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【第10回補足】「私には創造性がない」は思い込み

〜創造性が身につかない本当の理由〜

Written by Hideaki Shirane

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「私には創造性がない」

そんな風に思っている人がいます。しかし、それは大きな誤解です。創造性は特別な才能ではありません。すべての人に備わった、学習と成長の自然なプロセスです。

 

「ゼロから何かを生み出すこと」だけが創造ではない

多くの人が抱く創造性のイメージは、アーティストが白いキャンバスに絵を描いたり、発明家が世界初の技術を開発したりする場面かもしれません。しかし、創造性はもっと身近で日常的なものです。

創造性とは、経験を新しい知識に変換するプロセスです。

毎日の仕事で問題にぶつかった時、過去の経験を振り返り、新しい解決策を見つけようとするのも、立派な創造的行為です。料理をする時、冷蔵庫の残り物で新しい組み合わせを試してみる。子どもに説明する時、相手に合わせて表現を工夫する。これらすべてが創造性の発揮です。

 

コルブの学習スタイルで理解するあなただけの創造性

教育理論家デイヴィッド・コルブが提唱した経験学習理論には、9つの学習スタイルがあります。そして、それぞれのスタイルには固有の創造性があります。
 

あなたの創造性はどのタイプ?

経験する(Experiencing)

創造性の特徴: 感覚的・直感的な創造
例: 現場の空気を読んで最適な提案をする、顧客の微細な反応から新しいニーズを発見する
 

想像する(Imagining)

創造性の特徴: 発想力豊かな創造
例: 「もしも〜だったら」という仮定から新しいアイデアを生み出す、既存の枠を超えた自由な発想
 

内省する(Reflecting)

創造性の特徴: 深い洞察に基づく創造
例: 過去の失敗を振り返って教訓を抽出し、新しい方法を編み出す
 

分析する(Analyzing)

創造性の特徴: 論理的・体系的な創造
例: データの中から新しいパターンを発見する、複雑な情報を整理して新しい理論を構築
 

思考する(Thinking)

創造性の特徴: 概念的・抽象的な創造
例: 異なる分野の知識を統合して新しいフレームワークを創る
 

決定する(Deciding)

創造性の特徴: 実用的・効率的な創造
例: 限られた選択肢の中から最適な組み合わせを見つける、制約の中で最善の解決策を創出
 

行動する(Acting)

創造性の特徴: 実行力を伴う創造
例: アイデアを素早く形にする、試行錯誤を通じて改善点を発見
 

開始する(Initiating)

創造性の特徴: 革新的・先駆的な創造
例: 新しいプロジェクトを立ち上げる、変革のきっかけを作る
 

バランスをとる(Balancing)

創造性の特徴: 統合的・調整的な創造
例: 対立する意見をまとめて適切な解決策を提示する、多様な要素を調和させる
 

「想像する」タイプだけが創造的なのではありません。「分析する」タイプの論理的な創造性も、「行動する」タイプの実践的な創造性も、どの学習スタイルも独自の創造性を持っているということです。

 

メタ認知:創造性を意識化し、高める

自分の創造性に気づけないのは、無意識に創造的行為を行っているからです。創造性を高める鍵は、メタ認知—自分の思考プロセスを意識し、鍛えることです。

1. 自分の創造パターンの発見

「私はいつも、問題に直面すると過去の経験と照らし合わせて解決策を見つけている」 「私は、データを分析している時に新しいアイデアが浮かぶことが多い」
このように自分の創造的な瞬間を意識化することで、意図的に創造性を発揮できるようになります。
 

2. 思考の柔軟性の向上

メタ認知により、「今、自分はどの学習スタイルを使っているか?」「他のアプローチも試せるのではないか?」と問いかけることができます。これが創造的な視点の切り替えを可能にします。
 

3. 学習の質の向上

「なぜこのアイデアが浮かんだのか?」「どのプロセスが効果的だったか?」を振り返ることで、創造的なプロセス自体を改善できるようになります。
 
 
 
 

メタ認知を鍛える簡単な方法

毎日5分の振り返り習慣

・今日、どんな場面で創造性を発揮したか?
・その時、どんな思考プロセスを使ったか?
・他のアプローチだったらどうなっていただろうか?
 

思考プロセスの実況中継

問題解決中に「今、私は過去の事例を思い出そうとしている」「データを分析してパターンを探している」と心の中で実況してみましょう。
 
 
 
 

チームの創造性:多様な学習スタイルの力

個人の創造性を理解したら、次はチーム全体の創造性を考えてみましょう。ここに、学習スタイルの多様性が真価を発揮する場面があります。


なぜ多様性が創造性を高めるのか?

認知的多様性の実現

・「経験する」タイプが現場の生の声を持ち込む
・「分析する」タイプがデータに基づく裏付けを提供
・「想像する」タイプが既存の枠を超えた発想を提示
・「行動する」タイプがアイデアの実現可能性を検証


創造的摩擦の発生

異なる学習スタイルの人同士の建設的な対立から、新しい視点や解決策が生まれます。「なぜそう考えるのか?」という問いかけが、全員のメタ認知を促進します。

 
 

あなたの創造性を解放する3つのステップ

ステップ1:自分の学習スタイルを知る

9つの学習スタイルの中で、あなたが自然に使っているものはどれですか?日常の問題解決場面を振り返り、自分なりの創造パターンを発見してください。

ステップ2:メタ認知を育てる

自分の思考プロセスを意識化する習慣を身につけましょう。「なぜそう考えたのか?」「他のアプローチもあるのでは?」と自分に問いかけることから始めてください。

ステップ3:多様性を活用する

自分とは異なる学習スタイルを持つ人との協力を積極的に求めましょう。あなたの創造性と他者の創造性が組み合わさった時、チーム全体の創造力は飛躍的に向上します。

創造性は特別な才能ではありません。それは、経験から学び、新しい知識を創り出すという、人間が本来持っている自然な能力です。その第一歩は、今日の小さな工夫や気づきを「創造的行為」として認識することから始まります。


次回は、一見価値がないように思える「待つ」という行為について深く掘り下げていきます。どうぞお楽しみに。

Written by Hideaki Shirane

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