2025.08.22
Blog|DMN2025 「満員電車」が教えてくれる、リーダーシップの本質

乗ろうとした電車が満員だったとき、あなたはどのように思いますか?
誰もが嫌だと感じることでしょう。しかし、よく考えてみてください。
実はあなた自身も満員電車を引き起こしている原因の一人ですよね?
この視点の転換と同じように、企業のリーダーシップも考える必要があります。
リーダーシップとは特定の誰かが発揮するものではありません。
企業の課題に対して誰かに期待したり非難したりするのではなく、
管理職であろうと、中堅メンバーであろうと、新人メンバーであろうと、
誰もがその場を構成する一員として「何ができるか」を考える組織を作る。
それがシェアドリーダーシップ(全員発揮のリーダーシップ)という考え方です。
こんにちは! mctの下野です。
2025年8月8日、DMN2025にて「DMN2025 | Shared Leadership / 自分らしいリーダーシップを発見し、組織を巻き込む」のワークショップを開催しました。講師は立教大学の舘野泰一氏です。
2025年8月8日、DMN2025にて「DMN2025 | Shared Leadership / 自分らしいリーダーシップを発見し、組織を巻き込む」のワークショップを開催しました。講師は立教大学の舘野泰一氏です。

講師紹介
舘野泰一氏(以降、館野先生) / 立教大学経営学部准教授 ,株式会社MIMIGURI リサーチャー
1983年生まれ。立教大学経営学部 准教授。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員、立教大学経営学部助教を経て、現職。博士(学際情報学)。大学と企業を架橋した人材の育成に関する研究をしている。現在は、リーダーシップ教育の実践・研究をおこなっている。
目次 「全員発揮のリーダーシップ」とは? 全員発揮のリーダーシップを実現するために必要なこと 「自分らしいリーダーシップ」を発揮するために大切なこと 理想のチームが映し出す“本当の自分” まとめ:全員発揮のリーダーシップを実践するために |
「全員発揮のリーダーシップ」とは?
「リーダーシップ」という言葉を聞いて、「周りを引っ張る」「決断力」「責任感」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。もちろん、これらもリーダーシップの大切な側面ですが、それだけでは視野が狭くなってしまう可能性があります。

最近の考え方では、リーダーシップは決して「リーダーという役職の人だけが発揮するもの」ではありません。むしろ、組織にいる一人ひとりが自分の持ち場でリーダーシップを発揮すること、これが「全員発揮のリーダーシップ」と呼ばれるものです。学術的には「シェアド・リーダーシップ」とも言われます。
館野先生は、リーダーシップが発揮できているかどうかは、自分の後ろに喜んでついてきてくれる人がいるかどうかと表現していました。
現在、多くの組織では、リーダーが「管理職である自分が何とかしなくては」と一人で抱え込む一方で、メンバーは「リーダーではないから決まった仕事だけをこなしておこう」と受け身になってしまう状況が見られます。
現在、多くの組織では、リーダーが「管理職である自分が何とかしなくては」と一人で抱え込む一方で、メンバーは「リーダーではないから決まった仕事だけをこなしておこう」と受け身になってしまう状況が見られます。
このような状況の根底には、お互いの間に「見えない線」を引いてしまい、「自分ではなく、相手が変わってほしい」と願ってしまう気持ちが隠れている、と館野先生は指摘します。リーダーシップは「リーダー(管理職)だけが発揮するもの」だと思い込んでしまうと、職場の問題も「リーダーの責任で、自分には関係ない」と感じてしまいがちです。
現代は予測が難しく変化の激しい時代です。そのため、トップのリーダー一人で全ての答えを見つけ、決断し、引っ張っていくのは非常に困難です。リーダー一人で組織全体を見ようとすると、どうしても「死角」が生まれてしまいます。例えば、新人は職場の雰囲気の変化に敏感だけれど、変える権限がない。一方、公式のリーダーは権限はあるけれど、現場で何が起きているか見えにくいことがあります。中堅メンバーは両方の視点をつなぐ役割を果たすことができます。
つまり、一人の「スーパーリーダー」を目指すのではなく、多様な視点と実行力を持つ「スーパーチーム」を目指すことが、組織をより良くする鍵になります。
全員発揮のリーダーシップを実現するために必要なこと
それでは、全員発揮のリーダーシップを実現するために、組織としてはどのような状態や行動が有効なのでしょうか?メンバーが自発的にリーダーシップを発揮していくためには、3つの重要なポイントがあります。

