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2024.07.22

Blog|行動変容COM-B 第1回:「行動を変える」ためのインサイトをどう見つけるか?

 

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「行動を変える」という言葉を聞いた時、皆さんはどのようなことを頭に思い巡らすでしょうか。

●うちの商品を買うように行動を変えてくれるのなら、そんなありがたい話はないけど
●なかなか続けてくれなくて(日々の行動を変えてくれなくて)困ってたんだよねぇ
●社員を変えたい!

そんな「行動を変える(=行動変容)」ためのアプローチですが、大きく二つに分けることが可能です。

【行動変容アプローチ1】 最終的に人々の長期的な幸せにつながるような行動変容
【行動変容アプローチ2】 短期的な関心を惹くような行動変容

行動科学や行動経済学系の文献を読まれている方なら「プロスペクト理論」という言葉をご存じかもしれません。「今日買ったほうがお得ですよ」より「今日買わないと損ですよ」の売り文句のほうが人々の関心を惹くという理論ですが、短期的に多くの関心を集めたとしてもその商品が残念なものだったらブランドの価値を損ね、長期的な売上向上は見込めなくなるでしょう。

これは上記の【行動変容アプローチ2】の説明なのですが、Nudge(ナッジ)という言葉でも広く説明されている内容です。このアプローチはダークパターン(=人々を不幸な世界に導く可能性がある)として、誠実な企業は避けるべきアプローチであると世界的にも語られはじめています。

そういった考え方に基づき、今回のmctシリーズブログでは、【アプローチ1】を中心とした考え方・進め方をご説明していきたいと思います。



mctでは、ロンドン大学のエイミー教授らが理論整備を行っている「COM-B」というモデルをベースに行動変容プロジェクトのお手伝いをさせていただいているので、まず、そのモデルの説明から始めたいと思います。

COM-Bモデルは行動を阻害する要因(ブロッカー)や促進する要因(ブースター)を発見~分析するのに優れた手法なのですが、C・O・M・Bはそれぞれ以下の内容となります。

Web illustrations by Storyset
 ※ Web illustrations by Storyset

C:Capability (能力面のブロッカー/ブースター)
O:Opportunity (機会/環境面のブロッカー/ブースター)
M:Motivation (動機面のブロッカー/ブースター)
B:Behavior (最終的な行動)

例えば、「運動が続かない」をテーマにCOM-Bモデルを見てみましょう。

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「すぐに息切れしてしまうから運動がつらい」なら、その人の運動能力的(Capability)なブロッカーです。「運動のコツを教えてもらったから運動する気になった」も、知識面での能力(Capability)のお話。これは行動を促進しているのでブースター。

「近くにジムがない」なら、環境的(Opportunity)なブロッカー。「運動しようと友達に誘われた」なら、人間関係という意味での環境的(Opportunity)なブースター。

「オレは運動しないって決めてるんだ」などは信念的な意味での動機的(Motivation)ブロッカー、「ジムに一度行くと、意外と楽しかった」は、短期的な反応という意味での動機的(Motivation)ブースター。
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このように、COM-Bを用いると一つの事柄(運動)に対するブロッカー・ブースターが数多く見つかります。言い換えると、COM-Bモデルを用いて、行動変容のためのインサイトが緻密に洗い出されるという訳です。

これらは人々の価値観や考えをベースにしているので、その人たちを不幸にするような施策につながりづらい点は、本記事の前半でお話した【アプローチ1(最終的に人々の長期的な幸せにつながるような行動変容)】に通じるところです。



さて、以上で行動変容の全てを語れていたら良かったのですが、シンプルにC・O・Mを検討するだけでは本当の行動変容の要因が見つからないケースが多々あります。

例えば、「商品/サービスは良いと思うのに、なぜ使ってくれないのだろう」と悩まれたことなどございませんか?

また、「なんとなく好きだから、使う」を、COM-Bモデルに沿ってどうリサーチ・分析すれば良いと思いますか?

そういった難易度の高いクエスチョンを解明できるよう、mctでは独自にCOM-Bモデルの深化を図っています。本シリーズブログの次回以降の記事を通して、それらの内容をお伝えできればと思いますので、弊社ブログ/メルマガを定期的にチェックいただけますと幸いです。

また、8月末に行動変容に関するオンラインセミナー(参加無料)を行いますので、お時間合う方はご参加いただけますと幸いです。日程や内容は、後日、ご案内させていただきます。

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