜその対応をするのか」という理由も含めます。
対応のパターン化
よくある状況に応じた対応方法を類型化すること。「初回利用者」「急いでいる方」「詳しい説明を求める方」「不安を感じている方」など、お客様のタイプ別に最適な対応パターンを用意します。詳細は本書第8章参照。
品質保証(Quality Assurance)
サービス品質を一定水準に保つためのしくみ。チェックリストやマニュアルにより、最低限の品質を保ちながら、さらなる価値提供の余地も残します。
業務の標準化
作業手順や判断基準を明文化し、誰でも同じレベルの業務を実行できる状態にすること。個人差によるサービス品質のばらつきを防ぐために重要です。
スキルの平準化
チーム内でのスキル格差を縮小し、全員が一定水準の対応力を身に付けること。新人でも安心して業務に取り組める環境づくりが重要です。
継続性の確保
特定の人物に依存しない業務体制の構築。人事異動や退職があっても、サービス品質を維持できる体制づくりが経営の安定化に寄与します。
業務プロセス改善
業務フローの見直しと最適化。お客様の体験向上と業務効率化を両立させる継続的な改善活動です。
ナレッジマネジメント
組織内の知識や経験を共有・活用するしくみ。個人が持つ暗黙知を形式知化し、組織全体の対応力向上を図ります。
お客様対応デザインワークショップ
個人の経験やセンスに依存しがちなお客様対応を、誰でも一定水準で提供できるようにデザインするワークショップ。現場スタッフが参加して、お客様との重要な接点での「理想の対応」を具体的に設計し、それを確実に実行できるしくみを現場目線で構築します。対応シナリオの作成、パターン化、チェックリストの整備を通じて、属人化から脱却した安定したCX提供を実現します。詳細ステップは本書第8章参照。
第3部 革新的なCXを生み出す
第9章 デザイン思考ー革新的なCXを生み出すアプローチ
デザイン思考(Design Thinking)
「企業中心」の発想を「顧客中心」に転換してCXをデザインするアプローチ。人間への深い共感を出発点とし、既存の常識にとらわれない創造的な解決策を見つけ出す手法。革新的なCXやイノベーション創出の方法として世界中の企業で活用されています。
イノベーション
既存の常識や枠組みを超えた革新的な価値創造。CXにおいては、業界の常識を変える新しい顧客体験の提供により、競合他社が真似できない差別化を実現します。
人間中心設計(Human-Centered Design)
ユーザーのニーズ、行動、感情を深く理解し、それに基づいて製品やサービスを設計するアプローチ。技術や企業の都合ではなく、人間の視点を中心に置いた設計思想です。
共感(Empathy)
デザイン思考の第一段階で、お客様の立場に立って感じること。単なる理解を超えて、お客様の感情、価値観、動機を深く体感し、真のニーズを発見するプロセスです。
ユーザーエクスペリエンス(UX)
ユーザーが製品やサービスを利用する際の体験の質。使いやすさ、感情的満足度、価値の実感などを総合的に捉える概念で、CXの重要な構成要素です。
プロトタイピング
アイデアを素早く形にして検証するプロセス。完成度の高い製品を作る前に、簡易的な試作品でお客様の反応を確認し、改善を重ねる手法です。詳細は本書第13章参照。
アジャイル開発
短期間でのサイクルを繰り返しながら、段階的にサービスを改善していく開発手法。「作る→測る→学ぶ」のサイクルを高速で回すことで、リスクを低減しながら価値を向上させます。
失敗の許容
イノベーション創出において、失敗を学習機会として積極的に受け入れる組織文化。早期の失敗により最終的な成功確率を高める考え方です。
第10章 定性リサーチで顧客インサイトを得る
顧客インサイト(Customer Insight)
お客様の行動や選択の背後にある深い理由や動機。表面的なニーズではなく、お客様自身も言語化できていない潜在的な欲求、価値観、信念、願望を含む心のメカニズムです。
定性リサーチ(Qualitative Research)
数値では測れないお客様の感情、動機、価値観を深く理解するための調査手法。従来のアンケート調査では得られない、革新的なCX創出に必要な深いインサイトを獲得します。詳細ステップは本書第10章参照。
エスノグラフィックリサーチ
お客様の日常的な環境で実際の行動をありのままに観察する調査手法。人類学で使われていた手法をビジネスに応用し、言葉では表現されない無意識の行動や環境の影響を理解します。
デプスインタビュー
一対一の深い対話を通じて、お客様の内面を探求する手法。「なぜ?」を徹底的に追求し、表面的な回答から根底にある価値観や人生観にたどり着きます。
コ・クリエーション
お客様と一緒に解決策やアイデアを創造するワークショップ形式の手法。お客様を受動的な調査対象ではなく、能動的な共創パートナーとして位置づけます。
セルフドキュメンタリー
お客様に自身の体験を記録してもらう調査手法。日々の行動や感情の変化をリアルタイムで把握でき、調査者の存在による行動変化を最小限に抑えられます。
エクストリームユーザー
極端に熱心なファンや全く興味を示さない人など、典型的でないユーザー。彼らの特殊なニーズから、すべてのユーザーに価値をもたらす革新的な解決策が生まれることがあります。
リードユーザー
将来のトレンドを先取りしているユーザー。一般的なユーザーが数年後に直面する課題を既に体験しており、独自の解決策を編み出していることがあります。
3つのゴール理論
お客様の動機を階層的に理解するフレームワーク。エンドゴール(どんな結果が得たいか)、エモーショナルゴール(どんな気持ちになりたいか)、ライフゴール(どんな自分でありたいか)の3つの層で分析します。
KJ法(アフィニティ図法)
