2024.10.01
患者中心で考える「ヘルスケア・イノベーションセミナー」レポート
2015年10月30日金曜日、「ヘルスケア・イノベーションセミナー」を開催しました。医療業界の方だけではなく様々な業界の方に大勢ご参加いただき、ヘルスケア分野への関心の高さが伺われるセミナーとなりました。
■開催概要
2016年の米国ヘルスケア市場の市場規模予測は2.6兆円といわれています。これは2011年の実に1.5倍となる予測です。先進国を中心とした高齢化の進行、生活習慣病への関心の高まり、国の医療費の高騰などにより、ヘルスケアを取り巻く市場は急激に成長しています。そんな中、すでに米国を中心にヘルスケア分野での数々のイノベーション事例が生まれており、そのキーワードとなっているのが"患者中心"です。
しかし、単に患者中心で考え、患者を大切に扱うということだけではなく、患者自身が治療に積極的に参加し情報をシェアするということが"患者中心"のトレンドになっています。
ミナー前半では今年4月にボストンで開催された「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」のご報告として"患者中心"の考え方や、グローバルでの先進事例をご紹介しました。セミナー後半では患者ジャーニーマップを使ったワークショップを実施し、具体的なテーマを通して"患者中心"について考えを深めました。
レポートでは、セミナー前半の「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」のご報告内容を中心にお伝えします。
■スピーカー:カール・ケイのご紹介
カール・ケイは株式会社mctのコンサルタントで、国際ビジネス戦略、国際アライアンス、言語と文化の壁を克服するためのスケーラブル・ソリューション、顧客とともに目指す価値のコ・クリェーション、イノベーションのためのビジネスエスノグラフィーを専門にしています。また、外国人旅行者に対して、日本のユニークな文化に触れてもらうツアーを企画、販売するTOKYOWAYの主催もしています。https://tokyoway.jp/
■「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」ご報告 3つの観点
カール・ケイが、以下の3つの観点からご報告しました。
(1)Things designers heard patients say
(2)Fit the tool to the step of patients' journey
(3)Where are the win-wins for patient and healthcare business?
(1)Things designers heard patients say
「患者の家族や患者自身が治療に参加しコントロールする」「患者を病人としてではなく疾患という個性を持つ一人の人間として扱う」「患者が自分の病気の経験をシェアする」といった米国でのトレンドを、最新事例を交えてご紹介しました。
例えば、「患者を病人としてではなく疾患という個性を持つ一人の人間として扱う」ではインスリンポンプをアクセサリー感覚で付けられるようにしている「hanky pancreas」(http://hankypancreas.com/)や、「患者が自分の病気の経験をシェアする」では医師が診察時のノートを患者と共有する「open notes」(http://www.myopennotes.org/)というツールをご紹介しました。
参加者の方からは、「医師がノートを患者とシェアするということは、今の日本では考えられないが、非常に興味深い取り組みだ」といった意見が聞かれました。
(2)Fit the tool to the step of patients' journey
6つのステップの患者ジャーニーに沿って、それぞれのステップで患者がどのような感情を抱き、患者の状態や感情に寄り添うためにどのようなツールが提供されているか、具体的な事例を交えてご報告しました。
Step.1 Having symptoms
feeling :worry, denial, obsession"will this go away on its own?"
Step.2 Seeking a diagnosis
feeling :worry, frustration- takes so long, which doctor to see
Step.3 Getting a diagnosis that you believe
feeling :shock when hearing the diagnosis"We've long known that once you give people bad news, they often don't remember half of what they're told after that,"
Step.4 Making sense of it & finding a plan
feeling :grieving for the future you imagined but lost; loneliness
Step.5 Optimizing and adjusting
feeling :found a doctor, feel on a path, a little more in control
Step.6 Living with it
feeling :The "New Normal" (depends partly on the illness)Finding the "silver lining"
例えば、「Step.2 Seeking a diagnosis」で患者がどのようなドクターに掛かるべきか長時間悩みフラストレーションを溜めているという状態に対して、米国のDana Farber病院では、医師の紹介ビデオをホームページで閲覧できるようにしているという事例を紹介しました。http://www.dana-farber.org/
3)Where are the win-wins for patient and healthcare business?
"患者中心"は患者だけではなく、ヘルスケアビジネスを提供する側にとってもメリットがあることを以下の点からお伝えしました。
☑ Better compliance- more sales, lower cost
☑ Better outcomes
☑ Fewer lawsuits
☑ Access to more data, faster
☑ Report by NHS in UK estimates that stronger patient engagement could lead to savings of nearly £2 billion by 2020-21, i.e. around 10 per cent of the NHS England target saving.
☑ Doctors will still provide treatment, but they won't be doing very much diagnosing or monitoring; that will be done by patients going forward.
例えば、先ほどご紹介した「open notes」というツールは、患者の治療に対する満足度を高めるだけではなく、医師が患者に伝えたことの記録を残すことによって医療訴訟のリスクを下げることにもつながります。
■患者ジャーニーマップ体験ワークショップ概要
後半は、希少疾患の子供を持つ母親をテーマに、母親のジャーニーマップを描くワークショップを体験していただきました。希少疾患の子供を持つ母親の気持ちは想像することも難しいですが、カスタマージャーニーマップを用いて感情の流れを捉えることにより、深く感情移入して積極的な意見交換ができました。参加者の方からは、「口ではこう言っていたけど、それって結局こう思っているんじゃないか?」や「男性として母親の気持ちを理解するのは難しい。」と言った意見が聞かれ "患者中心"を体感しながら考える、とてもよい機会になったと思います。
「患者ジャーニーマップ」について詳しく知りたい、社内で実施したい方はお気軽にお問い合わせください。
また、来年4月にも「Improving health experiences through technology & design」というテーマで「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」が開催される予定で、mctからはカール・ケイが参加します。次回も報告会を開催しますので、お楽しみに!
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Shinpei Tsurumori
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト
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