2022.11.02
Blog|mctの機会探索(4) アノマリーに着目した3つのタイプの機会探索ユーザーリサーチ
mctでは新規事業開発部門や研究開発部門に向けて、デザイン思考を用いて事業テーマの探索からビジネス機会・課題の発見、ビジネスアイデア検証まで、ビジネスデザインを支援しています。(詳しくはこちら)
今回はビジネスデザインにおける「機会探索」というテーマで、基本的な考え方からmctの具体的なアプローチ方法までご紹介していきます。
第4回は「アノマリーに着目した3つのタイプの機会探索ユーザーリサーチ」です。
前回の記事では「自分たちの市場や問題空間を広くカバーすること」の重要性をお伝えしましたが、今回は自分たちの市場や問題空間の枠自体を見直しリフレームするために意味のあるアノマリーを探索するためのユーザーリサーチの手法や考え方についてお伝えします。
改めてアノマリーとは「ある法則・理論からみて異常であったり、説明できない事象や個体等」を指す言葉で、既存の枠組みでは説明できないが意味のある重要なアノマリーの発見は新しい枠組みを考える(=リフレーム)ための起点になるというのがその前提にある考え方です。そしてリサーチを通じてそのような新たな気づきを得るためには、普段とやり方を変えることが有効です。今回はユーザーリサーチを実施する対象を変えて、既存のターゲットユーザー以外の次の3つのユーザーを対象としたリサーチについてをご紹介します。
①リードユーザー
②エクストリームユーザー
③想定外のユーザー
①リードユーザーリサーチ
リードユーザーとは、トレンドの先端に位置し、先進性/高便益期待といった特徴を持つユーザーです。リードユーザーリサーチを行う際には、自社や業界のトレンドを特定しその先端や先進類似市場にいると思われるユーザーを探し、リサーチの対象とします。トレンドの延長上にある強いニーズやリードユーザーならではの先進的な問題解決方法などを探索してそこに意味を見出し、既存事業に応用することで製品改良や新製品開発に役立てます。この手法の特徴は、先にトレンドを特定して探索範囲を絞り込むことで「意味のあるアノマリーに出会う確率を高めている」ことです。
②エクストリームユーザーリサーチ
エクストリームユーザーとは、メインストリームの周縁にいる極端なキャラクターを持つ人々のことを指します。リードユーザーリサーチでは探索範囲を特定したトレンドに限定していましたが、エクストリームユーザリサーチでは限定せずに年齢、使用量、使用環境などいくつかの切り口で軸を想定してその両極にいるユーザー想定してリサーチ対象を選定、探索します。次のトレンドになりそうなインサイトを見出せた場合はリードユーザーと同じような活用が期待でき、それ以外のインサイトも既存のターゲットユーザーと対比させて既存の市場の理解を深めることなどに活用できます。この手法の特徴は、軸の設定のバリエーションによって「多くのアノマリーを収集する」ことです。トレンドを絞り込まない分、アノマリーに出会う数は増えますが一方で意味を見出せないことも多くなってしまいます。
③想定外のユーザーリサーチ
想定外のユーザーとは、企業側が製品に意図した活用方法や文脈から外れてユーザー側で新たな解釈している想定外の領域に存在するユーザーのことを指します。リードユーザーやエクストリームユーザーリサーチでは事前に探索するための候補を想定していましたが、そういった想定に当てはまらないユーザーです。
当てはまる事例としては工業用のマスキングテープをおしゃれな雑貨として売り出してヒットした「mt」があります。誕生きっかけは、工場見学に訪れた想定外の3名の女性ユーザーです。https://media.lifenet-seimei.co.jp/2014/12/05/1581/
想定外を見つける時には、設定した目的や軸からはずれたユーザーにも意味があるということを理解し、想定外に出会った際にまずは受け入れ自分たちにとってどんな意味があるのかを同時に分析して目的や事前の想定を変化させていくということが必要です。この手法の特徴は、事前に想定した目的や軸自体を柔軟に変化させながら「アノマリーに想定外の意味を見出そうとすること」です。リサーチをする側の想像力や柔軟性が特に必要とされその出会いは稀ですが、想定外の意味を見出せると製品に新たな意味を与えられ大きなインパクトが期待できます。
まとめ
今回ご紹介した3つのアプローチの違いはトレンドやエクストリームの軸といった事前の想定の有無にあり、いずれも探索方法に大きな違いはなく保有データやSNSなど対象とします。より身近な対象として自社の社員がユーザーの場合はそれも対象で、アウトドアブランドなどには企業内リードユーザーという考え方があります。
