2025.10.06
Blog|サスティナビリティとアクセシビリティ ―プロダクトジャーニーマップで見えてくる新しい視点―

サスティナビリティの課題は、環境問題だけではなく、社会課題とも深くつながっています。
日常に潜む「無意識の排除」は、社会課題に関わるひとつの要素となります。
プロダクトのジャーニーを可視化し、アクセシビリティの観点で再検討することは、
より持続可能なプロダクトに改善していくための切り口を発見する有効な方法です。
サスティナビリティの課題というと、多くの人はまず「環境問題」を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん環境は大切ですが、社会課題もまた同じようにサスティナビリティの重要な要素です。
経済活動、すなわちビジネスは、環境と社会という土台の上に成り立っています。だからこそ、ビジネスを持続させるためには、環境と社会の両方の持続可能性が求められます。 *1
本記事では特に「社会課題」に焦点を当てて考えてみたいと思います。
経済活動、すなわちビジネスは、環境と社会という土台の上に成り立っています。だからこそ、ビジネスを持続させるためには、環境と社会の両方の持続可能性が求められます。 *1
本記事では特に「社会課題」に焦点を当てて考えてみたいと思います。
「無声騎士」が気づかせてくれたこと
最近、中国のフードデリバリー業界で、聴覚障害のある配達員が増えているというニュースを見ました。音声と文字を変換するアプリの普及によりデリバリーの仕事に就けるようになり、誇りを込めて自らを「無声騎士」と呼んでいるそうです。

引用:食を届ける“無声騎士”たち 〜中国 成都〜(NHK)
映像の中で彼らは素早く配達をこなし、周囲の協力を得ながら、顧客と自然にやりとりしていました。その姿を見て私は、「聴覚障害者がデリバリーを行うのは難しいのではないか」と無意識に考えていた自分に気づかされました。環境やサポートが整えば、人は力を発揮できる。私たちが見落としがちなのは、こうした「無意識の排除」なのかもしれません。
「シニアはデジタルが苦手」という思い込み
同じような気づきは、日本の事例からも得られます。シニア向けSNSを運営するオースタンスは、近年会員数を大きく伸ばし、コミュニティ内では年間10万人が参加するイベントが開催されているそうです。
アクセシビリティとは、誰もが製品やサービス、情報にアクセスして利用しやすい状態を指します。
一般的に「シニアはデジタルが苦手」と言われがちですが、こうしたニュースに触れると、実際にはアクセシビリティの問題も大きいのではないかと感じさせられます。つまり、「できない人がいる」のではなく、「できるように設計されていない」だけの場合も多いのではないでしょうか。オースタンスは、シニア世代でも直感的に理解しやすいUIを意識的に設計しており、その工夫が利用者の参加意欲を支えている部分もあるのではないかと想像します。
多様性は持続可能性を高める
社会などのシステムが持続可能であるためには、多様性が不可欠です。均質的なメンバーからなるシステムは、同じ条件が続く限りでは、効率的に機能します。けれども、環境の変化には脆弱であることも多いといわれています。これに対して多様なメンバーを包摂しているシステムは、大きな変化にあたってレジリエント(打たれ強く)で、持続可能性が高いのです。 ――遠藤 薫 学習院大学法学部教授 |
つまり、多様性は単なる「配慮」ではなく、変化に適応し続けるための条件です。アクセシビリティは、その多様性を実現する大切な入り口と言えるでしょう。
日常の中に潜む「無意識の排除」
アクセシビリティの課題は、身近なプロダクトやサービスの中にも見えてきます。
• シニア層も多く利用するのに、操作が複雑で使いこなせない
• 低所得層も利用するのに、高速なネット環境が前提になっている
• 障害がある人の利用が想定されておらず、アクセスできない
これらは意図的に排除しているわけではないでしょう。しかし結果的に、利用者を限定し、社会的に弱い立場にある人を置き去りにしてしまうことがあります。ビジネスの観点から見ても、利用できない層が生まれることは「市場の縮小リスク」につながります。逆に、誰もが利用できる状態を整えることは、多様な顧客に支えられ、変化に強いビジネス基盤をつくることにつながります。
• シニア層も多く利用するのに、操作が複雑で使いこなせない
• 低所得層も利用するのに、高速なネット環境が前提になっている
• 障害がある人の利用が想定されておらず、アクセスできない
これらは意図的に排除しているわけではないでしょう。しかし結果的に、利用者を限定し、社会的に弱い立場にある人を置き去りにしてしまうことがあります。ビジネスの観点から見ても、利用できない層が生まれることは「市場の縮小リスク」につながります。逆に、誰もが利用できる状態を整えることは、多様な顧客に支えられ、変化に強いビジネス基盤をつくることにつながります。
気づくための方法
では、どうすればこうした「無意識の排除」に気づくことができるのでしょうか。
一つの有効な方法は、プロダクトが実際に使われているプロセスを可視化し、使用者を想定しながら俯瞰することです。ただし、個人でプロセスを俯瞰しても、自らのバイアスにはなかなか気づけません。異なる立場にある人々と一緒に俯瞰し、気づきを共有することで初めて隠れていた課題が浮かび上がりやすくなります。
一つの有効な方法は、プロダクトが実際に使われているプロセスを可視化し、使用者を想定しながら俯瞰することです。ただし、個人でプロセスを俯瞰しても、自らのバイアスにはなかなか気づけません。異なる立場にある人々と一緒に俯瞰し、気づきを共有することで初めて隠れていた課題が浮かび上がりやすくなります。
プロダクトジャーニーマップ体験ワークショップ
mctでは、プロダクトのプロセス全体(販売後だけでなく、製造や廃棄まで含む)を可視化し、様々な立場の人と一緒に全体像を眺めながらサスティナビリティの課題を発見する「プロダクトジャーニーマップ体験ワークショップ」をご用意しています。現在は、環境課題を発見することを主な目的としていますが、可視化と俯瞰のアプローチは、社会課題やアクセシビリティにも応用可能です。
「見えていなかったものに気づく」体験を通じて、より持続可能で、多様な人に開かれたプロダクトづくりのヒントを得ていただければと考えています。
少しでも関心をお持ちいただけましたら、以下よりぜひ詳細をご覧ください。
「見えていなかったものに気づく」体験を通じて、より持続可能で、多様な人に開かれたプロダクトづくりのヒントを得ていただければと考えています。
少しでも関心をお持ちいただけましたら、以下よりぜひ詳細をご覧ください。
参考
*1 書籍「必然としてのサーキュラービジネス」磯貝友紀 著
*1 書籍「必然としてのサーキュラービジネス」磯貝友紀 著
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Yohei Ushijima
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー
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