収集した情報を小さな断片に分解し、類似するものをグループ化してパターンを発見する分析手法。散在する情報から共通のテーマやインサイトを導き出します。
第11章 カスタマージャーニーマップで体験の真実を見つける
カスタマージャーニーマップ
お客様が商品・サービスを認知してから利用終了まで、一連のプロセスを時系列で視覚化したツール。各段階でのお客様の行動、感情、課題、接点を整理し、体験の全体像を把握します。
真実の瞬間(Moment of Truth:MoT)
お客様が企業に対する印象を決定的に変える重要な接点。この瞬間の体験が、お客様の全体的な満足度や継続利用の意向を大きく左右します。
感情曲線
カスタマージャーニーにおけるお客様の感情の変化を視覚化したもの。喜び、不安、興奮、失望といった感情の起伏を描きます。
体験の連続性
お客様の体験が断片的な接点ではなく、連続した物語として構成されているという考え方。事前の期待、実際の体験、事後の記憶が連鎖して全体的な印象を形成します。
タッチポイント分析
お客様と企業が接触するすべての接点を体系的に分析すること。直接的な接点だけでなく、口コミサイトでの情報収集なども含めた包括的な分析が重要です。
エモーショナルジャーニー
カスタマージャーニーにおける感情的な側面に焦点を当てた分析。お客様がどの段階でどのような感情を抱き、それが次の行動にどう影響するかを理解します。
第12章 革新的なCXのアイデアを生み出す
アイデアの発散
制約を取り払い、大量のアイデアを創出すること。ブレインストーミング、アナロジー発想法など、創造性を高める様々な技法があります。
アナロジー発想法
自社の業界以外の事例を参照して発想する手法。異業界の成功事例から着想を得ることで、従来にない発想を生み出します。
視点転換法
既存の枠組みから脱却するために、意図的に視点を変える手法。時間軸、提供者、手段、意味などを変えることで、革新的なアイデアを生み出します。
アイデア評価フレームワーク
発想したアイデアを革新性、実現可能性、戦略適合性の3つの観点で評価するフレームワーク。多数のアイデアの中から最も有望なものを選び出します。詳細は本書第12章参照。
解決策コンセプト
アイデアを統合し、解決策として定義したもの。価値提案、体験シナリオ、提供方法、差別化要因を明確にし、実現可能な形に整理します。具体例は本書第12章参照。
ソリューションストーリーボード
新しいサービスコンセプトをお客様の体験として視覚化する手法。単なる機能説明ではなく、お客様の感情の変化を中心とした物語として描写します。
第13章 体験のアイデアをテストし、検証する
仮説検証
事前に立てた仮説を実験により確かめるプロセス。解決に値する問題か、求められている解決策かという2つの重要な仮説を検証します。
プロトタイプ
アイデアを検証するために作成する簡易的な試作品。完成度の高い製品やサービスを作る前に、早い段階でお客様の反応を確認し、アイデアの改善点を発見するためのツールです。
ペーパープロトタイプ
紙に描いた画面遷移や操作フローを使って、サービスの概要を体験してもらう手法。コストをかけずに基本的なアイデアの妥当性を確認できます。
デジタルモックアップ
実際の画面に近い見た目と操作感を再現したプロトタイプ。ウェブサービスやアプリのユーザーインターフェースを検証するのに適しています。
体験シミュレーション
実際のサービス環境に近い状況を人工的に作り出し、リアルな体験をテストする手法。サービス全体の流れの検証に向いています。
ユーザーテスト
実際のお客様にプロトタイプを体験してもらい、反応や行動を観察・分析する検証手法。「良いか悪いか」ではなく「なぜそう感じるのか」を深く理解することが重要です。
イタレーション(反復)
テスト結果に基づいてプロトタイプを修正し、再度テストを行う反復的なプロセス。完璧を目指すのではなく、段階的な改善により価値を高めます。
リーンスタートアップ
「作る→測る→学ぶ」のサイクルを高速で回し、無駄を排除しながら事業を構築する手法。不確実性の高いイノベーション創出に適しています。
ピボット(Pivot)
検証結果に基づいて、戦略や方向性を大幅に変更すること。失敗を学習機会として捉え、より良い解決策を見つけるための重要なプロセスです。
MVP(Minimum Viable Product)
最小限の機能でお客様に価値を提供できる製品。完璧な製品を作り込む前に、核となる価値仮説を実際の市場で検証するために作成される初期バージョンです。
第4部 自社ならではのCXをデザインする
第14章 CXの同質化という問題
同質化(Commoditization)
競合他社との差別化要素が失われ、サービスが均一化する現象。価格競争への転落、ブランド価値の毀損、イノベーションの停滞などのリスクを招きます。
デジタルセイムネス(Digital Sameness)
デジタル化の進展により、異なる業界・企業のサービスが似通ってくる現象。 同じようなUI/UXパターンの採用や類似した機能提供により、差別化が困難になる状況を指します。詳細は本書第14章参照。
ベストプラクティスの普及
成功事例が広く共有され、多くの企業が同じ手法を採用することで、結果的に似たようなサービスが量産される現象。効率性を追求する一方で、独自性を失うリスクがあります。
テクノロジーの標準化
共通のプラットフォームやツール(WordPress、Shopify、Stripeなど)の利用により、短期間・低コストでサービス構築が可能になる一方で、「どこかで見たような」体験が量産されやすくなる現象。
データドリブン最適化の限界
データ分析に基づく改善が示す「最適解」が業界共通になりがちで、結果として似たような体験設計に収束してしまう問題。ABテストやコンバージョン最適化の弊害として現れます。
