2023.07.26
Blog|mctのグローバルデザイン×フューチャーデザイン:「兆し」から未来を洞察する
こんにちは、mctのミーハです。
mctのフューチャーデザインのアプローチについて紹介した前回のブログに引き続き、この記事では、フューチャーデザインプロセスの中で非常に重要なステップである変化の兆し・シグナルの収集について紹介します。グローバル・デザインに関するこの連載ブログでは、企業の中長期的なグローバル成長をサポートするために、mctが活用している主要なサービスをいくつか紹介します。(詳しいサービス内容はこちら)
有名なフィクション作家のウィリアム・ギブソンが「未来はすでにここにある。ただ均等に分布していないだけだ。」と言っているように、シグナルとは既に起きている事実であり、今この瞬間に見つけることができる未来の具体例と言うことができます。
変化の兆候をいち早く捉えることは、未来を構想し、それに備えるためには必要不可欠です。そのため私たちFutures Designチームでは次に何が起こるのか、ユーザーや消費者が近い将来あるいは遠い将来に何を求めるか、どういったトレンドが現れるかを理解するため、定期的にシグナルを収集し、そこから何が言えるのか、意味を読み取ろうと努めています。
mctのシグナルバンクのイメージ
1. What is a signal? / シグナルとは何か?
では、シグナルとは何か?シグナルとは、物事が間もなく変わるかもしれないという一種の手がかりであり、多くの場合、私たちがこれまで知っていたものとは違った、変化やシフト、イノベーションを示すものです。具体的な中身としては、新しい製品・サービス、新しいビジネスモデル、新しい規制、新しい行動習慣、人口動態の変化などさまざまです。それでは実際のシグナルの例をいくつか見てみましょう。
シグナル 1:環境広告での嘘はもう許されない。正しい消費者判断の促進
イギリスでは、企業が自社製品の環境への影響について、消費者に誤解を与えているとの懸念が高まる中、広告基準局 (ASA) が「カーボンニュートラル」、「ネットゼロ」、「ネイチャー・ポジティブ」などの用語の使用について今年後半にグリーンウォッシング(※消費者に誤解を招くような裏付けのない環境効果の宣伝)取り締まりの一環として厳格な取り締まりを開始する予定です。 この計画に基づき、ASAはカーボンオフセットを購入することで地球規模の温暖化や自然破壊を悪化させることなく製品を購入できると消費者に告げる企業に対して、実際に効果があることを証明できない限り、なんらかの措置を講じることになります。 ガーディアン紙によると、この動きは、最近ASAがルフトハンザ航空とエティハド航空に対するグリーンクレームに関する執行を行ったことに続くものだと言われています。
シグナル 2:価格変動に応じて献立を組み立てる、データドリブンな食生活
Skip The Dishes というカナダの食品配達サービスは、食料品の価格を追跡し、コストを意識したレシピを提供する AI 搭載プラットフォームである Inflation Cookbook を導入しました。 このサービスでは、リアルタイムの価格データに基づいて、チーズの20% 値下げやジャガイモの13% 値下げなど、大幅な値下げが行われた 10 品目を取り上げています。
クックブックでは、大幅な値下げが行われた 10 品目を取り上げています。
画像提供: The Inflation Cookbook
そして、Inflation Cookbookには、これらの食材を組み込んだ 7 つのレシピが表示され、その日の献立を考えやすくなっています。 レシピは AIによって生成され、人間のシェフと栄養士によって厳選されたものが取り揃えられています。 この革新的なコンセプトはデータの力を利用して、消費者が価格高騰に対処し、安価に抑えられる献立によって節約することが可能になるというものです。 Inflation Cookbook は、リアルタイムの価格情報を活用することで、個人の食品購入においてより多くの情報に基づいた判断を可能にし、美味しくて栄養価の高い食事を楽しみながらも食費のやりくりをサポートしています。
AIで生成されたその週の低価格商品を使ったヘルシーレシピを、人間のシェフや栄養士が監修。
画像出典:The Inflation Cookbook
シグナル 3:賞味期限から始まる買い物がお財布と環境にフレンドリーを両立
あるイスラエルのスタートアップが、食品廃棄物の削減とコスト削減を目的とした AI 主導のソリューションである Wasteless を開発しました。Wastelessでは生鮮食品の賞味期限の近さ応じて割引が適用され、価格が自動調整されます。例えば、賞味期限まで残り 5 日のヨーグルトの容器には、賞味期限が長い同じ商品よりも安い価格が表示されるというわけです。リアルタイムでの価格情報を提供することで、従来の、商品ごとに一斉に値引きが行われるという常識を覆しています。 実際の電子棚に表示されるラベルには、各製品の価格とそれぞれの賞味期限の両方が目立つように表示されています。
この透明性を担保した価格設定によって、顧客はより多くの情報に基づいて何を買うかが選択できるようになりました。より早く消費する必要がある商品を選択することでどれだけ節約できるかを正確に把握することができるようになったわけです。Wastelessは賞味期限が近づいた生鮮食品を自動的に割引するというこの仕組みによって、小売業者の収益を向上させるだけでなく、スマートな消費者にも2つのメリットを提示しています。 最適化された値下げにより、消費者はより低い価格で購入できると同時に、食品廃棄物の削減に貢献し、お財布と環境の両方にプラスの影響を与えることができています。