探索をうまく進めるためのコツとしては、事前に想定したトレンドやエクストリームの軸はあくまでも仮説であり変更の余地があるという意識を持ち、想定から外れる対象を取り入れるために意識的に遊びを計画に組み込むことが挙げられます。また、リサーチ実施の有無にかかわらず日々の活動の中でのユーザーとの出会いも機会と捉えると、このような3つのタイプについて探索し思考することは日々出会うユーザーが発するシグナルに気づくきやすくするための準備ともいえます。
次回、第5回ではエクストリームユーザーの具体的な軸の設定と実施手法の紹介として高齢者や障害者などをデザインプロセスに巻き込む「インクルーシブデザイン」についてお伝えします。
連載コンテンツ
第1回:イノベーションの兆しを捉えるアプローチとマインドセット
第2回:アノマリードリブンで兆しを発掘する
第3回:アノマリーに潜む機会に気づくための「多様なメガネ」
第4回:アノマリーに着目した3つのタイプの機会探索ユーザーリサーチ
第5回:機会探索ユーザーリサーチとしてのインクルーシブデザイン活用
第6回:ポジティブな外れ値に学ぶ問題解決アプローチ「ポジティブデビアンス」
mctについて
mctでは、機会探索から、市場や顧客の理解、コンセプトの創出、ビジネスデザインまで、インサイトを共有しながら事業開発/デジタル変革を支援しています。
具体的には、伴走型でビジネスアイデアを磨いたり、企業の事業創出プロセスを整備したり、事業創出を担う人材の育成も支援したり、社会課題解決を目指す共創エコシステムの運営を支援したり、ビジネスデザインについて幅広く支援していますので、少しでも興味があればウェブサイトを覗いてみてください。https://mctinc.jp/service-bddx
-
Shinpei Tsurumori
株式会社mct エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト
- 組織デザイン
- CX・顧客経験
- インサイト
- グローバル
- ビジネスデザイン
- イノベーション
- デザイン思考
- 働き方
- イベント告知
- コ・クリエーション
- チームワーク
- セミナー
- 働き方改革
- ZMET
- ヘルスケア
- DMN
- covid19
- エクスペリエンスデザイン
- エスノグラフィックリサーチ
- デザイン
- 顧客中心
- futuredesign
- リモートコラボレーション
- 事業開発
- ソリューション
- 患者理解
- 製薬
- サスティナビリティ
- ワークショップ
- 患者中心
- PPI
- PSP
- SDM
- ペイシェント・セントリシティ
- オンラインワークショップ
- ギャップファインディング
- 従業員体験
- 技術開発
- 101_design_methods
- signal
- カスタマージャーニー
- エンゲージメントデザイン
- デザインリサーチ
- メソッド
- サービスデザイン
- シグナル
- トレーニング
- 機会探索
- PlayfulNetwork
- マインドセット
- COM-B
- SDGs
- サーキュラーエコノミー
- フューチャー思考
- CSA Research
- mcTV
- フューチャーデザイン
- プレイフル
- 製品・サービス開発
- フィールドワーク
- ブランディング
- メタファー
- リフレーム
- 事例
- Forrester research
- エフェクチュエーション
- カルチャーコード
- クルースキャン
- シグナル探索
- ビジネスデザインプログラム
- フレームワーク
- プロトタイピング
- CX4DX
- CultureMeetup
- PRO
- leadership
- mct labo
- デザインスプリント
- トレンドリサーチ
- ビジネスモデル
- 映像編集
- CXマネジメント
- MOT
- NELIS
- Remo
- インタラクションマップ
- デジタルエクスペリエンス
- デジタルツール
- バイアス
- ファシリテーション
- 学習
- Employeeexperience
- LGBT
- wasedaneo
- お知らせ
- インプロ
- セルフドキュメンタリー
- デザインシステム
- デザイントレンド
- デザインマネジメント
- ベンチマークリサーチ
- リーンスタートアップ
- 創造性開発
- 学習体験デザイン
- 市場調査
- 用途開発
- 経営戦略
- 資本提携