2019.11.07
デザイン思考で、課題提起型デジタルカンパニーへの変革を目指す【KONICA MINOLTA Case study Vol.2】
左からヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部
久保田さん、今村さん、野添さん
取材:池田映子、米本明弘
2017年から、中期計画で「課題提起型デジタルカンパニー」を目標として掲げ、全社的にデザイン思考の考え方を現場に取り入れることを急ピッチで実践してこられたコニカミノルタ社。
単純に一般的なデザイン思考プロセスを導入すればいいということではなく、「コニカミノルタ流」の考えを取り入れながらプログラムを設計することが必要でした。弊社はそのプログラムのコンテンツ開発と実施をサポートさせて頂きました。
この度、こうした取り組みの「仕掛人」であったヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザイン戦略部の皆様が、社内での革新的な取り組みについて表彰されるインナーアワード「Transform Awards」で受賞されたとの一報をお聞きし、ご担当者としてのご苦労や導入のための工夫について、インタビューをさせて頂きました。
取り組みのポイント
✓ 関連部門の協力
✓ 手法からではなく、マインドセットから取り組む
✓ 自社の特性や業種に合わせたデザイン思考プログラムの開発
✓ デザイン思考プログラムの修正をトライ&エラーでスピーディに行う
今回の記事は「vol.2」です。
「なぜ今、デザイン思考に取り組む必要があるのか」、
導入部分での動機付けが必要だと学んだ
―デザイン思考の考え方を学んで頂くことについて、受講者の方にはすんなり受け入れられたのでしょうか?
今村さん:「そもそもなんでデザイン思考って、デザインという名前がついてるんですか?」といった疑問からはじまり、我々デザイナーが当たり前に考えて深く考えてなかったことについて色々質問や意見がありました。それらを聞いていく中で、ただデザイン思考の方法論だけ教えていてもダメだと教育プログラムを組み替えたんです。導入のところで、「我々がなぜデザイン思考をやる必要があるのか」という動機付けの部分をしっかり語った方がいいと。
まず、世の中の潮流を大局的に捉えてもらうために、GAFA を中心とするプラットフォーム企業が、なぜ市場を席巻し、企業価値を高められたのか、ビジョン・ミッション視点から話をすることにしました。ビジネスパーソンにはわかりやすいかなと。例えばグーグルだと「世界中の情報を整理し、世界中の人々が無料でアクセスできて利用できるようにする」と。技術の話は言ってない。人間中心のミッションです。アマゾン、フェイスブックも人間中心のビジョン・ミッションを掲げています。
では日本の企業はどうですかと。今やどの日本企業も世界の時価総額ランキングで30位にも入っていない。このままだとどんどん世界の経済成長に後れをとっていってしまう。まずは社員一人ひとりが徹底的に人間中心のマインドを持たなきゃいけないということを教育の最初に言うようにしたんです。そうすると、そこで「なるほどね」と感じてくれた人も結構いて。とにかく危機感を持ってほしかった。
―全体のプログラム構成も、3段階で、段階的に学べるよう工夫されていましたよね。
今村さん:教育って山を登るようなもので、いきなり8合目から大事なことを言っても、山のふもとにいる人には響かない。まずは「デザイン思考概論」でデザイン思考のことを知るところから始めて、意義やマインドセットを伝えて。それだけでも1日かかる。それができたら、2日間の「ブートキャンプ」で、5名程度の最小単位のチームでファシリテーションを含めて創造性を高めるワークをやってみる。そのあと更に学びたい方には、「スキル学習」でインタビューやジャーニーマップの書き方、プロトタイピングなどのスキルセットが学べる機会を提供する。手法だけをいきなり教えたとしても響かないので、段階的に山を登っていけるように考えました。
これは実は、社内で我々が中心となって開発している顧客をファンにする「魅力」を生み出すためのサービス開発の方法論を応用しているんです。顧客のステージを、認知、導入、継続利用の3つのステップに分けて各ステージに応じて顧客に寄り添って魅力を提供していこうという考え方なのですが、教育にもその考え方は効果的なんです。
デザイン思考について知識のない受講者でも段階的に学べるような教育プログラムを構築
―ここでいう参加者の皆さんが「顧客」で、最後はデザイン思考のファンになってほしいと。
デザイン思考を組織にインストールするプロセスに、まさにデザイン思考の考え方を使っているということですね。
今村さん:使っていますね。デザイン思考のファンになってほしい。大上段に構えて上から教えてもモチベーションは上がらないですからね。「デザイン思考」というラベルにはこだわっていなくて、一人ひとり、さらにはチームの創造性を高めるという大目的に共感して、我々の取り組みそのもののファンになってほしい。さらにはインフルエンサーになってもらいたい。教育プログラム自体も、やりながら繰り返し、繰り返し修正をかけているんですね。それもデザイン思考のやり方かなと。フィードバックをもらってすぐ修正をかけて、次の講義に反映しています。
―今はどれくらいまで目標達成できたと感じられていますか?