競合ベンチマークの弊害
競合他社の優れた機能や体験を参考にすることで短期的な競争力は維持できるが、長期的には「みんな同じ」状況を生み出し、真の差別化から遠ざかる問題。
価格競争への転落
サービスの差別化要素が失われることで、お客様が価格で選択するようになる状況。利益率の圧迫と持続的成長の阻害要因となります。
ブランド価値の毀損
独自性を失ったブランドがお客様の記憶に残りにくくなり、ブランドロイヤルティの構築が困難になる状況。顧客流出と獲得コスト上昇の原因となります。
第15章 ブランド体験:意味と世界観の体験
機能的価値と感情的価値
機能的価値は商品・サービスの実用性や性能、感情的価値は体験により得られる感情的満足や意味。現代のブランディングでは感情的価値がより重要視されています。
ブランド体験(Brand Experience)
ブランドプロミスが実際の顧客接点で具現化された体験の総体。お客様がブランドと接触するすべての瞬間(広告、店舗、製品、サービス、アフターサポートなど)で感じる一貫した意味や世界観、感情的な印象を指します。優れたブランド体験は、お客様の記憶に残る独自の意味や感情的なつながりを創出し、ブランドロイヤルティの向上と競合他社との差別化を実現します。
パーパス(Purpose)
企業が存在する理由や社会的使命を表したもの。「なぜこの事業を行うのか」「社会にどのような変化をもたらしたいのか」という根源的な問いに対する答えで、すべての企業活動の基盤となります。
意味(Meaning)
パーパスに基づいて企業がお客様に対して提供する価値の本質。「この会社は私にとって何なのか」というお客様の認識を形作る重要な要素です。詳細は本書第15章参照。
ブランドの世界観
ブランドが体現する価値観、美意識、哲学を包括的に表現したもの。お客様がブランドの意味に共鳴するための物語的要素として機能します。
バリュープロポジション(Value Proposition)
お客様に提供する独自の価値。ブランドの「意味」を実際のサービスとして実現するもので、競合との差別化の核心となります。
意味のスイートスポット
顧客が求める意味、自社が提供したい意味、競合が提供している意味、従業員が求める意味の4つの視点が重なる最適な領域。真の差別化を実現する鍵となります。
ブランドロイヤルティ
お客様が特定のブランドに対して持つ愛着や忠誠心。単なる継続購入を超えて、感情的な結びつきを含む概念で、価格競争からの脱却に寄与します。
第16章 ブランド体験デザインのプロセス
ZMET(Zaltman Metaphor Elicitation Technique)
ハーバード・ビジネススクールのザルトマン教授が開発した画像を使ったデプスインタビュー手法。言語だけでは表現できない無意識の認知構造やメタファーを発見します。詳細は本書第16章参照。
心象イメージ法
ZMETなど、画像を媒介として、言語化困難な感情や認識を探る調査手法。
メタファー(比喩)
人が物事を理解する際に無意識に使う比喩的表現。言葉では説明しきれないブランドの本質を理解するための重要な手がかりを提供します。
シグニチャーエクスペリエンス
ブランドを象徴する特徴的で印象的な体験。ブランドがお客様の記憶に深く刻まれる瞬間をデザインします。
エクスペリエンスマップ
理想のカスタマージャーニーマップにブランドの世界観を落とし込んだマップ。各ジャーニー段階で適切なトーン・マナーでCXを実装するためのガイドラインとして機能します。具体例は本書第17章参照。
デザイン言語
ロゴ、カラーパレット、フォント、グラフィックスタイルなど、ブランドの視覚的要素を体系化したもの。一貫したブランド表現を実現するための包括的なルールセットです。具体例は本書第17章参照。
ムードボード
ブランドの世界観を視覚的に表現するために、色彩、質感、イメージを組み合わせたボード。デザイン方向性の共有と統一に使用されます。
インナーブランディング
従業員に対してブランドの価値や意味を浸透させる活動。お客様向けのブランド体験を真に実現するために、従業員の理解と共感が不可欠ですし、ブランドとCXは表裏一体の関係です。詳細は本書第17章参照。
第17章 自社ならではのCXを実装する
デザインシステム
ブランドのデザインに関するすべてのルール、コンポーネント、ガイドラインを体系的に整理したフレームワーク。一貫性と効率性を両立させる実装の基盤となります。
ブランドガイドライン
ブランドの正しい使用方法を定めた包括的なマニュアル。ロゴの使用法、カラー仕様、トーン&マナーなど、ブランドの一貫性を保つための詳細な指針です。
ビジュアルアイデンティティ
ロゴ、カラー、フォントなど、ブランドを視覚的に特定するためのデザイン要素の総称。ブランド認知と差別化の重要な手段となります。
UI/UXコンポーネント
ボタン、フォーム、ナビゲーションなど、ユーザーインターフェースを構成する再利用可能な要素。デザインシステムの中核を成し、一貫した体験提供を支援します。
トーン&マナー
ブランドのコミュニケーションスタイルや表現方法。お客様のジャーニー段階に応じて適切な語調や態度を使い分ける指針として機能します。
ストーリーテリング
ブランドの意味や価値を物語として伝える手法。営業資料やホワイトペーパーなど、あらゆるコンテンツでブランドの世界観を表現するために活用されます。
ヘッドレスCMS
コンテンツ管理機能と表示機能を分離したコンテンツ管理システム。一つのコンテンツを複数のチャネルで活用できるマルチチャネル展開を可能にします。詳細は本書第17章参照。
マイクロインタラクション
ユーザーの操作に対する小さな反応やフィードバック。これらにブランドの個性を反映させることで、使用するたびにブランドらしさを体感してもらえます。