電子棚ラベルには、各製品の価格と特定の使用期限の両方が目立つように表示されます。
画像出典: Wasteless
2. How to interpret a signal? /シグナルをどう解釈するか?
私たちは、シグナルをそのままの事実として鵜呑みにするのではなく、それらを解釈していく必要があります。ただ、これらのシグナル見ても、「つまり…どういうこと?」と解釈がままならず、立ち止まってしまうかと思います。ではこのようなシグナルをどのように解釈すればよいでしょうか?
シグナルの解釈の方法として未来研究所(Institute For The Future)が推奨している、シグナルに遭遇したときに問うべき質問が以下の4 つです。
1. これはどのような変化をもたらす? 元々何だったものが何に変わっていく?
2. 何がこの変化を引き起こしている? その背後にある「未来の力」は何?
3. このシグナルが拡大したら、世界はどうなる?
4. それは私たちが作りたい未来か?
それでは、上記の 3 つのシグナルから「Wasteless」のシグナルを例にとって4 つの質問がどのように機能するかを見てみましょう。
質問1:「これはどのような変化をもたらす?」
この質問について、「Wasteless」の場合ではテクノロジーを活用することで、サービスが抱える持続可能性への社会的責任とコスト削減の意識について、ビジネスの利益においてトレードオフされる妥協点を探るべきであるといったネガティブ寄りな視点から、 ビジネスと顧客の両方にプラスの収益を生み出すというものだという見方に変わるという変化であると言えます。 これはビジネスの考え方における興味深く、影響をもたらす変化です。
質問2:「何がこの変化を引き起こしている? 」
この質問は、何がシグナルを後押ししているのか、何がシグナルをより大きく、より浸透させるドライビングフォースであるのかを理解するものです。 「Wasteless」の変化の原動力は、AI技術開発の成熟、良い取引や価値のあるものを探したいという根深い欲求、そして環境にプラスの影響を与えたいという欲求の高まりの組み合わせではないかと考えられます。
質問3:このシグナルが拡大したら、世界はどうなる?
この質問は、このシグナルがより大きくなり、より一般に浸透した先はどうなるかというものです。
ここでは少し想像力が求められます。ほとんどの企業が AI テクノロジーを駆使して賞味期限を管理し、食材や飲み物だけでなく、あらゆる製品の品質を賞味期限に沿って評価する世界を想像してみましょう。価格の調整はもちろん、棚に残った製品の陳列場所を賞味期限に応じて自動的に調整し、消費者の購買行動を補助することができます。 そしてそれだけでなく、おそらくAIシステムは商品の調達管理のバックエンドビジネスからフロントエンドの小売ビジネスまでの供給システム全体を管理していることでしょう。そのため管理対象にはサプライチェーンの入出力倉庫の順序も含まれます。 また、在庫を管理し、いつ、どこでどのアイテムを購入するかを提案することもできるはずです。 そうして消費者は賞味期限の短い商品を誤って購入する心配がなくなり、常にその日にできうる一番お得な買い物をすることができ、無駄遣いが最小限に抑えられます。この質問を考えていくことで、これまで考えられなかったあらゆる可能性を今の段階から考え始めることができます。
質問4:それは私たちが作りたい未来か?
シグナルが実現した先は、果たして私たちが生きていきたいと考えられる未来でしょうか?私たちはその未来に心躍るでしょうか?それとも不安を感じてしまうでしょうか?そしてなぜそう思うのでしょうか?
これらについて考えることで、その未来を実現や、変化に舵を切るために必要な行動を取る動機と原動力を獲得できます。 私個人としては、「Wasteless」の示す方向性は、見たい未来、そして築いていきたい未来です。 この未来では、コスト上昇という差し迫った問題に対処するだけでなく、利便性と持続可能性を求める人々の欲求に応えながら、環境保護にも貢献します。 ビジネスに関して言えば、適切なテクノロジーを採用し、変わりゆく顧客の期待に応えることで、起こり得る未来を望ましい未来に向かって進んでいく。そうした中でブランドはより深いつながりを築き、ロイヤルティを育み、収益を向上させながら同時に持続可能な未来を創造することができます。
いかがだったでしょうか?この記事を通して、シグナルとそれを理解する方法について少しでも理解していただければ幸いです。 mctでは社内研修トレーニング、トレンド調査、未来探索など、多目的的にさまざまな領域にわたって最新の変化シグナルを集めたシグナルバンクを着実に構築してきました。
mctと一緒に未来を探求し構築することに興味のある方はこちらよりお問い合わせください。
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記事原文: チャン ティミーハ 日本語編集:内田拓実
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My Ha Thi TRAN
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