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2021.07.15

五感のレベルでサービスをデザインする。

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こんにちは、白根です。

サービスについて顧客経験という視点からお話します。
普段わたしたちが行動するとき、意識しながらしているつもりはなくても、実際はその場その場でいろんな手がかり(クルー)を読み取り、次に起こることを予想しながら行動しています。例えば、ランチを食べにお店に入って「いらっしゃいませ」という店員の陽気な声を聞いたら、声のトーンから店に入れるだろうと予想し、店員と目を合わせるために声がした方向を見ます。あるいは、お店に入ろうとドアを開けて、店員が困った顔で近づいて来るのを見たら、店には入れないだろうと予想し、お店のドアを閉める準備をします。人間は五感の手がかりから次に起こることを自動的に予想し、そこに意識を集中しなくてもスムーズに行動できるようになっています。

こういった人間の特性を利用して、顧客がよりスムーズに行動できるようにやりとりをデザインすることができます。顧客とのやりとり(インタラクション)に沿って、顧客が五感で感じる手がかりを洗い出します。手がかりは、壁に貼られたポスターや店内の音や匂い、テーブルや食器の材質など、五感で感じる全ての要素を含みます。顧客がこれらの手がかりから何を感じ、何を予想し、何をしようとするのか。スムーズな行動をサポートしている手がかりは何か。行動の障壁になっている手がかりは何か。矛盾するような予想を与えている手がかりは何か。顧客の行動パターンを五感のレベルで理解することで、顧客の予想を先回りして、五感の手がかりを使って適切なやりとりをデザインしていきます。五感の手がかりに支えられた「スムーズな行動」は、顧客に強いポジティブな感情をもたらします。

さて、人間は、手がかりによる予想が外れたり、手がかりを使って予想できない状況になると、緊張し、意識を集中させて判断しなければならなくなります。例えば、近づいてきた店員が困った顔で「いらっしゃいませ」といったら、お客さんは当惑し、お店に入るべきかどうか考えてしまうでしょう。このような状況を作ってしまうことは「スムーズな行動の提供」というレベルでは完全に失敗です。ところが、サービスによっては、顧客の緊張や意識の集中が重要な構成要素になっていたりします。例えば、メニューがフランス語で書かれている、服のタグに価格表示がない、入口がどこにあるのかわからない。高級店ではあえて手がかりを与えないといったことがよく行われます。このような緊張や集中を伴う体験は強い印象をもたらします。一連の体験がもし最終的にポジティブな感情とともに「特別な出来事」として記憶されると、顧客は再び「特別な出来事」を体験するためにそのお店を訪れます。そしてその体験は、回を重ねる毎に特別な記憶とともに、慣れ親しんだ「特別なルーティン」へと変化していきます。顧客とサービス提供者が「特別なルーティン」を分かち合うことがサービスの究極的なゴールなのかもしれません。

「スムーズな行動」以上のサービスをデザインするには、自社の業界だけではなく、様々な業界で行なわれている手がかりを広く収集します。その時のポイントは「特別な出来事」の手がかりだけでなく、「スムーズな行動」の手がかりも、慣れ親しんだ「特別なルーティン」の手がかりも収集すること。そして、それらの手がかりが、長期に渡って全体としてどのようなストーリーを作り、顧客にどのような感情を提供しようとしているのかを読み取ることです。

mctでは「クルースキャン」というツールを使って、このような手がかりの収集・分析をクライアントやクライアントの顧客と一緒に実施しています。クルースキャンはシンプルなツールですが、サービスをデザインする上で、五感に訴求する重要なインサイトを与えてくれます。ご興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。

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