2025.08.18
Blog|DMN Drinks デザイン人材育成の現在地 Vol.2

こんにちは! mctの下野です。
2025年7月30日、DMN2025にて「DMN Drinks 〜デザイン人材育成の現在地〜」を開催しました。
「DMN Drinks」は、様々な企業におけるデザイン人材育成の取り組みを紹介するトークイベントであり、組織へのデザイン思考の浸透に取り組む方々や、次世代のリーダー育成に携わる方々の交流の場となることを目的としています。
Vol.2となる今回は、グローバル企業である武田薬品工業の藤本佐百合氏と、女性向けヘルスケアサービス「ルナルナ」を提供するエムティーアイの石井宏氏をゲストに迎えました。
Vol.2となる今回は、グローバル企業である武田薬品工業の藤本佐百合氏と、女性向けヘルスケアサービス「ルナルナ」を提供するエムティーアイの石井宏氏をゲストに迎えました。
ゲストプロフィール

藤本 佐百合氏(以降、藤本さん)
武田薬品工業株式会社 グローバルデータ・デジタル&テクノロジー部
デジタルプロダクトエクセレンス Head of XD Labs - Tokyo
武田薬品工業株式会社 グローバルデータ・デジタル&テクノロジー部
デジタルプロダクトエクセレンス Head of XD Labs - Tokyo
グローバルIT部門のデザイン組織「XD Labs - Tokyo」の立ち上げに参画。デザイン文化の啓蒙、デジタルツールや新しい働き方の推進、スキルビルディングなどを通じて、社内のエクスペリエンスデザインを支援。非デザイン人材への育成や、グローバルデザインネットワーク構築にも注力している。

石井 宏氏(以降、石井さん)
エムティーアイ DXソリューション事業部 DXラボグループ グループ長
NTTデータにて、エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、人間中心デザインやAgileに出会い、クライアントの新規事業・サービスの企画~開発まで一気通貫でご支援を実施。現在はエムティーアイにて、自社で培ってきたUXやAgileの知見をもとに、クライアント企業さまのDX推進をご支援している。
エムティーアイ DXソリューション事業部 DXラボグループ グループ長
NTTデータにて、エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、人間中心デザインやAgileに出会い、クライアントの新規事業・サービスの企画~開発まで一気通貫でご支援を実施。現在はエムティーアイにて、自社で培ってきたUXやAgileの知見をもとに、クライアント企業さまのDX推進をご支援している。
1. 武田薬品のデザイン組織XD Labsの人材育成 「デザインに興味を持つ協力者の増やし方」 2. エムティーアイDXラボの人材育成 「人が当たり前のように学ぶ組織の作り方」 3. 懇親会 |
武田薬品のデザイン組織XD Labsの人材育成
「デザインに興味を持つ協力者の増やし方」

藤本さんからは、武田薬品工業におけるデザイン組織「XD Labs」の立ち上げ背景と活動内容について紹介がありました。XD Labsは2年前に東京で設立され、ケンブリッジ(US)やチューリヒ(スイス)にも拠点を持ち、メキシコ、インド、中国への展開も進められているグローバルな組織です。
武田薬品工業では、大規模な組織改革が進む中で社員の変化対応力が求められ、部門間のコラボレーションが非常に重要になっているそうです。XD Labsは、これまでのサイロ化を解消し、コラボレーションを促進する場として設立されました。
藤本さんは、「デザイナーを育てる」というよりも、「デザインを共通言語にして、会社に広め、デザインを理解し、デザイナーのように働くクリエイティブマインドセットをどう会社に浸透させるか」に注力していると強調しました。具体的な取り組みとして、以下の点が挙げられました。
非デザイナー向け社内ワークショップとデザインイベントの開催
去年はデザイン思考ワークショップを多数開催し、ビジネスファンクションやコーポレートファンクションを含む全社員を対象に実施しました。これにより、デザインに興味を持つ「協力者」を見つけることができたといいます。外部の著名人を招いたデザインイベントも開催し、インスピレーションを与え、ワークショップと連携させることで協力者を増やしています。
社内兼務システムの活用
社員の20%の時間を異なる部署での兼務に充てられるシステムを活用し、XD Labsのメンバーとしてワークショップのファシリテーションやデザインの深化に関わることを推進しています。これにより、兼務者はデザインの能力を向上させるとともに、彼らが自身の部署の課題にデザイン思考を適用することで、部署のメンバーが「自分ごと」として積極的に取り組むようになり、非常にうまく機能しているとのことです。去年は8名、現在は約4名が兼務しており、工場や医薬品資材部門など、多様なバックグラウンドを持つメンバーが参加しています。
AIやデジタルツールのワークショップ形式トレーニング企画
テクノロジーとビジネスの間に存在するギャップに着目し、サービスデザイナーがAIコンサル出身である強みを活かし、体験を重視したAI活用トレーニングを積極的に開発・実施しています。

