2024.10.07
Blog|"プロジェクトデザイン"という技術
デザイナーに求められるスキルというと何を思い浮かべますか?ビジュアライゼーションやUIUXデザインのスキルでしょうか?あるいはデザイナーの役割が多岐に広がりつつある昨今では、デザインリサーチ、コンセプトメイキング、プロトタイピングなども重要なスキルとして挙げられるかもしれません。
今回はそのようなデザイナーのさまざまなスキルのうち、「プロジェクトデザイン」を取り上げます。
プロジェクトデザインはあまり重要だと見られていないどころか、デザイナーのスキルだとは認識されていないケースすら多そうです。しかし実はこれからのデザイナーの役割を考える上で、プロジェクトデザインはとても大切なスキルです。なぜならデザインのアプローチが経営に取り入れられるようになり、部門横断による事業活動においてデザイナーが中心的な役割を担うようになっていくからです。
「プロジェクトデザイン」とは、文字通りプロジェクトをデザインすることです。(そのまんまやん!) たとえば商品開発プロジェクトにおいては、完成させたいプロダクトの要件や開発工程、プロジェクトメンバーの体制や役割などを定めていくのがプロジェクトデザインです。
複雑化・高度化するプロジェクトデザイン
商品開発プロジェクトにおいて完成品のイメージや仕様が固まっていればプロジェクトデザインはそれほど難しくありません。完成から逆算して工程やタスク、役割分担を決めていけばいいだけです。
しかし昨今の新しいプロダクトの開発プロジェクトでは、完成イメージはおろか、前提となる顧客ニーズさえ曖昧なことも多々あります。このようなケースでは、プロジェクトを取り巻く複雑で多様な情報を整理しながら、意味のあるプロジェクトをデザインすることが求められます。このことは商品開発だけでなく、事業開発、戦略開発、組織開発などのプロジェクトでも同じです。さまざまなプロジェクトにおいて、複雑で難易度の高いプロジェクトデザインが求められているのです。
例えるならばとんちの一休さんの話と似ています。
一休さんが「このはしわたるべからず」の問いに向き合ったように、その状況をどう捉えるかという感性が要求されるのです。デザイナーが対象テーマの状況をどう捉え、どのような案件として認識し、どう取り組んでいくかを描くのがプロジェクトデザインです。一休さんでは「橋の端っこを渡る」というアプローチを思いつきましたが、短絡的に「橋を渡らずに向こう岸へ行く方法」を考えていたらそのプロジェクトはきっと頓挫していたでしょう。プロジェクトデザインはそのくらい大事な行為だということです。
Must, Can, Willで考える
では具体的にプロジェクトデザインの技術とはどのようなものでしょうか?
私がプロジェクトデザインにおいてイメージしているのは、個人のキャリアプランなどを考える際に使われる「Must, Can, Will」のフレームワークです。Mustはやらなければいけないこと、Canはできること、Willはやりたいことを指し、それら3つが重なる領域でキャリアを描くフレームとして使われます。
プロジェクトデザインに関していうと、まずはMustを考えます。Mustはそのプロジェクトにおいてチームが必ずやらなければいけないことであり、プロジェクトの「ゴール」とも深く関わる要素です。つまりプロジェクトが達成すべきゴールを描くことでMustが導かれるのです。Mustが見えたら次に考えるのはCanです。チームや自分ができることは何か、あるいは外部リソースの活用によってできることは何かを考えます。自分たちが持つケイパビリティが最大限に活かされるのが良いプロジェクトデザインです。最後はWillです。意外と見落とされがちですが、自分たちが興味を持ち、熱中できるプロジェクトにすることもとても大切です。メンバーのモチベーションがプロジェクトを推し進めるエネルギーになるからです。
プロジェクトデザインはデザイナーの一番初めの腕の見せどころ
プロジェクトを成功に導くために、UIUXデザインやビジュアライゼーションなどの技術がいくら優れていても、前提となるプロジェクトデザインがイケていないとプロジェクトはうまくいきません。実際、プロジェクトが失敗するケースの多くは、元を辿るとプロジェクトデザインに問題のあるケースがほとんどです。プロジェクトデザインがプロジェクトの成否を左右していると言ってもいいかもしれません。
プロジェクトデザインはデザイナーにとって、プロジェクトの一番初めに訪れる最も重要な仕事であり、同時に腕の見せどころだと言ってもいいかもしれません。
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Akihiro Yonemoto
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト
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