今村さん:まだまだ道半ばというか。山でいうと3合目くらい。2018年度に一通りのプログラムが出来上がって、全プログラムを一気通貫して実施するというのが2019年度なので、ようやく土台ができたかなと。これもプログラムができたらそれで終わりではなく、進化させていかなくてはいけないし、教育の質も高めていってデザインシンカーを増やしていかないといけない。スピーディーにやっていかないといけないと思いますね。
野添さん:一通りの土台となる、理論はできました。真の浸透という意味では、これからはやはり現場での実践を通じて実践知を高めていくことが課題だと思います。教育を受けた一人ひとりが、実践をしていく上での見本となれるように地道に支援していく必要があると思っています。
組織的な協力がなければ、ここまで辿り着くことはできなかった
―御社のように規模として大きい企業が、継続的、構造的にデザイン思考のインストールに取り組むに当たって、苦労した点はありましたか?
今村さん:うーんそうですね…、規模が大きくてかつ中長期的な活動になると、なぜそれをやるのか、明確なメッセージにできるかどうかが大切です。トレンドだから、他社がやっているから、というのは本当の意味で組織を動かす力にはならないと思います。人やお金などのリソースも使うので、経営視点で中期計画と我々の活動をどうやって効果的に紐づけて考えていくのか。そこを意識してやってきました。
中期計画の中でも、弊社のように製造に強みのある会社は技術戦略がとても大事なんです。技術部門にはMOT(Management of Technology)をベースとした新規事業を生み出すための「KM way」という考え方があるのですが、その枠組みとリンクさせて考えていく。また、全社的な教育の場である「コニカミノルタカレッジ」の中で効果的に教育する人財を集める。すでにある社内のアセットを活用しながら、コーポレート横断組織とうまく連携しながらやっていくことを意識しました。1つの部署だけ単体で頑張ってもなかなかスケールしていかないので。
― 一部門単体の活動では、ここまでやりきることはできなかったと。
今村さん:ありがたいことに、技術、人事、経営企画を担当する部署の人たちがとても協力してくれたんですね。その協力がないと、スケール的に大きく、中長期的に実施するのは難しい。また、「事業部門でもデザイン思考を取り入れてやらなきゃ」という意識づけがトップダウンで行われたので、やりやすい部分は非常にありました。トップダウンだからこそこうした活動が成り立っている部分は多分にあります。会社の経営方針、各部署の方針と足並みをそろえながら親和性を高くやっていくことが大事だと考えています。
また、私が所属しているデザインセンターのトップはグループ業務執行役員でもありますから、これからやろうとしていることについて経営トップ層との共有が行われたり、経営的観点からのフィードバックを直接もらったりすることができました。経営層とも対話をしながら、教育プログラムづくりや浸透計画を練られたことは大きかったと思います。
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▼コニカミノルタのデザイン(外部のウェブサイトに移動します)
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/design/index.html
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Eiko Ikeda
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー
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