Insight Blog

2024.10.01

ジェネレーティブデザイン・リサーチにおけるフォーカスとスコープを理解する

ジェネレーティブデザイン・リサーチとは?

ジェネレーティブデザイン・リサーチは、デザイン・開発プロセスの初期段階、それもデザインの対象が何なのかを把握する前に始まります。何をデザインするのか、そして何をデザイン「しない」のか。それを決定するために行うこのリサーチは、デザインを納品するクライアントにデザインプロセスに直接参加してもらうという探索型かつ参加型のアプローチを取るため、クライアントのニーズと将来の希望を叶えることができるのです。

 

 それでは、ジェネレーティブデザイン・リサーチを実際に行う場合、どこからスタートすればいいのでしょうか?探索的リサーチには「卵が先か鶏が先か」という基本的な問題が常に付きまといます。クライアントに認めてもらえるプランを立てるためには、探索を始める前にその対象について何らかの知識を持っていなければならないからです。そこで、リサーチはプロジェクトのフォーカスとスコープについて話し合い、可視化するところから始めることをお薦めします。可視化は、デザイン・リサーチ・チームのメンバー全員が同一の認識を持てているかを確かめる上でも、非常に重要です。

scope_and_focus-thumb-400x314-621.jpg

図1:フォーカスとスコープの探索

出典Convivial Toolbox:Generative Research for the Front End of Design, Sanders and Stappers, 2012.

 

フォーカスとスコープとは?

フォーカスとは、あなたが完全に理解し、リサーチ参加者にも探索してもらいたいと望むエクスペリエンスの範囲です。スコープとは、フォーカスを含むより広い範囲のエクスペリエンスで、そこから重要な関連性や視点に気づくことができます。フォーカスとスコープの関係を表したものが図1です。大きい楕円が選択したスコープで、小さい円がフォーカスです。矢印は探索の方向を表しています。

例えば、ジェネレーティブデザイン・リサーチ・プロジェクトのフォーカスが「健康的な食事」であった場合、スコープ内のトピックスには、社会的要因、感情的要因、物理的要因、環境的要因など、健康に関する別のコンポーネントが含まれる可能性があります。ほかの健康関連コンポーネントからどのような影響を受けているかを探索すれば、健康的な食事ついてより詳しく知ることができるはずです。

 

フォーカスをスコープに拡げる方法

デザインの初期段階でジェネレーティブデザイン・リサーチを実施する際は、フォーカスを中心に据えつつ、スコープまで探索範囲を拡げることが推奨されます。正しい対象にフォーカスできているかを知るには、その境界を飛び越えてみるしかありません。

フォーカスをスコープまで拡げるには、プロジェクトのチームメンバーに、フォーカスに直接的・間接的に関連するトピックスのブレーンストーミングやマインドマッピングに参加してもらう方法があります。その結果出来上がったマインドマップは、探索初期の道しるべとして利用できます。その道しるべとなるトピックスについて2回目のリサーチを行い、過去、現在、そして将来のトレンドを探索します。下準備的な観察や非公式のインタビューを行うのも、この道しるべに従って探索する良い方法です。

探索はどの段階で終了するべきか?総合的な世界観の中ではすべてが興味深く関連しています。しかし、予算が限られている以上探索はどこかで止めなければなりません。経験則として、初期の探索に予算の一部を割り当て、その予算を使い切った時点でジェネレーティブデザイン・リサーチに進むと良いでしょう。この初期の集中的な探索によって作成される道しるべを利用すれば、進行するプロセスにおいてさらなるアイデアやインサイトを自然に得ることができるはずです。

 

プロジェクトにおけるフォーカスとスコープの扱い方

ジェネレーティブデザイン・リサーチでは、将来の価値観やニーズを探り出し、エクスペリエンス、製品、サービスの新しいコンセプトを開発して、デザインによってその価値観やニーズに応える方法を探索します。デザイン・リサーチ・プランは、参加者がより広い範囲のスコープに当てはまるトピックスを探索するところから始まります。こうすることによって、彼らの価値観や将来のニーズをより理解しやすくなります。健康的な食事プロジェクトでは、スコープ内のさまざまなスタートポイント周辺を探索しやすくするため、参加者に課題を与える方法も考えられます(例:子供時代の食事の思い出を書き出す、毎日の運動の記録を取る、食事とムードの関係をメモする、など)。課題は自由回答式にして、参加者が自身の選択した方向に沿って答えることができるようにします。その過程で、参加者は自身の選択範囲から外れたフォーカスに「迷い込んで」しまうかもしれません。参加者の探索範囲はリサーチ・プランを通して絞られていき、最終的にはフォーカスにたどり着きます。

 

予期せず得られたインサイトの扱い方

ジェネレーティブデザイン・リサーチからは、短期と長期の2つのレベルの結果が得られます。フォーカスに関連するインサイトからは一般に、そう遠くない将来に関係するアイデアやコンセプトが得られます。スコープに関連するインサイトからは、遠い将来に関係するアイデアやコンセプトが得られることが多くなります。どちらのレベルのインサイトも経過を追い続けることが重要です。短期のインサイトは今日最も役立つものですが、長期のインサイトは将来のプロジェクトにおいて活用することができます。また、長期のインサイトは組織内の別の分野で活動するプロジェクト・チームにも役立ちます。

【関連記事】

  • 【コ・クリエーション ユーザーとの共創プロセスのご紹介】 子育てママとコ・クリやってみました[後編]サムネイル画像
  • 【コ・クリエーション ユーザーとの共創プロセスのご紹介】子育てママとコ・クリやってみました [前編]サムネイル画像
  • DMN EXPO のご案内[vol.007]サムネイル画像