2022.10.13
プロジェクトチームのクセを認識してイノベーションの可能性を高める
こんにちは、白根です。
イノベーションプロジェクトの進め方についてお話しします。
イノベーションの価値の大きさとチームの多様性の関係
このグラフをご存知でしょうか。
ハーバードビジネススクールのLee Fleming准教授が17,000件の特許を分析したグラフです。
Perfecting Cross-Pollination, Lee Fleming
https://hbr.org/2004/09/perfecting-cross-pollination
横軸はプロジェクトチームの専門領域の多様性、縦軸はイノベーションが生み出した価値の大きさ。青い線が示しているように、価値の大きさとチームの多様性が反比例しています。ところが、グラフの右上を見ると、そこにパラパラとイノベーションがプロットされています。つまり、非常に大きな価値をもたらすイノベーションは多様性の高いチームによって生み出されているということです。
このグラフは「価値のあるイノベーションには多様性に富んだチームが必要だ」という説明をする時に使われることが多いのですが、プロジェクトをたくさん経験してきた立場から眺めると、プロジェクトの始まりや途中でもこのグラフと似たパターンになることに気づかされます。
イノベーションのプロセスがこのグラフのパターンで進んでいったために、結果がこのグラフのようになったと考えることはできないでしょうか。もしそうなら、イノベーションのプロセスで意識的にグラフと異なる行動をとることで、結果のパターンをよりよい方向に変えることができるはずです。
今回はイノベーションプロセスの3つの段階での対処方法について考えてみます。
【1】テーマのスコープをマネジメントする
例えば、このグラフの横軸はそのままにして、縦軸をプロジェクトのスコープの広さに置き換えると、多様性の低いチームはプロジェクトのスコープが狭すぎ、多様性に富んだチームは、プロジェクトのスコープが意図しない方向にまで広がっているというグラフになります。これは、プロジェクトのスタート段階でよく見かけるパターンです。
多様性の低いチームでは、暗黙のうちにイノベーションを狭い範囲で共有してしまっています。一方、多様性に富んだチームは、目指すべきイノベーションの方向が定まっておらず、プロジェクトのスコープが意図しないところににまで広がってしまいがちです。この行動パターンを変えるには、多様性の低いチームも多様性に富んだチームも、プロジェクトをスタートさせる前に、イノベーションのヴィジョンや定義、戦略、制約事項を明示的な形で共有し、それに沿ってプロジェクトのスコープを決める。そして、多様性の低いチームはプロジェクトのスコープを意識的に広げるように、多様性に富んだチームは意識的にプロジェクトのスコープを広げすぎないようにする。このことを徹底することで、プロジェクトのスタート段階をよりよい方向に変えることができます。
【2】アイデア創出の幅をマネジメントする
次に、縦軸をアイデアの幅の広さに置き換えると、このグラフはアイデア創出段階によく見かけるパターンになります。多様性の低いチームは、メンバーの所属部門が得意とする領域や、自社や業界がこれまでやってきた領域にアイデアが偏りがちです。そうなってしまうのは、顧客が抱える問題を従来の見方で捉えてしまっているからです。一方、多様性に富んだチームでは、顧客の問題に焦点が当てられずに、脈絡なくアイデアが出てしまう傾向があります。
アイデア創出段階では、多様性の低いチームも多様性に富んだチームも、顧客の真の問題に焦点を当てるようにする。その上で、多様性の低いチームは、イノベーションをもたらすアイデアの幅の広さを理解し、意識的に自部門や業界の慣行から離れてアイデアを出すようにする。多様性に富んだチームは、個々のアイデアの良し悪しに終始するのではなく、幅広いアイデアを顧客の問題に焦点を当ててコーディネートするようにする。このことを徹底すれば、アイデアの質は自ずと高まってくるはずです。
【3】アイデア選定をマネジメントする
そして、アイデア選別の段階でも似たようなパターンになります。多様性の低いチームは、トップや上司などの内部の意向を意識してアイデアの選択が保守的になりすぎ、逆に類似性の低いチームは、現実的な評価をせずに無謀な判断をしてしまう傾向があります。
どちらもリスキー・シフトといわれる集団思考の状態です。アイデア選別のプロセスでこのような状態から抜け出すには、類似性の高いチームでは機会を最大化するために、多様性に富んだチームでは無駄な損失を最小化するために、どちらのチームも個人的な感情から離れ、主観ではなく、質的/量的な市場の評価を判断基準にする。意思決定を段階的に小分けにして、リスクを最小化する。このことを徹底することでアイデア選別の段階の行動パターンを変えることができます。
チームのクセを認識して、意識的に変える
イノベーションプロセスの3つの段階での多様性の低いチーム、多様性に富んだチームそれぞれの行動の癖と、その対処方法についてお話しました。いずれもベーシックなことですが、自分たちのチームの癖を認識して、意識的にそれを変えるように行動すれば、イノベーションを生み出す可能性は着実に高まってくるのではないかと思います。
-
Hideaki Shirane
株式会社mct CEO / ストラテジスト
- 組織デザイン
- CX・顧客経験
- インサイト
- グローバル
- ビジネスデザイン
- イノベーション
- デザイン思考
- 働き方
- イベント告知
- コ・クリエーション
- チームワーク
- セミナー
- 働き方改革
- ZMET
- ヘルスケア
- DMN
- covid19
- futuredesign
- エクスペリエンスデザイン
- エスノグラフィックリサーチ
- デザイン
- 顧客中心
- リモートコラボレーション
- 事業開発
- ソリューション
- 患者理解
- 製薬
- サスティナビリティ
- ワークショップ
- 患者中心
- PPI
- PSP
- SDM
- ペイシェント・セントリシティ
- オンラインワークショップ
- ギャップファインディング
- signal
- 従業員体験
- 技術開発
- 101_design_methods
- カスタマージャーニー
- エンゲージメントデザイン
- デザインリサーチ
- メソッド
- サービスデザイン
- シグナル
- トレーニング
- 機会探索
- PlayfulNetwork
- マインドセット
- COM-B
- SDGs
- サーキュラーエコノミー
- フューチャー思考
- CSA Research
- mcTV
- フューチャーデザイン
- プレイフル
- 製品・サービス開発
- フィールドワーク
- ブランディング
- メタファー
- リフレーム
- 事例
- Forrester research
- エフェクチュエーション
- カルチャーコード
- クルースキャン
- シグナル探索
- ビジネスデザインプログラム
- フレームワーク
- プロトタイピング
- CX4DX
- CultureMeetup
- PRO
- leadership
- mct labo
- デザインスプリント
- トレンドリサーチ
- ビジネスモデル
- 映像編集
- CXマネジメント
- MOT
- NELIS
- Remo
- インタラクションマップ
- デジタルエクスペリエンス
- デジタルツール
- バイアス
- ファシリテーション
- 学習
- Employeeexperience
- LGBT
- wasedaneo
- お知らせ
- インプロ
- セルフドキュメンタリー
- デザインシステム
- デザイントレンド
- デザインマネジメント
- ベンチマークリサーチ
- リーンスタートアップ
- 創造性開発
- 学習体験デザイン
- 市場調査
- 用途開発
- 経営戦略
- 資本提携