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2025.07.07

Blog|サステナビリティは義務じゃない。新たなビジネスの起点だ



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多くの企業はサステナビリティを「やらなければならない義務」として捉え、統合レポート作成の一環で取り組んでいるのが実情です。リサイクル可能なパッケージ、カーボンオフセット、CSR活動など、「一応やっている」程度の対応で終わっていないでしょうか?

しかし、いま先進的な企業は、このサステナビリティの捉え方を根本から変えています。彼らは、原材料の調達から製品の使用、そして使用後まで──いわゆる「ゆりかごから墓場まで」を包括的に見直し、そこに潜む課題や未発見の価値を掘り起こしています。そこから生まれるのは、単なる環境対応ではなく、イノベーションとビジネス機会です。
 
そのような取り組みを体現している2つの企業を紹介します。 
 
 

 

GANNI ― ファッションの「返却のジャーニー」を再設計

 
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デンマークのファッションブランド GANNI は、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)の削減に取り組んでいました。素材の改良やリサイクル素材の使用にとどまらず、彼らは製品のライフサイクル全体──デザイン、調達、使用、返却に至るまで──を俯瞰して捉えたのです。
そこで明らかになったのは、「服を手放すことに罪悪感を抱き、不要な服を手元に置き続けてしまう」という消費者心理でした。
このインサイトから生まれたのが、「GANNI Repeat」というレンタル・再販プラットフォームです。製品寿命を延ばすと同時に、新たな収益源を創出し、循環型ファッションを実現しました。
購入後の体験を再構築することで、サステナビリティと利益の両立を果たしたのです。これは、プロダクトジャーニーという視点があったからこそ実現できた好例です。 
 
 

Philips ― 「光」をサービスとして売る

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照明業界のリーダー Philips は、廃棄物削減という課題に直面していました。エネルギー効率の高い製品開発だけでは限界があると考えた彼らは、根本的な問いを立てました。

「光を“モノ”ではなく“サービス”として提供したらどうなるだろう?」

製品のデザインから製造、物流、使用、廃棄までのジャーニーを描く中で、環境負荷の大きな要因は単なる消費電力ではなく、「所有モデル」にあることに気づいたのです。
こうして誕生したのが「Lighting-as-a-Service(サービスとしての照明)」です。顧客は照明器具を購入せず、「光の利用」に対して料金を支払います。Philipsは器具の所有権を保持し、保守管理や部品回収も担います。このモデルは廃棄物削減や排出量の低減だけでなく、長期的な顧客関係の構築というビジネス上の価値も生んでいます。
 
 

 プロダクトジャーニーを描く意味

 
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この2つの事例に共通しているのは、「プロダクトのジャーニー(製品の一生)」を描くことで、これまで見えなかった価値や機会を発見し、事業成長に結びつけている点です。
つまり、サステナビリティとはコストや義務ではなく、魅力的な顧客体験(CX)とイノベーションを生み出すためのレンズなのです。
サステナビリティへの取り組みが求められる時代においても、「どこから始めればいいかわからない」と感じている企業は少なくありません。だからこそ、「プロダクトのジャーニーを描くアプローチ」が力を発揮します。
 
 

プロダクトジャーニーマップという手法

 
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私たちは、この「製品の一生」に着目したデザインアプローチを「プロダクトジャーニーマップ」と呼び、実践的なワークショップを提供しています。
たとえば、Tシャツを題材にした体験ワークショップでは、製造から使用、廃棄にいたるプロセスをひも解き、関係するステークホルダーや課題を理解しながら、サステナブルなビジネスモデルの構築を学ぶことができます。
また、実際に自社のプロダクトに置き換えたときにどんな変化が起きうるか──その想像を促す構成になっています。
 
 
 

プロダクトジャーニーマップ体験ワークショップの詳細について

プロダクトジャーニーマップ体験ワークショップについてさらに詳しく知りたい方のために、使用するシート・カード・アイデア発想ツールなどの資材や、当日の具体的なアジェンダ・レクチャー資料、過去に実施したWSの様子を確認できるmiroボードを用意していますので是非ご覧ください。
 
サステナイベントLP
 
\ miroボードが欲しい方、詳しく知りたい方はぜひお申し込みください /
 
 
 
 

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