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2023.08.16

Blog|mctのグローバルデザイン×フューチャーデザイン:五感をひらく Clue Scan

グローバルとフューチャーClueScan

前回のブログでは、オンラインで様々なことが完結するようになった現在も対面での体験は重要であり、より良い対面の体験をデザインするためのツールとして、観察のフレームワークPOEMSを紹介しました。

今回は、人々がサービスを利用する中で五感を介して様々なことを無意識に感じ取っていることに着目した、Clue Scanというツールを紹介します。

五感を介して無意識に感じ取ったものは感情に大きな影響を与える

人々はサービスを利用するなかで様々な経験をします。その経験は「店内で迷わずに用事を処理できた」「美味しい料理を食べて満腹になった」といった、意識された機能的なものによってのみ形成されるわけではありません。「それぞれのボタンに感触の違いがあったことで、押し間違えの不安を感じることなく操作することができた」「店に入った瞬間に美味しい香りがして食欲が湧き、自然とリラックスできて話が弾みそうな心地よい音楽が流れていてワクワクした」といったような、五感を介して無意識に感じ取ったものも、経験を形成する重要な要素となります。

五感を介して無意識に感じ取ったものは、脳に直接働きかけ、感情に大きな影響を与えます。感情は態度を方向づけ、方向づけられた態度は行動を決定します。すなわち、サービス利用者が無意識に感じ取ることを知り、上手にサービスを設計することで、利用者に望ましい感情になってもらうことや、スムーズに利用するための行動を導くことができるようになります。

omecinema

写真は先日わたしが訪問した、東京の青梅にあるミニシアターです。天井に見える木造建材や統一された空間のトーンから、懐かしさや温かい感情が湧いてきました。開放的な高い天井や装飾の少なさが、ゆったりと映画を楽しむ気持ちにさせてくれ、自然と自身の行動もゆっくりと落ち着いたものとなりました。

このミニシアターは、かつて青梅で栄えていた映画を懐かしく思った人々が有志によって作った場所であり、昭和初期に建てられた文化財をリノベーションして作られた、東京で唯一の木造建築の映画館でした。
懐かしさや温かさ、ゆったりと過ごそうといった、五感を介して無意識に抱いた感情は、このミニシアターが持つストーリーと一致していました。

五感を介して無意識に感じ取るトリガーとしての"Clue"を捉える

今回紹介するClue Scanは、サービスの中で利用者が五感を介して無意識に感じ取るトリガーとなるものを「手がかり(Clue)」として扱います。サービスの中にある手がかりを収集・分析することで、現在提供しているサービスの経験を評価するとともに、利用者に抱いてもらいたい理想の感情や、そのためにどんな手がかりを提供できるのかを検討していきます。

Clue Scanの基本的な使用手順は以下のとおりです。

1.Clue Scanの対象である、これから利用するサービスに関する期待を明らかにします。どのような経験をすることになりそうか、何に触れ、どのような感情になると思うかを書き出します。

2.期待が書き出せたら、実際に利用し、自身の五感を使って感じとった手がかりと評価を記録します。手がかりには、機能に関するもの、感覚に関するもの、人に関するものがあるため、それらを意識することで手がかりに気づきやすくなります。分析や共有の際に使用するため、画像や動画も併せて記録します。

3.複数サービスを記録し、内容を比較します。収集された手がかりには一貫性があったか、それぞれは意図されたものであったか、当初の期待に対してどうであったか、同じ手がかりでも異なる感情を引き起こしていたとしたらそれはなぜか、などを問いながら、手がかりが感情や行動にどのような影響をもたらしたかを考察します。

4.Clue Scanを実施したメンバー間で内容を共有し、お互いの視点を比較します。人により捉える手がかりにはバリエーションがあることを認識し、視野を広げます。

5.サービスの経験に大きく影響していた手がかりと感情を絞り込みながら、利用者が抱く理想の感情や、そのためにどんな手がかりが提供できるのかを検討していきます。

Clue Scan自体はツールであり、使い方は上記以外にも様々に考えられます。どんな場合であっても、効果的に使うためには「Clue Scan実施前の期待とのギャップを捉える」「優れている対象と比較する」「共有を通じて他者の視点を獲得する」といった点は押さえておきたいポイントです。

サービス利用者に届けたい感情を特定し"Clue"に一貫性をもたせる

サービスにおける各種手がかりを一貫性のあるものにするためには、サービス利用者に届けたい感情が特定されている必要があります。自社のサービスについて、Clue Scanを使って評価していく際には、サービス利用者へ「届けたい感情」を確認し、意識合わせするところからはじめるとスムーズに進められると思います。

「届けたい感情(エモーショナルモチーフ)」については、こちらのブログも参照ください。

今回ご紹介したような、五感のレベルでサービスをデザインすることについて、こちらのブログでも詳しく紹介していますので、ぜひ併せて参照ください。

言語以外の手がかり"Clue"を通じて特定の地域の顧客を理解する

サービスを通じて得られる経験は、同じサービスでも利用者のコンテキストやその国の文化などによって大きく異なります。それに付随して、利用者が感じ取る手がかりも異なります。

例えばレストランであれば、日本では決められたメニューをそのまま楽しむ傾向があり、一方でアメリカでは、サブウェイで様々なトッピングを選ぶことに見られるようなカスタマイズ文化があるとすれば、「選択肢が多い」「柔軟にカスタムできる」と感じられる手がかりが、ポジティブにもネガティブにも働きうることがわかります。

mctには日本はもちろん、アジア圏の中国、ベトナム、欧米圏のアメリカ、イギリス、スペインのメンバーがおり、文化的にも多様な視点でのClue Scanが実施可能です。

また、Clue Scanを既存のサービスの評価や改善を目的として使うだけでなく、例えば海外進出における将来のサービスに向けて、観察のツールとして使用することで、異文化であっても、言語以外の手がかりから、その地域の顧客を深く理解することが可能となります。

Clue Scanを使って自社のサービスを改めて評価してみたい、自社のサービスをレベルアップさせるために競合や、国内外問わず他業界の先進的なサービスをClue Scanしたい、といったご希望がありましたら、ぜひお声がけください。

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