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2020.05.14

Blog|2020「What's The Future」バーチャルサミットレポート

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今、私たちは答えよりも多くの疑問を抱えています。
仕事、教育、旅行、医療、エンターテインメント、経済の未来は、この先どうなるのでしょうか?
私たちは元の生活に戻るのか、それとも以前の生活より優れたものを築き上げるのか。
COVID-19を受けて、労働者、企業、産業はどのように適応していくべきか。
先日米国で開催されたバーチャルサミット『What's the future』の参加レポートです。とても興味深いです👍

スクリーンショット 2020-05-13 9.20.13  Nicholas Thompson       Chris Clearfiel        Jeremy Gutsche       Stephanie Mehta

 
『Covid-19は、オープンでフラットなコミュニケーションの大切さを認識させた』
米国ビジネス誌『Fast Company』の編集長Stephanie Mehtaは、リモートミーティングの際に参加者全員と会話を交わす事を心がけているそうです。リーダーとしてチームメンバーとの会話の仕方を改め、本社ニューヨークのスタッフだけでなく、これまで遠方にいたチームが疎外感を感じることなく関与できる様促しています。 組織内における階層や本社、支店を問わず、全員が同じ土俵に立ち、オークランドのスタッフ、ブルックリンのスタッフ問わず同じメッセージを投げかけています。良いリーダーシップと機会を設ければ、今後も露呈した問題を克服するための新しいビジネスラインを考え出すことができると言っています。 以前から多くのメディア企業がビジネスモデルを修正する必要があると認識していましたが、今は本当に大きな意味でメディア企業が、サミットやカンファレンス、スピーカーシリーズの様に購読や広告を補完するための、第三、第四の収入基盤を作ろうとしています。  
 

 バーチャルサミット中に実施されたアンケート
 Q.『レジリエンス=回復力』となっているものは??
 A. 家族・エクササイズ・瞑想・自然・友人・読書 etc

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『自分のビジネスの目的や意味を今一度問い直し、レジリエンスを高める』

『Melt Down』著者 Chris Clearfieldは、メキシコ湾で起きた2010年の大爆発とそれに伴う環境破壊の文脈をビジネスに例え、企業がレジリエンス(回復力)と衝撃に対応する能力を構築するためには、現実に真正面から向き合うとともに、内面的に深く掘り下げて自己に問う必要があると言います。人とのつながりを通し、自分を幸せにしているものは何か、この崩壊を機に、自分のビジネスの役目を今一度考える必要があると言います。隔離が始まり、1〜4週目までは歯を食いしばって、スプリントで乗り切ろうという感じでしたが、実際にはマラソンの様に長期的に考える必要があると言っています。以前、PTSDの患者の対応改善を行った際に、医療従事者の考え方に興味深いものがあったそうです。彼らは自らの働き方を振り返るスペース(時間・場所)を確保し、一歩下がって振り返る事を習慣付けていました。これは、回復力をつけるのにとても有効だと彼は考えます。

*『Melt Down』 = 失敗の多くは似たような原因を共有していて、これらの失敗の背景にあるものを理解することで、より良いシステムを設計し、チームの生産性を高め、職場や家庭での意思決定の仕方を変えるという見解を示す著書。mctは著者のChris Clearfieldさんと以前から接点があり、今回のイベントもChrisさんから紹介していただきました。

 

 Q. 最近職場で起きたイノベーションとは?
A. Zoom・柔軟性・コラボレーション・テクノロジー etc

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『新しい成長ビジネスは、危機の後に来るカオスの時期に生まれる』

世界No.1のイノベーションウェブサイト「Trend Hunter」のCEOであるJeremy Gutscheは、歴史を振り返り、ミケランジェロのダビデ像、レオナルドのプリンティングプレス機の発明 、ウィリアム・シェイクスピアの簿記と会計の発明などのすべては、中世の黒死病流行と呼ばれるペストの大流行に直面したことが起点となっていると言います。当時、社会構造は崩壊したため、彼らは実際に重要な事とは何かを改めて考えたそうです。現代の言葉で言うと、起業家的になり始めたという事です。 『危機』とは、一体何が重要なのかを考え直すきっかけとなり、その後に来る『混乱』のフェーズは予測可能な時期であると彼は考えています。

   Rule No1.  消費者の新しいニーズを理解し解決する
   Solve new consumer need

 

 
1929年のウォール街の大恐慌の時、当時のアメリカで最も影響力のある民間人と呼ばれたHenry.R.Ruceは男性ビジネス誌『Fortune』をウールセーターと同等の価格で販売しました。Fortune誌は、役員室のドアの向こうでどんな決定があったのか知ることもなく職を失った人たちに、なぜこうなってしまって、いつ元に戻るのか、役員室のドアの向こうで話されていることを垣間見るような感覚を与え、当時の消費者の新しいニーズに答えました。
 
   Rule No2. 特定のグループにとって魅力的になる
   Be irresistible to a specific group of people

 

 

