2023.12.15
共感の渦を巻き起こすサスティナブルブランディング
あなたはスーパーにいます。環境に優しい製品を選ぶとき、あなたは「プラスチックの袋」と「紙の袋」のどちらを選びますか?
2013年にLeyla Acaroglu氏が話した内容の一部です。彼女は「そんな単純な話じゃないよ」と回答しています。同じ動画の中で、冷蔵庫と生ごみ問題に触れています。
最新の冷蔵庫は10年前と比較して約40%の省エネ効果があると言われています(電気代にして約6,000円)。また、野菜室やチルド室といった、食材に合わせて使い分ける機能も追加され、100L以上も大型化しました。その結果、我々は食べきれない量を収納することが簡単になりました。現在、購入した食料品の40パーセントは冷蔵庫の中で生ごみになっています。米国だけで1年間に13億トンにもなります。
では、これは誰が解決すべき課題なのでしょうか?
同じような観点から、電気自動車を考えてみます。自動車はバッテリーを積むことでガソリンからのエネルギー転換を図っています。製品ライフサイクル全体を見ると、電気自動車は従来の自動車に比べて優位になるでしょう。では、バッテリーはどのように作られているかというと、バッテリーにはニッケルが必要で、ニッケル鉱石から精製されます。そのニッケル鉱石はインドネシアなどの国で採掘されています。ニッケルを精錬する製造工場付近では、製造過程で排出される石炭の粉塵で呼吸器疾患を患う人が増え、廃熱水で汚染された海では漁が困難になってきています。
これは誰が解決すべき課題なのでしょうか?
スマートフォンは米国で年間1億5000万台が廃棄されていますが、リサイクルされているのはわずか11%です。これは利用者の意識の問題でしょうか?ある調査によると、欧州の人々の77%が「新しいものを買うより修理すること」を望んでいます。欧州では修理の権利が高まっており、欧州議会は修理の権利を優先事項として設定しました。修理の工程が、体系的で、費用対効果が高く、魅力的なものになるように、多くの法律とガイドラインが設定されています。
これは誰が解決すべき課題なのでしょうか?
サスティナビリティは複雑で入り組んでいます。これらの課題は、それぞれの立場から見れば正しい取り組みかもしれませんが、社会や地球の観点から見ると欠けている部分があります。限られた地球上での限りない成長は不可能であると、私たちはすでに気づき始めています。資源を過度に使い、無制限の消費を促す経済モデルには欠陥があります。既存のシステムを変えることは難しいですが、これからは我々が及ぼすすべての影響や結果に向き合い、責任を負うことが求められています。
つまり、これからは「我々が企業活動を行うことで世界はよりよくなっているだろうか?」という問いに向き合わなければなりません。
システム思考
まずはシステム思考(Systems Thinking)です。これは、複雑な現象や問題を捉えるためのフレームワークやアプローチのことです。持続可能な社会や環境を構築するためには、単なる部分的な対策や短期的な視点では足りません。システム思考では、個々の要素や部分だけでなく、それらが相互に影響し合って全体を形成しているシステム全体を重要視します。たとえば、冷蔵庫の場合、冷蔵庫の消費電力だけでなく、冷蔵庫が社会にどのような影響を与えているか(食品廃棄など)を考え、システム全体として解決策を考えるのです。
トレードオン/共創
次にトレードオン/共創です。これは、複数のステークホルダーが関与することで生まれるイノベーションのことです。経済的な価値だけでなく、社会的および環境的な価値を同時に高める経営戦略やビジネスアプローチを目指すためには、異なるステークホルダー同士が協力し、相互に価値を創造することが必要です。異なるステークホルダーが連携し、環境的、社会的、経済的な側面を考慮した新しい解決策やイノベーションを生み出すことができます。たとえば、電気自動車の場合、ニッケル製造工場の運営と地元民の生活を両立させるアプローチを考えます。ニッケルを製造しながら、地元民の生活も豊かにし、さらにはその地域のネットポジティブな効果を生み出すような「三方良し」の着地点を探求するのです。
野心的な目標
そして野心的な目標です。今回のテーマでもある「共感の渦を巻き起こす」ためには、魅力的な未来や目指している理想を示す必要があります。「社会やステークホルダーにとって意味のある活動」は、人々の感情的なモチベーションが駆動力となり、広がっていきます。大きな目標を設定することで、会社の意義を多面的に考えるようになり、自社だけでなく周囲のステークホルダーや顧客の生活も最適化するために努力するようになります。例えば、スマホの場合、欧州議会が発表した「スマートフォンは2027年までに交換可能なバッテリーを搭載する」という野心的な目標があります。魅力的な目標を掲げることで、共感する人々はその声明を支持する製品を選び、企業は新しい市場を開拓するために行動を起こします。
ステークホルダーの深い理解・インサイトの獲得
最後に、これらの取り組みを進めるには、ステークホルダーを動かすためのインサイトが必要です。人々が共感するのは、企業が提供するWhyと自身のWhyが結びついていると感じるからです。このWhyの結びつきが共感の渦の中心になります。質的なリサーチを通じて「人々にとってのWhy」を見つけるためには、深い理解とリサーチが必要です。
前置きが長くなりましたが、サスティナブルブランディングとは、「一緒に取り組みたくなる魅力的なアジェンダを提供すること」です。中身のないメッセージは意味がなく、凡庸な目標では誰も一緒に取り組んでくれません。自社が影響を与えている社会的な課題を深く理解し、地球を含めた関係者の課題を捉えた「三方良し」の解決策を見つけ、その魅力的な活動を前進させるためのコミュニケーションがサスティナブルブランディングです。
社会的な課題は1企業だけで解決できるものではありません。ステークホルダーを巻き込み、動かしていく必要があります。ステークホルダーの深い理解とインサイトを活かし、人々があなたの計画に共感し、一緒に取り組みたいと思う魅力的なアジェンダを提供しましょう。
最後に、私が好きなサスティナブルブランディングを紹介します。一緒に風を変えていきましょう。
イベントのご案内
2023年12月14日の開催されるSustainable Innovation Summit 2023において「共感の渦を巻き起こすブランディング」というテーマで講演を担当します。もしよければご参加ください。
■開催概要
日時: 2023年12月14日(木)13:00~16:00(12:00開場)
場所: WeWork アイスバーグ 1階
形式: ハイブリッド開催(対面80名、オンライン500名まで)
Sustainable Innovation Summit 2023
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Fumihiro Shimono
株式会社mct デザインストラテジスト
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