オムニチャネル戦略
Web、アプリ、店舗、イベントなど、すべての接点で一貫したブランド体験を提供する戦略。チャネル間の境界を越えた統合的な顧客体験を実現します。
第5部 CXの改善サイクルを回す
第18章 CXの核心は現場の継続的なオペレーション改善
CX改善フレームワーク
実行→測定→改善のシンプルなサイクル。AmazonやNetflixなどの先進企業も、この基本的なサイクルを高速に回し続けることでCX向上を実現しています。
実行(Execute)
考えた改善策を現場で実際に提供すること。計画段階の検討を実際のお客様体験として具現化するプロセスです。
測定(Measure)
改善策がお客様に与えた影響を客観的に評価すること。感覚的な判断ではなく、データに基づいてCXの変化を把握します。
改善(Improve)
測定結果から得られた学びを次の改善に活かすこと。継続的な学習サイクルによりCX向上の精度とスピードを高めます。
CX測定の3つの指標
CX改善の効果を体系的に評価するための指標体系。「実行した改善策」「お客様の認識」「お客様の行動」の3つの指標をつなげることで改善効果を検証します。詳細は本書第18章参照。
実行した改善策
お客様に対して具体的に何を変更したかを示す指標。
お客様の認識
改善策を体験したお客様の態度や感情の変化を示す指標。CXならではの指標です。
お客様の行動
改善策によるお客様の行動変化を示す指標。リピート率、離脱率、口コミ・紹介の増加など、企業の成果と直接結びつく客観的指標です。
フィードバックループ
お客様からの反応を継続的に収集し、改善に活かす循環的なプロセス。素早い学習と改善により、最適な解決策に近づいていきます。
NPS(Net Promoter Score / ネットプロモータースコア)
「この商品・サービスを友人や同僚に薦めたいと思いますか?」という質問への0-10点評価から算出する顧客ロイヤルティ指標。推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値で表され、顧客満足度よりも企業成長との相関性が高いとされています。詳細は本書第18章参照。
推奨者(Promoters)
NPSで9-10点をつけた顧客。強いロイヤルティを持ち、他者に積極的に推奨する可能性が高い顧客群です。
中立者(Passives)
NPSで7-8点をつけた顧客。不満はないが、特別な愛着や推奨意欲もない顧客群です。
批判者(Detractors)
NPSで0-6点をつけた顧客。不満や不信感を持ち、ブランドに対して否定的な影響を及ぼす可能性がある顧客群です。
インスタントフィードバック
その場で即座に評価してもらう短時間の反応収集方法。リアルタイムでお客様の感情や満足度を把握するための手法です。
第19章 一つのジャーニーから小さく始める
「小さく始める」戦略(スモールスタート戦略)
大規模なプロジェクトではなく、一つのジャーニーに絞って小さく始めるCX改善アプローチ。失敗リスクを最小化しながら確実に学びを積み重ねる戦略的手法です。
ジャーニー選定の3つの観点
最初に取り組むジャーニーを選ぶ際の評価基準。「影響の大きさ」「実行しやすさ」「学習効率の高さ」の3つの観点から最適なジャーニーを特定します。
ペインポイント
お客様がそのジャーニーで最も困っている部分。問い合わせが多い箇所、離脱率が高い箇所、満足度が低い箇所などから特定される改善優先箇所です。
改善仮説
「なぜその問題が起きているのか」を説明する仮説。改善策の方向性を決定し、効果測定の基準を設定するための重要な出発点です。
最小限の変更
一度に大きな変更を加えるのではなく、仮説検証に必要最小限の変更で改善を試す手法。何が効果的だったかを明確に特定でき、学習効果を高めます。
可逆性の確保
改善策を元の状態に戻せるようにしておくこと。期待した効果が得られない場合のリスクを最小化し、積極的なチャレンジを促進します。
第20章 A/Bテストでリスクを下げ、改善スピードを上げる
A/Bテスト
異なる2つ(またはそれ以上)の案を同時に提供し、どちらがより良い結果をもたらすかを客観的に比較する検証手法。推測や主観的判断ではなく、実際のお客様の行動に基づいて意思決定を行います。詳細ステップは本書第20章参照。
統計的有意性
偶然ではなく、真の差であることを統計的に証明できる水準。A/Bテストでは適切なサンプルサイズと期間を設定し、信頼できる結果を得ることが重要です。
サンプルサイズ
統計的に信頼できる結果を得るために必要なテスト参加者数。業界や期待する効果の大きさによって異なり、事前に適切な規模を設定する必要があります。
コントロール群
A/Bテストにおいて従来のパターン(Aパターン)を体験するグループ。変更を加えた群(Bパターン)と比較するための基準となります。
変数の統制
A/Bテストにおいて一度に一つの要素だけを変更すること。複数要素を同時変更すると、どの変更が結果に影響したかが分からなくなります。
テスト環境
A/Bテストを実施するための技術的基盤。ユーザーの無作為な振り分け、異なる体験の提供、結果測定のしくみを含みます。
データドリブン意思決定
データと分析結果に基づいて意思決定を行うアプローチ。個人の主観や経験ではなく、客観的な事実を判断基準とします。
第21章 改善サイクルをジャーニー全体に広げる
ジャーニーマネジメント
お客様の体験を一連の流れとして捉え、その全体を戦略的に管理・改善していく手法。単発的な施策ではなく、お客様が会社と接点を持つすべての瞬間を連動させて、お客様の体験全体の満足度と会社にとっての最終的な成果の向上を目指します。
カスタマージャーニーの3つの階層
