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2025.05.22

Series|サービスブランディング―(5) ブランド体験が変える、顧客の記憶と選択



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サービスブランディング・ブログ第五稿
「忘れられない瞬間」がブランドの差別化を生む。
感情に働きかける「シグニチャーエクスペリエンス」とは?
 
 

 

あなたが最後に「感動した」サービス体験は何でしたか?

ホテルのスタッフが名前を覚えていてくれた瞬間?カフェのバリスタがいつもの注文を覚えていてくれた時?あるいは、思いがけないタイミングで届いた「お気に入りどうでしたか?」というメッセージ?

人は機能や性能を忘れても、「感情」は長く記憶に残ります。今回は、顧客の心に残る「忘れられない瞬間」をデザインする方法についてお話しします。


なぜ「体験」がブランドの鍵を握るのか?

私たちの脳は、毎日膨大な情報に接していますが、そのほとんどを忘れてしまいます。では、何が記憶に残るのでしょうか?心理学研究によれば、情報そのものよりも、その情報によって引き起こされた「感情」が記憶を強化するとされています。

だからこそ、機能や特徴を伝えるだけでなく、顧客の感情に働きかける「体験」を設計することが、強いブランド構築の鍵となるのです。

 

CXビジョンとエモーショナルモチーフ

まず、サービス全体を通じて顧客に提供したい理想の体験を「CXビジョン」として定義します。例えば「最も顧客に近い存在であり続け、あらゆる手間からの解放を実現する」といったビジョンです。

次に、このビジョンを具体化するために「エモーショナルモチーフ」を設定します。これは、サービス体験を通じて顧客に与えたい感情のパターンです。

例えば:
•    Release(解放): 面倒な手間からの解放、快適さ、簡単さ、安心感
•    Reliable(信頼): 安定性、最後の砦、結果へのコミットメント
•    Inspired(触発): 興奮、チャレンジ精神、期待を超える体験
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 これらのモチーフを顧客接点ごとに割り当てることで、各場面で顧客に体験してほしい感情が明確になります。
 
 

シグニチャーエクスペリエンスとは?

顧客体験の中でも特に記憶に残りやすいのが「MOT(Moment of Truth:決定的瞬間)」です。これは、顧客の意思決定や感情形成に特に大きな影響を与える重要な接点のことです。

このMOTにおいて、競合と明確に差別化された印象的な体験をデザインすることで、ブランドの記憶を強化できます。これを「シグニチャーエクスペリエンス」と呼びます。
 
 

成功事例:シグニチャーエクスペリエンスの力

ディズニーランドの「キャスト」という呼称: ディズニーでは、従業員を「キャスト(出演者)」と呼びます。これは単なる呼称の違いではなく、「私たちは皆、ゲストに魔法の物語を届けるショーの出演者だ」という意識を従業員に植え付けるためのシグニチャーエクスペリエンスです。キャストは常にオンステージの意識を持ち、一貫したディズニーの世界観を体現します。
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アップルストアの支払い体験: 従来の家電量販店では、商品を選んだ後はレジに並んで支払いをするというのが一般的でした。しかしアップルは、店舗内のどこでも店員がモバイル決済端末を持って対応するという体験を設計。レジに並ぶというネガティブな体験を排除し、顧客との対話を最後まで途切れさせないというシグニチャーエクスペリエンスを創出しました。
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Airbnbのスーパーホスト制度: Airbnbでは、特に評価の高いホストを「スーパーホスト」として認定し、特別なバッジを表示しています。これは単なるランク付けではなく、「地元の魅力を伝える達人からのおもてなし」という物語を強化するシグニチャーエクスペリエンスです。ゲストにとっては安心感の提供になり、ホストにとってはモチベーション向上につながります。
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シグニチャーエクスペリエンスの設計手順

1. 重要な顧客接点(MOT)の特定: 顧客の意思決定や感情形成に大きな影響を与える瞬間を特定します。例えば、初回利用時、問題発生時、サービス更新時など。
2. サービスの世界観・ストーリーを体験に落とし込む: 定義した世界観やストーリーが、具体的な顧客体験としてどのように表現できるかを検討します。
3. 体験アイデアの創出: ブレインストーミングなどを通じて、独自の体験アイデアを生み出します。このとき、競合分析も行い、差別化ポイントを明確にします。
4. ストーリーボードによる視覚化: 顧客がどのように体験するのかを時系列で詳細に描写します。これにより、チーム全員が同じビジョンを共有できます。
5. プロトタイピングと検証: 可能な範囲で実際に試作し、顧客からのフィードバックを得てブラッシュアップします。

 

カスタマージャーニーマップの活用

効果的なシグニチャーエクスペリエンスを設計するには、顧客の体験全体を俯瞰する「カスタマージャーニーマップ」が役立ちます。これは、顧客がサービスを認知してから利用、継続利用に至るまでの一連の体験プロセスを可視化したものです。

このマップを作成することで、現状とのギャップを明確にし、改善すべきポイントを特定できます。特に重要なのは、各接点における顧客の行動だけでなく、思考や感情も記述することです。
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次回はシリーズ最終回として「ビジュアルアイデンティティがもたらすブランドの一貫性」をテーマに、視覚的なブランド表現の重要性についてお話しします。
 
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