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9 19, 2023 05:23 Blog|エンゲージメントサーベイを単なる調査で終わらせないための3つのポイント

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こんにちは、組織デザインチームの下岡です。

組織デザインチームでは7月18日〜7月21日にEX Design Week〜より良い従業員体験の実現のために働き方や組織づくりについて考える一週間〜と題してEXデザインに関するイベントを開催しました。今回のブログでは、エクスペリエンスマネジメントの専門集団・クアルトリクスの東田さんが講演されたプログラムから「エンゲージメントサーベイを単なる調査で終わらせないための3つのポイント」についてご紹介します。今回のブログがエンゲージメントサーベイから打ち手へ繋げるためのヒントになれば幸いです。

 
東田さんクアルトリクスの東田さんの講演
 


なぜ企業が「従業員経験」の向上に取り組まなければいけないのか?

組織マネジメントの手法として、従業員が職場で体験する経験全体を考える「従業員経験という概念が注目されています。「従業員経験」が良い状態では、従業員が心身の健康を保ちながらパフォーマンス高く働き、組織内で自分の居場所を感じることができます。また従業員経験の向上に投資する企業は、売上、カスタマーサービス評価、純利益など様々な経営指標において上回っていると言われています。従業員経験が向上すると、顧客の満足度が高まり、業績アップに繋がるためです。生まれた利益を従業員に再投資することで従業員経験が向上するというサイクルが循環しています。

サービスプロフィットチェーンEXが向上すると、CXが改善し業績アップに繋がる
 


エンゲージメントサーベイが単なるサーベイに終始しているという問題


一方で「エンゲージメントサーベイは実施したが、その後の改善に活かせていない」という状況が散見されます。その理由として、従業員経験の向上に取り組むよう上層部から人事部門へ指示があっても、腹落ち感や十分なリソースがないまま進むことが多く、とりあえずエンゲージメントサーベイをし、その結果をなんとかしてほしいと現場に任せている状況があるためです。

エンゲージメントサーベイを打ち手へ繋げる3つのポイント

では、エンゲージメントサーベイを打ち手へ繋げるためにはどうすればいいのでしょうか?そのポイントを3つのステップに分けてご紹介します。
目次
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❶ サーベイの<設計>フェーズ:課題の根本原因が特定でき、アクションを検討できるような設問にする
例えばサーベイをした結果、「個人の成長」や「キャリア形成」にエンゲージメントの課題があるとわかっても、課題の原因が違えば以下のように取るべきアクションが異なります。
 ●担当業務において自分のスキルが活かせていない場合は、採用・配属に関する施策を検討する
 ●業務遂行に必要な研修を受けられていない場合は、教育研修に関する施策を検討する
 ●社内に学び、成長する機会がない場合は、配属・業務目標設定に関する施策を検討する

「あなたはこの会社で、自身のキャリア目標を達成できると思いますか?」という抽象的な聞き方にしてしまうと、どのようなアクションを取ればいいのか解像度高く見えないということが起こります。調査の設問設計を適切に行い、アクションに繋がる設問にすることがポイントです。その際、設問数と回答率はトレードオフの関係にありますが、設問数が少なすぎると今度は分析の品質とトレードオフになるため、回答と分析のしやすさを考慮して設問数にも留意する必要があります。

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❷ サーベイの<分析>フェーズ:どの要素がエンゲージメントと相関があるかを把握し、KGIにどのように繋がるのかを示す
以下はエンゲージメントとサーベイで回答された要素との相関関係を示した図です。例えば、左下の象限にある「報酬・福利厚生」という要素は相関係数が0.4くらいなので、エンゲージメントとの相関は緩やかです。むしろ左上の象限にある要素はエンゲージメントの相関が非常に高いにも関わらず、肯定的回答割合が少ないため、こういった要素に対してアクションを起こすことの方が効率的です。

相関図エンゲージメントとサーベイで回答された要素との相関関係


 また経営層や投資家が重視しているようなKGIと呼ばれる指標(売上高、成長率、顧客満足度など)とも相関分析をし、エンゲージメントが高い要因を掴むこともポイントです。例えば、成長率が高いチームはコミュニケーションがきちんと取れているのか、プロセスが効率的なのかという分析をすることで、チームが取るべきアクションを検討することができます。つまり、従業員エンゲージメントは「KPI(重要業績評価指標のことを指し、KGIを達成するための中間指標)」であり、その先にある「KGI(重要目標達成指標)」にどう繋がるのかを見据えることが重要です。「従業員エンゲージメント」が高まれば「売上高比率」が高まり、「従業員定着率」が高まると「採用や研修のコストが下がり利益率が改善」される。というように、エンゲージメントの向上が経営指標とダイレクトに相関があると、経営層から説明を求められた際にも従業員経験を向上させる目的や意義を明確に答えることができます


KPIは中間指標
従業員エンゲージメントの向上がKGIに繋がることを示す


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サーベイの<施策検討>フェーズ:さまざまな観点から施策の優先順位をつける
エンゲージメント施策では何を行うかも重要ですが、何を捨てるかという視点を持ち、さまざまな観点から優先順位をつけることが重要です。例えば、以下のような観点で点数付けをしてみます。
 ●その施策を実行することによってどれくらい経営インパクトがあるのか
 ●その施策の影響範囲はどれくらいなのか
 ●その結果を出すまでにどれくらいの時間がかかるのか
 ●その施策を実現するのにどれくらいの人や投資が必要なのか

すると、施策案①のように経営インパクトは大きいが実現までに時間がかかり、リソースを多く必要とするのであれば、施策案②のような経営インパクトは①より小さいかもしれないが、成果実現の時間が短くリソースを必要とせずにクイックに始められるものから着手するという方法が考えられます。小さな成功体験の積み上げが、将来的にはより大きな取り組みに繋がる可能性があるため、小さくクイックスタートできる施策から取り組むこともポイントです。

優先順位施策の優先順位を付ける


企業価値の向上に向けて、従業員・顧客・経営者で「実現したい姿」を共有する

またmctでも従業員経験と顧客経験の両輪で、企業価値の向上に取り組んでいます。従業員経験の向上という観点では、EXアンケートを実施し、「心理的安全性」や「個人の尊重」という要素がクライアントに価値提供する際の後押しになっていることがわかりました。こうした要素は難易度の高い案件にもチャレンジしてみようという気持ちの醸成に繋がっていると考えています。また顧客経験の向上という観点では、クライアントへのインタビュー結果からジャーニーマップを描き、ペインとニーズを整理しました。今後より良い体験をしていただくためのアイデアを考えています。

アイデアだし

このような取り組みには従業員、顧客、経営者で「実現したい姿」を共有することが重要です。エンゲージメントが向上した結果、顧客にどのような恩恵があるのか、最終的に企業としてどのようなメリットがあるのかストーリーを描くことがポイントとなってきます。mctでもさまざまな施策を試行錯誤している最中ですので、上記のポイントを念頭に置きながら進めていきたいと考えています。

本プログラムのアーカイブ動画こちらです。詳細を確認されたい方はぜひご覧ください。


またmctではEXデザインに関するさまざまなソリューションを提供しています。ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

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Mana Shimooka株式会社mct エスノグラファー

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