ジャーニーマネジメントを進めるために理解すべき階層構造。全体のジャーニー(認知から継続・推奨までの大きな流れ)、個別のジャーニー(購入手続きやサポートなど特定目的の体験)、個々のインタラクション(Webサイト閲覧や電話対応など具体的な接点)の3つに分けて捉えることで、改善の優先順位と施策の連携を効果的に管理できます。
KGI・KPI体系の3階層構造
3つの階層のジャーニーそれぞれに対応した指標体系。全体ジャーニーには最終的な成果指標(KGI)として顧客生涯価値やNPSを設定し、個別ジャーニーには中間KPIとしてコンバージョン率や満足度を、個々のインタラクションには詳細KPIとして応答時間や離脱率などを設定します。これらの指標の因果関係を明確にすることで、現場での改善が全体目標にどう貢献するかを見える化できます。
全体ジャーニーのKGI
企業の最終的な成果指標。顧客生涯価値(LTV)、総合的な顧客満足度、推奨度(NPS)など、会社の長期的な成功を予測するための最も重要な指標で、すべての改善活動の最終目標となります。
個別ジャーニーのKPI
個別ジャーニーにおける中間成果指標。購入ジャーニーなら「コンバージョン率」や「購入までの期間短縮」、サポートジャーニーなら「問題解決率」や「サポート満足度」など、全体KGIの達成に寄与する指標を設定します。
インタラクションのKPI
個別の接点での詳細成果指標。Webサイトなら「ページ滞在時間」や「離脱率」、コールセンターなら「初回解決率」や「応答時間」など、具体的な改善アクションと直結する指標です。個別ジャーニーのKPI向上につながる指標を設定します。
ジャーニーの見える化
お客様のジャーニーは複数の部門にまたがるため、3つの階層のジャーニーのつながりを見える化し、それぞれが取り組んでいるジャーニーを全員が共有できるようにすること。部門を超えた協業や連携がしやすくなります。
データの統合と活用
改善の成果を適切に測定・評価するために、統合されたデータ基盤を構築すること。各接点で得られるデータを統合し、お客様の全体像を把握することで、より効果的な改善施策を立案できるようになります。
第22章 顧客の声を全社のCX改善につなげる
VoC(Voice of Customer)プログラム
散在する「顧客の声」を統合し、全社でCXを継続的に理解・改善していくための体系的なしくみ。顧客の声を一元化して継続的にCXの現状を測定し、インサイトを導き出して使えるカタチで共有し、顧客にフィードバックしてループを閉じる、という3つの機能を連携させることで成り立ちます。導入ステップは本書第22章参照。
VoCプログラムの3つの機能
効果的なVoCプログラムを構成する基本機能。【1】顧客の声を一元化し、継続的にCXの現状を測定する、【2】インサイトを導き出し、使えるカタチで共有する、【3】顧客にフィードバックし、ループを閉じる、の3つが連携して機能することで、戦略的な顧客の声の活用が可能になります。
4タイプの「顧客の声」
VoCプログラムで収集・分析すべき顧客の声の分類。【定量×会社が計画】構造化された調査(アンケートやNPS)、【定性×会社が計画】インサイト調査(インタビューやエスノグラフィック)、【定量×お客様が自発的】行動データ(Web履歴や購入パターン)、【定性×お客様が自発的】生の声(SNSやレビュー、自発的問い合わせ)の4つを組み合わせて分析することで、包括的な顧客理解が可能になります。
構造化された調査
会社側が計画的に収集する定量的な「顧客の声」。アンケート調査やNPSスコアなど、大量のデータを効率的に収集でき、統計的な分析ができるタイプ。時系列での変化を追跡しやすく、全体的な傾向を把握するのに適しています。
インサイト調査
会社側が計画的に実施する定性的な顧客の声の収集。エスノグラフィックリサーチやインタビューなど、お客様の感情や価値観、行動の背景にある理由など、数値では表せない深いインサイトを得ることができます。
「声」としての行動データ
お客様が行動を通じて教えてくれる「顧客の声」。Webサイトでの行動履歴、購入パターン、利用頻度など、直接的な声ではないものの、お客様の状況や好みを反映した行動パターンは、お客様を理解するための貴重な情報源です。
お客様の生の声
お客様が自ら発信する生の「顧客の声」。SNSでの投稿、レビューサイトでの評価、コールセンターへの自発的な問い合わせなど、お客様が自ら時間を使って発信する声には、重要な改善のヒントが含まれていることが多く、CX改善において極めて価値の高い情報源となります。
第6部 CXを組織の力にする
第23章 ガバナンスを整える:組織でCXを進めるための土台
CXガバナンス
CXを組織的に推進するための共通のルールや意思決定のしくみ。責任と権限の明確化、意思決定プロセス、実行ルール、成果モニタリングの4つの柱で構成され、全社的な視点でCX施策を推進します。
CX推進責任者
CXに関する最終的な責任と権限を持ち、全社的な視点でCX施策を推進する役職。単なる旗振り役ではなく、部門を超えた意思決定権限を持つ重要なポジションです。
意思決定のしくみ
CXに関する意思決定を「いつ、どこで、何を、どのように」決めるかの体系的なルール。月次進捗確認、四半期見直し、年次評価といったタイミングと、全社CX戦略は経営会議、個別施策の詳細は部門横断のCX推進委員会、現場レベルの改善は各部門の定例会議など、意思決定のレベルに合わせた会議体を設定します。詳細は本書第23章参照。
CX実践ルール
CXに取り組む際のガイドラインや基準。「顧客満足度何ポイント未満は3ヶ月以内に改善」「新製品開発には定性リサーチ必須」など、具体的な判断基準を明文化します。
成果モニタリング
CXの成果を継続的に測定・評価し、適切な意思決定を支援するしくみ。数値データだけでなく、現場の声やお客様の生の声を含む包括的な報告体制を構築します。