参加者からの質問の様子
藤本さんは、デザインを広める上で重要なのは、「正解のない問いを見つける力」「仮説を持って解決策を出し検証する力」、そして「コラボレーションする力」であると述べました。これらの力を社内の非デザイナーにも広めることで、多くの協力者が見つかり、仕事が降ってくる嬉しい状況になっているとのことです。
組織立ち上げ当初は「デザインって何?」というような疑問の声も多かったそうで、デザイン思考を推進する際には、ビジネスとの繋がりを意識し、システム思考などを組み合わせ、相手が求めるアウトプットに柔軟に対応することで、期待値に応え、リピートに繋げていると説明しました。
参加者からはKGI・KPI設定についての質問があがりました。KPIとして、プロジェクト数、プロジェクトごとの評価、参加人数、バリューチェーン全体への貢献度、そしてリピーターの状況などを追跡し、グローバルで毎月上層部にレポートしているとのことです。
エムティーアイDXラボの人材育成
「人が当たり前のように学ぶ組織の作り方」
石井さんからは、「いかにUX人材やチームを作ってきたか?手ごたえも反省も」というテーマで、過去5年間での人材育成や組織運営の試行錯誤を共有していただきました。自身の経験を振り返り、前半(テクノロジー本部プロジェクト推進部時代)と後半(現在のDXソリューション事業部)のパートに大きく分かれています。
石井さんはこれまでの経験を通じて、前後半の人材育成の違いを「必死に石臼を回していた前半」と「勝手に回る風車を作った後半」と表現しました。
「できる人材をどう作ったか」の人材育成(前半)
転職後は「できる人材をどう作ったか」に焦点を当て、個人を対象に自身の経験を共有することで人材育成を行っていました。具体的には「多様な業務経験・知識を身につけさせる」「高頻度の振り返りを強制できる場を作る」「チームアクションとしての学習を促す」という3つの主軸に取り組んできたと説明しました。
多様な業務経験・知識: 社内外のプロジェクトにメンバーと一緒に入り、彼らの行動を把握しフィードバックを行うことで、多様な経験を積ませています。また、社内外の質の高い学習の場に参加を促し、外部との繋がりを通じて学習を深める機会を提供しています。

「できる人材をどう作ったか」の人材育成(前半)
転職後は「できる人材をどう作ったか」に焦点を当て、個人を対象に自身の経験を共有することで人材育成を行っていました。具体的には「多様な業務経験・知識を身につけさせる」「高頻度の振り返りを強制できる場を作る」「チームアクションとしての学習を促す」という3つの主軸に取り組んできたと説明しました。
多様な業務経験・知識: 社内外のプロジェクトにメンバーと一緒に入り、彼らの行動を把握しフィードバックを行うことで、多様な経験を積ませています。また、社内外の質の高い学習の場に参加を促し、外部との繋がりを通じて学習を深める機会を提供しています。
高頻度の振り返り: 日報での日次振り返り、週次・月次の振り返り、さらにはプロジェクト中の週次振り返りなどを徹底して実施しました。特に、「成長するプロジェクト計画」という手法では、タスクごとの工夫やチャレンジを事前に記述させ、週終わりにその達成度や学びを振り返らせることで、高頻度で内省を促したと述べました。
チーム学習: 毎週「ナレッジディスカッション」の会を開催し、案件のまとめや疑問点の言語化・議論を通じて、ナレッジ共有を促進しました。これにより、「経験」「内省」「教訓」の学習サイクルを高速で回し、成長を促しました。
これらの取り組みを成功させた背景には、初期にメンバーとの間で「学習契約」が結べたことが大きいと石井さんは考えています。メンバーが「学びたい」という意欲を示し、自身のキャリア設計と紐付けられたことで、学習サイクルがうまく回ったとのことです。
チーム学習: 毎週「ナレッジディスカッション」の会を開催し、案件のまとめや疑問点の言語化・議論を通じて、ナレッジ共有を促進しました。これにより、「経験」「内省」「教訓」の学習サイクルを高速で回し、成長を促しました。
これらの取り組みを成功させた背景には、初期にメンバーとの間で「学習契約」が結べたことが大きいと石井さんは考えています。メンバーが「学びたい」という意欲を示し、自身のキャリア設計と紐付けられたことで、学習サイクルがうまく回ったとのことです。

