2024.10.01
ひとりでいられる能力(the capacity to be alone)
こんにちは。mctの合田です。
タイトルにある「ひとりでいられる能力」について、ご存知でしょうか。
大学時代、ドナルド・ウィニコット(イギリスの小児科医、精神科医、精神分析家)が提唱した「ひとりでいられる能力(the capacity to be alone)」を知り、『ひとりでいられる人』と『ひとりでいられない人』の違いはなんなんだろうなぁ。という単純な興味からそれを卒論にしました。
有名な話ですが、幼少期の母子関係で「母親=安全基地」だと子供が感じることができれば、「自分には安全基地があるので外に出かけても大丈夫」と冒険することができます。つまり、良好な親子関係であれば、子供は不安なく外に出られる(何かあっても帰ってこられる場所がある)、と言われています。
ウィニコットによれば幼少期の母子関係が良好であれば、幼少期以降も「ひとりでいられる能力」が培われていきます。
当然、ひとりぼっちという状況も「ひとりでいられる能力」に関係しますが、ここで面白いのは友人と一緒にいても「ひとりでいる」ことができるということです。
(以下はウィキペディアの引用です)
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ひとりでいられる能力は洗練された現象である。いろいろな体験がひとりでいられる能力の確立に寄与するが、その最も基本的なものは、「幼児または小さな子どものとき、母親と一緒にいてひとりであった」という体験である。つまりひとりでいる能力は逆説であり、誰か他の人が一緒にいるときにもった、「ひとりでいる(to be alone)」という体験である。
母親を自己に内在化することで、やがて幼児はしばらくはひとりでいることができるようになるし、そしてまた、安心してひとりでいることを楽しむことができるようにもなっていく。幼児はこのひとりでいる能力をもった状態になってはじめて、外界からの侵害に反応することなく、やけに活動的な人間にならずともいられるようになる。やがて幼児は実際に母親が付き添うことを諦めることができるようにもなる。それは内的環境の確立が達成されたからである。ひとりでいられる能力は情緒的成熟とほとんど同意語である。
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上記のポイントは、「自分は自分」だとアイデンティティの確立ができていれば、周りの環境に左右されない、ということです。
余談ですが、「十分に良い母親 good enough mother」について書かれた精神科医の先生の記事も興味深いです。
https://www.huffingtonpost.jp/arinobu-hori/the-capacity-to-be-alone_b_17047378.html
このウィニコットの「ひとりでいられる能力」は1958年に提唱されました。
60年後の現在はネット環境など様々な状況が変化しつつあります。ひとりでいても大勢でいてもSNSで情報をシェアしあい、ウィニコットの定義からすると、ひとりといえばひとりですし、複数といえば複数(ひとりではない)といった状況になっています。
ここで、テクノロジーに関する書籍を参照してみます。
2016年に出版されたケヴィン・ケリーの「〈インターネット〉の次に来るもの」には、未来を決める12の法則が記載されています。
最新のテクノロジーに作用する傾向を集めて、それらを12の動詞(BECOMING、COGNIFYING、FLOWING、SCREENING、ACCESSING、SHARING、FILTERING、REMIXING、INTERACTING、TRACKING、QUESTIONING、BEGINNING)で表現し、近い将来に起こる変化を述べています。
当然、SHARINGも含まれており、テクノロジーの視点からもシェアすることはより当たり前になってきます。
★シェアの習慣がますます一般的になり、我々の文化の基盤になってきている。こうしてシェアしながら大陸をまたがるグループの会ったこともない人々と、社会階層など関係なく一緒に百科事典やニュース配信、動画アーカイブ、ソフトウェアなどを協働して作り上げている。(上記書籍のP193より引用)
ちなみに、この書籍でのSHARINGは自分の知識をシェアすることで、それに対して他人が別の情報をシェアしてくれるという、「知識のアップデート」を示唆しているので、ポジティブな意味になります。
私の個人的な意見ですが、「ひとりでいられる能力」は幼少期の体験が影響している人間の根本的な部分なので、SNSが普及している現在でも必要な能力だと感じています。
(ひとりでいられる能力が欠如した場合、依存や分離不安などの要因の1つになるのかもしれません)
最近では「就寝1時間前からスマホは機内モードにしている」という話もちょくちょく聞きます。
無理やり遮断することでひとりになる時間を作っている人もいますが、今後はもう少しスムーズにひとりになれる時間を作れるようなサービスが出てくるかもしれません。
今回は、心理学の用語と現在のトレンドについて書籍を参考にしながらブログを考えてみましたが、
また面白そうなものがあればご紹介させていただこうと思います。
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