2024.10.01
『IoT』~アナログのプロセスを見つけて、デジタル化する
こんにちは、mctの増田です。
突然ですが、下記からどんなサービスを連想しますか?
言うまでもなく、「ポケモンGO」ですね。
このような世界を今から15年も前に考えていた森川博之氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)を迎えた「ビジネスデザインプログラム」シリーズの第2回ワークショップ。「IoT」をテーマにした非常に濃密な6時間で、私も運営者としてだけでなく、参加者として体験してきました。
当日の熱気をどこまでお伝えできるかわかりませんが、ダイジェストでご紹介します。
「モノのインターネット」と訳されることの多い「IoT」ですが、その本質はわかるようで実はよくわからない、という方も多いのではないでしょうか?
IoTの本質は「アナログのプロセスを見つけて、デジタル化する」こと。そう結論付けたうえで、森川教授は圧倒的な知見と豊富な事例で参加者のイマジネーションを刺激します。
個人的にはスペインのコメディー劇場の事例が秀逸でした。彼らが着目した「アナログのプロセス」は、「観客の笑いの量」。確かにこれまで全くデジタル化されてこなかった領域です。
作ったシステムはシンプル(だけどよくできている)で、
①入場料は無料
②劇場で「笑った分だけ」料金を支払う(=Pay Per Laugh)
③笑ったかどうかは各席に設置の「顔認識システム」で判定
というもの。
引用:Teatreneu
導入後、客離れが深刻だった劇場の観客数が35%もアップしたそうです。
ここで森川教授が称賛していたのは、発想豊かなアイデアもさることながら、「とにかくやってみる」勇気ある実行力でした。上記の事例は結果的に成功をおさめましたが、もし、みなさんが劇場の支配人だったらどうでしょう?「たしかに斬新だけど、笑いに来ているお客に『笑ったら請求』というのはちょっと...」と、リスクの大きさに目が向き、アイデアを実行しない人も多いのではないでしょうか。
では、リスクを取ってでも実行に移している人・企業は、何をしているのか?森川教授からは数え切れないほどたくさんの示唆があったのですが、ここではキーワードを3つだけご紹介します。(レクチャー全体を網羅した当日の議事録をご希望の方は、本記事最下部に記載の担当者までご一報ください)
■"エコシステム"をつくる
IoTでは「つなぐ」という視点がとても重要です。アフリカの水飲み場にいろいろな動物が集まってくるように、「いろいろなモノがつながって価値を生むシステム」を意図的に作り出せないでしょうか?
2年前にグーグルがサーモスタット(家屋の温度調節をする機器)を作るNest社を32億ドル(!)で買収したことが話題になりましたが、これは「サーモスタット」というモノ単体ではなく、「サーモスタットをハブとして、家中のデータを集められる」ことに高い価値をつけているのだと思われます。
しかも彼らは「Nestと一緒に働こう(works with nest)」というメッセージを掲げ、社外の開発者に対して積極的に情報を開示しています。既にメルセデスベンツ(自動車)やワールプール(洗濯機)など、50社以上が共同参画に意思を表明しているようです。(確かに、自動車や洗濯機がサーモスタットとつながると面白いことになりそうです...。まさに"エコシステム"ですね)
「モノ」で解決するという発想を「モノを起点に生み出せそうなつながり」という枠まで押し広げると、思わぬビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。
■"海兵隊"をつくる
これは主に経営層の方向けのメッセージかもしれませんが、IoTで成功している企業は、組織の中に「海兵隊」をつくっているケースが多いそうです。
「海兵隊」は、陸海空がコンパクトにまとめられており、かつ、死亡率が最も高い部隊です。死ぬことに存在価値があると言ってもいいかもしれません。
一番初めに敵陣に乗り込む彼らは、いわば「切り込み隊長」です。未知の可能性を秘めた市場の開拓に果敢に挑む姿はまぶしく、「何かやってくれそう」という期待を強く感じさせます。ちなみに、「目の前が絶壁であっても踏み出すタイプ」の方が向いているそうです。(笑)
スタートアップではない企業において、「死んでもいい(=失敗してもいい)」という考え方は現実的ではない気もしますが、一つのヒントが金融業界にあります。
森川教授いわく、変革に積極的なある銀行は、ITの予算を「CTB(Change the bank、銀行変革のための予算)」と「RTB(Run the bank、銀行維持のための予算)」の2つにはっきりと分けているそうです。
「CTB」を担当する部隊は、目の前の数字をシビアに問われることはありません。彼ら海兵隊が「敵(=競合)」と考えているのは、銀行ではなく、amazonやGoogleだそうです。とにかくチャレンジを繰り返すことが彼らのミッション。そのことをトップが明言しています。
(失礼ながら)保守的なイメージの強い金融業界において、上記のような先進的な取り組みが進んでいるという事実は、みなさまにとって、何かしらの刺激になるのではないでしょうか?
■"強い想い(パッション)"を持つ
森川教授の口からは「強い想い」という言葉が何度も飛び出しました。IoTに限った話ではないですが、パッションがなければ始まりません。先ほどご紹介した「CTB」部隊にしても、単に組織を作るだけではダメで、「強い想いを持っている人をアサインする」ことがポイントなのです。
「強い想い」の例として紹介されていたのですが、みなさんは「Gatebox」という現在開発中の製品をご存知でしょうか?
「ホログラムのキャラとコミュニケーションできる」こちらのプロダクトは、画像認識や音声認識技術でユーザーの意図を理解し、理想の女性キャラが家電のスイッチを入れてくれたり、朝起こしてくれたりするそう。
この話で私が衝撃を受けたのは、開発チームの本気度合いです。彼らは「一生かけて理想の嫁さんを作り続ける」というミッションを掲げ、「もし結婚したら開発チームから抜け、退職する」とまで宣言しているとのこと。
「IoT」と言うと「技術」の話が中心になってしまうかもしれませんが、重要なのは「人(の想い)」である、ということに改めて気づかされました。
以上、"エコシステム" "海兵隊" "強い想い"という3つのキーワードをご紹介しました。今回お伝えし切れなかった内容にご興味がある方や、実際のPJでIoTに取り組みたい想いを強くした方は、下記の担当者までお気軽にご連絡ください。
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次回のDMN「ビジネスデザインプログラム」は9月16日(金)に開催されます。
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DMN:ビジネスモデルプログラム「グローバル戦略」
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