2021.06.11
Blog|オンライントレーニングを成功させる7つのポイント
コロナパンデミック以降、多くの企業で事業活動がリモートワーク中心のスタイルにシフトしてきました。そして人材育成や研修などの教育・学習の活動もオンライン主体に移行しつつあります。
一方で、オンラインでの研修は、かつてオフラインで開催していた会場型の集合研修と比較して運営が難しいという感覚を持ちの方も多いかもしれません。しかし、それらの難しさは実は誤解によるものである可能性があります。つまりオンライン研修を実施するにあたってのポイントをきちんと押さえれば、効果的な研修が可能になるということです。
mctではこれまでに数多くのオンライントレーニングの設計および運営を行ってきました。今回のブログでは、多くの実績を通じて得られたオンライントレーニングのノウハウの中から、絶対に押さえておくべき7つのポイントについてご紹介します。
1. 非同期的な学習を取り入れる
オンラインでの学習を語る上で欠かせないキーワードが「非同期」です。かつての会議室での研修のように、同じ時間に同じ会場に参加者が集まって学ぶのが「同期的」であるのに対して、参加者がそれぞれ自分の好きな時間に好きな場所で個人で学ぶのが「非同期的」な学習です。オンライン研修においては、この同期的学習と非同期的学習を組み合わせることが重要になります。
例えばビデオミーティング形式での研修も、参加する場所は違っても時間は同じですので実は同期的な学習です。そしてこのビデオミーティング形式の研修では、「参加者が長時間集中できない」「ワークショップのような共同作業がしづらい」といった課題があります。そこで重要なのが「非同期的」な学習を取り入れるということです。参加者が個人で予習や復習を行ったり、個人ワークをしたり、といった非同期的なプロセスをビデオミーティングの前後に組み込んであげるのです。非同期的に個人がそれぞれ集中できる環境で自主学習に取り組み、個人としての学習モードを高めた上で、ビデオミーティング形式の研修に参加することで同期的な学習の効果もより高まります。同期と非同期の学習を反復的に行いながら、学習効果を高めていくというのが、オンライントレーニングの一つ目のポイントです。
2. 参加人数の制約を超える
研修において受講者が少人数である方が手厚い教育が受けられるという考え方は決して間違いではありません。しかしながら、オンライン開催のメリットを最大限に活かそうとするならば、より多くの受講者が参加できる研修について考える必要があります。これまでオフィスのある一室で数十名程度が参加して行われていた研修も、オンライン開催にすることで数百人以上で同時に参加することが可能になってきているからです。
このことは教育に対する投資対効果を考えたときに、非常に大きなインパクトです。これまでコツコツと積み上げていくしかなかった人材教育に、レバレッジを効かせた新たなモデルをもたらしたという意味でイノベーションとさえ言えるかもしれません。今後、オンライン研修を人材教育の仕組みの一つとして本格的に取り組んでいくのであれば「人数の制約を超える」という発想は欠かせないポイントです。
3. 自主学習や相互学習を促す
前述のような参加者の多い大規模研修が主流になっていくときに、「講師がそれぞれに教える」スタイルから「参加者が自ら学ぶ」スタイルへと考え方を変えていく必要があります。実際にラーニングの研究においても、講師から学ぶスタイルの学習(Passive learning)よりも、参加者自身が自ら学ぶスタイルの学習(Active learning)の方が学習効果が高いという事実も明らかになっています。
そういった中で、運営側や講師に求められるのは、たくさんの知識を持っていることやその知識を教えることだけではなく、参加者自身が自ら学んだり(自主学習)、参加者同士で学び合ったり(相互学習)するような仕組みをつくることです。その意味では、教育者や研修講師にとっては、これまでにはなかった能力が要求されるようになってきており、トレーニングがオンライン化していく中での新たな難しさと言えるかもしれません。
4. 分かりやすく、シンプルに
オンライン環境での研修では、プロセスや手順をシンプルで分かりやすくしてあげる必要があります。リアルの会場に比べて、参加者がその場における情報を得るのが難しいためです。講師からの説明をきちんと理解できないまま、進行や投影画面は先に進んでしまい、周りの参加者に聞くこともできず、何もしないまま時間が過ぎていってしまうというケースも起こりがちです。特にワークショップ形式のような参加者に演習をしてもらうような場面ではより丁寧な説明が重要になります。
