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2025.08.07

Series|合成ユーザーを使ってビジネスの種を見つける5日間―DAY3:AI の回答は本当に正しい?実際の人と比較検証してみた



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新連載「合成ユーザーを使って、ビジネスの種を見つける5日間」 3日目
 
昨日は、AIと会話するだけで、海外の文化的価値観が見えてくる──そんな驚きの体験をした山田さん。
でもふと、こんな疑問が浮かびました。「これって本当に現地の人たちの感覚と合ってるの?」
 
 

 

AIから得られた洞察を深堀りする必要性

「昨日のラダリング手法で文化的価値観のキーワードは見つかったけど、実際の現地の状況ってどうなんだろう?」
水曜の朝、山田さんは新たな疑問を抱いていた。AIから得た「中国は効率性重視」「ベトナムは家族との時間重視」という洞察は一見納得できるものだったが、はたして本当にそうだろうか?
 
ビジネス機会を見つけるには、もっと具体的な現地事情と照らし合わせていく必要があると感じたのだ。
そこで今日は、生身の人との対話で現地のリアルな状況を探ってみることにした。
 
 

リアルユーザーとの対話

中国出身のマーケティング部・王さんに、昨日のAI分析結果を説明してみた。
「中国の働き盛り世代は効率性を重視して、達成感を求める傾向がある」という話をすると、王さんは「ああ、それ分かります!」と共感を示した。
 
さらに王さんは興味深い情報を教えてくれた。
「中国には朝食専門の店がたくさんあるんです。日本だとカフェで朝食メニューがある程度ですが、中国では朝食だけで成り立つビジネスがあります。ただし地域によって違いがあって、上海のような都市部はコンビニが多いですが、他の地域では屋台文化が強いようです」
 
「実際の様子を見てもらった方が分かりやすいですね」と言って、王さんはスマートフォンを取り出した。
上海の朝8時頃の街角写真には、コンビニの前に並ぶビジネスパーソンと、近隣で営業している朝食専門の小さな店舗が写っていた。
「効率性を求める人と、温かいものを食べたい人、両方のニーズが共存してるんです」
 
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ベトナム出身のエンジニア・グエンさんとの対話では、詳細な食文化が明らかになった。
「ベトナムは朝食の種類が豊富で、フォー、バインミーなど、基本的に温かいものを食べることが多いです。冷たいものは健康に良くないという認識があって、バインミーも温めて食べるんですよ」
 
食事のタイミングについても具体的なルールがあった。
「フォーは朝か夜に食べることが多くて、昼はあまり食べないんです。昼はおかずとご飯が一般的です。それと、ホーチミンはバイク通勤が多いので、屋台を選ぶときはバイクを停めやすいかどうかも大切なポイントになります」
 
家族との時間については、AIの分析通りだった。
「家族と朝のフォーを囲む時間は本当に大切で、近所のフォー屋さんも朝早くから地域コミュニティの交流の場になっているんです」
 
グエンさんも実家での朝食風景の写真を見せてくれた。近所のフォー屋さんで地域の人たちが集まる朝の光景だった。
「単に食事をする場所じゃなくて、地域のつながりの拠点なんですよ」
 
AIの文化的洞察に加え、実際のユーザーから写真で現地の雰囲気を教えてもらうことで、山田さんの理解はより具体的になった。
 
 

AIと人間、両者との対話から見えてきたこと

夕方、2人との対話を振り返りながら、山田さんは重要な気づきを得た。AIの文化的洞察は想像以上に正確だったが、「朝食専門店というビジネス形態の存在」「地域による商業インフラの違い」「バイク社会特有の購買行動」「食事タイミングの文化的なルール」といった現地の実情は、実際の人に聞かなければ分からない情報だった。

「AIで基本的な価値観や思考パターンを理解して、リアルユーザーで実際のビジネス環境や具体的な生活実態を把握する。明日はこの両方の情報を使って、実現可能なアイデアをチームで考えてみよう」
 
 
 

TIPS - AIとリアルの「対話」でリサーチの精度を高める

AIは、過去の膨大なデータをもとに、文化や価値観に関する傾向を導き出すのが得意です。けれど、その情報が実際の生活の中でどう表れているのか、どんな場面で意味を持つのかは、実際に人の声を聞いてみないと見えてきません。
リサーチの精度を高めるには、AIが示すパターンを出発点にしながら、リアルなユーザーとの対話を通じて裏づけや補足を重ねていくことが大切です。
 両者の視点を行き来しながら検証を重ねることで、表面的な理解にとどまらない、実践に役立つ深いインサイトへとつなげることができます。
 
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【連載】 Series|合成ユーザーを使ってビジネスの種を見つける5日間
 

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