2023.05.11
mct-labo conference 2023まとめ
2023/4/26に実施しましたmct-labo conference 2023の事務局を務めたmctの下野です。イベントの振り返りをつらつらと書いていこうと思います。
目次
mct-labo conferenceについて
・mct-laboとは?
・今回のテーマは"AI"
・参加型カンファレンス
・タイプ別参加方法の導入
・マインドセットについて
カンファレンス当日について
・参加状況
・1.AIと対話しながら新規事業の方向性を10分で見つけよう
・2.2077年の生活者シナリオをAIに描いてもらおう
・3.バーチャルペルソナにインタビューをしてみよう
・4.これからのデザインリサーチに関するワイガヤ
今後の予定
・株式会社mctについて
・mct-laboへの参加について
mct-labo conferenceについて
株式会社mctでは次世代デザインプロセスの自由研究として、毎月1回を目安に、日々の業務ではチャレンジしにくいアプローチ・アイデアを1つずつ実験しています。今回は、その活動を社外の方々に紹介し、実際に体験していただくために開催しました。
・今回のテーマは"AI"
カンファレンスの半年ほど前から、ChatGPTやMidjourneyなどのAIツールが注目され始め、社内のmct-laboでもさまざまなテーマでAIの活用方法について実験していましたので、今回はすべてのセッションAIをテーマとした内容にしました。個人的には「ウォーキングミーティング」や「最悪なアイデアを考える」など、他にも楽しめそうなネタはあったのですが、これは次回のお楽しみですね。
・参加型カンファレンス
カンファレンスと聞くと、一般的には「発表者」と「視聴者」が明確に分かれており、発表者からのトークがセッションの大半を占めていて、残り5分くらいで質疑応答するような形式が多いかと思います。そのほうがタイムマネジメントもしやすいですし。しかしmct-laboは名前の通り「実験」することに価値がありますので、「視聴者」ではなく「参加者」としてカンファレンスに入っていただき、それこそ1セッションの半分以上は参加者が実験する時間として用意していました。
事務局としてはもっと多くの時間をグループワークに割きたかったのですが、ツールを初めて触る方もいましたので、全体ワークで事務局と一緒に実験したあとにグループに分かれて議論するというスタイルを取りました。
・タイプ別参加方法の導入
一方で「"耳だけ参加"や"途中参加"はできないの?」という声もありました。一般的なカンファレンススタイルの参加ですね。そういった方でも入れるように、参加者のみなさんには「あなたはどのタイプで参加しますか?」というアンケートを取り、そのタイプに応じてグループ分けを行いました。
・マインドセットについて
参加者にも実験に入ってもらうということは、参加者が主体的にワークに取り組まないとセッション自体が成立しません。事務局が一番恐れていたのはこの部分。セッション自体がそれぞれ実験する場になるので、本当にうまくいくかなんて誰にもわかりません。それに「それでは実験しましょう!」と伝えても行動に移してくれなかったらどうしよう…
この点に関しては、私たちが大切にしているカルチャー(Culture Code)をカンファレンス案内時に提示しました。mctではこのようなカルチャーを大切にしています。このカルチャーをカンファレンス参加者にもお願いしました。おかげで当日は参加者の皆様の協力もあり無事終えることができました!参加者の方からカルチャーコードに好意的な声もあり、我々としてはうれしかったです。
カンファレンス当日について
・参加状況
今回は第一回ということもあり、我々mctの文化や雰囲気を知っている、すでにつながりのある方に絞ってお声がけしていきました。リーンスタートアップの考え方で言うところの「まずは製品市場フィットを達成する」ですね。実際にはそんな余裕がなかったのが正直なところですが…
当日は1つのzoomURLで実施したので各回の参加者数まで細かく見れていないのですが、社内外からのべ150名の参加となりました。当日のZoom参加者数を見ていた体感としては平均6-70名程度が各回のセッションに参加していたのではないかなと思います。
また、社内で毎月実施しているmct-laboを今後は外部公開していくことになり、今回のカンファレンスに参加した方には一足先に参加案内をしました。そちらにも20名ほどの希望者がありましたので、今後は毎月社内外の有志と実験していければと思います。
・1.AIと対話しながら新規事業の方向性を10分で見つけよう
1つ目のセッションは「10分で新規事業の方向性を見つけよう」というもの。無理だよね…という常識的な声があるのは理解しつつも、今回はAIを使ってビジネスモデルの仮説構築まで10分でやってみるという実験でした。
といっても、初めてAIを使う人にはある程度のガイドが無いと難しいので、今回はAIに社会課題をリストアップしてもらうところを起点に、気になったテーマについて顧客と課題を深堀し(AIが)、さらにリーンキャンバスまで作る(AIが)、事業開発しなければならない人間からすると至れり尽くせりの実験です。
参加者の実験結果の一例を載せます。この方の場合は最初に「若者と高齢者」というテーマに絞ってどのような課題があるのかをリストアップさせ、その中から「若者と高齢者の価値観の違い」を深堀し、「若者と高齢者のコミュニケーションの円滑化」でビジネスアイデアを発想していました。
"フレックスタイムやテレワークが高齢者と若者をつなぐ架け橋になるのかもしれないというのは気づきがあった"
セッションの振り返りの中で上のようなコメントがありました。AI側にはいまのところ人間側に対して意図して気づきを与える機能はついていないのですが、AIからの思いもしない回答に触れることで人間側で発想を膨らませることができるのはAIを活用する価値の1つですね。
また、さきほどはさらっと「リーンキャンバスを作る」と書きましたが、そもそもリーンキャンバスを触ったことが無い人からすると、本当はリーンキャンバスにどのような要素があってどのような内容を考えたらいいのかわからない状態から始まるのですが、AIに「リーンキャンバス作って※」と伝えると作ってくれるので、人間側がフレームを理解する時間が不要になるところも価値の1つだと思います。
