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2024.10.01

ビッグピクチャーを描くためのメソッド

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、101メソッドの中でビッグピクチャーとして使えるものをご紹介しましょう

 

 

Summary Framework(サマリーフレームワーク)

人々やコンテクストの深い理解に基づくインサイト、デザイン原則を1つにまとめるために分析の最後に用いる構造化のメソッドで、サンダース教授の「ビッグピクチャー」がこれにあたります。

形態に関わらず、優れた「サマリーフレームワーク」「ビッグピクチャー」は以下の性格を持っています。作成する際は、これらの項目をチェックリストとして使いながら表現するとよいでしょう。

・あるテーマを完全かつ包括的に表している

・詳細は割愛し、全体レベルの情報のみを示した概略である

・全体レベルの情報は詳細レベルの情報を内包している

・あるテーマの要素間の関係を示す構造を表す

・通常は図表を使って、ひとつの形状で表される

・コミュニケーションを促進し、モードの移行をサポートする

 

img-224195700_04-thumb-400x382-669.jpg引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』186ページ

 

User journey Map(ユーザージャーニーマップ)

Customer Journey Map(カスタマージャーニーマップ)とも呼ばれますが、顧客のゴールにまつわる一連の体験を顧客の視点で時間の流れに沿ってマップ化するメソッドです。視点を企業から顧客に転換し、顧客のニーズを視覚的なモデルとして共有することができます。

カスタマージャーニーマップでは、一連の体験を通して顧客がどんな結果(ゴール)を得たいのかを軸に、体験の流れに沿って、顧客の期待、行動、考え、感情がどうなっていくのかといった情報が描かれます。また、顧客が抱えているペインポイントや重要度の高いインタラクションなど、鍵となるファインディングを明らかにします。重要なタッチポイントを特定することで、自社やパートナー企業がどこに焦点を当てて顧客経験を改善し、顧客の期待をマネジメントするべきかが分かるようになります。

 

img-224195700_06-thumb-400x385-672.jpg引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』183ページ

 

Descriptive Value Web(ディスクリプティブ・バリューウェブ)

Prescriptive Value Web(プリスクリプティブ・バリューウェブ)

自社、自社業界、更には近隣業界など、ステイクホルダーの関係性を描き出し、どのような価値交換が行われているのかを視覚的に理解するツールです。

Descriptive Value Webでは現在の状況を可視化する手法であり、顧客(ユーザー)だけでなく、競合組織、サプライヤー、流通業者など関与してくるステイクホルダーを洗い出し、それらがどのように関係しているか(価値を交換しているか)を描き出します。市場全体の仕組みとして見ていくことで、価値がどこで生まれ、どのポイントがキーとなっているか、手が加えられていない場所はどこかなどを見つけ、メンバー間の共通理解や、スコープの設定のためのツールとして活用することができます。

Prescriptive Value Webでは、プロジェクトで新たなアイデアやコンセプトを作成した際、それが市場に組み込まれれば価値交換の仕組みがどのように変化するのかを描き出します。自分たちで出したアイデアは魅力的に映りがちですが、市場の仕組みの中でそれを見ていくことで、市場にどんなインパクトがあるのかどうかを検討することができます。

 

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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』261ページ

 

 

クマー教授のコア原則では、イノベーションはシステムとして捉えるべきものだといわれています。つまり、獲得したインサイトをそのままアイデア、ソリューションに変換するのではなく、人、モノ、組織、金の動きや関係といったビッグピクチャーの中で位置づけることで、取り組むべきイノベーションの大きな方向性を明らかにすることができます。

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