部門横断の調整
CX施策の多くは複数部門にまたがるため、予算配分、人的リソース配分、責任分担を事前に明確化し、スムーズな合意形成を可能にするしくみです。
第24章 CXを支えるカルチャー:「お客様のことを考える」を当たり前に
CXカルチャー
「お客様のことを考える」ことが会社の当たり前になっている組織文化。制度やしくみではなく、従業員一人ひとりの自然な行動として現れる価値観と行動様式です。
カルチャーの3つの特徴
行動として現れる、すでにカルチャーがある、変化には時間がかかる、という文化変革における重要な性質。これらを理解することが効果的なカルチャー醸成の基盤となります。
顧客の声に触れる機会
従業員が直接お客様の声を聞く機会を意図的に創出すること。月次の声の共有、現場見学会、お客様オフィス訪問など、自分の仕事の意味を実感できる機会の提供です。
小さな工夫の称賛
日常的にお客様のことを考えた行動を積極的に評価・表彰すること。大きな成果だけでなく、ちょっとした心配りや改善提案も含めて「お客様思いの行動」を見える化します。
仕事の意味の可視化
特に間接部門の従業員に対し、自分の仕事がお客様の価値にどうつながっているかを明確に示すこと。すべての業務のお客様価値への貢献を「見える化」します。
カルチャーコード
会社として大切にしたい価値観や行動指針を分かりやすい言葉でまとめたもの。「お客様第一」ではなく「迷ったときはお客様にとってよい方を選ぼう」など、実際の判断基準として機能する形で策定します。詳細は本書第24章参照。
カルチャーの儀式化
新入社員研修でのお客様訪問、四半期CX振り返り会、年次お客様感謝イベントなど、カルチャーを体感できる定期的な「儀式」の設計です。
カルチャーの見える化
お客様からの感謝の手紙の掲示、イベント写真の展示など、CXの重要性を物理的に目に見える形にし、日常的にお客様を意識する環境を作ることです。
第25章 CXビジョン・ガバナンス・カルチャー:3つの支え合い
3つの要素の連携
CXビジョン(方向性)、CXガバナンス(実行のしくみ)、CXカルチャー(価値観と行動)が互いに支え合う関係。どれか一つが欠けてもCXを組織の力にすることはできません。詳細は本書第25章参照。
ビジョンによるガバナンス設計
CXビジョンがCXガバナンスの設計指針となること。目指す体験により必要な意思決定プロセスが決まるため、ビジョンに基づいたガバナンス構築が重要です。
ガバナンスによるカルチャー促進
適切なガバナンスが望ましいカルチャーの形成を促進すること。ルールや評価基準により、会社として大切にしたい価値観や行動を強化できます。
カルチャーによるビジョン実現
CXカルチャーがCXビジョンの実現を加速させること。一人ひとりの自然な行動により、ルールやしくみだけでは実現できない、より価値の高い体験を提供できるようになります。
時間軸の違い
CXビジョン(中長期固定)、CXガバナンス(短期変更可能)、CXカルチャー(持続的)という、それぞれ異なる時間軸での管理が必要な特性です。
第26章 働く体験を豊かにする:CXはEXから生まれる
EX(Employee Experience / 従業員体験)
従業員が日々どんな環境で、どんな気持ちで働いているかという体験の総体。優れたCXの出発点となり、「この会社で働いて良かった」と感じられる体験の実現が重要です。
心理的安全性
失敗を恐れずに挑戦でき、困ったときに素直に助けを求められる環境。自分らしく振る舞える職場環境がEXの基礎となり、創造性の発揮とお客様への積極的な貢献を可能にします。
承認と尊重
一人の人間として価値観、個性、努力そのものが会社に受け入れられているという実感。業績評価を超えた人間としての尊重がポジティブな感情を生み、お客様対応にも反映されます。
貢献の実感
自分の仕事がお客様や同僚、会社全体にどのような価値をもたらしているかが見える状態。特に間接部門において、お客様価値とのつながりを可視化することが重要です。
成長の実感
仕事を通じて新しいスキル習得、責任拡大、困難克服などにより自己価値向上を実感すること。長期的なエンゲージメントと継続的なCX改善の原動力となります。
意図的な人間関係構築
心理的安全性醸成のため、フォーマルな会議以外に気軽に話せる機会を意図的に設けること。朝礼前コーヒータイム、月次ランチ会、オンライン雑談チャンネルなどの工夫があります。
参加型職場改善
みんなの声を集めて職場環境を改善するプロセス。定期アンケート、提案制度、改善委員会などにより、組織づくりの当事者であることを実感してもらいます。
感謝の文化醸成
「ありがとう」や「助かったよ」が交わされる場を意識的に増やし、お互いを認め合う文化を育てること。感謝表現のしくみ整備と、心からの感謝を伝える文化の構築が重要です。
学習機会の提供
「誰かの工夫」を共有し、お互いに学び合う機会の設置。改善事例共有会、持ち回り勉強会、メンター制度などにより、個人の成長と会社全体のレベルアップを図ります。
EXとCXの好循環
従業員満足が顧客満足を生み、顧客満足が従業員満足を高めるという相互作用。心に余裕がある従業員からは自然な配慮が生まれ、お客様からの感謝が従業員のモチベーションを高めます。詳細は本書第26章参照。
EXは基盤の基盤
EXがCXビジョン、ガバナンス、カルチャーの基盤となること。従業員が生き生きと働く環境が、離職率低下、生産性向上、イノベーション創出、そして最終的にお客様支持につながります。詳細は本書第26章参照。
第7部 デジタル技術を活用する
第27章 デジタル技術:CXをスケールする力
スケールの壁
人の力だけでは、多数のお客様一人ひとりに個別最適化された体験を提供することが困難になる限界。デジタル技術により、小さな商店レベルの細やかな配慮を大規模に展開することが可能になります。詳細は本書第27章参照。
