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6 02, 2017 10:40 なぜ、mctは現地チームと共同でのエスノグラフィをお勧めするのか

こんにちは、白根です。海外でエスノグラフィをするとき、日本のスタッフと現地のスタッフが共同で行うメリットについてお話します。

5年程前、あるプロジェクトでインドの街を移動している時、やたらとティッシュボックスが目立つのが気になりました。「インド人はなぜティッシュボックスを隠そうとしないの?そんなにいっぱい使うのか?」プロジェクトを一緒にやっていたCONVOのDina Mehtaに質問をしました。彼女は、ティッシュボックスについてこれまで気にしたことがなかったようで、はじめは驚いていましたが、少し考えて「インド人にとってティッシュボックスはモダニズムの象徴なの。隠さないんじゃなくて、見せようとしているのよ」という解釈をしてくれました。

観察をしに現場に行くと、そこには目立っている事物と、目立っていない事物があります。一方、そこには自分が見たいと思っている事物と、自分が見たいと思っていない事物があります。人間は、目立っている事物に注意を向け、見たいと思っている事物を無意識のうちに探してしまう傾向があります。その結果、素人の観察者の場合、いろんなものを観察しているようで、実は「自分が見たいと思っている目立っている事物」ばかり観察してしまっている、ということが起こってしまいます。

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「自分が見たいと思っていない目立たない事物」は無数にあるので、それら全てを観察して、その中から意味のある「自分が見たいと思っていない目立たない事物」を収集するのは現実的ではありません。そこで、まずは「自分が見たいと思っていない目立つ事物」「自分が見たいと思っている目立たない事物」に焦点を当てることになります。その時、日本のプロと現地のプロでは得意な領域が異なります。現地の文化をよく知らない日本のプロは、「自分が見たいと思っていない目立つ事物」の収集が得意です。ティッシュボックスの例がそれをよく表しています。一方、現地の文化をよく知っている現地のプロは「自分が見たいと思っている目立たない事物」の収集が得意です。ティッシュボックスに似た例をあげれば「インドでは、人前で待ち受け画面を瞬時に英語仕様に変える携帯電話の機能が人気である」ということなどは、インドの事情をよく知っていないと収集できません。

Purchased at Shutter stock, using as a news article.

電線が絡まったこの写真。日本から来たわたしたちにとってそれは、とても「目立っている事物」ですが、インドで暮らす人々にとってはあまりに日常的で、「目立っている事物」として意識することができません。しかし、その意味をわたしたちだけで解釈しようとすると間違ってしまいます。絡まった電線についてインドのプロと共有すれば、すぐに「これはジュガードの精神の表れだ」という解釈が返ってきます。ちなみに、ジュガードとはヒンズー語で「応急措置」のこと。モノや資本が足りない過酷な環境の中でも、機知や機転を研ぎ澄ましてなんとか問題を解決しようという必要に迫られて生まれた精神です。

現地をよく知らないからこそ気づけること。現地をよく知っているからこそわかること。日本のスタッフと現地のスタッフが共同でこの2つをうまく組み合わせることで、両者が認識できなかったキーインサイトに近づいていくことができるわけです。

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http://mctinc.hs-sites.com/global_ethnography

Hideaki Shirane株式会社mct CEO / ストラテジスト

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