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2025.10.01

Series|ゲームフルCX 第2回―顧客を​動かす動機をオクタリシスの​フレームワークで​分析する​



gamefication2@3x
 
 
人を動かす8つの動機を体系化した「オクタリシス・フレームワーク」の概要を紹介しています。
さらに、従来のペルソナ設計にこのフレームワークを組み合わせることで、ユーザー像を動機ベースで深掘りし、
より効果的な体験設計につなげられる事例も紹介します。
 
 

 
こんにちは! mctの渡邉です。 
 
「サービスやアプリに登録はしてくれるけど、なかなか継続して使ってもらえない…」
「キャンペーンやクーポンで一時的に盛り上がっても、リピートにはつながらない…」
CXの現場では、こんな課題を耳にすることが多いのではないでしょうか?
そこで​注目したいのが​ ​「ゲーミフィケーション」。​

ゲームに​見られる​楽しく​魅力的な​要素を​応用し、​人の​深層心理に​働きかけて​行動を​自然に​促すデザイン手法です。​この​考え方を​CXに​取り入れると​どうなるのか?​それが​ ​ゲームフルCX です。​



ゲームフルCXの鍵となるオクタリシスフレームワーク

 
ゲーミフィケーション研究における代表的な理論のひとつが「オクタリシス・フレームワーク」です。体系的に人間の動機を8つの要素に分解し、サービス設計や顧客体験の改善に応用できる点から、最も広く認知され、実践されている枠組みといえます。オクタリシス・フレームワークは目的意識や好奇心といったポジティブな動機から、社会的比較や希少性への欲求といった外的要因まで、人が行動を起こす背後にある心理的な源泉を8種類に整理しています。

このフレームワークを使うことで、単なる報酬設計ではなく、
・ どんな理由でユーザーが行動するのか
・ その動機に合わせてどんな体験をデザインするのが効果的か
を明確にできるのが特徴です。 

octalysis_2https://octalysisgroup.com/framework/

ユーザーの動機を8つのコアドライブで分析し、ペルソナと組み合わせた活用事例

 
オクタリシスの​フレームワークを開発した Yu-kai Chou 氏率いるグループが、新たな​取り組みに​挑んでいる​事例を​ご紹介します。​
南米最大級の​航​空会社 LATAM Airlines は、​会員プログラム​「LATAM Pass」の​エンゲージメントに​課題を​抱えていました。​従来の​「マイルを​貯める」​「割引を​得る」と​いった​仕組みでは、​利用が​一部の​ヘビーユーザーに​偏り、​幅広い​顧客に​継続的な​参加を​促すことが​難しい​状況に​直面する中での取り組みです。

課題の解決のために、プロジェクトではまず顧客理解を行う分析フェーズを設定。
ユーザーを​理解する​上で​ポイントに​なったのは、​利用者を​「ユーザー」ではなく​「プレイヤー」と​して​分析することです。​

通常、プラットフォームやサービスを利用する人々は「ユーザー」と呼ばれます。しかし、プラットフォームにゲーミフィケーションの要素が加わると、彼らは「ユーザー」から「プレイヤー」へと変化していきます。この変化を想定した上で、プレイヤーとしてどのような動機を持っているのか分析を進めました。
 
 
分析フェーズの流れ
1.既存の​ビジネス指標(KPI等)の​レビュー
マイル利用状況、​クレジットカード申込率、​会員情報更新率などの​主要KPIを​精査。​
どの​行動が​ビジネス成果に​直結するかを​明確化。​
 
2.プレイヤータイプの​特定
 デモグラフィックや​心理的プロファイルを​もとに、​ユーザーを「​8つの​Core Drive​(動機の​源泉)」に​照らして​分類。​
 ​「好奇心で​探求する​人」​「社会的比較に​反応する​人」​「希少性に​惹かれる​人」など、​タイプごとの​モチベーションを​把握。​
 
3.事業成果に​つながる​具体的な​行動の​設定
 例:
クレジットカードの​申込
マイルの​積算・利用
アンケート回答や​データ更新
プロモーション動画の​視聴
 
octalysis_1
 
 
 
この​「ビジネス指標の​向上に​つながる​ユーザーに​取って​ほしい​行動」と​「ユーザーの​動機づけ」を​結びつける​ことが​設計の​起点と​なっており、アイデア創出フェーズ〜実装フェーズへと確実に引き継がれていきました。
その​結果、​この​プロジェクトでは​以下の​成果を​あげる​ことができ、​ユーザーへの​認知度と​ビジネス指標の​達成に​大きな​影響を​与えています。​
 
・ マイレージ積算が​123%増加
・ LATAM Passクレジットカードの​獲得が​153%増加 
・ マイレージ交換の​代替手段が​ 1,407% 増加​(ウェブストア)​
・ クリック率​(CTOR)が​最大1,300%増加
・ プロモーションビデオの​エンゲージメントが​17,000%増加
・ ネットプロモータースコア(NPS )​ 5つ星で​85%

 

 
プロジェクトの成功の鍵となったのは、ユーザーのモチベーションプロファイルをOctalysisフレームワークの8つのコアドライブで表現し、多様なユーザー体験をパーソナライズできたことが主な要因です。ユーザーそれぞれの興味や行動に合わせた報酬やゲーミフィケーションの仕組みを導入することで、ユーザーのエンゲージメントと満足度を最大限に高めることができた事例となっています。

mctでも既存のペルソナ設計に、オクタリシス・フレームワークの視点をプラスオンすることで、ユーザー像をより立体的に捉えらえられるように日々、研究中です!
 

本日は、「人を動かす動機の活用事例」というテーマで、ゲーミフィケーションという手法の実態とその成果についてお伝えしました。
mctでは、お客様の課題を“おもしろく解決”するための取り組みとして、今後もゲーミフィケーション×CX領域の研究・実践を進めてまいります。もし「こんな課題でも応用できる?」といったご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 
 

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