「人が当たり前のように学ぶ組織をどう作ってきたか」の人材育成(後半)
しかし、組織の規模が大きくなるにつれて、従来のやり方が通用しなくなりました。人数が4名から18名に増え、UXデザインだけでなくプロダクトマネジメントなどのプロフェッショナルロールも多様化したことで、石井さん一人では全てを教えることが困難になったといいます。この状況に対し、石井さんは様々な試行錯誤を行い、現在の組織では、学習モチベーション、学習行動量、成長スピードが非常に高い状態にあると実感しているとのことです。特に効果があった施策として、以下の点が挙げられました。
学習組織ミッションの明文化: 研修費用やR&D時間を組織として認め、成長を評価する仕組みやスキルマップの棚卸しを徹底しました。
経験学習のフィードバック: 「学習イノベーション」に関する講座をリーダー層に導入し、「育てる側」も「育てられる側」も成長の基礎理論を知ることで共通の概念を構築しました。上司だけでなく部下にも1on1をインストールすることで効果が出始めました。
リーダー層への働きかけ: 石井さん自身が学習の重要性や会社の状況について発信することで、リーダー層が人材育成や組織開発に興味を持ち、共通言語で動けるように促しました。
ビジョンの表明と価値観の共有: 成功だけでなく、そこに「みんなの成長が伴っている」ことを重視する自身の価値観を繰り返し表明することで、それに共鳴する仲間が増えていったと語りました。
上司の学び行動の影響: 石井さんが自ら読んだ記事や参加した研修の内容を積極的に共有することで、意図せずともメンバーの学習意欲や学習時間向上に繋がったと、メンバーからのフィードバックを通じて気づいたとのことです。
現場メンバー同士の熱量: 学んでいる人が隣にいることや、スキルマップを通じて自身の成長を可視化できる仕組みが、メンバー間の対話や活動を活発化させ、互いに刺激し合う関係性を構築しているとのことです。
しかし、組織の規模が大きくなるにつれて、従来のやり方が通用しなくなりました。人数が4名から18名に増え、UXデザインだけでなくプロダクトマネジメントなどのプロフェッショナルロールも多様化したことで、石井さん一人では全てを教えることが困難になったといいます。この状況に対し、石井さんは様々な試行錯誤を行い、現在の組織では、学習モチベーション、学習行動量、成長スピードが非常に高い状態にあると実感しているとのことです。特に効果があった施策として、以下の点が挙げられました。
学習組織ミッションの明文化: 研修費用やR&D時間を組織として認め、成長を評価する仕組みやスキルマップの棚卸しを徹底しました。
経験学習のフィードバック: 「学習イノベーション」に関する講座をリーダー層に導入し、「育てる側」も「育てられる側」も成長の基礎理論を知ることで共通の概念を構築しました。上司だけでなく部下にも1on1をインストールすることで効果が出始めました。
リーダー層への働きかけ: 石井さん自身が学習の重要性や会社の状況について発信することで、リーダー層が人材育成や組織開発に興味を持ち、共通言語で動けるように促しました。
ビジョンの表明と価値観の共有: 成功だけでなく、そこに「みんなの成長が伴っている」ことを重視する自身の価値観を繰り返し表明することで、それに共鳴する仲間が増えていったと語りました。
上司の学び行動の影響: 石井さんが自ら読んだ記事や参加した研修の内容を積極的に共有することで、意図せずともメンバーの学習意欲や学習時間向上に繋がったと、メンバーからのフィードバックを通じて気づいたとのことです。
現場メンバー同士の熱量: 学んでいる人が隣にいることや、スキルマップを通じて自身の成長を可視化できる仕組みが、メンバー間の対話や活動を活発化させ、互いに刺激し合う関係性を構築しているとのことです。
懇親会
トークセッション終了後は、参加者同士の交流を深める懇親会を開催しました。会場には軽食とドリンクが用意され、和やかな雰囲気の中で活発な議論が交わされました。参加者は製薬、IT、金融、メーカーなど様々な業界から集まっており、それぞれの業界特有の課題や事例が共有される貴重な機会となりました。
参加者の声をいくつかご紹介します
・実際、企業の中で奮闘されてる内容は中々聞く機会が無いので、大変参考になりました。また、交流会の中でも意見交換する事で気付きもあり、俯瞰につながりました。
・自社での活動と同じ考え、悩みどころがあるのがわかった。また取り組みの工夫を詳しく聞くことができた。
今回のイベントを通じて、デザイン人材育成という共通課題を持つ企業同士の継続的な交流の重要性が改めて浮き彫りになり、DMN Drinksがそうした場としての役割を果たしていく可能性を感じる機会となりました。
参加者の声をいくつかご紹介します
・実際、企業の中で奮闘されてる内容は中々聞く機会が無いので、大変参考になりました。また、交流会の中でも意見交換する事で気付きもあり、俯瞰につながりました。
・自社での活動と同じ考え、悩みどころがあるのがわかった。また取り組みの工夫を詳しく聞くことができた。
今回のイベントを通じて、デザイン人材育成という共通課題を持つ企業同士の継続的な交流の重要性が改めて浮き彫りになり、DMN Drinksがそうした場としての役割を果たしていく可能性を感じる機会となりました。

DMN2025について
変化が激しく、将来の予測が困難な時代。だからこそ、未知の未来を見通し、新たなビジネスを創出し、推進できるマインドセットを持つ人材が求められています。持続的な成長を支えるイノベーション・デザイン・DX人材育成のための選択肢としていかがでしょうか?お試し体験やオンラインモニターなども募集していますのでお気軽にお問い合わせください。
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