データドリブンな顧客理解
客観的なデータに基づいた顧客分析。Webサイト行動履歴、購入パターン、問い合わせ内容、SNS反応などを統合分析し、一人ひとりの顧客プロファイルを構築します。
自動化による一貫性確保
デジタル技術を活用して、すべてのお客様に対して一貫した品質の体験を提供すること。チャットボットの24時間対応、購入履歴ベースの自動レコメンデーション、行動データ活用のタイミング配信などが含まれます。
リアルタイム対応
お客様の要求に即座に応答する能力。AIを活用したリアルタイム分析により、顧客の行動パターンを瞬時に判断し、最適なアクションを実行することができます。
第28章 デジタルが可能にする一人一人のジャーニーに沿った体験
ジャーニーの個別化
従来のセグメント別アプローチから、一人ひとりのお客様に対してその人だけの特別なジャーニーを設計すること。生成AIの活用により、専属コンシェルジュのような体験を全顧客に提供可能になります。
パーソナライゼーション
お客様の行動履歴、好み、現在の状況を理解し、その人にとって最も価値のある体験を提供するアプローチ。生成AIにより、商品説明文、メール文言、おすすめ内容などが動的に個別最適化されます。
生成AI活用
AI技術を活用して、お客様一人ひとりに合わせたコンテンツやコミュニケーションを自動生成すること。個人の嗜好や文脈を理解し、その瞬間に最適な対応を創出します。
ハイブリッド体験
オンラインとオフラインの境界を越えて、一貫した連続的な体験を提供すること。顧客が複数チャネルを自然に行き来する行動パターンに対応した統合的な体験設計です。
先回り体験
お客様のニーズを予測し、お客様が求める前に適切なサービスや情報を提案すること。行動パターンや状況分析により、将来の需要を予測し、タイムリーなサポートを提供します。
予測精度の限界
AIによる予測が完璧ではなく、的外れな提案をするリスク。予測精度向上と間違いの迅速な修正システムが重要になります。
押し付けがましさの回避
パーソナライゼーションが過度になることで、お客様に煩わしさを感じさせるリスク。適切な頻度と内容のバランス維持が重要です。
プライバシー配慮
顧客データ分析や行動追跡において、プライバシー保護とデータ利用の透明性を確保すること。お客様の信頼維持が大前提となります。
第29章 CXを支える主要なデジタルプラットフォーム:タイプ別に整理
CXデジタルツールの4つのカテゴリ
【1】顧客理解とデータ統合、【2】体験デザインと最適化、【3】体験の提供と接点管理、【4】体験の評価と改善の4つのプロセスに沿ったツール分類。
CDP(Customer Data Platform)
顧客の行動や属性データを一元化するプラットフォーム。Webサイト閲覧履歴、購入データ、メール開封履歴、アプリ利用状況など、あらゆる接点からの情報を統合し、一人ひとりの行動を可視化します。詳細は本書第29章参照。
CRM(Customer Relationship Management)
営業活動を中心に顧客との関係を記録・管理するシステム。商談進捗、過去のやり取り、契約内容などを記録し、チーム全体での情報共有を可能にします。
VOCツール
アンケート、SNS、レビューサイトなどを通じて顧客の声を収集・分析するツール。数字では見えない感情的な部分を理解し、生の顧客フィードバックを体系的に活用します。
CX管理プラットフォーム
顧客体験の全体像を可視化し、課題や改善点を組織全体で共有するツール。部門を超えたCX改善プロジェクトの進捗管理と効果測定を支援します。
MA(Marketing Automation)
顧客の行動に合わせてメール配信やスコアリングを自動化するツール。適切なタイミングで適切なメッセージを自動送信し、効率的な顧客コミュニケーションを実現します。
チャットボット/AI応対ツール
24時間365日、基本的な質問に自動回答するツール。生成AIの活用により、人間と会話しているような自然な対応が可能になり、複雑な問題は人間オペレーターに適切に引き継がれます。
オムニチャネル管理ツール
デジタルと実店舗をつなぐ体験を一元管理するツール。オンライン注文・店舗受取や、店舗相談・オンライン購入など、チャネル横断的な体験を統合管理します。
BIツール(Business Intelligence)
CX施策の効果をデータで可視化し、改善のヒントを得るツール。売上、コンバージョン率、顧客満足度などの指標をダッシュボードで表示し、戦略立案を支援します。
ジャーニー分析ツール
実際の顧客行動パターンを発見し、改善点を把握するツール。設計したカスタマージャーニーと実際の行動の違いを分析し、離脱ポイントや予想外の経路を特定します。詳細は本書第29章参照。
コンポーザブルアーキテクチャ
各ツールを組み合わせ可能な設計思想。API連携が充実したツール選択により、将来的な拡張や変更に柔軟に対応できるシステム構成を実現します。
コンポーザブルアーキテクチャ
各ツールを組み合わせ可能な設計思想。API連携が充実したツール選択により、将来的な拡張や変更に柔軟に対応できるシステム構成を実現します。一つの大きなシステムですべてを賄うのではなく、機能ごとに最適なツールを選択し、それらを連携させることで全体最適を図るアプローチです。CXデジタルツールの導入において、長期的な拡張性と変更への柔軟性を確保するための重要な考え方です。
API(Application Programming Interface)
異なるソフトウェア同士が情報を交換するためのインターフェース。CXにおいては、CDP、CRM、MA、CMSなど複数のツール間でデータを連携させ、一貫した顧客体験を提供するために不可欠な技術仕様です。API連携により、各ツールの強みを活かしながら全体として統合されたCXプラットフォームを構築できます。