※正しくはAI側に「リーンキャンバスはこういうもの」とインプットしたうえで作成を指示してください。
ただし、あくまでもAIから出てくるアウトプットは、インプットに対して関連のある文字列を出力しているだけなので、そのアイデアに本当に価値があるのかは検証する必要があります。そのメリット・デメリットを踏まえてうまく活用していきたいところです。
・2.2077年の生活者シナリオをAIに描いてもらおう
2つ目のセッションは「2077年の生活者シナリオをAIに描いてもらおう」というまたも無茶ぶりが過ぎるお題でした。未来を考えるとき、我々はどうしても「自分の知っている未来」の土台として発想してしまうので、だいたい「青白い光」と「ホログラム」と「何かを触っている指」の未来にたどり着いてしまいます、というところが出発点としてあって、そうではない「自分が知らない未来」を描こうという実験です。
そうはいっても時間が限られていますので、今回は2100年を描いた既存作品をたくさんリストアップしてもらって、その中から自分の知らない未来の要素をいくつかピックアップして、その未来の要素が登場する小説を描いてもらい、さらにそのシーンを象徴する画像生成まで行いました。本当に時間がなかったですが、参加者のみなさんは画像生成まで実験することができていてすごいなと思いました。
こちらも参加者が作成した未来の生活者シナリオの構成例です。「スタックテクノロジー」という要素と「コーポクラシー」という要素を組み合わせたシナリオを作ろうとしています。どちらもSF作品の未来要素になるので本当に実現可能なのかは検証が必要ですが、自分の知らなかった未来観をこんな簡単に描くことができるのはAIのおかげですね。本当であればそれぞれのSF作品を読み込まないとわからなかった要素なので。
・3.バーチャルペルソナにインタビューをしてみよう
個人的に一番面白かったセッション「バーチャルペルソナにインタビューをしてみよう」です。課題設定のセンスが素晴らしいですね。生身の人間には聞きづらいこと、つまりセンシティブな質問もAI相手であれば何でも聞ける!という実験です。
ワークは大きく2つあり「センシティブな相手」と「センシティブな質問」を考えていきました。事務局では「何度ダイエットに挑戦してもうまくいかない男性」に対して、インタビュー冒頭で「あなたは自分のことを太っていると思いますか?」と火の玉ストレートな質問をしていました。相手がAIでなければ失礼極まりない行為ですが、AIだと本題から切り込んでいくことができます。
回答の一例です。インタビューする相手は実は人間に限りません。この例の場合は日本海に住むイルカにインタビューしています。実際にはインタビューできるわけないのですが、AIを通してイルカと会話をする中で、イルカがどのような環境で生活を送っているのか、その中でどのような問題がいま起こっているのか、人間がどのように影響を及ぼしているのかを知っていくと、ペルソナと同じような共感効果がありますね。(Non Human Personaと呼ばれています)
・4.これからのデザインリサーチに関するワイガヤ
最後のセッションでは、mct社内での取り組み事例を紹介しながら「これからのデザインリサーチはどう変わっていくのか」というトークセッションを行いました。
以下は取り組み事例の一例。これまでの実験では「テキストAI」と「画像生成AI」を分けて活用していきましたが、画像生成AIに指令を伝えるにはテキストが必要になってくるので、実はそのテキスト作成にAIが使えたりします。
たとえば「発想を広げる」というコンセプトの画像を作りたいんだけど、画像生成AIに「発想を広げる画像」という指令を渡してもまともな画像は返ってきません。そこでテキストAIに相談する、といった使い方です。
これからの展望については参加者とのやりとりの中でもコメントしましたが、AIに限らず、デザインリサーチをよりよいものにしていくツール、デザイナーの本質的な価値に集中するため周辺業務を効率化していくツールを、使わないという選択肢はあり得ないと考えています。
今回のAIに関しては「まだ単純作業を人間がやってるの?」や「一人で悩んでないでAIに相談したらいいじゃない?」というレベルの話はすでに製品レベルで実現していて、今は活用した者だけがその価値を享受しているという状況です。AI活用の進歩が速すぎて追い付けない側面もありますが、実験しないことにはその価値を感じることもできないので、そういった場を今後も社内外で積極的に作っていければと思います。
今後の予定
今回は冒頭でも触れたとおり、これまで社内で毎月試してきたことを初めて社外の方を交えて実験する場としてカンファレンスを開催しました。
そこで感じたのは「参加者のマインドセットの重要性」です。実験することに価値がありますので、成功することもあれば、失敗することもある。そこを理解したうえで一緒に挑戦し、成功も失敗も笑い合える参加者と一緒に活動を続けていけたらと思います。そういった意味では第一回カンファレンスに参加いただいた皆様には感謝しかありません。
これからは社内外の有志によるmct-labo第二章が始まります。
毎月ネタを考える生みの苦しみはあるのですが、実案件で試しにくいアイデアを考えて一緒に実験する時間は楽しみでもあります。また成長に失敗はつきものだと思いますので、フェイルファーストの精神で、すばやく失敗して成功に繋げていければと思います。そしてニーズがあれば第二回カンファレンスを来年開催しようと思います。
・株式会社mctについて
mctは、世界が認める最新の手法、人々に感動を与える創造力、そして障害を乗り越え、実行するチームづくりを通じて人間中心イノベーションのお手伝いをしています。
・mct-laboへの参加について
カンファレンス参加者以外の方については招待制にしております。気になる方は接点のあるmctメンバーにお声がけください。どうしても…という方は問い合わせフォームよりご連絡ください。
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Fumihiro Shimono
株式会社mct デザインストラテジスト
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