2023.03.02
Blog|ベルガンティによる「デザイン経営」のワークショップ①~「デザイン経営ワークショップ」の企画が生まれた背景~
5月17-18日、ベルガンティの「デザイン経営」ワークショップ実施
この5月17-18日、ロベルト・ベルガンティがmct主催「デザイン経営」のワークショップで講師をつとめます。スタイリングやUXとしてのデザイン、デザイン思考、意味のイノベーション、テクノロジー・エピファニー(彼の著作『デザイン・ドリブン・イノベーション』で説明している、意味のイノベーションに先端テクノロジーが融合したエリアです)が、どのようにビジネスをイノベーションするか?これがどのように組織変革に繋がるか?
そして、これが経営トップにどう価値を提示するか?がテーマになります。
そして、2日目の午後は、参加者の方と個別面談の時間を取り、「これからやるべきこと」を設定していく、というプログラムです。
ロベルト・ベルガンティは『デザイン・ドリブン・イノベーション』(クロスメディアパブリッシング)と『突破するデザイン』(日経BP)において、意味のイノベーションを説いたストックホルム経済大学の教授です。私は『突破するデザイン』の日本語版を監修し、その後、意味のイノベーションのエバンジェリストとして活動してきました。
その一つとしてmctが企画するベルガンティによる「意味のイノベーションのワークショップ」にも関わってきました。
そこで、ベルガンティの紹介やこのワークショップの趣旨を2回に渡って書いていきます。
今、ベルガンティは何をしているのか?
ベルガンティは上記の本を書いた当時、ミラノ工科大学で経営学を教えていました。経営工学の学部のなかでは一番、デザイン学部と「通じていた」先生です。今も、ビジネスに向けたデザインのあり方を探る研究・実践グループの重要な創設メンバーです。
数年前から拠点をストックホルムにおいています。イノベーションやリーダーシップがメインです。並行して毎夏、ハーバードビジネススクールで建築学部との共同集中セミナーにおいて、デザインの理論と実践を教えています。また、多くの行政や民間企業のプロジェクトに直接・間接的に関与しており、その領域の幅は実に広いです(添付のWS企画書に記載されている彼がアドバイザーをしている組織名をご覧ください)。つまり企業トップ層の考え方とデザインの活用の仕方の両方を熟知する人です。
今回の企画が生まれた背景
今回の「デザイン経営WS」はmctの企画です。ご存知のように、2018年から特許庁と経済産業省がデザイン経営の普及を図ってきました。デザインを使って組織をマネジメントする。しかしながら、どこの企業でもデザインが従来型のスタイルやUXを担当するデザイン部署以外にはなかなか広がらない。特に、経営陣の方たちのデザインへの理解不足がネックになっている。これが実態です。
他方、前述したようにベルガンティは数年前からハーバードビジネススクールにおいて、デザインをより総合的・実践的に使う授業を行ってきました。およそ2週間の集中コースです。グループによるアクティブラーニングが主体です。実際のデザインの経験がないビジネスパーソンたちが、手を動かす従来型のデザイナーの手を借りながら、現実のクライアントの課題のために何らかのプロダクトのコンセプトを作っていきます。その間、新しい刺激を与えてくれるクリエイターから直接話を聞く機会も多数あります。このプログラムの成果に確信をもったベルガンティから「このようなタイプのワークショップへの需要が日本でないだろうか?」と私は打診されていました。
これらの2つの方向が交差してできたのが、今回の企画です。十分に消化されているとは言い切れない日本企業のデザイン経営の状況にメスを入れようと考えたのです。
欧州の学生たちがベルガンティのレクチャーで大ファンになっているのを実際に見てきました。日本でも、これまで2回、mctの「意味のイノベーションワークショップ」を経験し、ベルガンティの放つ深い言葉や姿勢に魅了される参加者の表情をみてきました。
そこで、私はこの「デザイン経営」においても、日本のビジネスパーソンの内に大きな変化が起きうると確信したので、ベルガンティに提案をしました。そうしたら、前掲したようなチャートが送られてきたのです。
「特に、ドイツのボッシュのデザイン経営に関するコンサルタント経験が活用できそうだ」と説明を添えて・・・(この理由は2回目のブログでお話します)。
これから数か月に渡って何をするのか?
5月に今回の企画、マネージャー/リーダー層が経営陣に説得できるデザイン経営のあり方を学んでいただきます。そして、8月には経営陣向けに同様のワークショップを行い、11月にはイタリアのミラノとヴェネツィアにおいて、経営層に背中を押されたマネージャー/リーダー層が意味を見いだすリサーチを実施する予定です。即ち、ひとつのサイクルを作ることによって、企業組織のいくつかの部署の人たちの間に共通言語を作っていきます。これによって、事業のイノベーション・組織変革・経営の価値向上の三位一体を実現していきます。(8月と11月のイベントは5月末に確定予定です)。
例えば、製造業でデザイン部署が既にある組織としましょう。ここにいるデザイナーがプロダクトのデザイン以上のことに活動の枠を拡大しようとしても、超えた領域では「よそのもの」になりがちです。意匠としてのデザインから、プロセスとしてのデザインや戦略としてのデザインに至るには、さまざまな障壁が控えているわけです。
今回のワークショップは3名参加/1社です。ですから、デザイナー以外に2人の参加が可能です。そうすると、下記の部署が候補にあがるかもしれません。
人事部門
マーケティング部門
商品開発部門
デジタル部門
経営企画部門
研究開発部門 等々
言うまでもなく、会社によってセクションの担当業務や性格は違いますが、上記のような組み合わせが、デザインの考え方や姿勢が組織のなかに広がる契機になります。
もちろんデザイン部門が現時点では存在しない企業の皆さんもデザインを使って組織をどうマネジメントしていくか?を検討していく上で、他部門に声をかけて参加されることをおススメします。
そもそも、デザインを使った目指すべき組織とは何なのか?
今更ですが、デザイン経営、即ちデザインマネジメントが求められるのはなぜでしょうか?かつて、デザインマネジメントとは製品デザインのプロセスをいかにマネジメントするかがメインでした。デザイン機能のマネジメントです。しかし、今の時代の経営でデザインに課せられた大きなテーマは、それが組織のマネジメントに使われることです。これがデザイン・リーダーシップです。
状況が頻繁にものすごいスピードで変わりゆくなかで、常にグレーゾーンのなかで判断を下していかないといけないのが普通です。機械的で安定的な構造体のなかで、それぞれが明確な役割をこなす従来の管理手法では立ち行かないことが多くなっています。よって、いわばグレーゾーンのマネジメントとしてデザインが求められています。
さらに具体的に言うならば、組織がプロジェクトベースに変貌する、あるいはメンバーの
コラボレーションが局面ごとに多様に展開するような必要に迫られている時、デザインの考え方やデザイナーの態度がマッチします。設計図やフローチャートを書かないと動けない・・・そういう集団では、変化の波を乗り切ることができません。
それではデザインの考え方とは何なのか?今回のワークショップにおいては、それが冒頭に紹介したいくつかの代表的なデザインアプローチになります。即ち、「スタイリングやUXとしてのデザイン」、「デザイン思考」、「意味のイノベーション」、「テクノロジー・エピファニー」です。これらが示す方向性について、次回に説明しましょう。
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安西 洋之
モバイルクルーズ株式会社/De-Tales ltd. ミラノ/東京。 最新著書『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』(共著)『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?』、監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。 訳にエツィオ・マンズィーニ『日々の政治』
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