第30章 デジタル技術は手段 - CX向上のためのデジタル技術導入アプローチ
デジタル投資の失敗パターン
目的が曖昧、現場の理解不足、組織文化との不整合など、デジタル技術を「魔法の杖」として捉えることで生じる典型的な失敗パターン。
目的の曖昧性
「顧客満足度向上」「競合対応」など漠然とした動機でのツール導入。具体的な課題分析なしに進めることで、真の問題解決に至らない失敗パターンです。
現場の理解不足
高機能システム導入後、現場社員が具体的活用方法を理解できず、従来手法に戻ってしまう問題。操作方法だけでなく、データの意味や顧客対応への活用方法の教育が重要ですし、詳細は本書第30章参照。
組織文化との不整合
既存の業務フローや組織文化に合わないシステム導入による現場の抵抗。電話・対面中心の組織への突然のオムニチャネル導入などが典型例です。
成功の3つの基本原則
目的の明確化(具体的で測定可能な目標設定)、顧客視点の徹底(お客様の求める体験の理解)、現場との連携とスモールスタート(段階的拡大による効果確認)
業務デザイン
デジタルツール導入前に、現場の業務フローを丁寧に把握し、実際に運用できるしくみに落とし込むプロセス。技術導入成功の重要な前提条件です。
TCO(Total Cost of Ownership)
導入コストだけでなく、運用コスト、人材育成コストも含めた総所有コスト。デジタル投資の適切な評価には包括的なコスト算出が必要です。
橋渡し役
技術的知識と現場実情の両方を理解し、適切なコミュニケーションができる人材。現場とデジタル部門をつなぐ重要な役割で、導入成功の鍵となります。
段階的導入戦略
いきなり大規模展開せず、小さく始めて効果を確認しながら段階的に拡大する手法。リスク最小化と学習効果最大化を両立させる戦略的アプローチです。詳細は本書第30章参照。
投資判断基準
機能の豊富さや導入実績ではなく、自社課題解決への寄与度、現場での実用性、顧客体験向上への貢献度を重視した総合的判断基準。
デジタルビジョン
デジタル技術を活用してどのような顧客体験を創出し、どのような成果を生み出すかの明確な方向性。経営者が示すべき戦略的指針です。
おわりに 脱学習の力
脱学習の力
既存の考え方や方法論を一度手放し、新しい視点から物事を捉え直す能力。CX経営で持続的成長を実現するために、事業の前提や枠組み自体を見直し、根本から学び直す能力です。
ダブルループ学習
組織学習論において、単なる問題解決(シングルループ)を超えて、前提となる理論や価値観自体を見直す高次の学習プロセス。脱学習の力の理論的基盤となる概念です。
アンラーニング(Unlearning)
過去に学習した知識、スキル、習慣を意図的に手放すプロセス。新しい環境や課題に適応するために、既存の学習内容を一時的に使わないようにします。
人とデジタルの協働
人間の強み(意味の発見、共感、創造的思考)とデジタル技術の強み(リアルタイム性、スケーラビリティ、精度向上)を組み合わせた新しい働き方。従来の「人かデジタルか」の二元論を超えた協働モデルです。
デジタル技術の3つの強み
リアルタイム性(即座の変化察知)、スケーラビリティ(大規模展開能力)、精度の向上(継続的最適化)という、デジタル技術が人間を上回る能力特性。詳細は本書「おわりに」参照。
人間の3つの強み
意味の発見(変化の重要性理解)、共感(感情的つながり構築)、創造的思考(新しい解決策創出)という、デジタル技術では代替困難な人間固有の能力。詳細は本書「おわりに」参照。
社会の構造的矛盾
CX追求において避けられない複数の対立する価値や要求。効率性と人間性、個別最適化とプライバシー、利便性と持続可能性、標準化と多様性などの矛盾を指します。
効率性と人間性の両立
テクノロジーによる自動化で効率を高めながら、お客様が求める人間的な温かさや共感を保持する課題。デジタル化時代のCXにおける根本的なジレンマです。詳細は本書「おわりに」参照。
個別最適化とプライバシー保護
一人ひとりに最適化されたサービス提供と、個人データ活用に対する不安・懸念の解消という相反する要求。技術的問題を超えた信頼関係の構築が必要です。
利便性と持続可能性
短期的な顧客満足の向上と、長期的な環境負荷・社会責任の両立という課題。お客様の利便性追求が環境負荷増大を伴う現実への対応が求められます。
標準化と多様性の尊重
グローバル企業におけるサービス品質の統一性と、各国・地域の文化的背景や価値観の違いへの対応という矛盾。一律化と個別化のバランスが重要です。
弁証法的解決
相反する価値を同時に実現するため、既存の二項対立的思考を超えた統合的な視点での問題解決。脱学習により到達可能な、より包括的で創造的な問題解決アプローチです。
CXの社会的責任
CX経営が単なる企業成長手段ではなく、お客様、従業員、社会全体にとってより良い未来を築く社会的使命を持つという認識。企業活動の社会的インパクトへの責任です。
未来創造の責任
企業のCX実践が積み重なって未来の社会の姿を決定するという認識。どのような顧客関係を築き、どのような価値・体験を創造するかの選択が持つ社会的影響力への自覚です。
持続的企業成長
短期的利益追求ではなく、長期的視点でお客様との信頼関係を深め、社会全体の発展に寄与しながら実現する企業成長。CX経営の最終的な目標です。
組織学習の進化
単発的な問題解決から、継続的な学習能力向上、さらに学習方法自体の変革へと発展する組織能力の段階的進化。脱学習の力により最高次の学習レベルに到達します。
価値創造の変革
従来の製品・サービス提供から、顧客との関係性を通じた共創的価値創造への転換。お客様と企業が相互に成長し合う新しい価値創造パラダイムです。