2023.06.20
Blog|デザイン×サスティナビリティセミナーレポート 第4回「社会」編
3 月17 日に行なわれた「デザイン×サスティナビリティセミナー」について、このブログでは、「環境」「デジタル」「社会」のテーマごとに、全3 回の連載形式でおさらいしていきます。
最終回にあたる今回は、「社会」のパートにフォーカスを当て、実際にセミナーで紹介した事例をピックアップしてお届けします。
サスティナビリティ×社会
環境的にサスティナブルな製品であっても、社会的にはそうでない場合があります。製品の生産において持続不可能な社会的慣行が関与していたり、環境的な意味で持続不可能な製品を生産することは、組織の責任を放棄していることを意味します。
製品に関与するすべてのステークホルダーのサスティナビリティ、すなわち仕事の質や政治的価値観を含めて、包括的に持続可能性を考慮する必要があります。
ポジティブ/ネガティブな事例
▼エアビーのエイジレス・トラベルキャンペーン
実は、Airbnbのホストの大部分はシニア層であり、またゲスト側も60歳以上の方が多く利用されています。Airbnbの利用は若い世代によるものと一般的に誤解されていますが、実際には裕福なシニア層もAirbnbを通じて世界中を旅行しているのです。この広告は、シニアトラベルの促進を図ると同時に、Airbnbのインクルーシブなイメージを形成し、日本などで増加しているシニア市場の創出にも貢献する機会となりました。社会的・経済的にも意味のある広告と言えます。
▼アクセシビリティ機能に光明を見出したアップル
Apple社のアクセシビリティ機能に対する取り組みが注目を集めています。テクノロジーを駆使して、障害者ユーザーの自己実現をサポートする、というものです。社内のクリエイターたちによって制作された2分半の動画では、様々な障害を抱えるユーザーがiPhone、Apple Watch、Mac製品を最大限に活用するさまが描かれています。これによって、障害者やシニアを含む多様なユーザー層を取り込むことが可能となり、結果的により広範な市場を開拓する道が拓け、Apple社は大きな企業メリットを享受しました。
▼テクノロジーが犯罪を助長する懸念
Apple社のAirTagは、もとは鍵を探しやすくするために開発されましたが、最近その使用方法に関して懸念が示されています。小型かつ目立ちにくいAirTagが、ストーカーやプライバシー侵害に悪用される可能性が指摘されており、この問題は世界中の新聞や裁判所で頻繁に取り上げられています。
便利なツールは一方で、見方を変えれば犯罪を助長する要因となり得ることを示唆しています。AirTagは、元恋人、有名人、または子供などの追跡目的に悪用される可能性があり、そのような状況は大きな社会問題となっています。
この問題は、プライバシーとセキュリティのバランスを考える上で重要な示唆を与えています。テクノロジーの進歩は、私たちの生活を便利にする一方で、その使い方によっては深刻な悪影響をもたらす可能性があることを念頭に置かなければなりません。
▼顔認証技術を活用してヒジャブの遵守を監視
イランでは、ヒジャブ(イスラム教の頭部を覆う衣服)の着用を監視するために顔認証技術が使用されています。このシステムにより、法律に違反したと見なされた女性は、銀行取引や公共交通機関の利用、他の行政サービスの利用が制限される可能性があります。さらに、ヒジャブの違反を繰り返す女性には、長期の刑務所入りや強制的な道徳教育を含めた重い罰則が科される可能性があります。このように、テクノロジーが個人の権利の抑圧に利用される事例が生じているのです。
この事例は、技術の進歩が社会に与える影響の一つとして、懸念すべきネガティブな側面を浮き彫りにしています。個人の自由やプライバシーを保護するためには、テクノロジーの利用における倫理的な枠組みと規制の整備が喫緊の課題となっています。
▼反ユダヤ主義的発言が原因で提携を解消
某大手スポーツウェアメーカーは、昨年度に反ユダヤ主義的な発言をしたラッパー、カニエ・ウェストとの提携がとん挫したことで、数億ドルの損失を被る可能性があることを発表しました。
カニエ・ウェストの発言が提携の解消につながり、本来利益を生み出すはずであった共同ブランドは失敗に終わりました。企業は単に経済的な利益の追求だけでなく、ステークホルダーとの関係も重要視しなければなりません。ステークホルダーにも企業のサスティナビリティを考慮し、支持してもらう必要があるのです。
「サスティナビリティ×社会」というテーマにおいて、重要なポイントは、「インクルーシブ」と「アクセシビリティ」の2つです。年齢や性別などの要素だけでなく、インクルージョンやアクセシビリティに関する考慮が求められ、また、社会的および政治的な責任も重要な要素となります。
例えば、デザインが暴力的な要素を含んでいないか、倫理的な観点から見て妥当性があるか、そしてステークホルダーがサスティナビリティの観点から適切かどうかなど、幅広い視点で考慮する必要があります。これらの要素を考慮することで、より包括的かつ持続可能な社会を構築することが可能となります。
おわりに
セミナーレポートは以上となります。本レポートがアイデアの発展に繋がった方や、一方で「サスティナビリティ」というテーマに対して曖昧さを感じた方もいらっしゃることと思います。実際、サスティナビリティは複雑で入り組んだ特性を備えており、その理解には困難が伴うこともあると思います。
しかし、こうした状況こそが、私たちとともに「サスティナビリティ」をゼロから考える絶好の機会です。むしろ、曖昧さを感じる方こそ、新たな視点やアイデアを持ち込むことができるかもしれません。私たちと共に「サスティナビリティ」について探求してみませんか?
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Natsuki Koizumi
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