ほぐれるCX

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【第12回補足】OXOのユニバーサルデザイン

~なぜ、日本企業のDEIは停滞するのか?~

Written by Hideaki Shirane

OXOのユニバーサルデザイン

 

本編でご案内したOXOの事例は、2003年にヴィジェイ・クーマー教授の講義で学んだものです。ここでは、そのOXOの実例を詳しく見ていきます。ここには、人間中心デザインの多様な構成要素が詰まっています。
 
 
 
 

偶然と脱学習

創設者のサム・ファーバーは、関節炎に悩む妻ベッツィがピーラーを使う時に大変苦労している様子を目にして、「なぜキッチン用具で辛い思いをしなければならないのか?なぜもっと使い心地の良い便利な道具が存在しないのか?」という問いを抱きます。同時に、仮に万人が使いやすいピーラーを開発できれば、きっと多くの人に愛用されるだろう、と思い立ちます。
当時、ファーバーの妻が使っていたのは、アメリカでは極めて一般的なピーラーでした。ファーバーは、誰もが当然のようにその商品を使用している環境において、その前提を疑い、「これは当然ではない」という既成概念からの脱学習をしています。
 
 

共感

ファーバーが「これは当然ではない」と認識できたのは、妻に対する深い愛があったからこそです。OXOの公式サイトでは、OXOの歴史について「OXO was born of love.(OXOは愛によって誕生しました)」と記述されています。
 
 
 

ユニバーサルデザイン

ファーバーの「仮に万人が使いやすいピーラーを開発できれば、きっと多くの人に愛用されるだろう」という発想は、まさにユニバーサルデザインの概念そのものです。彼は、ピーラーの開発を構想した段階から既にユニバーサルデザインを志向していました。
 
 

 極端なユーザー

万人が使いやすいピーラーを開発しようと決意した彼は、知人のデザイナーに自身のアイデアを伝えます。
そして、そのデザイナーとともに多様な人々の「握る」という動作を観察します。例えば、
 
・幼い子どもたちを観察すると、太くて大きなクレヨンの方が握りやすそう
 ・手首の関節炎の患者宅で、ドアノブを回しやすくするためにスポンジ状の素材を巻き付けている

いわゆる標準的なユーザーではなく、極端なユーザーを観察することで、インサイトを獲得していきます。
 
 

プロトタイピング

ピーラーの開発においては100を超える試作品を制作して万人にとって使いやすい形状を探求しました。制作しながら理解し、検証し、学習する、というプロセスです。
 
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アナロジー発想 

製品の材料は、自転車のゴム製グリップからヒントを得ました。ここでも偶然の発見が活用されています。
 
 

デザイン基準 

一連のプロセスを通じて、OXOは自社ならではのデザイン基準を確立しています。このデザイン基準を基盤に、同じデザインプロセスを実施することで、OXOは商品ラインを拡大し、30年以上にわたって成長を継続していきます。

OXOでは、道端に片方の手袋が落ちているのを見つけると、それを持ち帰って社内の最も目立つ場所に展示しています。その理由は、大きな手、小さな手、男性の手、女性の手、高齢者の手…多様な手にフィットする製品を作るというOXOの理念を忘れないためだそうです。

30年以上もユニバーサルデザインという理念を追求し続けているOXO。彼らが生み出す無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインに、「飽きる」人はほとんどいません。次回は、この「飽きる」ということについて、従来とは違った角度から考察してみたいと思います。OXOの製品はなぜ飽きないのか、深い理由が見えてくるかもしれません。どうぞ次回をお楽しみに。
 
 

Written by Hideaki Shirane

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