【第６回補足】未来の働き方はどこへ向かう？

2000年変わらない創造性の科学

Written by Hideaki Shirane

ワーケーションの多様なスタイル

ワーケーションは「仕事をしながら休暇（旅先）を楽しむ働き方」を可能にすることですが、そのスタイルは多様です。

一番イメージしやすいのは、リゾート地に滞在しながら仕事をするスタイルでしょう。地域活性化の観点から、観光庁や地方自治体も推進しています。

海外出張に合わせて家族を呼んで、出張後に家族と観光を楽しむブレジャー（Buisess＋Leisure）型のワーケーションもあります。さらに、同じような働き方の人と交流しながら仕事をするシェアハウス型ワーケーションや、特定の住居を持たずにさまざまな場所を転々としながら仕事をする、仕事と旅が一体化したアドレスホッパー型ワーケーションもあります。

オフィスの意味の変化：「井戸」から「焚き火」へ

こういった働き方が広がっていったのは、コロナ禍の影響が大きいのですが、その時期、これからの新しい働き方の可能性を提示してくださったのが、関西大学の松下慶太教授の『ワークスタイルアフターコロナ 「働きたいように働ける」社会へ』（イースト・プレス）でした。

この書籍では、オフィスが仕事のために必ず出社しなければいけない場所（井戸的オフィス）から、対話や刺激、コミュニケーションが生まれる場としてのオフィス（焚き火的オフィス）に変化しており、オフィスの役割を「物理的な作業場」から「関係や創造の拠点」へと再定義すべきと論じられています。また、ご自身の経験も交え、従来の「在宅（WFH）」かオフィスかの選択ではなく、コワーキングスペースやサテライトオフィスなどを含めた「どこでも働ける環境」へ移行しており、「働く場所＝Xを選んで働く」時代の到来としています。

オフィス回帰の動きへの疑問

近年、大企業を中心にオフィス回帰の動きが広がっています。リモートでは得にくい偶発的な出会いや雑談がイノベーションに重要だと再認識したこと、社員のエンゲージメント低下や若手育成の難しさから対面の必要性がわかってきたこと、組織の一体感や企業文化の維持が難しいことなどが背景にあるとされています。
この動きは、焚き火的オフィスの重要性がわかってきたからとも取れますが、本当にオフィスに回帰することが最適解なのでしょうか。偶発的な出会いや雑談を求めるのなら、オフィスではない場所で集まった方がいいのでは？従業員同士が集まるよりも、社外の人と交流しながらシェアハウスで仕事をする方が、偶発的な出会いの機会は多いのでは？揚げ足を取るわけではありませんが、こういった疑問を抱いてしまいます。

「コーヒーバッジング」という言葉をご存じですか。出社規定を満たすために短時間だけオフィスに出社し、出社記録を残した後、すぐに帰宅して自宅やカフェでリモートワークを続ける働き方を指します。出社への反発や、リモートワークの快適さを知った従業員が、オフィスに出社する義務と自身のワークスタイルとの間に生じるギャップに対応するために行う行動です。これは「働きたいように働く」ための彼らの抵抗です。

非同期チームワークスキルの重要性

オフィス回帰に動いている企業は、もしかすると非同期的なチームワークを信用していない、あるいはそのためのスキルを十分に磨くことができなかったために、オフィス回帰を急いでいるのかもしれません。非同期的なチームワークスキルとは、以下のようなスキルです。

・ドキュメンテーション力：思考や決定を文字化・構造化して残す
・透明性の高い情報共有：誰がいつでもアクセスできる状態にする
・明確なタスク設計：誰が・何を・いつまでに、を明示する
・非同期コミュニケーションのリテラシー：Slack/Teams/Notionなどのツールの使い分け
・合意形成の設計：投票・レビュー・コメントベースで意思決定できる仕組み

ちなみに、mctでも非同期的なチームワークスキルを向上させるプログラムを提供しています。

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