2024.08.27
Blog|行動変容COM-B 第5回:行動変容を促すためのアイデア開発手法
「COM-Bリサーチの結果を、行動変容のためのアイデアにうまく落とし込むには?」
何が行動を妨げているのか(=ブロッカー)は分かったけれど、そこにどう介入すれば良いのか?そんな疑問に答えるのが、今回の行動変容COM-Bシリーズブログ第5回(最終回)です。
行動変容において、強力なツールとなり得る「ソリューションダイアグラム」について、その進め方を事例を交えながらお話しします。
ステップ1:COM-Bモデルを用いてインサイトを得る
復習になりますが、COM-Bモデルは、人の行動を変える妨げになる要素を3つの観点から分析するものでした。例えば、「区民がゴミの分別を行う」という行動を促したいとき、次の3つの「ブロッカー」を考えることができます。
1.Capability(能力):ごみの分別について正しい知識がない(複雑過ぎて覚えられない)
2.Opportunity(機会/環境):ごみ置き場がゴミを分別できる仕様になっていない
3.Motivation(動機):(周囲の住人もごみを分別していないので)自分ひとりがやっても無意味だと感じる
などが挙げられます。
ステップ2:MOTを特定する
次に、COM-Bモデルによって得られた多くのインサイトの中から、特に重要な「MOT(Moment of Truth=真実の瞬間)」を見つけ出します。MOTとは、ユーザーが次の行動を決定する重要な瞬間のことを指し、この瞬間がユーザーのその後の行動全体を左右することが多いものです。
例えば、ある教育アプリを導入する際に、初めて使ったときの操作性や学習の効果が分かりやすいかどうかが、ユーザーが継続的に使用するかどうかを決めるMOTになることがよくあります。このようなMOTを特定することで、どこに焦点を当てて介入すべきかが明確になります。
ステップ3:MOTをソリューションダイアグラムで評価する
特定したMOTを「ソリューションダイアグラム」という表を用いて評価します。ソリューションダイアグラムとは、各インサイトやMOTに対して、どのような介入タイプが有効かを、視覚的に整理するためのツールです。
ソリューションダイアグラムとは?
ブロッカー/ブースターのタイプごとに、最適な介入方法が確認できるダイアグラム。これは過去の研究結果から特定されたものであり、ユーザの行動を変えるためのアイデア創出を、確度の高いプロセスをもって進めることが可能になります。
ステップ4:介入のタイプを特定し、アイデアの方向性を見出す
そして、ソリューションダイアグラムから分かった「介入のタイプ」を決定し、それに基づいて具体的な介入策を設計します。この介入策が、行動変容を促進するためのアイデアの方向性となります。
先ほどの例でいえば、「ごみの分別について正しい知識がない(複雑過ぎて覚えられない)」というCapability(能力)に関わるインサイトだったため、ダイアグラム上では、“内面“ד有効化”に対応することが分かります。そのため、「ルールやツールなどの変更により、望ましい行動を取りやすくする」という解決の方向性が得られる、ということになります。
アイデアの事例
“内面”ד有効化”の方向性で、事例をひとつ紹介します。それが、墨田区の「ごみ分別案内チャットボット」です。
ゴミ分別の相談をAI猫がチャット形式で応えるもので、このサービスのポイントは、ユーザーの「動機」(Motivation)に直接働きかけるインタラクティブな切り返しです。たとえば「捨てたいもの」に対して「噂」と入れてみると、AI猫が「シェイクスピアは、『悪口を言われて我が身を正すことのできる人間は幸せというべきだ』と言っていたよ」とユーモアを交えて応じます。これにより、分別という日常的なタスクが楽しい体験に変わり、ユーザーが積極的にゴミ分別の知識を得ることを促進するものといえるのではないでしょうか。
https://www.city.sumida.lg.jp/kurashi/gomi_recycle/kateikei/oyakudachi/gomi-bunbetu-chatbot.html
今回は、インサイトをどうアイデア開発に活用するか?その時に有効な「ソリューションダイアグラム」とアイデア事例のご紹介でした。
以上、5回のシリーズブログを通して行動変容リサーチについて考えてきました。「こんなケースにも使えそう?」という場合など、貴社の顧客の行動変容にまつわるご相談、お待ちしております。お気軽にお声がけください!
★なお、8/29(木)16:00-17:00に行動変容に関するオンラインセミナー(参加無料)を行いますので、お時間合う方はご参加いただけますと幸いです。
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DMN×mct 共催の特別セミナー!
生活者に“新しい習慣”を身に着けてもらうためには、生活者に向けた行動変容アプローチが不可欠です。
ロンドン大学エイミー教授らが整備した行動変容モデル(COM-B)を深化させたmct流の行動変容アプローチを交えながら、同プロジェクトを進めるための理論と実践についてお伝えします。
★ プログラム
1.行動変容モデル(COM-B)の基本概念
2.行動変容に向けた深いインサイトの獲得方法
3.リサーチのデモンストレーション
4.インサイトを行動変容のためのアイデアにどう変換するか?
※プログラム内容は変更となる可能性がございます。予めご了承ください。
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Saori Kameda
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー
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