また丁寧に説明するだけでなく、プロセスや手順をあらかじめシンプルな設計にしておくことも大切です。研修を主催する事務局や講師側にとって伝えたいコンテンツは広く深くなりがちです。結果としてレクチャーの内容やワークの組み立てがつい複雑になり、参加者がついて来れないということが起こってしまいます。専門的な知識やメソッドの全てを正確に精緻に伝えたいという思いをグッとこらえて、参加者側の視点に立たなければいけません。学びに対する遅延や離脱をさせず、参加者が丁寧に学びを積み重ねていけるようなシンプルな研修設計が重要です。
5. “ルール”を上手に活用する
リモート環境ではリアルの対面での環境と比較してコミュニケーションが取りづらく、講師と参加者あるいは参加者同士の心理的な距離も遠くなりがちです。そこで大切なのが、研修におけるマナーやルールです。厳格に縛り付ける必要はありませんが、参加者に一定の緊張感を与えたり、当事者意識を促したりするためのマナーやルールを設けておくことは非常に重要です。
例えば「必ずカメラONにして顔を出す」「発言やチャットコメントを積極的に行う」「他の参加者のコメントに耳を傾ける」「失敗を恐れずとりあえずやってみる」などです。特にカメラをONさせることはとても大切です。誰かがカメラをOFFにしてしまうと本人の学びに対する姿勢が受け身になってしまうだけでなく、他の参加者にも受け身の姿勢が伝播していってしまいます。共通のバーチャル背景を用意するなどして、全員がカメラONにするようなムードづくりを工夫してみましょう。
6. ツール選びを妥協しない
オンライントレーニングの効果を高めるためには、目的に合った良いツールを使うことが非常に重要です。例えばビデオミーティングのシステムを一つとってもたくさんのツールがあります。いずれのツールも一見、同じような機能があるように見えますが、参加者にとっての「体験」は全く異なります。「普段使っているツールがあるから」「新たなツールを利用するのは煩わしいから」とツール選びを妥協せず、参加者により良い体験を提供するために、最適なツールを選ぶことにこだわりましょう。
最もよく使われる標準的なツールとしては、Zoom、Miro、Slackなどが挙げられます。Zoomはビデオミーティングツール、Miroは参加者がワークなどをするためのオンラインホワイトボードツール、Slackは講師や参加者がお互い連絡を取り合ったりするためのチャットツールとして使われます。またmctでは配信用のスタジオ設備も作っています。より良い研修体験を演出するための設備という意味では、スタジオもツールの一つかもしれません。
7. ファシリテーションはチャーミングに
オンライン研修においてプログラムを事前にしっかりと設計しておくのが重要であることは言うまでもありません。その一方で意外と見落とされがちなのが、当日のファシリテーションはフォーマルさを押さえたカジュアルで“ゆるさ”のある進行にすべきであるということです。なぜならファシリテーターの振る舞いがフォーマルであるほど、参加者は完璧に設計されたプログラムが提供されることを期待するようになり、"お客様"的な意識が強くなってしまうからです。そしてこの問題は、受講者がリモート参加する環境でこそ起こりがちです。
しかし本来、「学びの場」とは事務局や講師だけでなく、参加者も含めた全員でつくるべきものです。そこで大切なのが、ファシリテーターがカジュアルでチャーミングに振る舞うということです。それによって良い意味での余白やゆとりが生まれ、参加者が積極的に関与できるようになります。わずかなバグすらない完璧なプログラムを目指すのではなく、少しくらい粗くても参加者を含めた全員による手作り感のあるプログラムを目指しましょう。
以上、7つのポイントにまとめてみました。いかがでしたでしょうか?ぜひオンラインでの研修トレーニングを実施する際の参考にしてみてください。
そしてこれら7つのポイントのベースにあるのは「UX(ユーザー体験)デザイン」の考え方です。研修のユーザー(受講者)がオンライン環境で研修を受講する際に、各プロセスで実際にどのような体験をするかを想像しながら、その体験をより良くするような仕掛けを作っていくことが重要です。UXデザインの考え方を意識しながら、7つのポイントを押さえていくことができれば、充実したオンライン研修が提供できるはずです。ぜひチャレンジしてみてください!
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Akihiro Yonemoto
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト
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