1. 率先垂範(そっせんすいはん)
2. 同僚支援・環境整備(どうりょうしえん・かんきょうせいび)
周りのメンバーが生き生きと働き、力を発揮できる環境を整えることです。具体的には、メンバーの強みが活かせる役割を与えたり、会議で意見が出やすい雰囲気を作ったりすることなどが挙げられます。
3. 目標設定・共有(もくひょうせってい・きょうゆう)
登るべき「山」(ビジョン)を明確に定め、周りを巻き込むことです。これは、単に目標を伝えるだけでなく、メンバーそれぞれが「なぜこの目標が必要なのか」「自分に何ができるか」を考えられるように、対話を通じてイメージをすり合わせることが重要です。
特に「目標設定・共有」は非常に重要なアクションとなります。チームが進むべき方向性(ビジョン)を明確にし、メンバー全員で共有することが重要です。目標が曖昧なままでは、メンバーがそれぞれ勝手に動き出し、チームがバラバラになってしまう可能性があります。
これらの内容は、一方的に伝えるだけでなく、「やり取り」を通じて対話することが重要です。メンバーからの意見や疑問を聞き、それに応えることで、ビジョンへの関与感が高まり、受け入れられやすくなります。
「自分らしいリーダーシップ」を発揮するために大切なこと
では、組織の一員として、自分らしいリーダーシップを発揮するにはどうすれば良いのでしょうか?
その鍵は「組織の中であなたはどのような位置づけ・役割・影響を与えているのか」を自己認識することにあります。特に「周りの人からの見られ方(外面的自己認識)」を理解することが重要です。

研究によると、多くの人は自分が自己認識できていると思いがちですが、実際に自己認識が高い人は10~15%程度だと言われています。また、自分の立場や役職が変わると、周りからの見え方も知らぬ間に変わってしまうことがあります。
自分では気づいていないけれど、周りの人たちは気づいているあなたの特徴(「ジョハリの窓」という考え方でいう「盲点の窓」)を理解することが、他者に対して適切に影響力を発揮するために非常に重要になります。自分の「盲点の窓」を埋め、自己認識を高めるためには、「他者の力」が不可欠です。
自分では気づいていないけれど、周りの人たちは気づいているあなたの特徴(「ジョハリの窓」という考え方でいう「盲点の窓」)を理解することが、他者に対して適切に影響力を発揮するために非常に重要になります。自分の「盲点の窓」を埋め、自己認識を高めるためには、「他者の力」が不可欠です。
フィードバックは「怖い」「恥ずかしい」「耳が痛い」など、抵抗がある方も多いと思います。しかし、それを気軽にできる環境を自ら作っていくことが、リーダーシップを育みやすい職場につながります。
このとき、あくまでも「愛のある批評家」になることが大切です。これは、相手への愛情や配慮を持ちつつも、改善点など、時に耳の痛いこともきちんと伝える姿勢のことです。なれ合いの関係性になってしまうと組織にネガティブな影響を与えます。
理想のチームが映し出す“本当の自分”
グループワークでは、館野先生が考案した独自のアプローチを使い、参加者それぞれが自分の強みや価値観をより深く理解するためのアクティビティを行いました。テーマは、単なる自己分析ではなく、「他者を通じて自分を知る」こと。先生から提示された問いは、「もしあなたが、もっとも輝き、成果を最大化できる理想の4人チームを自由につくれるとしたら──あなた以外の3人はどんな人ですか?」というものです。

面白いのは、このチームメンバーを通して「自分がどんな人間か」を自分自身が答えるのではなく、書き出したチームメンバー像を通じて同じグループのメンバーが他己分析をしていくことで、他の人からの自分自身の見られ方が浮き彫りになることです。
このアクティビティを通じて、参加者は他者の視点や意見を受け取りながら、自分では気づかなかった特性や、周囲から見た「自分らしさ」を知るきっかけにもなりました。
まとめ:全員発揮のリーダーシップを実践するために
館野先生の「満員電車」の例は、私たち自身も現状を作っている一員であることを気づかせてくれました。「誰かが変わってほしい」ではなく、「自分から動く」ことの大切さを実感しました。このことから、リーダーシップは「特別な人だけのもの」ではないということを学びました。組織にいる一人ひとりが、自分の立場でリーダーシップを発揮できる、そして発揮すべきだということが分かりました。
みんなで力を合わせた「スーパーチーム」を目指すために、まずは自分を知り、相手を理解し、お互いにフィードバックし合える関係づくり。これらすべてが、より良い職場をつくるために必要なことです。人と組織は同時に開発されなければ機能しません。組織の変化は時間がかかるものですが、焦らず、小さなことから一つずつ行動を始めていくことが大切です。
ご自身の職場で「全員発揮のリーダーシップ」の実現に向けて、今日学んだことを少しでも実践するきっかけになれば幸いです。
みんなで力を合わせた「スーパーチーム」を目指すために、まずは自分を知り、相手を理解し、お互いにフィードバックし合える関係づくり。これらすべてが、より良い職場をつくるために必要なことです。人と組織は同時に開発されなければ機能しません。組織の変化は時間がかかるものですが、焦らず、小さなことから一つずつ行動を始めていくことが大切です。
ご自身の職場で「全員発揮のリーダーシップ」の実現に向けて、今日学んだことを少しでも実践するきっかけになれば幸いです。
DMN2025について
DMNとは、ビジネスデザイン、イノベーション、DXを学び、組織に改革を起こす人材育成のための年会費制プログラムです。参加者同士の議論を通じて学びを深める参加型のスタイルが大きな特徴です。
変化が激しく、将来の予測が困難な時代。だからこそ、未知の未来を見通し、新たなビジネスを創出し、推進できるマインドセットを持つ人材が求められています。持続的な成長を支えるイノベーション・デザイン・DX人材育成のための選択肢としていかがでしょうか?お試し体験やオンラインモニターなども募集していますのでお気軽にお問い合わせください。
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