2024.10.01
なぜ組織にデザイン思考が必要なのか?−1 −
こんにちは。組織デザインユニットのクワンです。
昨年は、いたるところで”デザイン思考”という言葉を耳にしました。
日本のビジネス界でも一種のバズワードとなり、半ば呪文のように唱えられています。しかし、実際のところその重要性がいまいちわからないという方も多いのではないでしょうか。
<差し迫った危機感から派生している>
組織が生き残るためには、ハーバードビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏が提唱した「イノベーションのジレンマ」を乗り越える必要があります。
知識や技術のコモディティ化、グローバルによる競争の激化など、どんなに今まで成功していた大きな組織でも既存の事業をしていれば生き残れる時代ではなく、組織のトップは強烈な危機感を抱いています。
また、大企業だけに限らなくても、今の現業だけだと業界全体が他の業界に飲み込まれる、衰退していくという危機感を持っている経営者は多いのではないでしょうか。
デザイン思考の導入は、そういった危機迫った状況から
組織新しい価値を生み出す能力を高め、より創造的で機敏な組織を編成する方法
として導入されているのです。
<なぜデザイン思考だったのか>
大きな社会的な背景として下記の3つのポイントが挙げられます。
・業界の垣根がなくなっている
便利な生活になれた消費者に選ばれ続けるためには、製品だけではなく、それを利用するシーンも含めて提供しなければならない。
それはサービス業に限ったことではなく、BtoBの企業や物作りを中心に行ってきた企業にも及んでいる。
また、デジタル化が進み、顧客の情報が手に入るようになったため、相次ぐ他業界からの参入や
複数の業界をまたにかけた一連のサービスを提供する会社の台頭により、既存の業界の区分が意味をなさなくなっている。
・不確実性の増大した予測不可能な社会の到来
こうした変化は、これまで常識とされてきた知識や方法論、価値観が当てはまらない状況を生み出し、
これまでの常識を打ち破るようなイノベーションによって新たな市場創造、顧客創造を図り、
人々のライフスタイルを変えるようなサービスや商品の開発が求められている。
・機能的価値から意味的価値へのシフト
市場が拡大し、経済が成長を続ける状況においては、機能的価値が極めて重要な時代であった。
しかし、低成長時代に突入し、人々の基本的な欲求の多くが満たされる現代においてユーザーの価値観やライフスタイルが
多様化し、製品やサービスを利用することでどういった価値を感じることができるのかをデザインしていくことが
重要になってきた。
このような時代にフィットしたのがデザイン思考のアプローチだったのです。
<導入事例>
組織的にデザイン思考を経営戦略として導入し、成功している例として、P&G、SAP、IBMなどがあります。
ーーー
P&Gの事例
デザイン思考と経営戦略(4)イノベーション中心の組織に慶応義塾大学教授 奥出直人
2017/8/18付日本経済新聞 朝刊抜粋
2000年に最高経営責任者(CEO)に就任したA・G・ラフリーが経営を刷新し、同社を急成長させます。
P&Gではイノベーションを三つの段階に分けて管理しています。最初の段階は、普段の職場から離れた「ジム」と呼ばれる施設でアイデアを討議します。社員の「頭脳訓練場」です。次にプロトタイプを作る施設が隣接しており、エンジニア集団が数百個の単位でプロトタイプを作り、それを10回以上繰り返します。さらに作った製品を人々がどのように購入・使用するかを調べる施設には50台以上のモニターカメラが設置され、模擬店舗での購買行動や製品の使用状況を観察します。
ジムで検討されたアイデアは、次のエンジニアリングの段階で淘汰され、さらに消費者行動を観察する段階でも淘汰されるのです。金融商品のポートフォリオ管理のように、多くのアイデアに投資し、その中からいくつかが成功すれば、その成功が最初の投資へのリターンになります。
ラフリーはイノベーションを生み出す経営方針を「すべての中心に消費者を置く」「自社技術にこだわらず、新商品開発の50%は外部の力を活用する」「すべての企業活動がイノベーションのために行われるようにマネジメントする」としています。
そのため、P&Gはイノベーションの捉え方を大きく変えました。まずチームでイノベーションに取り組むというマネジメントを導入しました。さらに、イノベーションの対象を新商品の開発だけでなく幅広く捉えるようにしたほか、リスク管理能力を高めるために失敗から学ぶ姿勢を徹底したのです。
ーーー
どんなやり方でも導入には反発や副作用があり、それをきちんと理解し、うまく調整しながら進めることが必要不可欠です。P&Gの事例でも、「普段の職場と離れたところで、新しいアイデアを討議する場を持つ」「リスクが大きいからやめるのではなく、金融ポートフォリオのように管理する」など、デザイン思考の強みを最大限に発揮できるようにするための工夫が随所でみられます。
次回のブログでは、「組織へのデザイン思考の導入」を実際に行なった企業の事例から、デザイン思考をうまく機能させるためのポイントをお伝えします。
10年以上デザイン思考のアプローチをお手伝いしているmctならではの視点でお届けできればと考えています。
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Nanasa Kwan
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