アメリカでアイスクリームのマーケティングリサーチを行うと、圧倒的に人気のあるのはバニラ味です。どのブランドもバニラ味のアイスクリームを販売する中、消費者は、バニラ味のアイスクリームを買うものの、ブランドの違いを気にすることはありませんでした。1991年、グローバルリセッションに入ると、バニラ味のアイスクリームの値引き合戦が始まります。そんな中で、価格が4倍にも相当する『チェリーガルシア』という唯一無二のアイスクリームの販売を開始したのが、ベン&ジェリーズです。『チェリーガルシア』のネーミングは、ロックグループのグレイトフルデッドのリーダー『ジェリーガルシア』をもじったものですが、そのジェリーガルシア自身が、「単にベストオブベストになりたいと思ってはいけない。オンリーワンだと思われるようにならないといけない」と語っていたそうです。『チェリーガルシア』はそういアイスクリームだというメッセージを、商品名に込めているのです。

では、実際に行動を起こすにはどうすればいいのでしょうか?

世界が変わってしまった今、本当に必要なことは、まず実験に使う時間を確保する事だと Jeremyは言います。新しいアイデアを試すために自分の時間やお金を使って実験することが大切です。
ただ、すでにやっている事を全てシフトするという事ではなく、明るい未来を作り出すには、失敗が不可欠という事であり、失敗により新たな機会を見つける事ができると言っています。

Jeremyは、以下の様に『危機』の後に来る『カオス』のフェーズにビジネス機会があると捉え、『危機』の最中は消費者は恐怖を抱いているので、物を売るべきフェーズではないが、消費者の声を聞くことはとても有効だと言っています。 
 

 

『危機』のフェーズは、緊迫感を生み出す。消費者は基本的生活必需品を求める。

『カオス』のフェーズは、ビジネス機会を生み出す。消費者は刻々と変化する。

① 経路依存 → ② 危機 → ③ カオス → ④ 新たな経路の設定 

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『Covid-19後の未来。安全 vs プライバシー、リモートの定着 』
 
Wiredの編集長であるNicholasは、
Covid-19の発生により国のPrivacyがどの様に変わっていくかについて話しています。
 
発生前 ~ Before ~

 

Facebookの例を挙げると、テロリストからの情報を遮断するなど、安全なプラットフォームを構築するためにSafety面にフォーカスしてきました。それとは反対に、What's upは完全に暗号化したメーセージを使い個人を特定しにくくするなど、Privacy面にフォーカスしてきました。
中国政府もコロナの情報共有に暗号化されたメッセージを使用していたと言われています。

インターネットがつながった当初は、Privacyはそんなに重視されていませんでしたが、
2018年(この時期にスキャンダルが多発)を境にどの商品やサービスもPrivacyを重視する様になりました。
 
Covid-19の発生  ~ During ~

 

コロナの影響で死を身近に感じる人が増え、人々はPrivacyを以前より気にしなくなっています。
明日感染するとなったらPrivacyは何の意味も持たないという事です。
国で見ると、Privacyよりも SafetyやSecurityを重視している国の方がパンデミックは治まりつつあり、また権威主義で市民が権利を持たない国は、個人特定が容易である事から死者数も少ないと言われています。
この様に、Safety&Privacyにはいずれかを妥協する必要があるので、そのバランスを取る方法を考える事が重要だとNicholasは考えています。
 
未来  ~ After Covid-19 ~

 

今後は、オフィスの入り口にも温度カメラを設置し出勤前に感染を確認する、ウェアラブルウォッチで常に健康状態を自動で送信(耳・指輪など)し、事前に感染の拡大や場所を特定する、ドローンを使用し密接者に距離を開ける様警告する、Alexaなどのマイク内臓機器で咳を感知し個人を特定する、Facebookを介して症状を入力してもらう事で拡散状況をマッピングする、iphoneを介して感染者に近づいたら警告する、などが考えられます。

ドイツ、USA、シンガポール、オーストラリア、Englandではすでに開発が進んでいる様です。
(以上の国ではPrivacyの確保より、コロナの阻止(Safety)にフォーカスしている)

Safetyを選べばPrivacyを妥協せざるを得ない状況で、製品を開発する側は、適度なPrivacyを保つ事を考える必要があります。周りにいる人が咳をするだけで感染者を特定できる様になっても、その個人までは特定しないなど、製品開発における目的を忘れてはいけないという事です。5年後に振り返った際に、今の決断を異常に感じる事もありえるため、冷静に目的を定め、決断していくべきと彼は考えています。

オンライン授業などは、今だけの対策ではなく、学校再開後も更にオンラインが活用されることは明確と言えます。Tele-medicineの例をあげても、Covid-19発生前は、法律が正しく制定されていないという理由で実施が遅れていましたが、発生後に実施が始まった事で、今後もその活用が期待できます。また働き方に関しても、リモートの機能性を学んだ企業は、 Covid-19収束後も引き続きテレワークの選択肢を残すだろうとNicholasは考えています。
 

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